「ブライト、君が参加してくれて嬉しいよ」
アムロはマラサイ改でアーガマの艦橋の側まで寄ると旧友に親しげに挨拶した。
「アムロ、生きていたならなんでもっと早く声を掛けてくれなかったんだ。聞けばカイやハヤトとはとっくに声を掛けて一緒にやっているそうじゃないか」
それに対してブライトは少し恨めがましい返答、完全に仲間外れにされた男子高校生のノリだった。
「出来れば巻き込みたくなかった。君にはミライさんと平和にどこかで暮らしていて欲しい、ささやかな願いだったんだけどな」
「カイは兎も角、ハヤトも家族はいるぞ」
「ハヤトは所帯を持って頼りがいが出てきたな。今やカラバのリーダーだ」
「私は頼りないか?」
「そんなことはないさ。ホワイトベース時代の手腕を見せて貰おうかな。
ブライト艦隊は任せていいな」
「ああ、任せろ」
「よし」
アムロは後ろは任せたと前を向き全味方に号令を掛ける。
「地球に降下する同志の背を打たせるわけにはいかない、残留部隊は集結せよ」
アムロの掛け声にMS部隊が直ぐさま集結していく。
ジムⅡを主力にライラ率いるガルバルディβ隊、応急修理したエマ・リックディアス。
正直ティターンズのハイザックによるMS部隊は数で二倍、此方の殆どがジムⅡであることを考えるとMSの質でも劣っていた。
それでもアムロに落胆はない。
「頼もしいメンバーだ。
ライラ達ガルバルディ達は左翼」
「あいよ」
「エマ中尉はジムⅡ隊を率いて中央」
「はい。今度はしくじらないわ」
「いい気合いだ。
アムロは右翼を担当する」
「アムロ大尉一機でですか、それは危険すぎます。護衛を・・・」
「いらない。俺が右翼を突破後に一気に攻勢に出ろ、それまでは艦隊と連携して守備に徹しろ」
エマの進言を却下しアムロは作戦を伝える。
「でも・・・」
「来たぞ」
アーガマ率いる艦隊は迫り来るハイザック隊に艦砲射撃で応戦を開始した。その艦砲射撃をすり抜けるハイザックをジムⅡが応戦する。
パワー機動力共にハイザックが上でもハイザックは地球降下装備をしているためのウェイトハンデがある。辛うじてジムⅡでも互角に持ち込める。数の差はライラとエマの奮戦で支える。
「じゃあ、ブライト頼む」
「分かった」
「アムロ・マラサイ改、出る」
アムロはいつの間にかアーガマのカタパルトにマラサイ改をセットし、最高加速で打ち出された。
アムロ・マラサイ改は彗星の如きスピードと弧を描いて敵左翼部隊に突撃していった。このまま弧を描いていけば敵中央の背後に回り込める。
突撃を掛けるティターンズ左翼部隊はビームライフルで応戦。
「流石エリート部隊的確な射撃だな。だが甘い」
アムロはマラサイ改のフレキシブルシールドをぶるんぶるん動かし慣性が無いようなジグザク起動を描いて躱していく。
「馬鹿な」
「なんだあれは化け物だ」
「人間なのか?」
ティターンズパイロット達がアムロの変態回避に驚愕し隙が生まれ、その隙を逃すアムロじゃ無かった。
ビームライフル三連射でハイザック三機が爆散し、その空いた穴をマラサイ改は通り抜けていく。
「しまった背後に回られた」
背後を取られたハイザック部隊に動揺が走る。このままエゥーゴ降下部隊の追撃を継続するか背後の敵に対応するべきか。
その動揺を見逃すようなエマやライラ達では無かった。
「ジムⅡ隊突撃、敵を一気に粉砕します」
「ライラ隊出るよ。この一戦でエゥーゴにライラ隊ありと名を轟かせる」
エマやライラが先頭に立ってハイザック隊に突撃を掛ける。先程までやや優性で押していたハイザック部隊だが一瞬の隙でひっくり返った。陣形がライラやエマに食い破られ、そこにジムⅡが殺到しズタズタにしていく。
「まずいぞジェリド」
「どうするカクリコン」
「追撃は断念だ。重しのバリュートパージ、ここを切り抜け後退するぞ」
「了解だ」
ライラやエマの猛攻に対応出来たのは極一部のパイロットだけであった。多くは動揺した隙から立ち直る時間を与えられること無く撃墜されていく。
そしてアムロというとハイザック隊の背後を取って鴨撃ちするかと思えば動揺を誘っただけで十分とS字を描いてティターンズ艦隊に向かっていた。
ティターンズ艦隊はマラサイ改の背後にハイザック部隊がいるために艦砲射撃はできない。機銃のみでの対応を迫られる。機銃のみならマラサイのガンダリウムの装甲が多少なら弾いてくれる。アムロはやや強引に切り込んでいく。
「この機会に数を減らして数を増やしておく」
アムロは訳の分からないことを言いつつティターンズ艦隊の懐に潜り込んだ。こうなると戦艦ではMSに対抗出来い、次々と艦橋をマラサイ改に撃ち抜かれていく。
だが意図的にビームライフルの威力を絞っているのか、艦橋を撃ち抜かれ指揮系統を失ってはいるが、他に誘爆する様子は無かった。味方が援護しつつ第二司令室に切り変えればまだ経戦は可能だった。だが生き残った幹部の心を折る出来事が起こる。
「駄目だ。撤退っ撤退だ」
艦隊司令ジャマイカンは早々に戦意が折れ、アレキサンドリアを中心に無事な艦は撤退を始めた。味方を置き去りにするような撤退に殆どのMS部隊は合流することが出来なかった。
見捨てられたと思った瞬間サラミスの生き残りもMS部隊も戦場で闘志を失った。
(やはりジャマイカンは生かしておくべき人材だな。これからも役に立って貰うぞ)
アムロはアレキサンドリアの艦橋に付けていた照準を外す。
マラサイ改から降伏勧告の信号弾を打ち上げ、アムロはレーザー通信や通信を最高出力にして全方位に通達。
「見捨てられたティターンズに告げる。大人しく降伏しろ。命の保証はする。
だがあくまで戦士として戦うというなら礼儀を持って撃沈する。
3秒待つ」
残ったサラミスやハイザック部隊はエゥーゴのMSに包囲された上にエゥーゴ艦隊の射程上にいる。
拒否した瞬間、一斉射で全滅は必至。
「まて、投降する」
見捨てられた上に3秒の猶与を突きつけられ思考停止に陥った兵士達はあっさりと降伏を受け入れた。
こうしてエゥーゴはこの戦いで小破したサラミス数隻とハイザック十数機を鹵獲するのであった。これは貧乏所帯エゥーゴにとって大きな戦果であった。
(まだまだだな。この程度では連邦と正面切って戦うことは出来ない。やはり当面はゲリラ戦とスカウトに注力するしか無いか。
何か大きなイベントはないだろうか)
勝ったというのにローテンションのアムロの目に燃え上がる大地が映るのであった。