このままティターンズの包囲を抜けられるかと思ったが敵も甘くない。直ぐさまバックミラーに装甲車が映り込んできた。
「来るぞ」
「任せろ」
装甲車の機銃からの銃撃を見切ったタイミングでハンドルを切って躱した。
NTの素養がある? アムロは思わぬ拾いものかと内心喜ぶ。
「シートベルトをしっかり締めて、揺れるぞ」
マウアーは戦闘で気が昂ぶったのか素に戻ったしゃべりになったようだが、男っぽい口調なんだなとアムロは意外に思った。だがマシンテクニックは見事でコーナをドリフトで超えていき、前を走る一般車をスイスイ抜かしていく。装甲車でマウアーの運転に追い付くのは無理だろうと思った矢先だった。
進む先の前方にジムクゥエルが三機待ち構えていた。
「戦争でも無いのに街中でMSを出すか」
「アムロにはそこまでする価値があるということだな。心配するな私が守る」
マウアーは実に頼もしいが、ジムクゥエルのマシンガンの銃口が此方に向けられる。周りの市民の犠牲を今更気にすることもないだろう。
マウアーは発射のタイミングを見切って躱そうと身構えるが、ティターンズ憲兵隊のジムクゥエルだ対人装備が強化されているはず。この車では攻撃を躱し続けるのは、アムロでも無理だろう。
「君みたいな美人に言われるなんて男冥利だな」
「茶化すな私は真剣だ」
「茶化してないさ。僕を信じて参加したなら僕を信じて身を委ねてくれ」
「何を言っている?」
「目じゃ無い心で感じ取るんだ。切っ掛けは僕が与える」
アムロはマウアーの肩に手を置く。
「なっこっこれは!?」
アムロの力によってマウアーに眠るNT能力が揺り動かされ心と体が可笑しくなる。
「もっともっとだ。感じろマウアー」
「何これ何これ、あっあっああああああああああああああああああああああああああっ」
今マウアーはアムロの世界を感じた。
それは心が体を突き破って世界に広がる感覚。マウアーの意識が世界を包み込み、その圧倒的な情報量にマウアーは溺れそうになる。
いきなりはキツいか、だが見込みはある。本当はこんな事だけを感じる能力じゃ無いが仕方だがない。僕が手伝おう。
アムロが心の中で話し掛けると、宇宙に広がる感覚が小さくなりフィルターが掛かり目の前のジムクゥエルのパイロットの殺気だけが感じ取れる。
パイロットが引き金を引く殺気を感じ取り、マウアーは右に左に攻撃を躱していく。
「いいぞ」
「はあはあ、でもこれ以上は」
かなり消耗しているかマウアーが肩で息をし、ジムクゥエルはマシンガンから対人用の装備に切り替えようとしているのを感じていた。流石に対人のマルチランチャーでは躱しきれない。
マウアーの全身から脂汗が噴き出すが同じ事を感じているはずのアムロは平然としていた。
「もっと感じるんだ。そうすれば感じるのは悪意だけじゃ無くなる」
「どういう意味だ?」
「騎兵隊の登場だ」
アムロの台詞と共にジムクゥエルの頭部が吹き飛んだ。そして天空より飛来したギャプランがライダーキックで別のジムクゥエルを地面に叩きつけた。
威力を絞った狙撃からの格闘戦と見事な腕であった。
「腕は鈍ってないなカイ。ジャーナリストにしておくのが勿体ないぜ」
アムロが囮になって、その隙にカイが隠してあったギャプランを取りにいっていたのだ。
かつてのホワイトベース隊のNo2、ジャーナリストになってもその腕は鈍って無かった。
「凄いあれがWB隊のパイロット」
マウアーの目の前でギャプランは残る一機と格闘戦を始めた。
ジムクゥエルがビームサーベルで斬りかかるのをバインダーでジムクゥエルの腕を押さえ込み懐に潜り込み、フックをジムクゥエルのコクピットに叩きつける。
凄まじい衝撃にパイロットは失神したようでジムクゥエルはその場で崩れ落ちる。
カイはMSを一機たりとも爆発させること無く街中での鎮圧戦のお手本のような戦いをして見せた。
『アムロ、遅くなって済まない』
カイがギャプランの外部スピーカーで言う。アムロの声も問題なく拾えるだろう。
「ギリギリだ。どうだパイロットに戻って鍛え直さないか?」
『悪いが今の俺はMSよりペンこそが武器何でね』
「残念だ」
『それよりここからずらかるぞ。車ごと運ぶからその何処でナンパしたか知らないが美人さんと大人しくしてろよ』
「分かった」
ギャプランは車を持つと飛び立つのであった。
「どうだ参加したことを後悔しているか?」
「いえ、NTというものをアムロが人類の革新に駆ける気持ちが理解出来ました。
あなたは身も心も捧げるのに相応しい人です」
「ありがとう。なら僕も後悔させるわけにはいかないな。
ニューギニアの戦いが終わったらニルヴァーナに連れて行くことを約束するよ。
それまでは俺の副官を任命する」
「はっ慎んでお受けします」
アムロは新たなる同志を得た。
そして地上における一大攻勢作戦ニューギニア攻略戦が始まるのであった。