無事ムサイとのドッキングが終わり、アムロはコムサイから降りると女性士官と軍服を着崩し海賊のような男が待ち受けているのに気付いた。
「君自らお出迎えとは嬉しいな」
「若大将を出迎えるとあっちゃ、他の奴に任せておけないさ」
長い黒髪の女性はどこか蓮っ葉な口調で答える。
「お世辞でも嬉しいよ、シーマ」
アムロは歯が輝きそうなスマイルで言う。
「ハイハイそう言うのはいいから、このプレイボーイが」
シーマは呆れたようでいて何処か嬉しそうに言う。
「脱出から休む間の無い打ち上げだ子供達も疲れている、休ませてやってくれ」
「分かったと言いたいけどね。うちは強面ばかりだからな。子供が泣いても責任持てないよ」
シーマはルーとフォウが先導してくる子供達を見て溜息交じりに言う。
「そりゃ無いですよ姐さん」
シーマのお供の子供が逃げ出しそうな強面の男が言う。
「大丈夫、君がいるじゃないか」
「私が?」
「美人のおねーさんだ、子供達も懐くよ」
「よくもまあ歯が浮くような台詞を次から次へと。だいたいあたしなんかより、あそこにいる新しい女にやらせればいいじゃないか。子供達も懐いているようだし」
シーマは苦々しげにルーとフォウを見ながら言う。
「フォウには少し荷が重いかな、彼女は強化人間なんだ。どちらかというと気を遣ってやって欲しい」
「そうかい。ならもう一人のお気楽そうな方は?」
「悪いが僕とルーは直ぐに出撃する」
「エゥーゴか。放っておけばいい」
真面目に言うアムロにシーマは吐き捨てるように言う。
シーマはエゥーゴによるジャブロー侵攻作戦がアナハイム上層部が強引に実行したことを知っていて、地球連邦の高官もアナハイムの上層部もどっちもどっちだという感じだ。
「そうはいかないよ。僕はこれでもエゥーゴの幹部だ。それにここでいい仕事をしてスポンサーの機嫌も取りたい」
悲しいかなエゥーゴは地球連邦と違って税金という安定収入は無い。あくまでアナハイムなどの宇宙に基盤を置く企業と有志のスペースノイドの支援で成り立っている。あまりに地味だと人気が無くなり支援が無くなる。
「はあ~まあ金の苦労は分かるけどさ」
シーマもかつて一艦隊を切り盛りしていた女傑、資金の大事さは痛感している。
「っというわけで颯爽と活躍が出来るMSはないかな?」
「あんただってうちがエゥーゴ以上の貧乏だと知っているだろ」
子供のように無邪気にねだるアムロにシーマが頭を抱えて答えた。
「まあそうだけど」
シーマ艦隊はゲルググに改修に改修を重ねて使っている。ジムⅡ、ハイザックくらいまなら何とかなるが最新鋭のティターンズMS相手には奇襲か数で押さない限り勝負にならない。幾らアムロでもゲルググマリーネ改改では颯爽活躍というわけにはいかないだろう。
「姐さん。この間横流しされたあれならどうですか?」
「馬鹿、余計なことを言うんじゃ無いよ」
「あるのかシーマ」
慌てて部下を叱るシーマだが遅かった、アムロは目をキラキラさせて期待している。
「いやあのね」
「頼むよシーマ」
アムロが無邪気な子供のように甘える。
「はあ~この誑しが」
「こっこれは、マラサイ。最新鋭機じゃ無いか良く横流ししてくれたな」
アムロはムサイの格納庫に白と黒を主体に塗装されたMSを見て驚く。
「プロトマラサイ。マラサイの量産化成功後、解体されるはずだったんだがアナハイムにいるシンパが実験という名目でチューンナップを施して横流ししてくれた。
プロトマラサイカスタムってところか」
「協力してくれるシンパには感謝しないといけないな。
それでこれは実際性能はどうなんだ?」
「プロトタイプだが量産機のデータをフィードバックされていて不具合を潰した上でジェネレーターやスラスターなどの基本性能をパワーアップさせているらしい。
大きな違いは量産機では右側だけだったフレキシブルシールド両肩に取り付けたことかな。これによって百式のフレキシブル・バインダーのようにAMBACが強化されて破格の運動性を得られるらしい」
「ふっまるで翼のようだな。しかし話しに聞いた限りではいいこと尽くめじゃ無いか」
アムロはシーマの説明が今一歯切れが悪いのを訝しむ。
「これは全て理論上のことで改造するだけで精一杯で実働テスト等は一切されていない。つまり変に改造した部分でどんな不具合がでるか分からない。想定通りの性能が出るかは実際に試してくれだとよ。
馬鹿が調子に乗るから、不具合だけ潰しておきゃいんだよ」
MSに命を預けるパイロットとしては至極当然の反応だった。兵器は下手なパワーより信頼性こそが優先される。
「なるほど君が僕のことを心配して出し渋るわけだ」
「そう言いつつその顔やる気だろ」
「暴れ馬を手懐けるのが男の甲斐性ってね」
今までもアムロはアナハイムの横流し品のテストMSを駆りデータのフィードバックを行っている。そのデータは質が高いと開発陣からの人気は高い。それ故に開発陣も快く横流しをしてくれニルヴァーナの戦力向上に繋がっている。
世の中Win-Winでなければ続かないといういい例だ。
「あたしも飛んだ奴に手懐けられたもんだよ」
「君は手懐けられるような安い女じゃないだろ」
「あたしはあんたに助けられたときからハートは握られっぱなしだよ」
テラーズの乱の最終局面、混乱極まる戦場からシーマを救い出しシーマ艦隊を戦場から無事離脱させたのは誰であろうアムロであった。その後シーマはアムロに心酔しニルヴァーナの一員となりアムロを陰から支えている。
「僕は君に頼りっきりさ」
「はあ~これだ」
「コムサイと此奴の補給を頼む。終わり次第エゥーゴ艦隊の援護に向かう」
「了解だよ」
シーマは諦めたようにいうのであった。
アムロがマラサイの操縦を確かめようとコクピットに向かい声が聞こえないくらい離れた所でお供の男が言う。
「そう言いつつ姉御も若大将が乗るからって塗装まで塗り直しさせたりして、ほんと健気なのに可愛げがな、うごっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
お供の男が股間を抱えて悶絶し床に転がるのをシーマは放っておいて部下に指示を出すのであった。