提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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85話 大規模作戦214 発令! ① 死神を紐解く

西波島鎮守府  大規模作戦214

 

 

アークロイヤルはただならぬ緊張感の中に居た。

提督を除く全艦が大会議室に揃っているからだ。

 

「全艦…揃ったようだな…」

と、長門が声を発した。

何か前回以上に大規模な作戦が実施されるのか?

 

「皆もわかっていると思うが…」

 

 

 

 

 

 

 

 

一体何なの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「明後日は年に1度のバレンタインだッ」

 

「「「「ウオオオオオオ!!」」」」

 

「え?」

 

「む?アークロイヤル?どうした?」

 

「よく、わからないんですけど…」

 

「何!?ならもう一度言おう…」

 

「明後日は年に1度のバレンタインだッッ!!!」

 

「「「「うぉぉぉぉおおおお!!!」」」」

 

ばれん…たいん?

アレですか?チョコを男性から貰うやつでしょ?

誰が貰えるか…とかの話かしら?

浮かれすぎじゃない?全く…兵器としての弁えを持たないのかしら?

馬鹿馬鹿しい。

 

 

 

「これより!特別に借りたキッチンを解放する!各自用意したチョコを使って…提督にチョコをつくるように!それと、毎年言ってるが…変なものは入れないように!」

 

「「「「はいっ!!」」」」

 

「え?」

 

「む?どうした?アークロイヤル」

 

「チョコを作る?……逆じゃないの?」

 

「oh 日本では、レディからチョコを送りマース」

 

「マジですか」

 

「しかし、なぜそのようなことを?」

アークロイヤルは言う。

 

「何故って…私達が送りたいからだが…」

 

「この前のバカンスと言い…今は、戦争中だぞ!?私達は兵器だ!戦う兵器だ!…なのに何故…お前達はこうも…腑抜けているのだ!先の戦いもそうだが、愛がどうとか!そんなもので世界を取り戻せるのか!?」

 

「…私にはわからない!お前達の考えが分からない!……失礼するッ!」

 

「ちょっ!アークロイヤル!どこへ行く?」

 

「秘書艦任務だ!」

そう言って、アークロイヤルは執務室へと行ってしまった。

 

「…大丈夫かしら?」

 

「彼女は…実は、前の鎮守府で相当酷い扱いを受けていたらしいです」と、大淀が言う。

 

「そんなに?」

 

「…彼女は死神と呼ばれていたそうですよ」

 

「あーー何か聞いたことあンな、それ」

と、天龍が言う。

「何だったかなー……無機質で感情の無い艦娘がそう呼ばれたたらしいな……何でも死神以外は皆沈んじゃったとか…」

 

「それで…死神…だなんて…」

 

「生き残っても…そんな扱いだなんて」

 

 

 

 

 

 

「まあ…大丈夫だろう…アイツはきっと提督に聞くだろうな……私達は兵器なんだから…と」

 

「想像できるねえ」

 

「その先もねえ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

秘書艦としての仕事…。

書類、連絡、発注…。

時たまのティータイム…。

 

何だコレは…

この人は…いつ作戦を立てるのだ。

何故ここまでのうのうとできる?

 

 

 

 

 

「指揮官…」

 

「ん?何?もう粗方の仕事は終わったよ?」

 

「違う…」

 

「私達は兵器だ…戦うために生まれた。私も…あなたとの出会いや初陣は微妙なものだったが…戦うためにここに居る。なのに何だ?!あなたにしろ、あの艦娘にしろ…この体たらくは。愛だの…なんだのと…そんなので、勝てるわけがないだろう?」

 

 

私達は、深海棲艦と戦える存在…

唯一の理由

ただ、それの為に生きて、戦っている。

 

前の場所でもそうだった。

 

『お前は兵器だ!』

『敵を一機でも多く屠ってこい、貴様の命と引き換えでも構わない』

『今回も生き残ったのか?』

『仲間もあの世で待ってるぞ』

『作戦成功?当たり前だろうが』

『兵器は兵器らしく口答えせず、遂行すれば良い。余計な感情は持つな』

 

お前達の価値は…戦う点にある… と。

日々、沈み逝く友を見送り、己の無力さに打ちひしがれて…。

 

愛だ、感情だは、必要無いと思いながら生きてきた。

 

 

いつからか沈んだ仲間の幻覚が見えるようになった。

戦えなくなった私を役立たずと、大本営にあの提督は返した。

 

この鎮守府に釣り上げられた時は驚いた。

何故そんなに和気藹々とできる?

 

この鎮守府での初陣でも私は…深海棲艦が仲間に見えた。

とにかくがむしゃらに戦った。

 

いつからだろう?笑えなくなったのは。

仲間といても…愛想笑いしかできない。

そしていつからか本当に笑顔が消えた…私は無機質な奴と言われるようになった。

 

いつからだろうか?涙すら流れなくなったのは。

大切な仲間だった。さぞ生きたかっただろう。

泣いた…何度も泣いた。

彼女達を見送る度に。

そしていつからか涙すら流れなくなった…私は血も涙もない奴と言われるようになった。

 

 

愛で戦いに勝てるのか?

