特急ロンパ―冤罪の殺人鬼とコロシアイ特急列車― 作:ノドクル
(非)日常編その一……そして誰もいなくなった
STATION1
【絶望へのスタートラインを越えて】
(非)日常編
俺は、何も言えなかった。
墨染に俺が殺人鬼だって事を暴露された……きっと俺は孤立するだろう。
その証拠に激しい痛みでも打ち消せないぐらいにわかってしまう、周りの見る目が変わったのが。
「にゃ、にゃうう……翼ちゃんが殺人鬼……」
「そ、そんな危険な奴がなんで希望ヶ峰にスカウトされてるんだよ!?」
「はぁ……どうするのさ、こんな空気にして」
怯え、嫌悪……慣れたくもなかったそんな反応。
それは結局どこに行っても変わらないんだと突きつけられているみたいで。
「ま、待ってください。皐月さんは私を助けて……」
「甘いですね!そうやって信用を得ようとしてるのかもしれませんよ?殺した中にはお友達もいたそうですけど、今の岩崎さんみたいに助けられて本性に気付けなかったのもしれませんね」
か細い反論も墨染にかかれば殺人鬼の巧妙な計算にされてしまう。
それは殺されたあいつとの友情まで否定されるようで、本音を言えば掴みかかってしまいたい。
だけど墨染に殺気を向けてそれを逆手に取られてしまった俺は、さっきみたいになるのを恐れて動けなかった。
「マ、マジでぇ?」
「先程の事はそこまで考えていたと言うのですか!?」
違う、違うんだ……全部でたらめだ、俺は誰も殺してない、岩崎さんを助けた事にそんな裏なんてない。
だけどそれを声高に主張して信用してもらえるのか?
そんなの無理だって、俺が一番よくわかってるだろう。
だから俺は……信用してくれる人を探しに来たなんて言いながら名乗るのに躊躇して、俺を知らない事をみんなに期待してたんじゃないか。
「な、何の話をしているのだ?吾には全く状況が……」
「ですからボク達の中に怖い殺人鬼がいるんですよ♪だから隔離を提案してるんです」
もう、いいかと諦めが心に広がる。
隔離されたってこの部屋を見る限り独房に比べたらきっとどこでも快適だろう。
それにコロシアイの中で自分の身を守るなら、むしろ隔離してもらった方がいい。
最もこんな状況で殺人鬼に手を出そうなんて考える人間はまずいないだろうけど。
そんな後ろ向きな考えが全身を支配して、隔離を受け入れようと口を開こうとして……ピタリと口を塞がれた。
「優里、そこまでにして」
それが俺の傷を手当てするためすぐ近くにいた平野さんの手だと気付くのに、俺は少し時間がかかった。
彼女のその行動の意図が、わからなかったから。
「はい?そこまでってなんです?」
「今翼がどんな状態かわかるっしょ?これ以上追い詰めるような真似しないでって言ってんの」
「私も同意するわ。そもそもあなたの話とかどうでもいいのだけれど」
平野さんに続いて笹山さんも墨染の言葉を切って捨てている。
墨染は信じられないと言いたげに口をパクパクさせているけど、多分俺も似たような顔をしているはずだ。
「えっと、お二方は状況を理解出来ないんですか?」
「理解出来てないのはそっちでしょ。こんな状況でそれ言ったらどうなるか想像出来なかったの?それともわかっててした?」
「な、何を言ってるんですか!ボクはそこの殺人鬼の危険性を指摘しただけですよ?」
「ふん、そうして疑心暗鬼を深め、いざコロシアイが起きたらそれをスクープする気だろう……くだらん事を」
「なっ、い、言いがかりですよそれは……!」
神崎さんや伊方にまで反論された墨染の顔から笑みはとっくに消えていて、さっきまでの勢いが萎んでいくのがはっきりわかる。
俺も今の状況を上手く飲み込めない……いったい、どうなってるんだ?
「じゃあ聞くけど、だったらなんでさっきからもう一人の殺人経験者について何も言わないのかな?」
神崎さんが指差す先にいたのは苦虫を噛み潰したような顔をしているクロード。
きっと俺を巻き込むなって思ってるんだろうなあれ……
「相手がテロリストとはいえクロード・イーストウッドは確かに人を殺している。お前の主張だと奴も隔離対象のはずだが?」
「そ、それは……クロードさんが殺人経験者だなんてわかりきってるじゃないですか!それに、殺人鬼である皐月さんの方が危険……ですし」
もう状況は完全に逆転していた。
さっきまで俺を追い詰めていたはずの墨染が今は逆に追い詰められていて。
「ふん、今はそういう事にしてやるが……あまり調子に乗るとここで死ぬぞ、墨染優里」
「くっ……こ、殺されてから後悔しても知りませんからね!」
伊方の言葉が決定打だったのか墨染はそう吐き捨てると、逃げるように出ていく。
「……」
もう隔離されるしかないと思ってたのに、俺は庇ってもらえたのか?
