ツツジの花は何れ咲く   作:カラスの餌

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最近まともに飯食ってない


11話

 

………。

 

「んー…って俺また寝てたのか…。」

 

 

 

しずくに監禁紛いなことをされて2日ほど経った。正直自分の家に帰りたいと思う今日この頃である。

しかし意外なことにここ2日しずくは、暴力的な事をして来ない。

俺が抵抗するのを諦めたのか知らないが、決して乱暴なことはされていない。

 

「あっ♪皐月おはようございます♪」

 

最早以前の面影なんて無いほど変わり果てたしずくの姿。俺はコイツを元に戻す方法をひたすら考えていた。

 

「無視なんて酷いですよ…?」

 

「別に…無視なんかしてないさ。ただ急にこんな監禁もどきをされてちゃ多少驚くだろ」

 

「監禁…ですか?」

 

「あぁ。それに今は夏休みだからこんな事をされても多少なりとも何とかなるが、学校とか始まったらどうすんだ?まさか一生ここにいるとか言わないよな…?」

 

そう、一番の問題はそこだ。今は長期休みだから俺も特に下手に抵抗したりはしないが、学校とか始まったら俺は一体どうなるのか。

別に俺の場合は授業とか受けなくても、テストは余裕で満点取れるし問題は無いが…

 

「もしかして……私の心配をしてくれてるんですか?」

 

「当たり前だろ。俺は学校の問題は全て把握しきっている。…しかししずく…お前はどうだ?例え優等生の部類に入っていようが多少なりとも苦手な部分はあるはずだ」

 

「それは…」

 

動揺が見えた。なんの科目は知らんがこいつには苦手な教科が、あるようだ。将来何かをしてく上でこいつが単位を落として絶望する姿を見るのも嫌だしな…。ここは俺が一皮脱ぐか

 

「お前がもし…ずっとここに俺を閉じ込めるのは自由だが…その代わり条件がある。」

 

「条件…ですか…?」

 

「学校は行かずにしろ俺とお前がこの状況がバレるのも時間の問題だと俺は、思っている。だがみんなが気づいてない間…俺がお前に勉強を教える…そしてテストの日には学校に行け、いいな?」

 

「……仕方ないです…。それが私と一緒にいてくれる条件なら…。」

 

「フッ、まぁ以前のお前なら俺は直接いえば了承してたかもだがな…。」

 

「え?何か言いました?」

 

「いや、なんでもない。お前課題終わったのか?」

 

「終わってないです…。」

 

「なら尚更だ。お前が学校行く時に困るんだぞ?」

 

俺はあえてしずくに聞こえないようにそう言い、またすぐに別の話題へ移した。

 

それから数時間。俺達はしずくの課題を終わらせる事に専念した。

そして分かったことが、こいつは数学がとんでもないほど苦手だった。

 

「お前…数学のテスト前回何点だよ…これ…」

 

「68…です…」

 

「何故それ以外は普通に高いのにこんな偏ってんだよ…。」

 

「…わからないです…」

 

俺はそれからというもののしずくに徹底的に、数学を教えた。

途中わからないでパンクしかけていたが、飲み込むスピードが早いため意外と直ぐに片付いた。

 

「はぁ〜……終わった……っておい…」

 

「?…なんですか?」

 

「なぜ俺の肩に寄りかかっている…」

 

「いいじゃないですか…同棲してる仲なんですし…」

 

 

課題が終わった瞬間疲れたのか知らんが、しずくは急に俺の肩に寄っかかってきたのだ。

 

女子と言うのはこんなに直ぐに男にくっつくものなのだろうか。と疑問に思ってしまう。

 

「……なぁ……頼むから携帯は使わせてくれないか…?」

 

「むっ……ダメです…私以外の子と連絡取るのは禁止です…。」

 

「はいはい…そうですか。」

 

頬を膨らませて拒否の反応を見せるが、こいつの目には光がない。

 

「なぁ。少し話しないか…?別に同好会のやつの話じゃない…。俺の…ちょっとした昔話だ…。」

 

「皐月の…昔…話ですか…?」

 

「そうだ。嫌だったらお前だけの話を聞くぞ。」

 

「それも嬉しいけど…気になります…。」

 

「そうか……なら話すよ…この目のこと…お前ずっと気になってたんだろ?…部活の時よく不思議そうな顔してたし。」

 

「だって……普通じゃないですもん…その傷跡…」

 

「そうだな……普通じゃ……ないな…俺が歩んで来た人生は…。」

 

そういった途端しずくの顔は少し驚いた様な顔をしていた。それから俺は淡々と、今までの事を話した。目の傷跡、そして何故こんなに勉強やスポーツが出来るのか…と全てを話した。

 

「そんな…事が……」

 

「驚いたか……まぁ無理もないだろうな…俺とお前じゃ生きてる世界が別だ…。」

 

だからこそちゃんとした道に歩んで欲しい…。俺はこいつを初めて見た時…才能の光を感じた気がした。

1年生とは思えないほどの佇まいに自分の好きなことを表現するその力…。俺は練習を見てすぐに分かった。

 

こいつは将来大物になると

 

「そして…ここに来てお前らに出会った…。俺はさ…1年の途中まで別の学校にいたんだ。ここに転校してきた時はなんも考えてなんか居なかった。」

 

「でも…2年に上がってちょっとして…同好会の練習を見に行って1年の練習を見てお前を初めて見た時、俺はお前に光が見えた…。」

 

「光…ですか…?」

 

「あぁ。まるで好きな事を子供のように必死に表現しようとしてるその姿…。そしてその完成度の高さ…俺は呆気に取られたんだ…」

 

あの時の練習を見た時に思った…こいつはここにいるメンバーの中じゃ頭一つ抜けた実力の持ち主だと….

