提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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53話 誰が為に鐘は鳴る ②

「結婚して…呉の提督を継ぐ…ですか?」

 

 

 

「まあ、最初は雑務からだがな…数年は呉で補佐として頑張ってもらうぞ 」

 

いやいやいや!

そんなの聞いてない!お見合い…だろ?

無論俺は今の鎮守府から離れたくない。

 

 

「あの…鎮守府移動の事なんですが…」

 

「もし断ったら… なんだがな?…俺の力でお前達への補給等の締め付けを強めるつもりだ… 」

 

「なっ!?」

 

「考えてもみろ?今の僻地のちっぽけなとこで一生を終えるか、出世のレールに乗るか、どちらが幸せなんかなんてすぐわかるだろう」

 

「…受けたとしてても今のメンバーは?」

 

「あん?まあ新しい提督が着任するが…お前に懐いている奴は全員除隊だな…新しい提督に馴染まんだろうしな」

 

「いや!今のメンバーごとの異動とか…」

 

「は?お前は呉を弱くするつもりか?何より娘と結婚するなら…お気に入りが居たら…娘がかわいそうだろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

「あの…救様?」

 

「あっ!はい!すみません…ぼーっとしてて…」

 

今俺は2人で庭を歩いている…

ぶっちゃけ頭に何も入ってこない。

 

「あの…本当にすみません…父があんなので…私も止めたのですが…お前にもそれが幸せなんだと聞いてくれなくて…」

 

「救様は…艦娘の方とご結婚されてるんですよね?それを引き離して結婚して…誰が幸せになれるのでしょうか…」

 

「きっと父は…救様の艦隊と勝負をしてでもこの話をつけようとするはずです…完膚なきまでに勝って諦めさせる…お前らは俺には勝てないんだ…と、今までも同じような方法で色んな提督を潰してこられました…」

 

「お願いします…父を…止めてください!私がこんな事を言ってはいけませんが…救様なら出来る気がして…」

 

「私も結婚相手は自分で決めたいのです…敷かれたレールだけなんて耐えられません」

 

「……」

 

 

 

 

どうすればいいのか?

 

 

 

 

「おう、話し合いは終わったか?」

 

ん?親父が震えている…?

 

「お前もなあ…こんな庶民より俺が親の方がいいだろ?」

「この人にはな、それなりに包むもん包むからよ…な?」

 

何故こんなことを言うのか?

 

「それによぉ…艦娘と結婚なんてバカなことは辞めとけ、アイツらはな…戦争の兵器なんだからよ」

 

 

「大将殿ッ!!流石に酷すぎます!」

 

「んー?答えは出ただろう?」

 

「……いえ…」

出ない…出せない。

 

答えが出ねえか?ならコレを受けとれ…。

背中を後押ししてやろう…。

 

コレは演習の申し込みだ!

わかるな?元帥閣下の正式な押印もされてある…

 

逃げてもいいぞ?だが逃げれば…わかっているな?

お前は人生に汚点を残すだろう… 軍に居られなくなるだろうなぁ。

そうすりゃお前の大切な艦娘は… わかるな?

 

なら受けるしかねえよな?

 

そして…お前が負ければこの話を受ける。

お前が勝てば話は無しだ…まあ…お前の鎮守府は苦しくなるだろうがな

 

演習は1vs1 艦隊なんぞ出さんでいい!

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

その一言は容易に俺の心を握りつぶした。

艦娘に自分の人生の左右を押し付けるなんて…

 

 

 

 

その先は覚えていない。

いつの間にか鎮守府へと、帰ってきた…

自分を…艦娘を…親父をバカにされた……

なのに、何もできなかった。

 

あの一言のために…。

 

 

親父は…気にするなと言っていたが…。

悔しかった…何も言い返せなかった自分が。

 

自分を支配したのは…

アイツを許せない気持ちと

どうしよう…と思う気持ちだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

救が帰った後の話ー

 

 

「お父様…」

 

