提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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442話 修羅

 

 

ある意味2周目のこの世界は…『クリア後に自由に動き回れる』みたいなゲームじみたことはなく、フツーに深海棲艦もやってくる。

なんなら、リセットされてるせいか鎮守府近海にもフツーにいやがった。

 

「平和な世界を…祈れば良かった」なんて愚痴を漏らしたら「そのために私達がいますからね!はい!早く書類お願いします!」なんて大淀に一蹴された。

 

大本営に電話したら巌さんも「それはそれ、これはこれ」だってさ!

 

首相は大和田とか言う人から変わってたり、色々と前と違うところもある。ぶっちゃけ良く他のことは覚えてないんだよなーとか思いながら執務をこなして行く。

記憶にしてみたらきっと途轍もない長さの時間を過ごしたはずなのに、昨日と変わらないような今がある。

何かしらの違いもあるのだろうけど目に見える部分にそれは感じられない…と考えながら淡々とハンコを押して行く。

 

「不知火…及び部隊、遠征から帰投しました」

ピッと綺麗に敬礼をして不知火が遠征の結果を提出してくれた。

遠征で得られる資材は深海棲艦の関係上少し減ったかな?くらいであり、鎮守府の運営には問題ないくらいのレベルである。

 

「うん、問題ないね。お疲れ様。補給等済ませてゆっくり休んでくれ」

ポン…と頭に手を置き撫でる。

顔を赤らめた不知火がぽそっと「問題はすぐあとにやってきますよ」といった。

 

不知火は満足気に執務室を出る際にベルと大淀に何か伝えているらしく、2人はそそくさと部屋の隅に寄って行った。「え?何?」と声をかけても「……仕方ないです、提督が悪いです」とだけ遠い目で言う。

なんか忘れてることあるかなーなんて考えていたら…

 

 

 

 

 

また執務室のドアが消し飛んだ。

 

ドアの向こうから

修羅()修羅()が現れた。

 

「連絡は?」

 

「あっ」

 

「救くぅん?」「まもくぅん?」

恐らく幻だろう。じゃなければあんなにも深海棲艦よりも禍々しいオーラを放つ存在などいない。と思っていたが、部屋の隅で縮こまってる2人を見たらそれが現実なんだと思い知らされる。

もしもこの世に悪魔というものが存在するのなら、それはきっと彼女達のような存在なのだろうか?などと思いつつ命の心配をする。

ゲームとかなら『人の身で…ここまでのオーラを放つとは!』だろうなーとか思いながいやごめんなさいゆるしてくださいほんとになんでもはできませんけどがんばるんでゆるしてください

 

 

「何か言うことあるんじゃない?」

ぽろぽろと大粒の涙を流しながらコチラをキッと睨む2人。

 

「大変だったんだよ!!!」

大変だった–––その一言には多くの意味が込められていた。

 

 

 

 

彼女達もまた、色のない世界に今一度産み落とされていた。

存在を賭けて戦って…また会えるかも分からない人への一縷の希望を胸に秘めて戦った。

胸に大きく空いた喪失感という穴は言葉や感情では言い表せない程に、より自分を締め上げていた。

特に幸は全く別の世界からの来訪者としてあの世界に現れた、いわゆるイレギュラーでもある。世界の端っこにギリギリ消えかけの状態で何とか存在を保つ彼女を艦娘達は何度も何度も励まして生きてきた。

「不安だよお…会いたいよお」と己の消えかけの両の手を見ながら泣く彼女を見る度に神崎 救という存在が如何に彼女の中で大きいのかと、羨ましくあり、恨めしくもあった。

幸自身も複雑な感情の中で、ひたすらに彼に会いたいと思い…

うざったらしい恋敵で親友に会えたらな…と世界を彷徨い歩いていた。

 

「幸!!」と私を呼ぶ声がした。

見ると麗が走って来ていた。半分の存在を取り戻した私は彼女に飛びついてゆく。

「うわぁぁあん!!よかっだあ!会えたぁぁ」

 

子供のように泣きじゃくりながら再会を喜び、ひたすらに西波島を目指したというわけである。

 

 

「「え?」」

 

「救君居るの?」

「聞いてないよ?」

 

やっと辿り着いた門でニコニコしながら「おー!2人ともー!みんなあ!久しぶりぃ!」と声を掛けてくれた麻耶から渦中の人物が既に帰ってきており、なんならカレーを皆に振る舞った…と言うとこまで聞いたのは覚えてる。その先はよく覚えてないけど、気が付いたら執務室のドアが吹き飛んでたし…なんなら麗が鬼の形相でまもくんの襟を掴んでブンブンと振ってた人間てあんなに早く動くんだーって思いました。

 

「あばばばばば」

「ごごごめんてててて!連絡とりようなかったもん」なんて正論を言われても止まらない。忘れてなかったよね?ね?ね?

私達のこと忘れてなかったよね?とブンブンと振り続け、「や、やめておけ!バターになってしまうぞ!」と猛武蔵に止められるまでそれは続けられていた。

 

ポカポカと彼の胸を2人は叩きながら言う。

 

「本物だよね?」ぐすっ

 

「うん」

 

「もうどこにも行かない?」

 

「うん」

 

「ねえ…」

 

 

 

 

「ただいま、2人とも」

 

待っていた。

聞きたかった言葉だった。

だから2人は止められなかった。

「良かったぁ!!うわぁぁあん!!!」

 

「ううっ…麗ぁ泣きすぎぃ」

 

「幸もでしょおお」

 

「うわぁぁん!!また会えた」と、先程とは打って変わって更なる大粒の涙を流しながらしっかりとその存在を確かめるように抱きしめた。

 

2人の艦隊の艦娘達はその光景をみてフッと笑って執務室を後にしようとして「ドアの請求書です」と涙を流す大淀に現実を叩きつけられ、そういえば…と財布の中を覗いて「遠征手伝いまぁす」と彼女達も泣いた。

 

 

がれーがだべたい!と泣きじゃくりしがみつく彼女達を引きずりながら救は食堂へと消えて行った。

が!すぐにカレーに釣られて多くの修羅が食堂へとカチコミに行ったらしい。

 

 

 

 

 

 

「離れないの?」

カレーをついで食べながら彼は言う。

 

「「「「「離さない」」」」」

皆が悪魔の微笑みでニコリと笑って言ったらしい。

方時も離れない彼女達がそこにはいたそうな。

 

 

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