「はっ…はっ…はっ…」
あっつい……。こんな炎天下でランニングって、流石にやりすぎたか…。
最近身体に訛りを感じた俺は、夏休みの間ちょっとだけストイックな生活をしてみようと思った。
……のだが……
8月の上旬で気温は35°を上回ってる中走るのは流石にバカだった。お陰様で、今にも倒れそうなぐらいだ。
今頃同好会の連中達は、快適な練習環境で部活とかやってんだろうな。
「はぁ……こうなるぐらいなら、俺も同好会の練習に付き合えば良かったかもな……って、ん…?ちょうどいい場所があるな、あそこで少し休むか」
丁度今、公園の前を通り掛かったもので、運良く木陰のかかった、ベンチを見つけた。俺はそのまま公園の中に入り、ベンチへ向かい腰を下ろした。
サァァ………
「ん……」
風が良い感じに当たり、ここだけ若干涼しかった。それに、夏の風物詩のセミの鳴き声と風の音が混ざり、夏特有の音楽が聴こえた。
「そういや、初めて歩夢に会った時もこんな暑い日だったな」
あの時の俺は、母さんを亡くし途方に暮れていたっけか…自暴自棄になって行くあてもなく歩いてたな…
「それにしても…風…気持ちいいな……」
俺はしばらくベンチに座りながら、風にあたり黄昏ていた。
すると
「ねぇ、貴方はそこで座って何を考えてるの?」
突然俺は横から声をかけられた
「えっ…?」
驚いた、さっきまで人1人いなかったのに、女の子がいつの間にか俺の横に座って声掛けてくるなんて…って、この顔どこかで見たことある気が…
特徴的な髪の色をしていた。髪型は片方はお団子にして結んであり、髪の色はライトピンクだった
「ねぇ、お兄さんはベンチに座って何を考えたの?」
その子は、先程と俺に同じ質問を投げかけてきた。
「俺は……ううん、お兄さんは、人を待っているんだ。」
「人?その人はお兄さんのお友達?」
女の子は頭にはてなマークを浮かべながら、俺に再び聞いてきた。子供にはちょっと難しかったかな?って思ったけど、そうでも無さそうだ
「そうだよ…その子は…いや、その人はね、お兄さんにとってとても大切な人なんだ…。」
俺は静かな声でそういった
すると、女の子は
「そうなんだぁ。お兄さん好きな人を待ってるんだね!私もね大好きな子を待ってるの!」
子供らしい無邪気な笑顔でそう言ってきた。この笑顔…やっぱり間違いない…あの時の…。
多分俺は幻を見ているのだろうと思ったが、あえてそこには触れずその子としばらく会話をした。
「お兄さんはね、昔この公園で一人の女の子に出会ったんだ…そう、ちょうど君くらいの歳の時だな」
俺は淡々と、初めて歩夢に出会った時のことを昔の歩夢にそっくりな女の子に話し始めた。
「あの日も…このぐらい暑い日でさ…俺は1人で座ってたんだ…そう、ちょうどさっきの俺みたいにさ」
女の子は、うんうんと、言った様子で俺の話を真剣な眼差しで聞いてくれていた。
「その子はまるで今の君そっくりでさ…急に俺に声をかけたんだ、さっきの君みたいに…ね…」
すると、しばらく口を開かなかった女の子は
「お兄さんは…その子の事…好きなの?」
さっきの顔とはうってかわり、真剣な顔付きになって俺に質問をなげかけた。
こんな年齢の子に恋愛トークはさすがに気が引けるが、本人もいないということで
「……あぁ……好きだ……世界で1番…な…」
小さな声でそういった。
「そっか……良かった、皐月君がその子の事嫌いじゃなくて…私安心したよ……」
「そ、そうか…?それなら、良かった…?って…なんで俺の名前を?!」
俺は、咄嗟にその子の方に顔を振り向いたが、俺が顔を向ける頃にはその子の姿は消えていた。
「一体…あれは…なんだったんだ?幻か…?いや…でも…」
俺はしばらく考えた、さっきの現象がなんなのかイマイチ俺には分からなかった。幻なのか、ほんとなのか全く皆目検討はつかなかった。
「眠ってる気はしなかったな……」
「あ!皐月君そこにいたんだ!丁度会いたかったの!」
突然、いつもの聞き慣れてる声が聞こえた。それも俺にとって1番大切で大好きな人の声だ。
「歩夢…部活は終わったのか?いや…終わったのだからいるんだったな…」
「うん!ついさっき終わって丁度帰るところだったんだけど、皐月君に用があってこっちの方に来たの、そしたらちょうど公園にいたから」
歩夢はいつもの優しい笑顔で、そう答えてくれた。俺はこの笑顔に何度助けられたことだろうか。
