コカビエルに高潔な精神が宿った話   作:ウーパールーパーのてんぷら

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主人公転生前のお話。


第零章
彼が生まれた日


 とある世界の話だ。

 

 

 その世界は常に争いに(まみ)れ、地上は火の海に、海には砲弾の飛び交う船団、水底(みなぞこ)は瓦礫で埋まり、地下資源は尽き僅かな物資を奪い合いまた不要な自然は溶かされる。

 嗚呼、誰かこの戦いを、戦争を、この世界を止めてくれ。そう願わずには居られない、だが自らが生きる為には戦わねば。

 そんな矛盾を抱えたこの世界に、一人の戦士が誕生した。

 

 ()の戦士の名は『エル』。その真名を『エル・ニクス』と定められた少年は、その終わらない戦いに終止符を打つ為、たった一人で世界に弓を引いた。

 「「(ああ)、人の子よ、何故卿らは争うのだ、皆が手を取り合い善を尽くせばまだ救われる道があるやも知れぬのに、何故自ら破滅の道へと進むのか。」」

 幾度そう(さけ)んでも人は彼の言葉など聴く筈も無く、人の心に響くのは降り注ぐ大砲の轟音や銃声の(かわ)いた音から来る恐怖心ばかりである。

 奪われたくない、殺されたくない、例え自分が歩み寄っても相手は刃物を突き立てるだろう。

 理解したくない、知りたくない、我々以外が怖い、憎い、妬ましい。

 嫌だ嫌だ。神よ助けてくれ。殺さないで。嗚呼、私に死という未知を与えないでくれ。

 そう叫ぶ人々の心の(こえ)聴こえる度に彼の心も目の前の荒野の様に荒らんで行く。

 

 止めてくれ、私の前で争わないで、私に聲を聴かせないでくれ、(ああ)………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は平穏(しあわせ)が欲しいだけなのに!

 

 

 

 

 

 

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 それから数日の刻が過ぎ去り、彼の居る場所は静寂に包まれていた。

 その地には遂数日前には存在しなかった屍の山が積まれていた。

 その頂点にはポツンと一人壊れた様に座り込む少年が居た。彼は知ってしまったのだ。この世界に救いなど無い、あるのは終わらない戦いと恐怖を叫ぶ塵芥(ちりあくた)、積み上げられる(ごみ)の屍だけ。

 ならば争いなど消してしまえ、人を殺せば残るのは平和な世界だ、争いなど無い、ただそこに在るだけの平穏。

 だがそういうことだ、変わる事など無く、静かで穏やかな平穏。

 そんな世界を彼は望む、例えそれがこの世全ての生命を滅したとしても、彼は世界はそうあるべきだと(さけ)び望む。

 

 

 彼の名前は『エル』。

 

 世界を救った戦士(えいゆう)にして、世界を殺した修羅(まおう)である。

 

 

 世界に終止符を打ったその少年は、ただ独り屍の大地にてひっそりと息絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 筈であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ああ、かわいそうなわたしのこども、あなたにすくいをあげましょう、あらそいもへいわもあるすてきなせかいにあなたをおくるね。

 

 ごめんなさいごめんなさい、やっとおわる(はじまる)あなたのじんせい(じごく)かみ(יהוה)のしゅくふくを。

 

 

 

 

 

 わたしはあなたをあいしています

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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