提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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91話 焦がれる背中に ① あの背中を追って

アンタが居ないと…あの人が皆が本気で笑ってくれないのよおっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

バレンタインよりも前のお話…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

加賀達は哨戒作戦で敵艦隊と交戦していた。

 

 

空母棲姫と加賀が対峙する。

そこまではいつもと同じだった。

 

が、相手の様子がおかしい。

「ン?オマエ…ソウカ…オマエモイズレ此方ニクル」

 

 

「何…?どういうこと?」

「オ前モイズレ深海棲艦ニナル」

 

「フフフ、仲間ニ手ヲカケル日ガヤッテクル」

 

「そんなことはないわ!」

 

「アハハハハハ!楽シミネ」

と、深海棲艦はその言葉を残して撤退して行った。

 

 

ー深海棲艦になるーー

その言葉は私に大きな影を落とした。

 

 

 

 

そこからしばらく経って…

 

 

 

戦いの中でも弓を持つ手が震えるようになった。

「ちょっと!加賀!大丈夫?」

 

「え、ええ」

 

何かドス黒いものが私の中にあるような気がした。

 

そんな日が何日も続いた。

周りは当然加賀を心配した。

 

それでも大丈夫と自分に言い聞かせた。

 

 

 

どんどんと戦果が落ちてくる…。

 

 

「どうしちゃったのよ…加賀」

瑞鶴だった。

 

「別に…なんでも無いわ」

 

「でも…アンタ…」

 

「気にしないでよッ……ごめんなさい。放っておいて頂戴…。」

 

「ッ!…わかったわよ…」

 

 

 

ある日…いつも通り支度をしていると。

「ふぅ……!?」

鏡に深海化した私が映っていた。

 

「…ッ!?」

 

もう一度見るとその姿は元に戻っていた…。

 

もう……限界だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「解体…してほしい?」

加賀の突然の進言に俺は驚いた。

 

「ええ…」

 

前回の戦いで深海化したことが原因らしい。

またそうなってしまったら…また愛する人に敵意と武器を向けたら…。

そんなのは耐えられないとの事らしい。

 

 

「どうか…お願いします」

 

 

 

以前、私は深海化し大好きな仲間や提督に銃口を向けた。

 

確かに戻ってこれた。

しかし、私の中には不安の種が根を張っていた。

 

もし、また同じようになったら?

また…あの人達に敵意を向けたら?

 

それは、日に日に大きくなって行った。

故の…解体を進言した。

 

 

 

 

「受け入れられないな…」

当然、この人はそう言う。

 

来る日も来る日も進言し続けた。

 

その度に提督を含め皆に止められた。

 

 

 

しかし、私は…もう限界なんです…すみません…と。

 

あの提督の顔が頭から離れない。

 

 

 

救は悩んだ…。

彼女の人生だから縛りつけるわけにはいかない。

しかし、解体となると…。

 

 

 

「なら…退役という事でどうか?」

苦肉の策と言わんばかりの提案。

 

退役…即ち艦娘という立場を退き、一般人として生きると言うことだ。

 

「お前を…失いたくない…頼む。これで妥協して欲しい。」

深々と頭を下げる救。

 

提督の涙を見たような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

艤装も外し、指輪も返した。

あの時のあの人の顔が忘れられない。

 

「俺は…待ってるからな」

その一言が…ずっと突き刺さった。

 

 

 

 

「逃げないでよ!先輩!」

 

瑞鶴だった。

 

 

 

「ごめんなさいね…瑞鶴…後は頼んだわ…」

それしか、言葉が出てこなかった…。

 

 

「加賀さん…」

「加賀…」

赤城さんに鳳翔さん…ごめんなさい。

 

 

 

後ろから聞こえる声を無視して私は門へ一礼して船へ乗った。

 

 

 

こうして彼女は鎮守府から去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「納得がいきません!」

「提督も…何故許可したのですか!?」

瑞鶴は言う。彼女にしたら当たり前のことか…。彼女にとって加賀という存在は小さなものではない。

憧れであり、目指す目標であり、先輩であり、ライバルだ。

いつでも凛としていて、弱々しい所なんか見せない。

だからあの加賀に納得がいかないのだ。

 