「ふん…何だ、腑抜けかと思ったぞ」

「ヘコヘコと話を受けていたら縊り殺してやろうと思ったが…フフフ面白い事になりそうだ…」

 

「あなた? 余り年下の子を虐めちゃだめですよ?」

 

「お義母様…」

夏子の視線の先には先ほどの美人…大和が居た。

()()()()()()()()()()()

 

「おお!大和、いや… 色んな噂がある奴だからな……だがあの程度で折れるようじゃこの先はないな」

 

 

 

「でもお父様!失礼でしたよ?救様…は…」

「なぁに…こっちも奴を一眼見てな…血が滾っておるんだ…奴は中にとんでもない獣を飼ってるぞ…」

 

「御蔵のオヤジから頼まれたから…お前は自分を見つめ直せって言っても気付かねえ事ってあんだろ?アイツはよ……トコトン追い込まれて気付くことってあんのさ……奴は今、今までで一番追い込まれてる…嫌なもんから目ぇ逸らさずに見詰めるしかねえんだよ…ぶつかり合うしかねえ時もあるんだよ…まあ…逃げたらそれまでだけどな」

 

「戦うのは私達ですけどね」

 

「うっ…すまんて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し前…

 

 

「松田さん…いきなりの無礼…許して欲しい」

目の前には頭を下げている時成が居る。

 

「時成さん!?」

 

「そしてどうかこのまま…無礼な役を続けさせて欲しい…」

海軍元帥から、救を頼まれた事。

巌自身が彼に興味を持っている事、縁談なぞ理由付けでしかなく、彼を真に見定めたいと。

 

コレからの戦争の将来を担う役割はアイツが背負うかもしれない。

実際に神崎の戦果は目を見張るものがある…

ただ、それだけなんだ。

アイツは自分の存在が何かをわかってない、、

アイツは自分を信じてない…艦娘との絆を信じてない。

アイツらは特別な奴らなんだ。

他の奴らとは違う…!

だから知らなくてはならない!

本当の自分を…

 

このままでは…奴は死んでしまう。

だからそうさせない為に、間違ったやり方で奴を追い込む…と。

 

「汚れ役じゃないですか」

と言う松田に巌は答えた。

 

それは同じ男で先輩の俺の役目だ…と。

 

そしてそれは可愛い後輩には内緒にして欲しいと伝えてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督…聞いたよ」

川内から事の内容を聞いた艦娘。

 

「呉と言えば…蒙武さえも赤子のように感じる強さの所らしい」

 

 

「そんな訳の分からない条件なんか!飲まなくていいだろう?!」

 

「…演習を申し込まれた…もう逃げられない…」

勝っても皆を苦労させ…負けたら…逃げたら…。

 

 

「コレは…元帥の押印… 正式な演習…」

 

 

軍人として逃げはご法度である。

例え演習でも負ける事よりも逃げる事の方が重いのだ。

つまり、巌は初めから救に選択肢など与えていない。

 

己の無力を噛み締めながら敗北し望まないレールに乗るか。

万が一…億が一勝てたとして…厳しい逆風の中で生きるか。

 

 

 

 

「大丈夫よ!誰だって!全力で戦うから!」

「私達は提督についていくから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「作戦を立てるよ…」

それだけしか言葉が出てこなかった。

そう言って俺は部屋に篭った。

 

 

 

 

 

 

「提督…」

部屋の前で立ち尽くす艦娘。

 

「待ちましょう…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうしよう…何で俺がこんな目に…?

俺が何をしたんだ?

どうして居場所が奪われなくちゃならないんだ?

誰かに責任を押し付けなきゃいけないんだ?

 

どんどん…ネガティヴになってしまう。

 

そもそも俺は…この世に必要なのか?

何故俺が…ここにいるのか?

本来…死んだのなら…俺は……

 

本当は誰にも必要となんてされてないんじゃないか?

俺は…?

 

 

 

寒い…

誰か…

 

 




主人公は意外に闇が深い(๑╹ω╹๑ )
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