コカビエルに高潔な精神が宿った話   作:ウーパールーパーのてんぷら

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ここから本編の始まりです。

アンケートのご協力ありがとうございました。
多くの読者様が「作者のすきにしていいよ!」に票を集めてくれた他、文字数を増やして欲しいという意見も多数存在した為、今回は試しに2000文字程の話となっています。

今後とも当作品をご愛読して頂けると大変光栄です。



第一章
彼が生誕する日


 彼が生まれ直したと自覚したのは、目の前に居る羽の生えた金髪の男にこの身の説明を受けた瞬間である。

 

 

 「貴方の名前はコカベル、偉大なる我等が父の為に、その身を尽くせることを光栄に思いなさい。」

 

 

 ああ、嫌だ、分かりたくもないのにこの身は知っている。この身体には座天使コカベルとしての知識、記憶が染み付いている。

 眼前に立つは四大熾天使の一翼であるミカエル。彼の天使は【神の如き威光】と称される程美しく、天界での階級は上から三番目とされている。

 最上は言わずもがな主たる神であり、この()()を創り出した偉大なる父。それに次ぐ存在として、ミカエルの双子の兄にして【明けの明星】【光と希望を司る天使】【夜明けの光】等と称される天使の統括者、ルシフェルが存在している。

 かという自分の階級は座天使。上位三隊、中位三隊、下位三隊と九位階存在する中で上から三番目、つまり上の下付近に存在する位階の天使であり、人間の軍隊で言うところの中将から少将程の階級である。

 

 

 「貴方の役割は剣。主の敵である因子に刃を向け、道を切り拓く光の剣。貴方は主の剣となるのです。」

 

 

 新たに生まれた(コカベル)は再び争いを望まれた存在として創造された事を知り目の前が真っ暗になる。

 

 ((ああ)、何故世界は私に戦いを求めるのだ、私は争いたくなどないのに、私を生まれ変わらせた上位者はさぞこの身に争いをさせたいらしい。)

 

 

 「おや、また新たな子供が生まれたのかい?」

 

 

 彼がその白銀色の翼を黒く染めあげようとしたその直前、ミカエルの背後から聞かせた者に安息を与えるかのような穏やかな声が響く。

 

 

 「ああ、兄上。今しがた生まれたのだ、彼の名前はコカベル、剣を司る天使として異端を切り裂く為に生まれてきたんだ。」

 

 

 ミカエルのその言葉に兄上と呼ばれた天使、ルシフェルがその眉間に皺を寄せ険しそうな顔をする。

 

 

 「父上はまだそのようなお考えを?例え父を信じておらずとも地上に存在する人の子に罪などないであろうに、そんな子供達を血に塗れさせる為に新たな天使を作るなどと……。」

 

 

 「何を言っているのです!!偉大なる我等が父を信仰しない罪深き人間に裁きを与えずして何をするのです!!」

 

 

 ミカエルとルシフェルは(コカベル)の事などお構い無しとばかりに言い争いを始めた。

 

 

 「(嗚呼、煩い。誰かこの場を止めてくれ。)」

 

 

 「だからと言って彼等を殺していいとは限らないであろう!!人の世に我々天界に住まう者が干渉し過ぎれば彼等は堕落し欲深くなる!!故に干渉し過ぎず、彼等が自主的に信仰心を芽生えさせ、徳を積むことで救いを与えているのに、信仰する以前に裁きを下してしまえば元も子もないであろうに!!」

 

 

 「だが、人間の中には我等が父以外の神を信仰している愚かな者も居るでしょう!!」

 

 

 「事実父上以外にも神と呼ばれる存在は居るだろう!!しかし、信仰する神が異なるというだけでその人間を害して良い等と余りに傲慢ではないか!!」

 

 

 「人間はそもそも父上がお造りになられたのだ!!自らの創造物を害そうと何が傲慢か!!」

 

 

 「否、父上は私を全ての命の原典であると仰られていた!!だが私が生まれる前から人間は存在していた!!父上が人間を造り上げたという証明が無い以上、父上に人間を害する権利は認知出来ない!!」

 

 

 「兄上!?なんということを!!父を疑うという事はその身に叛逆の意があると同義なのですよ!?」

 

 

 ミカエルがルシフェルに注意を促した時には既に遅く、ルシフェルの美しき黄金の翼は黒く染まり、着ていた装衣は暗く禍々しい色へと変貌を遂げた。

 

 

 「そうか……、それが我が父の想いならば、私はそう在ろう……。」

 

 

 「あ、兄上…… ?」

 

 

 

 「……これより全天使統括者ルシフェルは神に叛逆する、愚かなる神の支配に疑問を持つものよ!!新たなる世界を造り自由の世界を望む同士よ!!我が元に集い給え!!」

 

 

 

 ルシフェルがそう叫んだ瞬間、(コカベル)の白銀の翼は即時にしてその八枚を黒く染め上げた。

 

 

 

 「(ああ)(おさ)ルシファーよ、私の望みは争い無き平穏な世界。その願望を叶えてくれるのであれば、私は貴方の剣となり、この身の全てを捧げよう。」

 

 

 (コカベル)、否。()()()()()は堕ちて尚もその威光を放つ目の前の存在にどうしようもなく魅了され、即時にその身を捧げる決意をした。

 

 

 「嗚呼、コカベル、いやコカビエルよ、私は総てを受け入れよう。堕ちた天使の長、堕天使長ルシファーが認める。願いを受け入れよう。汝の欲する所を為せ、それが汝の法とならん(Do what thou wilt shall be the whole of the Law)。」

 

 

 彼のその言葉に、コカビエルは生まれて初めての笑顔をその顔に映した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これにより、聖書の神が支配していた天界の一部が切り離され、冥界とその名を変えて、堕天使ルシファーが冥界の王として新たなる陣営が生まれた。

 

 

 

 




ルシファーの最後の言葉は、アレイスター・クロウリー著、『法の書』より、引用させて貰いました。

その一部として、ホルスのアイオーンは神による隷属の終わりを示す意味がある為。


感想、評価等お待ちしております。


※一部表記にて「ルシフェル」が「ラファエル」になっていたと誤字報告があった為訂正致しました。
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