特急ロンパ―冤罪の殺人鬼とコロシアイ特急列車―   作:ノドクル

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走り出した絶望特急

 【コロシアイ学園生活】

 

 【人類史上最大最悪の絶望的事件】の中でもその象徴として有名なのがそう呼ばれる惨劇だ。

 

 希望ヶ峰学園のクラスメイト達が【超高校級の絶望】と言われる存在によって旧校舎に監禁、コロシアイをさせられた事件……その生き残りは半分にも満たなかったらしい。

 

 だけどその【コロシアイ学園生活】で【人類史上最大最悪の絶望的事件】の首謀者【超高校級の絶望】は死に。

 

 そしてそれと入れ代わりに誕生したのが【超高校級の希望】で、その人が生き残りと一緒に再建したのが俺達がスカウトされた希望ヶ峰学園。

 

 あらゆる歴史の分岐点と言われてる事件、学校でも習う有名な話だ。

 

「おいこら……まさか、今のボク達がそれと一緒だってのか?」

 

「状況は確かに似てるけど、即座にイコールで結ぶのはどうかと思うよ」

 

 だけどいくら有名とはいっても、あくまでもそれは昔話のようなもの。

 

 俺達がコロシアイに巻き込まれたなんて、あまりにも荒唐無稽で到底信じられない。

 

 だから面と向かって伊方のその考えに反論したのは安田と神崎さんだけだったけど、実際は俺達のほとんどが同じ気持ちだった。

 

「いいや、違うな。少なくともここは希望ヶ峰学園の校舎ではない……色々と過去とは違うと思うべきだろう」

 

「そ、そういう話なのかぁ?伊方っち……」

 

「なら聞くが、お前達はこの現状をどう思っている?単なる拉致ならばこんな部屋は必要ない、悪意がないなら逆に悪趣味極まりないな。希望ヶ峰学園にスカウトされた人間をこんな形で監禁するなど」

 

 伊方の言葉に今度は誰も答えない、いや、答えられなかった。

 

 確かに誘拐されただけとかドッキリだとかそんな話だとは思えない。

 

 結局のところ俺達は、伊方の考えを認めてしまうのが怖かったんだ。

 

「ぬううっ!とにかく今の状況が喜ばしくないのはわかったぞ!ならばこの窓を叩き割ってでも脱出を……吾も今のままなど我慢出来ぬ!」

 

 誰も何も言えないまま空気が重くなるような嫌な沈黙が何秒経ったか……それを破ったのは椅子を持ち上げた石原のそんな言葉。

 

「なっ、ちょっと石原……」

 

 石原がなぜか普通に扉から出るんじゃなく、窓を割るという行動に出ようとした事に俺が疑問を投げかけようとした、その時。

 

 ピンポンパンポーン

 

 ソレは、聞こえてきた。

 

 

「本日はご乗車いただき、まことにありがとうございます!」

 

「今より希望発絶望行きの特別列車、ディスペアー・エクスプレスが発車いたしますので、揺れにお気をつけくださーい!」

 

 

 寒々しいほどの軽い声。

 

 聞いただけで鳥肌が立つその声について何かを考える余裕はない。

 

 ガクンッ!!

 

 その放送の直後、激しい揺れが俺達を襲ったからだ。

 

「おっと……!」

 

「きゃあっ!」

 

「揺れに気をつけろって、これは揺れすぎっしょ!?」

 

「にゃあああっ!?」

 

「ぐああああああっ!?」

 

 まともに立ってられないほどの揺れに周りは滅茶苦茶な有り様だ。

 

 咄嗟に窓枠を掴んだり、慌ててテーブルの下に隠れたり、なすすべもなく倒れたり、近くにいる誰かにしがみついたり……

 

「いたっ!?」

 

 放送に気をとられていた俺はなすすべもなく床に倒れ込んでしまう内の一人で。

 

 

「ぐっ!」

 

 さらに誰かに蹴られたのか脇腹に痛みが走る……くそ、さっきの陸海じゃないけど踏んだり蹴ったりってまさにこの事だな……

 

 そんな事を考えている内に、激しい揺れは静かなそれでいて規則的な揺れに変わっていく。

 

 そして少し待ってみても、再びあの激しい揺れはやってくる事はなかった。

 

「収まった、みたいだね。咄嗟に引っ張っちゃったけど大丈夫だった?」

 

「は、はい……」

 

「まだ目が回ります……」

 