「それでさ……皐月君…この後空いてたり…する…かな…?」
突然歩夢は顔を赤くして、小さな声でそう俺に聞いてきた。
確か俺はこの後は特にやることがなくて暇だった気がする…あったとしても大した事では、ないから良いか
「ああ、特に予定は無いぞ。歩夢は何かあるのか?」
「う、うん…ちょっと皐月君とお茶でもしながらお話がしたいなって………あ、い、嫌だったら、全然断っても…」
「断る事を断る。俺もちょうど歩夢に話したい事があるからな。それに、なんなら今、話したいんだが、いいか?」
「え?!う、うんっ…!」
俺は一旦深呼吸をして心身共に落ち着かせリラックスをし気持ちを楽にした。
そして、決意をした目で歩夢の方に体を向けた。
「では…行くぞ」
「う、うんっ…!良いよ!」
歩夢もどうやら気持ちの整理が着いたらしく聞く姿勢に入った。
「歩夢……俺はずっと歩夢にお礼が言えてなかったんだ…先ずは最初にそれを言わせて欲しい…。 あの時、一人ぼっちの俺に声をかけてくれてありがとう…」
「そ、そんなに改まんなくてもいいよっ」
歩夢はそんな大袈裟なって感じに言ってくれるが、俺からすれば歩夢のその何気ない行動によって助けられたのだ。
感謝を伝えるのが筋ってものだろう
そして続けて俺はこういった
「そしてもう1つ…伝えたい事が…歩夢、俺はお前の事が好きだ」
「っ……!!」
突然歩夢は驚いたのかしれないが急に涙目になった
「周りが俺から遠ざかる中…お前は嫌な顔1つせず優しく声をかけてくれたよな…俺は…実はすごく嬉しかったんだ…でも上手く伝えられなくてよ…」
さらに続けて俺は話した
「そして、努力家で少しでも前に進もうとする歩夢の姿に…俺は段々惹かれてったんだ…」
「皐月…君…」
「そして、思ったんだ…この人が俺の守るべき人だって…幸せにしたいって思ったんだ……」
俺は、あの時、一人の女の子に出会い人生が変わった
「だから…振られる覚悟で言う…いや言わせてくれ…!歩夢…大好きだ…今までもこれからも…ずっと…だから…俺と…」
上原歩夢と言う一人の女の子によって俺の人生は、変わった…黒色だった物が…明るい物へと…
「付き合ってくださいっ…!」
「皐月君っ!!」
「あゆっ?!」
突然歩夢は俺の事を抱きしめに来た。顔は埋めながら抱きついてきた。しかしその顔をよく見ると、笑顔で涙を流していた。
「私ね……今…すっごく嬉しいの…私も皐月君の事がずっと前から好きだったから…皐月君に告白されて凄く嬉しいの…」
「あ、歩夢……」
歩夢は続けて更にこういった。
「皐月君…その告白…喜んで…私でよければよろしくお願いしますっ…」
「……っ…っ…!」
歩夢は更に
「私からも言わせて…皐月君…私も貴方のことがずぅっと前から好きでした…私と付き合ってくれますか?…」
「っ!」
その言葉に俺は胸を打たれた、答えは決まってる…そんなの一つに決まってるだろ…
「喜んでっ……」
俺は歩夢を抱きしめた。それに応えるかのように歩夢も俺の事を抱きしめてきた。
やっと…やっと伝えられた…
母さん…やっと言えたよ…
後日談
こうして、晴れて俺たちは結ばれ交際を始めた。
「ねぇ、皐月君!今日部活終わったら、このお店行かない?すっごく人気のスイーツがあるんだって!」
「あぁ、構わないぞ。あ、でも歩夢、食いすぎるなよ?来週、ライブ控えてんだからよ」
「むぅー!皐月君は相変わらず女の子の気持ち分かってないー!」
歩夢は頬を膨らませ、俺にそう言ってきた。
「相変わらずの仲良しっぷりですね…皐月先輩と歩夢先輩…」
「あはは…でも、浅霧君と歩夢が結ばれてホントに良かったよ」
と、それぞれの形で俺たちの事を祝福してくれた
「あははっ、冗談だって、歩夢が満足行くまで付き合うよ。それに俺も今甘いもの食いたい気分だしな」
「ほんと!?なら、早く行こ!そのお店凄く人気だから、混む前に、ね!」
「クス…たくっ…ホントにお前は…でもそういう所も好きなんだよなぁ…」
「皐月君今何か言った??」
「んーん、なんでもないぞ。ほら、早く準備していこうぜ。
「うんっ!あ、その前に皐月君!」
「ん…?なん…んっ?!…」
突然、俺は歩夢に唇を奪われてしばらくキスをした状態が続いた
「じゃ、行こっか♪」
「クス…あぁ、ぞんじゃ行くか」
こうして俺達は、店に向かった
あ、多分まだ続く