deZire ガンダム   作:コトナガレ ガク

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第32話 ここは俺に任せて先に行け

「アムロ、これを見てくれ」

 クワトロに言われアムロがレーダーを見ると艦隊行動を取る三隻の艦影が映っていた。

 上手くデブリやミノフスキー粒子が残る宙域を通って撒いたかと思ったが甘かったようだ。多分向こうも此方を見付けているだろう。

(行き先を読まれた? まだ知らない有能な奴がいるらしいな)

 一度はシャトルを見失ったティターンズだが完全に宙域を支配することで設置出来た中継衛星を使ったレーザー通信によりシロッコのタイムラグの無い的確な指示で捕捉されたとは流石のアムロも知るよしが無かった。

 もはや輸送シャトルで振り切ることは難しい、遅かれ早かれMS部隊が発進され捕捉されるだろう。主導権を握るティターンズは仕掛けるかタイミングを計っているのだろう。

 恐らくデブリ帯を抜けたタイミングで仕掛けてくるとアムロは読む。

「どうする?」

「どうもこうも手は一つしか無い。このままサイド1に向かうのみだ」

 デブリ帯に留まったところで味方の援軍より敵の増援の方が早いだろう。

「それしかないか」

「それで百式はどうだ?」

 アムロは先程格納庫で百式の整備を済ませたクワトロに尋ねる。

「ガンダムmkⅡの推進剤を百式に移した。簡単な整備を済ませたし、後一度くらいは戦える」

「そうか。なら敵が此方を見付けてないことを祈って休もう」

「そうだな、私も休ませて貰うとするか」

 クワトロが空いているシートに座るのを見てアムロは深く呼吸して瞑想を始めた。

 

 アムロが瞑想してどのくらいの時が経ったのかシャトル内にアラートが鳴り響く。アムロの読み通りデブリ帯を抜けて直ぐのことだった。

「敵からMSが発進されました。新型2、ハイザック7機」

 サラミス三隻が運用出来る最大MSが追っ手に差し向けられた。此方からの反撃は無いと高を括って直衛機を残さないようだ。そしてそれは正しい。

「ミノフスキー粒子散布」

「了解」

「進路、二時の方向に2°修正」

 ゆっくりと目を開けたアムロは慌ただしく動くクルーに進路の微調整の指示を出す。

「? 了解です」

 今更の進路変更に何の意味があるのか全員が理解が出来なかった中、覚悟を決めた表情のマウアーがアムロに進言する。

「アムロ大尉」

 マウアーは大尉を付けることで参謀として意見を述べていることを強調する。

「どうしたマウアー」

「私が百式で出ます」

「君が?」

「はい、クワトロ大尉もあなたもこれからの為に失うわけにはいかない人材です。私が足止めします」

 一点の揺らぎの無い瞳でマウアーは真っ直ぐにアムロを見る。それは何かに殉じる者の覚悟が静かに漲っていた。

「君1人犠牲になったところで大して時間は稼げない。無駄死にだ」

 冷静にアムロは言う。

 正直マウアーレベルでは大して時間は稼げない。まして敵は新型の可変MSガブスレイ、マウアーが撃墜された後に余裕でシャトルは捕捉され撃沈されるだろう。

 死にたくなければ降伏するしかない状況と言っていい。

「しかし、このままでは」

「そうだ、その役目は私にさせて貰おう。こう言っては何だがMSの腕には自信がある。最悪相打ちくらいには持ち込んでみせる」

「ああ君の腕は信頼している」

 クワトロはアムロがこれから人類の革新を目指すならMSの腕でない面で失うわけにはいかない人材でもあるが、この中ではアムロに次いでNo2の腕を持つクワトロで無ければ時間稼ぎも出来ないであろう。

「待って下さい。それなら俺がやります」

 クワトロを押しのけカミーユが名乗り出てきた。血気盛んで潔癖な若者らしいカミーユをアムロは好ましく感じる。

「こんな危険なこと弟にやらせるわけにはいかない。私に行かせてお兄ちゃん」

 ロザミアも志願する。

「その気持ち大事にしてくれ」

 アムロはカミーユとロザミアを抱き締める。

「ちょっちょとアムロさん」

「お兄ちゃん」

 赤面するカミーユとロザミア。

「みんなの気持ちは嬉しいが、短慮でもあるぞ」

「えっ」

「どういう意味ですか、アムロ」

 マウアーが抱き締められるカミーユを羨ましそうに見ながら尋ねる。

「全員で生き残るんだ。

 クワトロは百式で迎え撃ってくれ、各員は砲座に付け。

 三分だ。三分持ち堪えるだけでいい」

「三分」

 具体的に示された数字はクルーを勇気づける為の気休めか、それとも三分経てば奇跡でも起こるというのだろうか。

「のらりくらり三分を稼ぐくらい歴戦の勇士の君なら余裕だろ」

 アムロはクワトロの胸をトンと叩く。

「煽てるなアムロ。

 だがたった三分でいいのか?」

「それで十分だ。後のことは考えなくていい」

「分かった。君の期待に応えて見せよう」

 クワトロは死地に向かうというのに意気揚々と格納庫に向かったのであった。

 

 

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