 テーブルの下から顔を出した下田が、同じようにテーブルにいた霧ヶ島さんと岩崎さんに声をかけている。

 

 咄嗟に二人を助けたのか……なんだかただ倒れただけの自分が情けなくなってくるな。

 

 とりあえずいつまでも倒れて陸海みたいに追い打ちは受けたくない……相当強い力で蹴ったのかジンジン痛む脇腹を押さえて俺は立ち上がった。

 

「先ほどの放送、そして今も続くこの微かな揺れ……やはりこれは列車のようだな」

 

「間違いないね……いたた、もう少し安全運転でお願いしたいよ」

 

「お、おおい、大丈夫かぁ!?」

 

伊方と神崎さんの話を遮るように陸海の叫び声が響く。

 

「どうかしたのか!?」

 

 慌てて陸海の所に駆けつけた俺達が見た物、それは……うつ伏せに倒れて頭の辺りから血を流している石原の姿だった。

 

「い、石原!?」

 

「ど、どうして石原君がこんな……!」

 

 床に敷かれたカーペットが広がっていく血で赤く染まっていく。

 

 まさかこれが、伊方の言ってたコロシアイなのか……!?

 

「うわああああっ!なんだよこれなんなんだよぉ!!」

 

「これはスクープですよ!早速写真を撮らないと……!」

 

 安田が泣き叫んだり、墨染が写真を撮ったり、沈黙の次はパニック状態……

 

 だけどそれを誰も責められない……だってあの倉庫で凄惨な現場を見た俺だってこんな現実を突きつけられたら。

 

「……おい落ち着け!生きてんぞそいつは!」

 

 そんなパニック状態を撃ち抜くように、クロードが叫ぶ。

 

 ……えっ?生きてる?

 

 クロードに言われて改めて倒れてる石原を落ち着いて見てみると……動いてる、な。

 

「呼吸もしているみたい……だけどどうしてこんなに血が?」

 

「……くだらない、それは鼻血よ」

 

 物述さんの疑問に吐き捨てるように答えたのは笹山さん。

 

 鼻血って……こんなに出るものだったのか?

 

 

「は、鼻血ぃ?」

 

「……揺れた時、美影ちゃんが石原君に抱きついたっぽいね」

 

 ……そういえばさっき美影さんの悲鳴の後にもっとすごい悲鳴が聞こえてたな。

 

 まさかあれ、美影さんに抱きつかれた石原の声だったのか!?

 

「にゃああっ……しっかりしてカイちゃん!」

 

「えーっと、つまり?団居が抱きついたからカイは鼻血出して倒れたって感じ?」

 

 平野さんの出した結論……どうやらそれが正解らしい。

 

 ……俺達をこんなパニック状態にした張本人は、相変わらず倒れたままだ。

 

「ぐ、ぐぬっ、ぐぬうっ、あれは、あの柔い感触は……ぐおおうっ……!」

 

 そういえば女子と一緒にいる空気だけで、大変そうだったな。

 

 耐えられないって窓壊そうとしたのも、多分そのせいだろうし……

 

「人騒がせなやつだなこいつ!!」

 

「ま、まあまあ、大したことじゃなくてよかったって思おうよ」

 

 安田は怒ってるみたいだけど下田の言う通りだ。

 

 誰かが死んだとか、そういう訳じゃないならそれが一番じゃないか。

 

 安堵と呆れを含んだ空気は状況は変わってこそいないけど、さっきまでの重苦しいものよりは断然いい。

 

 そんな風に思ってたのに。

 

「なーんだ、早速惨劇の再現って思ったのに……電池無駄にしちゃったじゃないですか」

 

 一人だけ、墨染はそんなふざけた事を本気で言っていた。

 

「お前……!」

 

 まるで石原に死んでいてほしかったと言いたげなその発言を聞き流す事なんてできない。

 

 俺は墨染に詰め寄って今の言葉を撤回しろと言おうとして。

 

 

「いやー、盛り上がってるみたいだね!」

 

 

 その足を、縫いつけられたようにその場から動かせなくなった。

 

 それはここにいた誰とも一致しない声。

 

 だけどさっき間違いなく聞いた声。

 

「い、今の声……誰ですか?」

 

「ボクだよ!」

 

 その声が聞こえてきた方に皆が注目する。

 

 それを待っていたかのように、このサロンの両端にある扉の一つ……みんなが来た扉とは逆側にある扉の前に、ソイツは現れた。

 

