提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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445話 陸奥と一日夫婦の日 ① 10cmの恋心

 

勝ちたい!

ずっとそう思ってた。

あの時もあの時もあの時も!!

 

 

どれだけ頑張っても…その差は埋まらない。

でも諦めたくない。

悔しいままなんて嫌だから!!

 

 

 

私は勝つんだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鎮守府の昼下がり…平和な平和n「…負ける訳には行かないのよねッ!!例えあなたが相手でもね!!」

珍しく陸奥が強い口調で言葉を投げている。

「私も負けまセーン!!」

相対するのは金剛である。

 

 

 

 

「次で決着ね!!」

 

「なかなかやりますネー!でもぉ!トドメ刺してやるッ!!」

 

本気の目とはこういうものだろう。

陸奥には譲れないものがあった。対する金剛にも譲れないものがあった。

相対する両者に残されたのは決闘の2文字…

己の意地を倒す為に激闘が繰り広げられている。

ぶつかる音に爆発する音…様々な音が2人から聞こえてくる。

ドン!と陸奥が金剛にあたる!「シット!!意外に陸奥!やりますねえええ」 「うふふ…手段は選ばないわ!!」

 

「…ならぁ!!」

ドン!!と金剛が陸奥に当たって行き、陸奥がバランスを崩す!

「ッ!?このタイミングで!?なんて…卑劣なッ」

 

「へへーん!絶対負けないヨー!!」

 

「…ふふっ」

 

「ははっ…」

 

 

 

「「アハハハハハハ!!」」

 

 

「「うおおおおおおぉッ」」

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに

マリ◯カートの話である。

 

 

 

 

 

レクリエーションも大事な福利厚生だなと、明石達に作ってもらったゲーム。何をどう情報を仕入れたのか、そこにはSwitcOがあった。

ニコニコと最初は楽しげにやるメンバーもそれなりに力がついてきたらまぁーそれはもうドロドロ。

真剣な狩人の目をした奴等が画面の前で車体に合わせて揺られながらプレイしているんだもの。

 

『今日こそは負けねええええ!!』

 

多分湿度も高くなってんじゃね?

あまりギスギスするのもなーと思ったから冗談で、本当に冗談で…

その場のノリと勢いで『今度のレース一位にご褒美あげるよー』なんて言ったらさ…

 

『本当にー?なら私達頑張ろうかなー?』って笑いながら答えてたのにさ?

 

 

『………』

レースが終わったらみんな黙るんだもの。

黙って部屋を後にするんだもの。

スッ…

 

 

 

「「「「SwitcO下さい!!!」」」」

 

部屋を後にした瞬間に酒保に猛ダッシュして行くんさ。んで、酒保からSwitcOが消え去って超絶バトルが始まった。

 

 

 

 

んで今に至るわけ。

甘かったわ、認識があまかったわ。

 

 

 

 

 

 

現状金剛がトップ。

同点で陸奥が追いかける状況。

この最終レースの勝者が優勝となる。

ぶっちゃけ金剛がいつも勝ってるからなあ…陸奥大丈夫かな?とか考えたりしてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勝負とはいえゲーム、しかし、ゲームとはいえ勝負

何故そこまで必死になるのか?……答えはわかりきってるだろうけどさあ

 

 

少しの差が埋まらない

実力とか運とか色々要素はあるけれど…

思わずそのボタンとレバーに力が入る。

 

勝ちたい。

私はずっとそう思ってきた。

 

その気迫は鬼気迫るものがあり、それを感じるものも少なくない。

金剛もその1人であるが一切手は抜かない。

 

"負けられない"

 

ただそれだけが彼女の中にあった。

 

 

 

運が悪かった?

相手が悪かった?

そんな言葉じゃ片付けられない。

 

 

 

 

 

 

「負けられないッ!!」

チリッ…と陸奥近くに火花が散ったように見えた。

 

「負けたくないッ」

その陸奥の気迫が金剛を捉えている。

しかしゴールが見えてくる。ドクンドクンと鼓動が早くなる。

負けちゃう、負けたくない!

 

 

 

その時だった。

 

 

 

 

 

「あ"」

ぴよぴよと忍び寄る棘の生えた甲羅。

 

「のおおおおお!!来るなッ!来るなデース!!」

 

一位を執拗に追いかけて破滅へと導く甲羅は金剛に命中し爆発する金剛‥そして…

 

「やった!!やったわ!!!」

見事一位でゴールしたのは陸奥であった。

 

 

「うー。負けたデース」

 

 

 

「おめでとう、陸奥」

 

「ええ!ありがとう」

陸奥におめでとうと笑いかけ、陸奥もそれに応える。

冗談から始まったこのバトルは陸奥勝利に終わった。

 

「で?何が欲しい?」

 

「そうね…私は–––––––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隣を見るとあなたが静かに眠っている。

もう得られない

二度と得られないと思っていた景色、光景、体温、吐息、鼓動––

静かに眠るあなたの頬に手を当てると微かに声が聞こえた。

甘えるように胸に顔を埋めると確かに鼓動が聞こえる。

 

ここに居る

確かにあなたは居る

 

それだけで涙が止まらない。

 

 

 

 

 

 

「……おはよう陸奥」

 

「おはよう!お姉さんの方が早起きね!ご飯…でき…てるわよ?」

おはようのトーンから少しずつダウンして行く陸奥。

陸奥は料理があまり得意でないからである。

 

 

「いただきます」

救のトーンに対して低い陸奥。

形の崩れた卵焼き、焦げた焼き魚、野菜が少し硬い味噌汁は濃い目でご飯は少し水っぽい。

 

「あ、あのね?今日は調子が少し悪くてね?あのね?だから…えと」

どんどんとしどろもどろになる陸奥。

「どこかに食べに行った方が…」なんて言い始める。それを俺は遮って完食する。「美味しいのに?」と言うと「お世辞はいいわ?」と少し嬉しそうに目を逸らした。

 

 

 

 

 

街へと繰り出し歩く。

街並みも変わらず、私達を奇異な目で見る人もいない。

ただ楽しい時間が過ぎて行く。

 

陸奥も街へ行くことは少なくはない。

しかしその性格のおかげか、いわゆる女の子らしいと形容される行動をあまりしない。長門の後継でありビッグセブンである彼女の矜持か意地か…

ある意味長門以上に己を律している部分が垣間見える。

 

(あっ…あのぬいぐるみ可愛いな…)

ちらりと歩きながら目に留まったぬいぐるみやネックレスに思わず目を奪われる。いくらダメだと思っていても心は正直に目を向けてしまう。

 

大好きなあの人へも…

1番がいると知っていても…

横目に彼を見てしまう。

私も好きでいていいのかな?と思いながら。

 

その距離は10cm

その差が埋まらない。

 

手を繋ぎたい、腕を組みたい。抱きつきたい。

それらをぐっと抑えながらお姉さんと背伸びをしながら一緒に歩く。

 

「どうした?何か考え事か?」

不意に彼から声を掛けられる。

何もないはず…なのになんで?

 

「えっ…」

 

「なんかそんな気がしてさ」

 

「…ッ」

「そんなわけないでしょ?」

 

その距離が15cmに開いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆に見られながら陸奥は彼にお願い事を伝えようとした。

 

彼女のお願い

『私のお願いはね…?まだ内緒』

陸奥はそう言って笑っていた。

 

 

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