 

 

「加賀の選んだ道だから…」

そう言うしかなかった。

 

 

「ッ!! 」

ずいはそれ以上何も言えなかった。

分かっているのである。己の無力を悔い、1番辛いのは提督であると。

コレ以上は八つ当たりになってしまう事も。

 

 

 

 

 

加賀の居ない鎮守府は、ポッカリと穴の空いた様に感じた。

……いや、穴が空いてしまったのだ。

皆、口にこそしないがそれを感じていた。

 

自分を責める赤城、鳳翔。

 

持ち主不在の指輪を見つめる救。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

加賀はひっそりと暮らしていた。

後悔は…している…でも誰かを傷つけるよりマシだと言い聞かせた。

 

 

 

 

 

 

「報告デス。加賀ハ、アノ鎮守府カラ消エタヨウデス」

 

「フム…ヤハリ、アノ空母ハ解体カ……ククク、ココマデ上手ク行クトハナ!!」

 

「士気ガナイノガヨクワカル」

 

「ナラ、責メルナラ今ネ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三ヶ所にて深海棲艦の出現を確認した鎮守府はすぐに艦隊を出動させた。

 

 

「遠いわりに敵が弱くない?」

同時多発の割に戦力は然程ではなかった?

 

「他の場所も同じようですよ」

 

妙だ…

 

「まるで…囮…まさか!!」

 

その時、伝令が陸奥に入る。

『鎮守府に敵艦隊襲来!!!!』

 

そう、それは罠であり本命は鎮守府にあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「敵襲!敵襲!!!」

「残存している艦娘はすぐに迎撃に当たってください!」

 

赤城、翔鶴、瑞鶴、金剛、長門、不知火、響、58、天龍、吹雪、睦月がそれにあたった。

 

 

空母棲姫を筆頭に押し寄せる深海棲艦。

 

予期せぬ敵襲に苦戦する艦娘。

 

「ぐううう!耐えろ!味方も此方へ向かっている!」

 

「何としてでも…勝ってみせる!!」

 

 

 

 

 

「ハハハハハ!何ト脆イ!タッタ1隻ノ艦娘ニ、コウモ左右サレルトハナ!」

 

長門と空母棲姫が対峙する。

「お前…加賀に何かやったのか!?」

 

「ンー?言葉ヲ掛ケタダケダ」ケラケラ

 

 

 

 

 

実の所、本当に言葉を掛けただけだった。

 

重要なのは…相手だった。

特に責任感の強い加賀にその種を植え付けるとどうなるかを空母棲姫は知っていた。

たった一言の種…。

それはやがて膨らみ、根を張った。

精神は肉体に大きな影響を及ぼす。

実際に加賀は、幻覚や震え等に悩まされることとなった。

 

その作戦は見事にうまく行った。

 

更には、鎮守府内の士気が下がり、見事に鎮守府の統率は崩れ、普段ならありもしない苦戦を強いられた。

 

そう、たった1隻の為に。

 

しかし、その1隻が彼らにとってどれだけ大切か…が分かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ!はあっ」

丘に上がり走り続ける。

ある場所を目指して。

 

 

『瑞鶴…まだまだね』

『落ち着きなさい。挑発に乗らない』

『五航戦の子と一緒にしないで』

 

『瑞鶴…今日はよくやったわ』

 

 

 

「加賀……」

艦娘は走る。

あの人のところへ…。

 

一縷の望みを胸に…。

ひた走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…」

加賀はリビングで一休みしていた。

この生活にもだいぶ慣れた頃だった。

心の底ではもやもやが残っていたが……。

 

 

これでよかったんだ…。

 

 

 

そこに…

ドンドンドン!とドアを叩く音が聞こえた。

誰かしら…と、ドアを開けると…

 

 

「加賀!!」

何と瑞鶴が立っていた。

 

息を切らせながら瑞鶴が言う。

 

「助けて!皆のピンチなの!」

 

 

 

 




雨が止みません…。

続きます(๑╹ω╹๑ )!
次回をお待ち下さい!
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