エゥーゴによるジャブロー降下作戦。
アーガマを旗艦としサラミスで編成された艦隊がジャブロー降下ポイントに進軍していく。艦隊を指揮するのはかつてのホワイトベース艦長であったブライト・ノア。彼の指揮の下一糸乱れぬ隊列を維持した艦隊から大気圏降下装備をしたMS隊が発進していく。
先陣を切るのはエマ率いるリックディアス隊。続くのがマラサイをリーダー、ネモ二機を随伴機とする小隊で構成された主力部隊。クワトロ・百式とカミーユ・ガンダムmkⅡは不測の事態に備えた遊撃隊として中間に位置している。
だがそんな大部隊の作戦を見逃すほどティターンズも甘くない、降下する直前という最も無防備になる瞬間を狙ってMAが襲い掛かってきた。だがそこは歴戦の勇士ブライトも分かっている。降下部隊を護衛する為ジムⅡ部隊が防衛網を構築していたが、全く歯が立たず紙切れのように突破されてしまった。
MAが降下部隊の背後に迫る。降下装備をしたMS部隊では逃げ切れない、このままではMS部隊は戦わずして半壊してしまう。
「させない」
切り込み隊長でありながら血気盛んなエマが周りの制止を振り切り直ぐさまMAの迎撃に向かった。切り込み隊長の役目を放棄した軽率な判断とも言えるが、部隊の半壊を防いだ英断でもあった。
「小賢しい」
MAはエマ・リックディアスのビーム二連射を最低限の動きで躱しカウンターの一撃がエマ・リックディアスの片腕を奪い取る。
「きゃあああああああああああああああああああああああ」
エマの悲鳴が響く。
元ティターンズのエリートパイロットを軽く捻る。大推力のMAも凄いがそれを乗りこなすパイロットもただ者じゃ無い。
彼こそが木星帰りの天才NTパプテマス・シロッコ。彼もまたその才能故に地球連邦に疎まれ木星船団に追いやられたと噂されている。彼は地球圏に帰ってくるなり自ら設計開発したMAメッサーラを駆り、鬱憤を晴らすかのように遊び感覚でエゥーゴ艦隊を単騎で襲う危険な男であった。
「止めだ」
「うん?」
「エマさん」
すかさずカミーユ・ガンダムmkⅡがフォローに入りメッサーラを牽制する。
「ふんっガンダムのマイナーチェンジ如きが私の邪魔をするなっ」
シロッコはメッサーラは一瞬でMS形態に変形させた。メッサーラはのちに第三世代と分類される可変機だったのだ。
「なっ変形した!?」
「落ちろ」
カミーユが驚く隙を見逃さずシロッコは必殺のビームを放つがカミーユは躱した。
「私の攻撃を躱した!? やるな」
ガンダムmkⅡは見下していたシロッコだったが自分の攻撃を躱したパイロットには興味を抱いた。
「強いぞ、此奴」
「丁度いい腕ならしだ。
!!」
シロッコはメッサーラの性能を思う存分楽しもうと意気込んだが、そんな心を隙を狙ってビームが襲い掛かった。シロッコのNT能力に嘘偽り無しと言わんばかりにビームの狙撃を擦ること無く躱していた。
「ロングレンジからの攻撃だと」
シロッコが攻撃をしてきた方を見ると、コムサイの上に立ちスナイパーライフルを構える白いマラサイがいた。
「なんだこれは? この私がプレッシャーを感じるだと」
一旦間合いを取るシロッコ。
「カミーユ。ここは僕に任せて君は降下作戦に戻るんだ」
「アムロさん」
カミーユはアムロからの通信に嬉しそうに答える。
「エマはその破損では降下作戦は無理だ。一旦アーガマに戻って応急修理をするんだ」
「私はまだ戦えます」
「無理だ。下がれ。これはアムロ大尉の命令だ」
「分かりました」
エマは渋々承諾する。エマは可愛いかとは裏腹にかなり勝ち気な性格のようだ。
「カミーユは早く行け」
「はい」
(エマ中尉には意外と手を焼くかもな。それに引き換えカミーユは可愛いな。
死ぬなよカミーユ、任せたぞシャア)
アムロはカミーユをシャアに託しつつ意識をマシーンに切り替える。
「あの相手はやばいコムサイじゃどうしようもない。ルーは後方に下がれ」
