ツツジの花は何れ咲く   作:カラスの餌

8 / 17
睡眠なんだよなぁ元気の源は


8話

あれは…7年前の秋頃だった…。俺は両親に捨てられ1人何も考えずにさ迷っていた。小学生の子が喧嘩で出来るレベルでは無い怪我を負いながら…

あとから知ったのだがこの時既に母さんは亡くなっていたらしい。

ただ1人ずっと歩いていた。目的もないままただ…

俺は気付いたらある場所に辿り着いていた。

それは小さな公園だった。

俺はその公園の中に入りベンチに座りただただ時間が過ぎるのを待っていた。

 

 

ヒュゥゥ……

 

風がとても気持ちよかった。静かな空間に流れる風のおかげで俺は少しは考える事ができていた。このままいっその事俺も風になりたいな…ってそう思ったこともあった。

人も俺以外にいなかったし、まるでこの世界には俺しかいない空間みたいで面白かった

 

「優しいな……風って……」

 

そのまま俺はしばらく風に当たっていた。なんと言うか傷が少し癒された気がしたからだ。

 

 

そして…

 

 

そう…その時だった…俺は1人で何も考えずに座っていた時の事だった。1人だけの世界から突然現実に引き戻された。

 

「ねぇ…」

 

「……?」

 

「傷…どうしたの…?目とか…大丈夫…?」

 

最初は誰に話しかけているのかはわからなかったが、周りを一旦見て俺とこの子以外の人がいないとわかった時ようやく俺に話しかけているんだと理解した。

 

「うん…大丈夫…だよ…それに君も1人なの…?」

 

「ううん、私は友達を待ってるのっ!あなたは?」

 

「俺…?俺は…その…ぼーっとしてるだけだよ」

 

「誰か…待ってないの?」

 

「うん…待ってる…いや待ってるかもしれない…」

 

「お友達やお母さんやお父さんは…?」

 

「いないよ…」

 

ただ笑って話しかけられてたら俺はこの場から離れていただろう。しかしその子は本気で俺の心配をしていた。

でも逆に知らない子に自分の家庭事情を話すのも申し訳なかった。

その後も俺達はしばらく話した。お互い何が、好きなのか普段何してるか?とかその子から出てくる言葉は俺にとって空想上の世界だった。

同時にこれが普通なんだなって思った。

 

そしてしばらくして話題がなくなり…落ち着いた頃に俺は

 

「……じゃあ…俺行くから……またね…」

 

「ま、待って!!名前!あなたの名前を教えて!」

 

そう、この時に嘘をついて無ければ、俺はきっと…もっと早くあいつと再会していたと思う。

 

「唯月…」

 

「唯月…君…唯月君ね!覚えた!また今度ここで話そうね!」

 

そう言って元気いっぱいに俺を見送ってくれたっけ。そして俺は自分の足で、親戚のうちに向かい引き取って貰ったんだっけな。

 

__________

 

 

 

「あの時…ベンチに座ってる俺に声をかけたのはお前だったんだ…」

 

「えっ…?」

 

「唯月…この名前…覚えているか?」

 

その名前を口にした瞬間歩夢は少し悩んだ顔をした…しかし直ぐに思い出したかのように。

 

「う、うん…1回しか会ったことない…でもすごく印象的だったよ…凄い傷だからけで…目なんか…って…目…?」

 

ハッとしたかのように、俺の方を歩夢は見たそして歩夢の目から涙が溢れていた。

 

「これの事か…」

俺は自分の右目を歩夢に見せた。するとさらに

 

「そんな…まさか…」

 

歩夢は俺の近くにより傷を確かめた。

 

「もしかして…皐月君が…あの時の……?」

 

「あぁ…そうだ…あの時お前に救われた…唯月…いや…浅霧皐月だ」

 

「良かった…生きててくれて本当に良かった…あの後から私ずっと…ずっと気にかけてたんだよ…?」

 

「俺も…名前は聞きそびれてお前の名前は知らなかったが…忘れることは無かった…しかしここに来てから少しだけ違和感を持つようになったんだ…。」

 

ようやくお互い過去にあっていることを思い出した俺達。この数年間互いが互いを忘れられなかった。増しては俺に関してはこいつには酷い態度をとったもんだ。

 

「すまなかったな…色々酷い態度を取って…」

 

「ううん…良いの…だって皐月くんいつも…いつも辛そうな顔をしてたもん…きっと何かあるんだろうなって…あの子に似てるって何時も思ってた…」

 

「そうか……なら尚更すまなかったな…」

 

「ねぇ〜歩夢〜浅霧くーん!まだー!!」

 

2人だけで、ゆっくり話してたら扉の向こうが何やら騒がしく、あのいつものやかましい高咲の声が聞こえた。何時もならうるさいと思うが、何故かとても居心地良く感じた。

 

「私が声掛けに行ってくるね」

 

歩夢は動けない俺を気遣い自分から立ち上がりドアへ向かって歩き出した。そして開けた瞬間…

 

「皐月先輩っっっ…!!」

 

「え、ちょ…しず…?!」

 

「よかった…本当に……助かって…」

 

物凄い勢いで泣きながらしずくが俺に抱き着いてきた。そして距離が近すぎるあまり女子特有?のいい匂いが俺の鼻の中に入ってきた。

って…それどころじゃない!何故こんな…

 

「お、おい…顔上げろよ…俺は平気だ、そしてお前が無傷なのが何よりだ」

 

「………だって…だって…先輩……うあぁぁんっ!」

 

「ったく…泣き顔を隠せないようじゃ、女優までの道はまだまだだな…でも…本当に無事でよかった…しずく…。」

 

「しずくちゃん…皐月さんの事…好きだもんね…」

 

「「「「え?」」」」

 

突然璃奈が、そう言い出し場は一瞬で静まり返った。璃奈はあれ?と言った顔をしていたが、周りは動揺を隠せていなかった。当のしずくもかなり動揺して慌てていた。

 

「り、璃奈さん?!な、ななな何言ってんの?!」

 

「え?だって…しずくちゃん…皐月さんと話してる時ちょっと顔赤いし…」

 

「そうなのか?」

 

「ち、ちちちちがちます!」

 

「「「そうなんだ〜」」」

 

「はは………って?……」

 

……あれ?……俺今笑わなかったか…?