「全くもう!いきなり備品を汚さないでほしいよ!清潔にはクマ一倍厳しいこのボクがどれだけ苦労してると思ってんのさ!」

 

「最、悪……」

 

 物述さんが頭を抱えて発したそれはきっとその場にいた全員の一致した意見。

 

「……ふん、まさか本当にこうなるとはな」

 

 伊方でさえ、一筋とはいえ冷や汗を流している。

 

 少し弛んだ空気をあっという間に緊張したものに変えたソイツ。

 

 それは白と黒に色が分かれたクマのぬいぐるみ。

 

 きっと誰もが、見た事があるはずだ。

 

 【人類史上最大最悪の絶望的事件】について習う時、必ずその姿はあったんだから。

 

「あっ、自己紹介がまだだったね!」

 

「ボクはモノクマ!このディスペアー・エクスプレスの車掌兼運転士兼機関士兼マスコットなのだ!」

 

「よろしくね!」

 

 モノクマ。

 

 絶望の象徴として生み出された悪魔が、絵でも映像でもない実物としてそこにいたんだ。

 

「モノクマ!まさか本物を見られるとは思いませんでした!」

 

「コラー!ボクを撮りたかったら左斜め45度からのアングルだけだよ!」

 

 ふざけているとしか思えないモノクマと墨染のやり取り。

 

 それなのにさっきまで墨染に怒りを抱いていた俺はただそれを見ている事しか出来なかった。

 

 足が震えて何もせずにやり過ごす事しか考えられない。

 

「てめえか、このくだらねえ茶番のフィクサーは」

 

「ふぃく、さー?」

 

「確か黒幕って意味だった感じかな……まあ、実際あれが黒幕っしょ」

 

「そ、そんな、ボクが黒幕だなんて……こんなにも真っ白なのに!」

 

 そう言ってモノクマは右半身だけを俺達に見せる……完全に馬鹿にされてるとしか思えないのにどうして。

 

 こんなにもこの会話で地雷の埋まった場所を歩いているような感覚に陥ってるんだ。

 

「いやいや、左半身は真っ黒黒すけじゃんかよぉ……!」

 

「うぷぷ、バレちゃった!」

 

「……とりあえず聞きたいんだけど」

 

 皆が探るように、機嫌を損ねないように慎重に言葉を選んでいるのがわかる。

 

 それはモノクマが現れた事で確定してしまったからだ。

 

「何かな?スリーサイズはトップシークレットだよ?」

 

「あなたの目的は?私達を列車に監禁して何がしたいの?」

 

「何って、ボクが出てきたからにはもちろんアレしかないよね!」

 

 ああ、それでもまだ心のどこかで間違っていてくれと祈ってる自分がいる。

 

「コロシアイ、ってやつですよ!」

 

そんなもの、無意味なのに。

 

「コロシアイって……本当にあのコロシアイ学園生活みたいな事しろって言うのかよぉ!?」

 

「そうです!このディスペアー・エクスプレスから下車したいならオマエラの中の誰かを殺してください!」

 

 コロシアイのルール、本を読めばいくらでも知る事が出来るそれ。

 

 だけどモノクマの口から言われるそれは身体中に走る寒気が桁違いだ。

 

「もちろんコロシアイが起きたら学級裁判をやるけどね!はい、ここで問題です!学級裁判とはなんでしょうか!」

 

 学級裁判。

 

 このコロシアイが何よりも悪趣味だとされる最大の理由。

 

「学級裁判。コロシアイが起きた場合その犯人、クロを見つけだすための話し合いが行われる。その時正しいクロを見つけ出せたらクロはおしおき、処刑される」

 

「はい伊方クン大正解!優秀賞としてモノクマシールをプレゼントしまーす!」

 

 学級裁判は一緒に過ごしてきた人が殺されて、その悲しみを消化しきれないままにお互いに疑って糾弾しあう。

 

 さらに命懸けなのはクロだけじゃない。

 

 当てればクロが処刑される、外したらクロ以外のシロ全員が処刑される。

 

「……というわけでシロもしっかり頑張らないとあっという間に全滅だからね!」

 

 どちらにしても誰かが死ぬように出来ている、それが学級裁判なんだ。

 

「あ、あなた……そんな事が許されると思ってるんですか!?」

 

「はい?」

 