「了解です」
ガンダムmkⅡとすれ違いざま、アムロ・マラサイ改はスナイパーライフルを投げ捨てビームライフルに持ち替えコムサイから飛び断ちメッサーラに向かって行く。
「そんな量産機単騎で私に立ち向かう気か」
「才能というおもちゃを振り回す子供にはこれで十分だ」
シロッコはその傲慢さ故にアムロが乗っていようと量産機如きと見下す。
「ぬかせっ」
メッサーラから必殺の高出力ビーム三連射。
「甘い」
アムロはマラサイ改の両肩のフレキシブルシールドを利用したAMBACでマラサイ改はぐるんぐるんと旋回しビームをすり抜けメッサーラに迫っていく。
「粗い起動だな改善の余地ありだな」
「馬鹿な躱しただと」
アムロはマラサイ改の評価レポートをしつつメッサーラの懐に潜り込む。大型MA/MSに対抗する王道の戦法である。
マラサイ改がビームサーベルを抜き放ちすれ違いざまの横一文字。だがシロッコも天才アムロの斬撃を受け止めた。
「やるな」
アムロは受け止められた斬撃を起点にマラサイ改を旋回させビームライフルの一斉射を放つ。
「舐めるな」
シロッコはメッサーラをMAに変形させ高速離脱していくが、アムロはその起動を見切り逃げる先に置くようにフレキシブルシールドに搭載されたグレネードランチャーを放つ。
「そんなものに当たるとでも、
ぐあああああああああああああああああああ」
時限信管だったようでメッサーラの前方でグレネード弾が爆発をした。眩い閃光で全天周囲モニターが一瞬ホワイトアウトする。
「くそっ」
シロッコはパニックになること無く迫り来るアムロを迎撃するため機動性に優れたMS形態に変形させた。しかし変形が終わりモニターが復帰したときには目の前にビームサーベルを突き込もうとするマラサイ改がいた。
「終わりだ」
アムロの叫びと共にビームサーベルの灼熱がコクピットを貫きシロッコを細胞一つ残すこと無く真空の宇宙に蒸発させる。
「「「ぐあわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」」」
シロッコには永遠にも感じる一瞬。天才と自負しその才能のままにこれから地球圏で愚民共を使って遊び積もりがこんなところで何も成せずに終わってしまう。
終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる終わる,無。
「はっ」
無を感じたとき無事なコクピット内でシロッコは肩で息をしていた。
「はあはああはあはあ」
動悸は止まらず呼吸は乱れに乱れていた。
幻覚? いや私は確かに死を感じた。
視界を上げれば目の前にはビームサーベルのビームが発信される前の柄が見える。
「分かったかシロッコ。それが才能に溺れ傲慢に生きた男の末路だ」
「いっ今のは?」
シロッコは訳が分からずアムロに問い掛ける。
「サイコアタックだ」
「サイコアタック?」
NTの他人と精神を共感させる能力を悪利用した技で、相手に強烈な未来を叩き込むことが出来る。尤もサイコフレームなどの補助が確立されていない時代なので、接近しそれなりの状況を整える必要があるが上手く噛み合えば相手の精神に直接攻撃が出来る。
アムロはシロッコに死を経験させたのだ。
「その才能ここで潰すには惜しい。
俺に力を貸せシロッコ、人類の革新を成し遂げるんだ」
「人類の革新?」
「俺ならその才能を遺憾なく使ってやる」
「随分と上から目線だな、死に損ないの英雄が」
シロッコは相手がアムロであることを知った。
「チャンスは一度きりだ。次に会った時にまだ傲慢であったら、その才能は惜しいが容赦はしない」
「くっ」
シロッコはメッサーラをMA形態にしその場から離脱していった。今度はアムロも追撃はしない、違う方向を見据えていた。
アムロが見る方向、そこにはティターンズのエゥーゴ追撃艦隊がいたのであった。