 

「どうしたの…?浅霧君…?」

 

高咲が頭にクエスチョンマークを浮かべながら俺に聞いてきた。

 

「い、いや…なんでもない…ただ……あれ……?」

 

突然頬が生暖かい水っぽい何かが触れた気がした。あれ…

俺まさか泣いているのか…?なんでだろうどうしてだろう…。

なんで俺は泣いて…

 

「皐月君どうしたの…?急に…」

 

「な、なんでもない…っけどっ…なんか…涙が出るんだよ…悲しいとかそんな気持ちじゃない…暖かくてすごく優しい…何かを…」

 

「皐月君……それはきっと…嬉しくて泣いているんだよ?」

 

「え…?」

 

「ふふっ、私もね…今すっごく嬉しいの。皐月君と再会できて…それにまたこうやってお喋りができて…私すっごく嬉しいっ。皐月君は…どう?」

 

「俺は……」

 

今まで1人だったから分からない…そう言おうと思ったが、違った。

あの時お先真っ暗な俺に、声を掛けて…自分の事のように心配してくれて、そして笑って…俺は…そんな相手とまた話せて…俺は…

 

「幸せ…だ…。」

 

「そっか。なら同じだね、私達の気持ちは。」

 

「そうだね!歩夢の言う通りだね!また浅霧君が部活に顔を出してくれることだし!」

 

「浅霧さんが復活したら、お祝いでもしましょうよ!どうですか?!皆さん?!」

 

「せつ菜ちゃんナイスアイデア!!」

 

「……ふっ……」

 

なんだ。俺って…1人じゃないんだ。よく周りを見たらこんな仲間に恵まれていたのかよ…。全くホントに馬鹿だなあ…でも…嫌ではないな。唯一俺を拒絶しなかったこの同好会のメンバー…そして歩夢…。

母さん…やっと見つけたよ…俺の居場所…

 

「くっ…ふふふ…ははははっ!」

 

俺は心の底から皆と笑った…。これからもずっと笑顔でいたい。俺はそう思った。しかし…俺はある1人の同好会のメンバーがいないことに気づいていなかった…。

 

___________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事故から数日。皐月先輩は辛いリハビリの果てついに退院を果たした。

本来なら喜ばしいことでお祝いを言うべきことけど、私はお祝いを言わずに皐月先輩に会わないで、1人教室に残っていた。

 

「先輩……っ…」

 

私は先輩の事が好きだ。でもきっと…先輩は私の事に興味なんかない…本当は二人で話したいし…一緒に出掛けたい…でも先輩は…きっと…

 

「っと…ここか…1年普通科…にしてもホント遠いな…」

 

突然聞きなれた声が聞こえた。私にとってとても大切な人の…

 

「かすみのクラス…って何処だよ…」

 

「っ…」

 

廊下からは何やら私を探してる声が聞こえた。ここにいますって言いたいけど私は怖くて動けずにいた。先輩は…私の事なんか好きじゃないし興味もない…そう思うととても動けなかった。

 

「まぁいいや…なんかこっちは人の気配がする…ここか…?」

 

「え?ちょ?」

 

「失礼しますっと…」

 

なんと、先輩はドンピシャで私のいる教室を当ててそのまま扉を開いて入ってきた。そしてそこには何時もと違う先輩の姿がそこにあった。

 

「……かすみ…探したよ…」

 

「へ…?」

 

なんと先輩は隠していた方の目を出していたのだ。異様に長かった右側もしっかり切られていて前よりもかっこよかった。

 

「あの…先輩…目…見えてるんですか…?」

 

「ん?…あぁ見えるぞ。切られたのは瞼だからな。眼球にはなんも支障はないぞ…ってもしかして怖がらせたか…?」

 

「いえ…そんな…!ただ…前よりもかっこよくなってて…」

 

突然こんなかっこよくなった先輩を見ると私も、気が気ではなかった。

 

「……ありがとな。かすみ…」

 

「え?…って先輩?!」

 

突然先輩は私の頭を撫でてきた。先輩の手の温度が私の頭に伝わってきた。

 

「お前…最後まで俺の心配…してくれたんだよな…?本当にありがとな…」

 

「は、はい……。」

 

とても恥ずかしかったけど、私はすごく嬉しかった。大好きな先輩にこうして頭を撫でてもらってお礼を言われてすごく…嬉しかった。

 

「そしてもう1つ…俺は…お前の事心の底から…可愛いって思ってる…だからさ、また俺に可愛いお前の姿見せてくれよ…」

 

「えっ……ほ、本当…ですか?先輩…」

 

「ここで嘘を言うやつはいない。まじでは俺だぞ…嘘をつくように見えんのかよ…」

 

「っ……っ先輩っ…せんぱぁぁい…」

 

「うわっ…おま………ったく…しょうがないな…」

 

私は嬉しさのあまり先輩に抱きついた。最初は慌ててたけど、先輩は拒絶すること無く優しく私を抱いた。この時間がずっと続けば…そう思ったけど…私にも新しくやらなきゃいけないことが出来た…

 

 

…それは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……先輩に可愛いを教えて、笑顔にすること!!

 

 

 

 

 

 




雨すごいね最近
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。