それよりも鍛錬を積むべきではないのか?

 

お前達を見ていると……私は… 私は

 

「私達の生きる価値はそこにしかないんだ!!それが!兵器としての価値だ!!!」

 

 

 

 

 

「何で?」

 

 

 

 

 

 

 

「は?…何で…?」

 

 

「なんでそう思う?」

 

「何でって…深海棲艦と戦えるのは私達しか…」

 

「アークロイヤル…君にとっての幸せとは?」

 

「幸せ…ですと…?」

 

戦うことしかしてこなかった。

来る日も来る日も、訓練に明け暮れ…

平和な世界を目指して……

 

「…この世に平和を…もたらすこと…」

 

「…君自身の幸せは?」

 

「知らない!そんなの…知りません!。ずっと戦ってきた!何人もの仲間を見送って…自分が生き残ってしまった……そんな私は!戦うしか…出来ない!

幸せとか…そう言うなことを考える資格なんて…」

 

「あるよ」

 

「は?」

 

「何故…生き残った者が幸せになる資格はない?」

 

「皆…生きたかったはずだから…仲間が!恨めしそうな顔でコッチを見るんだ!…なのに私は生きている!」

「知っているか!?私が何と呼ばれていたか!…ーー…死神だ」

「自分だけが生き残ってしまう奴に…価値なぞ…」

 

「なら…俺も含めて皆不幸でなければならないじゃないか」

 

「…ッ!」

 

「お前は…兵器じゃない」

 

 

「…」

 

「俺は…兵器だとか人間だとかそんな議論は好きじゃない」

「少なくとも感情を持つ時点でモノでない」

 

「死神…?上等じゃないか……。なら俺らがお前が死神でないと言う事を証明してやる」

 

「…ッ」

初めてそんな事を言われた。

 

 

「価値がない?!そんな事はない…お前がここに居る…それだけでも俺にとっては大切な事だ」

「幸せになる資格がない!?…俺は…お前に幸せになって欲しいと思う。幸せになって…逝った者に教えてやって欲しい」

 

『皆が命懸けで守った世界は…こんなにも幸せに溢れている…』と。

 

「……!!!」

 

この提督は真っ直ぐな目で言う。

 

 

「前の鎮守府では…さぞ辛かったのだろう…。でもここでは…お前への命令は一つ……死ぬな…だ」

 

「…!?」

 

「お前は…俺の艦娘だ。なら…絶対に沈んで欲しくない…怪我もささせたくないし……悲しむませることもしたくない。お前が誰かを見送っり…誰もお前を見送ったりしない…。その為なら、俺はどんな努力もしよう」

 

「お前は…生きてくれ…生きて…生き抜いて、皆が守った世界を見て欲しい」

 

 

"死ぬな"

そんなこと言われたことはなかった。

お前が頑張らないからー…

お前が強ければー…

兵器としての自覚を持てー…

余計な感情は捨てろー…

 

なのに…この人は真逆な事を言う。

私が本当はかけてほしかった言葉を…私から目を逸らさずに、真っ直ぐに見つめて言ってくれる…。

 

 

「良いんですか?」

か細い声でアークロイヤルは言った。

 

「私も…幸せに生きてみて…いいんですか?死神じゃなく」

「皆みたいにお洒落して…恋して…普通に居ても良いんですか?」

 

この人は…今までの私を打ち砕いてくれると思った。

縋るように…聞いた

 

「当たり前だろう…ここにお前を死神と呼ぶ奴何か居ないぞ」

 

「私に出来ますか?」

 

「もちろんじゃないか」

 

 

ーーー何かが壊れる音がした。

それは、きっと私の…抑えてきた…堰。

 

 

「あ…ありがとう…ございます」

「何を言っている?」

「え……」

「こちらこそ…お前が来てくれて嬉しい。一緒に歩んで行こう」

 

「うぐっ…ううっ はい」

指揮官がよしよしと頭を撫でてくれる。

 

「ぐううっ ひぐっ ううっ」

なく私を優しく包んでくれる指揮官。

何て…暖かいのか…。

コレが…優しさなの?

 

 

 

「わ、私っ…皆程強くないけど…頑張ります!あ、貴方の剣となってあなたを守ります」

 

「…俺はお前達に守られてないと…すぐに死んでしまうからな。よろしく頼むよ」

 

 

 

この温もりを知ってしまったら…私は、もう…

 

 

「解決したみたい」

「そうねえ…良かったわあ〜」

「羨ましいなあ…」

 

「…我慢できないっぽいー!提督さんー!私もおお」

 

 

 

「え!?夕立!?皆!?」

わらわらとなだれ込んでくる艦娘。

 

 

「おーおー…仕方ない!皆まとめてこーーい」

 

なんて笑顔だ…ここの艦娘は、こんなにも幸せそうなのか?

……私もこの輪に…入りたい。

私も…きっと、皆の分まで…。




ネーミング詐欺!

アークロイヤルがメインでした。
金剛と絡ませてイギリスチームもやりたいなあ




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