平野さんを見ると、彼女は視線に気付いたのか俺を見て安心させるみたいに笑みを返してきた。
「い、意味わかんねえ……なんで殺人鬼が庇われてんだよ!?」
隔離を提案してきた墨染はいなくなったけど、それは俺が受け入れられたのを意味しない。
叫んで出ていった安田の存在が、そのいい証拠だ。
「ちょ、安田君!」
「やめておけ神崎、この数時間でも奴が話を聞くような男でないのはわかる。それにお前には任せたい事もあるからな」
咄嗟に安田を追いかけようとした神崎さんを伊方が止めている。
それを横目に見ながら俺は安田の言葉を思い返していた。
安田の言う通りだ、なんで俺が庇われたのか自分でもその問いに答えが出ない。
「むううっ、状況はわからぬがとりあえず……吾はこの血だらけの服を着替えてくるとしよう!」
「ミ、ミーちゃんも、とりあえず探索の時見つけた客室に行くにゃあ」
「僕もそうするわぁ……」
「部屋ね……一応見ておきましょうか」
みんなが次々と出ていくのだって、部屋を見るより殺人鬼から離れたいって気持ちがあるからなのは経験からわかる。
だからわからない。
「平野、俺も一度部屋を調査する。皐月の治療はお前に任せるぞ」
「はいはい、りょーかい。それにしても優里にはまいったねぇ」
伊方に言われたからって治療するって今もこうして残ってる平野さん。
「あの……」
それに岩崎さん……なんで彼女はこんなに申し訳なさそうな顔をしてるんだ?
「ごめんなさい、私一瞬疑ってしまいました……皐月さんは私を助けてくれたのに……」
「……いいよ、別に」
疑われるのが一瞬だけで済むなんて俺からしたら奇跡みたいなもの。
それに、露骨に敵意向けられるよりかははるかにマシだから。
「本当に、ごめんなさい……」
だけど俺のその気持ちは上手く伝わらなかったらしい。
「色々持ってきたよ!」
「あ、あれ?他の皆さんは……」
「色々あったんだよねー。まっ、とにかく治療に使えるものちょーだい」
そのせいか下田と立木さんが戻ってきて、平野さんが治療を始めるまで俺と岩崎さんの間に会話はなかった。
※※
「なるほど、そんな事が……墨染さんにも困ったね」
「でも本当に皐月君がそんな……」
岩崎さんが下田と立木さんがいなかった間の話を二人にしているのを眺めながら、俺は平野さんに治療されている。
手際がいいのかあっという間に俺の怪我は包帯に覆われていった。
「はあっ、倉庫に包帯ないとか不便過ぎ……慧が持ってなかったらどうしてたのさ。とりあえず応急手当だけど我慢してね翼」
「……なあ、平野さん」
「どしたの?」
今なら、聞けるかもしれない。
さっきからずっと考えて、結局出てこない問の答えを。
「なんで、平野さんは俺を庇ってくれたんだ?」
「えっ」
「いくら考えてもわからないんだ。腹立たしいけど墨染の言ってた事は正論でもある……俺は殺人鬼で隔離されるべき存在だ」
だから俺は最終的に隔離を受け入れようとして。
だけど平野さんはそれを止めた……殺人鬼を庇うメリットなんて彼女にはないはずなのに。
「教えてほしい、どうしてなんだ?」
いつの間にか下田達も俺達の方に注目してるのがわかる。
平野さんはしばらく考え込むように視線をさまよわせて……
「わかんない」
そう、答えた。
「わから、ない?」
「いや、はっきりとした理由ないんだよね。ただ翼が隔離を受け入れようとしてるのはなんとなーくわかって……それはダメだって思った感じ?」
「ダメって……」
俺はそう思った理由が知りたいんだけど……
「んー……そもそも、さ」
あいまいな答えに納得できなくて、平野さんにまだ言葉を重ねようとした俺は。
「翼って本当に殺人鬼なわけ?」
その一言で、文字通り言葉を失った。
「えっ……」
「だって翼、全くそんな雰囲気とかそういった怖い感じ?のものがないし?これでも人を見る目はあるつもりだからさー」
言葉が出てこない、だけどそれは下田に名乗るのを躊躇った時とは違う。
何を言ったらいいのか、本気でわからなかったんだ。
「というわけで今度はあたしから質問。翼、本当にやったの?」
「っ……」
真剣な目をした平野さんの問いかけ。
それに俺は何を言えばいい。
頭がぐちゃぐちゃで、とても簡単なはずなのに真っ暗闇の中にいるみたいに何も見えなくて。
「難しく考えなくていいんだよ翼、やったかやってないか……答えは二つに一つなんだから」
二つに一つ……ああ、そうか。
俺はいつの間にか……