 完全にその場を支配していたモノクマ……そんな相手に抗議の声をあげる人がいた。

 

 モノクマの目の前まで行って叫んでいるのは……岩崎さん。

 

「あなたは自分を車掌だと言いましたね!だったら乗客の安全を第一に動くべきです!それが自分達車掌という存在です!」

 

 きっと彼女は許せなかったんだ、車掌として認められているからこそ列車を舞台にコロシアイをしようとするモノクマが。

 

「あなたがやろうとしている事、同じ車掌として見過ごすわけにはいきません!」

 

 それは、こんな状況でさえなければきっと岩崎さんのプライドとかそういうものを称賛する場面なんだろう。

 

「だから、今すぐコロシアイなんて撤回……」

 

 だけど、岩崎さんは忘れてる。

 

 相手はコロシアイを要求してくるような、異常な存在だって事を。

 

「……はああああ」

 

 それは、ため息をついたんだと思う。

 

 俺はその瞬間、モノクマから得体の知れない、何かを……確かに感じ取った。

 

「……ウザイ」

 

 モノクマの静かなその声に岩崎さんの顔がひきつる。

 

 彼女も気付いたんだ、自分がモノクマの機嫌を損ねた事に。

 

「キミ、ウザイ。スッゴくウザイよ……だからさ」

 

 そしてそれが。

 

 

「死んで、見せしめになりなよ」

 

 

 自分の死を意味する事に。

 

 

※※※※

 

 

「……えっ、なん、です、か……こ、れ?」

 

 ポタポタと流れる新しい血がカーペットを濡らしていく。

 

 岩崎さんは信じられないという目をして、【俺から】溢れ出す血を見ていた。

 

「あっ、ぐっ……」

 

「翼!!」

 

 平野さんが俺達に駆け寄ってくる。

 

 それはそうだ、咄嗟に岩崎さんを庇った俺の前腕を……尖った刃物が掠めて、肉を骨が見えるぐらい抉り取っていたんだから。

 

「あ、がっ……!」

 

 遅れてきた痛みが身体中を駆け巡る。

 

 呼吸がうまくいかない、痛みを紛らわせたくてその場をのたうち回る事しか出来ない。

 

「暴れないで!」

 

 平野さんが自分が着ていたシャツの袖を千切ると、俺の患部を縛っていく。

 

 あっという間に血でぐしゃぐしゃになったシャツに、俺は汚してしまったなんて場違いな事を考えていた。

 

「誰でもいいからタオルとかありったけ用意して!!」

 

「は、はい!!」

 

「わ、わかったよ!」

 

 下田と立木さんがサロンを出ていくのが微かに見える。

 

 そしてフラフラと揺れる俺の目は……腰が抜けたのかへたりこんだ岩崎さんを捉えた。

 

「ぅ、あっ……」

 

 さっきモノクマにはっきりと意見した岩崎さんがこんなにも顔を青白くしてガタガタと震えている。

 

 もし自分があのままだったらどうなるかって、想像したのか……

 

「うっ、ぐっ……」

 

 俺もさっきまであんな風に震えてたんだよな……

 

 昔から向こう見ずにも程があるとか蛮勇だとかって、言われてたけど……

 

「無事でっ……良かった岩崎さん……」

 

 こうして彼女を助けられたなら、この向こう見ずな部分も悪くないよな。

 

 目を見開いた岩崎さんの瞳から溢れた涙を見つめながら、俺は彼女を安心させたくて脂汗を流しながら笑ってみせた。

 

「随分と杜撰な見せしめだな」

 

「しかも理由がウザイって堪え性なさすぎじゃない?あっ、まさかこれでまたウザイって変な事しないよね?」

 

 伊方や神崎さんの言葉にモノクマは沈黙を貫いている。

 

 いったいそれはなんでなのかなんて考えていると、後ろから大声が聞こえてきた。

 

「むっ、吾は……ぬおおおっ!?なんでクマがおるのだ、皐月殿はどうされたぁ!?」

 

 はは、石原も起きたみたいだな……

 

「またうるさいのが……とにかく!ボクに逆らったらどうなるかは示したので見逃してあげるよ岩崎さん!」

 

「ちょっと待った。こんな癇癪また起こされたらたまらないんだけど」

 

「うるさいなぁ!わかったよ、もうこんな形ではおしおきはしないよ!ルールにも明文化します!」

 

 モノクマに見えないように神崎さんが俺達にVサインを見せる。

 

