ディジェとイフリートはニューギニア基地内部に突入した。
「うぅうわああああああああああああああああ」
「にげろ~」
格納庫内にいたメカニック達は蜘蛛の子を散らすように逃げていき、アムロも敢えてその背を撃つようなことはしなかった。
格納庫内部には応急修理中だったらしいMSが数機が残されているだけだった。
「どうする大将、内部から破壊するか?」
「出来れば無傷で手に入れたいが」
格納庫の一つを落としただけで戦闘はまだ続いている。要塞制圧の要の歩兵部隊を突入させたいが要塞砲は生きているので迂闊に空輸は出来ない。ここからビームライフルを撃ち込みまくれば要塞を中から爆破も出来るが、出来れば無傷で手に入れて後に活用したい下心もある。
「だったらMSを降りて2人で制圧戦を始めるか?」
「それも面白いかもしれない」
「何が面白いんだアムロ?」
突如通信に割り込みクワトロ・百式が兵員輸送車を抱えて格納庫に乗り込んできた。
「クワトロ大尉!?」
「アムロはここで兵員輸送車の護衛をしていろ」
クワトロは有無を言わさぬ口調で命令しつつ兵員輸送車を下に降ろす。そして輸送車からは歩兵がわらわら出てきて隊列を整えていく。
「私は後続の歩兵を連れてくる」
「なら俺も・・・」
「護衛していろ。
イフリートの君は外に出てここを奪還しようとしている敵部隊の阻止を頼めるか?」
「了解だ」
素直に従いイフリートはホバーを効かせて外に出ていく。
「君がいなくなったら歩兵部隊は無防備になるからな」
捨て台詞を吐いてクワトロも外に出ていく。
「やれやれ、大人しく留守を守るか」
アムロは渋々周囲の警戒に入るのであった。
陸戦隊に突入されたニューギニア基地本部はほどなく降伏をするのであった。
まだ事後処理中とはいえ戦勝ムードに浮かれる兵士達とは裏腹にアウドムラのブリッジには重い空気が漂っていた。
青ざめたアムロとハヤトが職員室の呼び出された学生のように並んで立ち、その前に腕を組んで仁王立ちをするクワトロがいた。
「後方で指揮をしているはずのお前がなんで前線にいたのか? 私が納得出来る理由があるのなら聞こう」
クワトロの決して声を荒立てない冷たい声がブリッジ内に異様に響き、巻き込まれたくないとブリッジクルーはひたすら自分の職務に専念していた。
「後方でふんぞり返っていたら連邦の官僚と同じになってしまう。組織のリーダーとしては先頭立って模範を示すべきだと思いまして・・・」
「それが許されるのは現場のリーダーまでだ。そして現場のリーダーを任されていると思っていたが、私では模範にならないか?」
「そんなわけ無いじゃ無いか。君が先頭に立って戦う姿にみんな勇気づけられているよ。なあハヤト」
「そうだともクワトロ大尉はリーダーとして皆を十分鼓舞してくれている」
アムロはハヤトにパスを出し、ハヤトも必死にクワトロを立てる。
「そうか君にそんなに評価されているとは嬉しいな」
クワトロの笑顔にヨイショしたアムロもハヤトもほっと胸を撫で下ろす。
「だったらなんでアムロを止めないかな~、私は出撃前に頼んだよね」
「えっそっそれはですね。一応止めたのですが、やはりカラバも軍隊でして上官の命令には逆らえないというか・・・」
「上官を諫めるのも部下の務めだと思うがな。そもそも君とアムロは戦友だろ? そんなことも言い合えないような仲なのか?」
「そんなことはないぞ」
「ならその戦友が2人揃って共謀して悪さをしたと言うことか?」
こうしてアムロとハヤトは永遠にクワトロにチクチク説教を喰らうかと思われたが、そこにマウアーが割って入ってきた。
「すいません。入電が入りました」
「君か。そう言えば君にも言いたいことがあるのだが」
クワトロは普段モテるだけに相手が女だろうと容赦はしない。
「お説教は後で聞きます。今は報告を先にさせて下さい」
「分かった」
「トリントン基地を攻略していたカジマ中佐より入電。
『我トリントン基地攻略成功』
だそうです」
「そうかやってくれたな」
アムロはガッツポーズを取る。
「アムロこれで」
「ああこのニューギニア基地を中核として、アウドムラ、スードリ、トリントン基地による防衛体制が整った」
ニューギニア基地が陥落した場合、トリントン基地がニューギニア基地奪還の最前線となることは明白。その場合僻地のトリントン基地に戦力が増強され警戒は厳重になるだろう。ならば戦力を割ってでも弱い内に叩こうとアムロはニューギニア・トリントン両面作戦という一歩間違えば愚策を決断したのであった。尤もこれはユウ・カジマがいればこそ、シミュレーションの自分に勝ち、NTの一端に触れたユウ・カジマをアムロはかなり信頼し期待しているようだ。
「それは朗報だが、私の話はまだ・・・」
「よーーし、同志諸君に大々的に発表するぞ。今夜は祝勝会だ」
「おーーーーーーーーーー」
アムロとハヤトはわざとらしく肩を組んで喜び合いブリッジから出ていく。
「ふう~マウアー少尉」
「はい何でしょう?」
「本当はいつ電文は来たんだ?」
「10分ほど前です。あの人も多少は絞られた方がいいでしょう」
「そうか」
クワトロはマウアーにはそれ以上何も言わないのであった。
三日後地上での事後をハヤトとユウに託しアムロはマスドライバーを使って宇宙へと戻るのであった。
予定外の慌ただしい行動だがこれは宇宙においてティターンズの大規模作戦を察知したからなのである。
時代は激動へと進んでいく。