「…………やって、ない」
こんな簡単な事すら、言えなくなってたのか。
「うん、あたしは信じるよ」
「……本当に?」
「やっぱり理由はわかんないけど、翼の言葉が嘘じゃないのはわかるからさ」
「ぼくもそう思うよ。皐月君とは知り合ったばかりだから説得力あまりないかもしれないけどね」
「わ、私も信じます!それに話を聞く限り、他にも皐月君を信じてくれそうな人はいるみたいですから……冤罪ならきっとわかってもらえますよ!」
「一度疑った私が言うのは、おかしいかもしれませんが……あの時私を助けてくれた皐月さんが、殺人鬼とは思えません」
「みんな……」
なんだろうな。
あれだけ一緒にいた親や友達は信じてくれなかったのに……会ったばかりのみんなが信じてくれるなんて。
これが、世界の希望って言われてる人達って事、なのか?
やっぱり希望を信じてスカウトを受けたのは正しかったんだ……はは、こんな状況なのにそう思えるなんて思わなかったよ。
「っし、とにもかくにもまずはこのコロシアイをどうにかしないと!」
「あっ、そういえば皐月君と下田君は探索に参加してませんよね?」
「そうだね。ぼくは最初にいた部屋ぐらいしかわからないし、皐月君はここにいたから色々知らない事もあるよ」
「でしたら、私達がご案内しますよ」
「本当に?助かるよ!」
胸がいっぱいになっている間に色々と話が進んでたみたいだ。
探索か……確かに俺はまだこの部屋から全然動いてないからわからない事だらけなんだよな。
「あっ、勝手に決めちゃったけど皐月くんも一緒でいいよね?」
「……俺も一緒でいいのか?」
「もちろん。むしろここで突き放すような真似はしないよ」
「それじゃあ……お願いするよ」
「わかりました。それでは説明しながら行きましょう」
こうして俺はこの列車を案内される事になった。
色々調べて、早くここから出ないとな……
「まずはこのサロンですね。岩崎さん、ここは二号車でしたっけ?」
「はい立木さん。一号車の機関室に繋がる扉は開きませんから……実質ここが一番先になりますね」
四つ並んだソファーにテーブル、雑誌にドリンクも揃ってる。
後は何のためかあまり考えたくはないけど監視カメラとモニターもあった。
「はぁ、見た目だけは、豪華列車って感じなんだけどね」
「そうだね。こんな状況じゃなかったら少し楽しみだったかもしれない」
確かにこんな列車に乗る機会なんてそうそうない。
本当にコロシアイなんて状況じゃなければな……
※※
【三号車・客室前廊下】
サロンを出るとそこは人三人分程度が通れるぐらいには広い廊下。
左には鉄板か何かで塞がれた窓とサロンにもあったモニターが、右には二つのドアがある。
「こっからは客室だね」
「ドアにプレートがありますね……えっと1号室が岩崎さん、2号室が物述さんの部屋みたいです」
「部屋の内装も確認しますか?」
「い、いや、さすがに女子の部屋に入るわけにはいかないよ」
「あっ、それもそうですね……」
どうやら客室は一つの車両に二部屋あるらしい……つまり単純計算で十六人分、八両あるって事か。
その後調べた結果……
・三号車1号室…岩崎、2号室…物述
・四号車3号室…墨染、4号室…笹山
・五号車5号室…美影、6号室…立木
・六号車7号室…神崎、8号室…平野
……という部屋割りだってわかった
どうもこちらに女子が集中しているみたいだな……霧ヶ島さんの名前がないのはきっと女子が九人って半端な数だからだろう。
※※
【七号車・レストラン】
女子の客室がある車両を抜けると、上下に続く階段があるスペースに出る。
下に向かう階段を降りるとレストランらしい車両に出た。
どうやらここは二階建てになってるみたいだ。
「ここも広いね、まるで豪華なレストランそのまま持ってきたみたいだよ」
「しかし妙ですね……これだけの列車なら、私がどこかで話に聞いてもおかしくないんですが」
「そうですね……私もここまでの豪華列車なんて小説ぐらいでしか見た事ありません」
そんな列車がどうしてコロシアイなんてものに使われてるのか……疑問は尽きない。
「あのモノクマを操ってる人が作ったとしたら、犯人は相当な財力があるんだね」
金持ちの道楽なんて話だったら、勘弁してほしいな……
その後戻って上への階段を昇ると、調理場らしい場所に出た。
つまり一階はレストラン、二階は調理場になってるわけか……
※※
【八号車・客室前廊下】
ここからはまた客室か……あれ?