 

「それでも……勿体ないと思った部分が1つあったんだ…」

 

「勿体ない…部分…?」

 

「お前………」

 

「はい」

 

しずくはさっきと何ら変わらない顔つきで、聞いて来るがその顔にはとても違和感が俺には見えた。

 

だからこういった。

 

 

 

「お前……普段俺と話す時も…素の自分を隠してるだろ?」

 

「え…」

 

驚いた顔をしている。この反応を見る限りだと、どうやら本当みたいだ。

 

「憶測だが……お前のその演技力…ちょっとやそっとで身に付く力ではない…お前はずっと前からその嘘の自分を演じている…。」

 

「そして…俺がそう確信したのは、もう一つ理由がある」

 

「な、なんですか…それは…」

 

「先程言ったが、お前の演技力はちょっとやそっとで、身に付く力ではない。」

 

「お前は昔から…お芝居をする事が好きだった…それ故に…海外の映画や…普通の子供が読まない本などの世界に入って行った…しかしそれは世間の子供から見れば変わった人に見える…」

 

俺は自分の1つの仮説をしずくに話した。全部が全部合ってるとは思っていないが、考えられることをまとめてしずくに話した。

 

「それ故に…お前と分かり合える人間が少なくなって行き…やがて孤立…それを恐れたお前は嘘の自分を演じる事に専念した…」

 

俺は立て続けに、そういうがしずくは静かに聞いていた。

 

「そしてここへ来てようやく自分のやりたいことに、専念出来る…そして更にスクールアイドル同好会と演劇部を兼部…そこでかすみ達と出会い…友達へ…しかし人のトラウマはそう簡単に消えはしない…お前はそこでも、嘘の自分を演じていた…」

 

「全部…お見通しだったんですね…」

 

震えた声で一言、しずくは俺に言ってきた。その顔はどこか悲しそうで辛そうにしていた…。

 

「お前の顔…度々暗かったからな…。」

 

「怖かったんです……ずっと…本当の私を知られたら…私を好きになってくれる人なんて…いないって…」

 

「辛かったんだな……ずっと……ずっと1人で戦ってきた…お前は凄いよ…」

 

俺は素直にしずくを尊敬した。人は自分を偽るのに限界がある…。それでもコイツは最後まで自分と戦って、やがて…嘘の仮面を剥がした

 

「そして…同好会に入ってしばらくして…皐月に…先輩に出会って…」

 

呼び方が戻っている…。そして綺麗な水色の目には光がしっかり宿っていた。

 

そしてその綺麗な水色の瞳からは次々と涙が溢れていた。

 

「先輩は…私の話を否定なんかせず…話も聞いてくれて…私から遠ざかろうともしなかった……」

 

1人泣いてる少女の姿はまるで、本当の自分と再会できて喜んでいるようにも見えた。

 

「そしてその優しさに惹かれて…私は気付いたら…先輩に恋をしていた…会う度に嬉しくて…楽しくて…そして事件の時は…命懸けで私を守ってくれて…」

 

「過大評価だよ…ほんとに…」

 

「だから……先輩が……遠くへ行くのが怖くて…誰かと話してる姿を見ると苦しくて…」

 

「それで……今回のような事を…した…と…」

 

「はい……本当に…本当に…ごめんなさいっ…」

 

こういう時普通の人はなんて言うのだろうか、怒りのまま怒鳴りつけるのか、それとも何も言わずに立ち去るのか…

 

でも俺の中でこの2つは違う気がした。だから俺はしずくにこう言った。

 

「謝るなよ…むしろ本音を聞けてよかったよ…お前が俺をそこまで思ってくれてるなんて、少なくとも俺は思ってなかった。それにちょっと痛い思いをしたが、お前の今までの傷に比べれば痒いもんだよ」

 

「それに…」

 

俺は精一杯の笑顔でこう言った

 

「お前と一緒に過ごせて本当に楽しかったよ…家族がいるってこんなんなんだって…料理も美味かったし…一緒に寝る時も人の温もりを感じた…俺何だかんだでお前と2人きりの時間好きだったんだ」

 

「だから…俺からの頼みと言っちゃあれかもだが…」

 

俺はこの子の純粋な想いに惹かれていた…優しくてちょっと頑固でお芝居が大好きで…友達想いで…歩夢とはまた違う優しさを持ってる一人の少女に気付いたら…

 

「俺とさ………付き合ってくれないか……?」

 

本気で好きになっていた。

 

人生初の告白…そして意外な形で…普段の俺らしくない…体温の高さ、心臓の音…

 

対するしずくは…

 

 

「……っ……喜んで……こちらこそ大好きでした…そしてずっとこれからもずっと…大好きです…皐月……!」

 

「おわっ!ちょ…しずくっ?!……ってまぁいいか…」

 

涙を流しながら少女は俺に飛び込んできた。

 

母さんやっと…やっと見つけた…俺を本気で好きになってくれた人…俺の全てを受け止めてくれる人を…

 

「本当に……泣き虫だな…」

 

「皐月だって……泣いてるじゃないですか…っ」

 

「いや俺は……って…あれ…」

 

無意識にも俺は泣いていた。でも理由はわかっている俺はやっと本当に守るべき人愛すべき人を見つけたのだから。

 

「夏休みしばらく…ここに泊まっても良いか…?」

 

「はい!」

 

 

俺の夏はまだまだ始まったばかりだ

 

 

 




( ˘ω˘ ) スヤァ…
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