 そうか、またこんな事にならないように……

 

「それではコロシアイ特急ディスペアー・エクスプレスの旅を存分にお楽しみくださーい!下車したかったら殺すしかない旅だけど!うぷっ、うぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷ……」

 

 モノクマは消えた。

 

 後に残されたのは大なり小なり、困惑と恐怖を植え付けられた俺達だけ……

 

 神崎さんがこれ以降のモノクマの見せしめを阻止する事には成功したけど、状況は何も変わってない。

 

「ミ、ミーちゃん達、どうなっちゃうんだにゃあ……?」

 

「まさかコロシアイだなんてね……ああもう、過去の話だって思ってたのに」

 

「ううっ、記憶ないだけでも混乱してるってのにぃ……」

 

「っ、うわあああああんっ!!」

 

「えっとえっと……」

 

 痛みでよくわからないけど、混乱はまだまだ収まりそうにはなかった。

 

 コロシアイ、そしてモノクマが本気なのは今ので皆がわかったはず。

 

「ちっ、とにかくマズいなこりゃ」

 

「下車したかったら殺すしかない……ふん、これを信じて事件を起こす存在が出るかどうか」

 

「……くだらない話」

 

「とにかく翼を治療しないと。何か話すならその後にする感じで」

 

 何人かはまだ冷静なのが、せめてもの救いかもしれない。

 

 俺も治療してもらったら、出来る事をしよう……そんな乱れる思考で考えていると。

 

 

 

「はい、提案です!まずは一番危険な皐月さんを拘束しましょう!」

 

 そんな場違いな明るい声が一際大きく響いた。

 

 

「優里……それどーいう意味なわけ?」

 

 平野さんの視線の方に顔を向ければ、墨染がニヤニヤと笑っている。

 

 ま、まさか、こいつ……この状況で?

 

「ああ、皆さんは知らないから無理もありませんか……」

 

 やめろ、やめてくれ……今皆が冷静じゃないんだぞ。

 

 そんな状況でそれを言えばどうなるかぐらいお前だってわかるだろう。

 

「皐月さんって、今巷を騒がせている……」

 

 やめろ……やめろよ!

 

 お前はコロシアイを助長したいのか!?

 

 そんな俺を一目見て、墨染は笑う。

 

「三十人虐殺犯……〔超高校級の殺人鬼〕なんですよ♪」

 

 そして軽口を叩くように爆弾を落とした。

 

「何考えてんの、この子……」

 

「コロシアイだなんて言われてもボク達は人を殺した経験なんてない善良な一般人。きっと躊躇いが生まれます」

 

「でも殺人鬼の皐月さんにそんなストッパーがあるわけないですよね♪安全のためにもそんな危険人物はどうするべきでしょうか?」

 

 ふざけるな、ふざけるなよお前……自分が何をしてるのかわかってるのか?

 

 安全のためにも?そんな殊勝な考えで言ってるわけじゃないのは見え見えなんだよ!

 

「墨、染ぇ……!」

 

 怒りのままに墨染を睨み付ける。

 

 だけどそれは今の状況では、最悪の選択だった。

 

「ああ、怖い怖い♪皆さん見てくださいよあの目!【殺してやる】って言わんばかりじゃないですか♪」

 

「ぁ……」

 

 やら、れた……今、俺は、確かに墨染に対して……殺意を、抱いてしまった。

 

 それこそ殺人鬼にふさわしい、必ず殺してやるという殺意を。

 

 空気が、冷えていく。

 

 それは俺に対して向けられる、視線が冷たくなってきたからか……

 

 ああ、やっぱり……どこに行っても……

 

 

 俺は、殺人鬼でしかないんだ。

 

 

PROLOGUE

 

【絶望列車出発進行!】

 

END

 

生き残りメンバー

 

〔殺人鬼〕皐月翼

〔幸運〕伊方五右衛門

〔???〕陸海空助

〔監督〕安田順

〔ダンサー〕笹山ミチル

〔新聞部〕墨染優里

〔卓球選手〕石原カイ

〔読書家〕立木亜里沙

〔ベーシスト〕平野夢

〔心理カウンセラー〕神崎真夏

〔演劇部〕下田慧

〔放送委員〕美影団居

〔小説作家〕物述かぐら

〔車掌〕岩崎和音

〔ガンマン〕クロード・イーストウッド

〔巫女〕霧ヶ島司

 

以上十六名。

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