「どうしたの皐月くん」
「いや、向こう側に女子が集中してるから9号室は余った霧ヶ島さんだと思ったんだけど」
9号室…下田、10号室…クロード
「本当ですね……霧ヶ島さんの部屋は更に奥みたいです」
男子の部屋が集中してる所に一人だけ女子だなんて……モノクマは何を考えてこんな部屋割りにしたんだ?
「こ、心細かったりしないでしょうか……」
「んー、いざという時はあたしの部屋に泊める感じでいくよ。生の巫女さんと過ごせばいい曲出来るかもしんないし!」
そこは平野さんに任せるしかないか……
「それじゃあ霧ヶ島さんについてはそうするとして……とりあえずぼくの部屋でも見てみようか」
※※
【八号車・下田の部屋】
結構広いんだな……薄暗い部屋の右にはベッド、左にはテーブルと椅子。
ベッドの脇には扉があってそこはトイレとシャワールーム。
テーブルの近くには水が入った冷蔵庫とクローゼット……中には今下田が着てるのと同じような服が並んでる。
部屋の一角には演劇に使う小道具みたいな物があるな……下田の私物か?
そしてここにも監視カメラとモニターは、あるんだな。
「間取りは女子の部屋と変わりませんね……」
「廊下の明かりだけだと薄暗いからよくわからないね。ちょっと待って今……あれ?電気がつかない」
「カードを差し込まないと電気が通らない仕様のようですね」
岩崎さんが指差す先にあったのはホテルで見るようなカードを入れる機械。
前に旅行行った時はカードキー差して電気点いたんだよな、という事はどこかに……
「おっ、これがそーじゃない?テーブルの上にあったよ」
「カードと……なんだろうこれ?」
下田が手に取ったのは……小さなスマホみたいな機械。
「スマホってわけではなさそうだけど……」
「知りたい?」
謎の機械を調べていると、今までなかった声が俺達の会話に入ってくる。
この、声は……
「うわっ!?」
「ひっ!?」
下田を驚かせて岩崎さんに悲鳴をあげさせたソイツ、モノクマは何がおかしいのかゲラゲラ笑っている。
あんまり見たくない顔だっていうのに……
「モ、モノクマさん!?」
「いやいや、さんはいらないっしょ……」
「とりあえず聞いてみようか……部屋について色々」
他に選択肢もなさそうだしな……
「はいはーい!それでは説明しましょう!このディスペアー・エクスプレスの客室はカードキーを使って鍵を開いてもらう仕様となっております!そのために使うのがその【乗客手帳】ってわけ!」
「手帳って事は……カードキー以外にも使えるのか?」
「そうだよ!」
モノクマによるとこの手帳にはディスペアー・エクスプレスのマップと俺達のプロフィール、後このコロシアイにおけるルールなどが載っているらしい……
「後その【モノクマカード】を使わないと客室の電源は点かないんでそこんとこよろしく!とりあえず説明終わり!じゃーねー!」
モノクマがいなくなると同時に崩れ落ちる音がする。
見ればへたり込んだ岩崎さんが身体を抱き締めてガクガクと震えていた。
「和音、大丈夫!?」
「は、はい……」
殺されかけたんだ、岩崎さんのこの反応は何もおかしくない。
俺だって少し身体が震えて、さっきの傷がズキズキ痛みだした気がする。
「二人が落ち着いたら、とりあえずルールだけでも確認しておこうか」
「悪い……」
※※
その後俺達はルールを確認した。
ルール1…乗客達はこの列車内で共同生活を行いましょう。
ルール2…夜10時から朝7時までは夜時間とします。夜時間、七号車は立ち入り禁止になるので注意しましょう。
ルール3…就寝は自分の客室を使いましょう。異性の客室での故意の就寝は禁止します。
ルール4…このディスペアー・エクスプレスについて調べるのは自由です。特に行動に制限は課せられません。
ルール5…車掌であるモノクマへの暴力行為、監視カメラやモニター、車窓の破壊を禁じます。
ルール6…乗客内で殺人が起きた場合は、その一定時間後に、全員参加が義務付けられる学級裁判が行われます。
ルール7…学級裁判で正しいクロを指摘した場合は、クロだけが処刑されます。
ルール8…学級裁判で正しいクロを指摘できなかった場合は、残りの乗客は全員処刑されます。
ルール9…三人以上の人間が死体を最初に発見した際に、それを知らせる死体発見アナウンスが流れます。
ルール10…モノクマは学級裁判以外は明確な違反がない限りおしおきはしません。
ルール11…ルールは今後も増える可能性があります。
※※
「はー……本当ふざけてるルールっしょー」
「わざわざ異性の部屋で寝る事を禁止する……意味があるのかな?」
「七号車は確かレストランと厨房でしたね。つまり夜は男女の客室が分断されると……」
霧ヶ島さん、本当に大丈夫なんだろうか……心配だな……
「ルールによると調べるのは問題ないらしいから、みんなで協力すればきっと何とかなるよ」
「それじゃあ、そろそろ移動するか……下田、後何両あるんだ?」
「えっと客室を除いたら……後十……」
「マジで!?」
まだそんなにあるのか……!?
「……はないかな?」
「えっ……ちょっと意味わかんない、その冗談」
「……ごめん」
下田の冗談は、よくわからないな……
その後こちらの部屋割りは……
・八号車9号室…下田、10号室…クロード
・九号車11号室…伊方、12号室…石原
・十号車13号室…安田、14号室…陸海
・十一号車15号室…霧ヶ島、16号室…皐月
だって事がわかった。
霧ヶ島さん、俺の隣なのか……本当になんで彼女だけここなんだ?
※※
【十二号車・サロン】
「ここもサロンなのか」
「夜時間になるとこっちにはいけなくなるから……両方に置いてるんだろうね」
二号車のサロンと変わった所はあんまり見当たらないな……
「あっ、雑誌の種類は違いますよ!」
「まー、おんなじだったら男子が女の子用のファッション雑誌見る事になるからねー」
サロンはそれ以外に変わった所はなさそうだ。
俺の部屋で回収してきた乗客手帳によると、残りの車両は後一つ。
つまりこの列車は十三両編成って事か……
※※
【十三号車・貨物車】
ごちゃごちゃと物が詰め込まれた部屋……ここは貨物車か。
「タオルはここから取ってきたんですよ」
「保存食とかはここにあるから、食堂車が閉まっても何とかなるね……後で女子のサロンにいくつか移動しておくよ」
「サンキュ、慧」
「それにしても……やっぱりありませんね、乗車口」
そういえば、外に繋がるドアとか全くなかったな……石原が窓を壊そうとしたのはだからか。
もし可能性があるとするならそれはきっと……
「多分、一号車の方にあるんだと思います」
「まいったね。どうにかして一号車に行かないと……ぼく達はこの列車から永久に出られない」
人を殺さない限りは。
下田が言外にそう言っているのを、俺は何となく感じ取った。
※※
【十一号車・皐月の部屋】
探索を終えた俺達はとりあえず解散する事にした。
夕食を一緒にとる約束はしたけどそれには早いし、安静にした方がいいと部屋に戻ってきたけど……
「コロシアイ、か……」
教科書とか小説ぐらいでしか聞いてなかったような言葉……まさかそれが俺の身に降りかかるなんて。
冤罪だけでも最悪なのに。
だけど悪い事ばかりでもない……信じてくれる人が少しでもいてくれたんだ。
それだけが救いと言えば、救いだな。
「とりあえず……寝るか」
腕も痛いし、疲れたしな……
※※
あれ?
俺は……確か、コロシアイに巻き込まれて……
それで……えっと。
そもそもここどこだ?俺は部屋にいたはず……
俺はいったい……
あっ、モニターに何か文字が……
GAME OVER
サツキクンがクロにきまりました。
おしおきをかいしします。
……えっ?
気がついたら俺がいたのは廃倉庫みたいな場所。
えっ、廃、倉庫……?
まさ、か……まさか……!?
そして誰もいなくなった
超高校級の殺人鬼皐月翼処刑執行