deZire ガンダム   作:コトナガレ ガク

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第33話 もう遅い

「クワトロ・百式出る」

 輸送シャトルの格納庫のハッチが開き百式が出てくる。

「さて頼まれた以上仕事は果たす。

 リミッターを超えた動きというものを見せてやろう」

 百式はスラスターを全開にしガブスレイ、ハイザックの部隊に一機で突撃していくのであった。

 

「ジェリド来るぞ」

「おうっ。敵はたかが一機だ。作戦通り行くぞ、フォーメーション」

 ジェリド・ガブスレイを頂点にMS隊はV字になって百式に向かっていく。

「後ろには誰も行かせん」

 9対1、普通ならこの数の差で真正面からぶつかる馬鹿はいない。だが後ろにMSを通すわけにはいかないクワトロ・百式は敢えて正面から挑んでいく。

 劣勢の上に縛りプレイ、クワトロに勝機はあるのか?

「読み通りだ。全機撃ちまくれ」

 ジェリドが指示を出せば、百式と対峙する9機のMSが攻撃を開始するが、百式は発砲しない。百式は一機で多数を相手にしなければならない以上弾幕を張るなんて贅沢は許されない。一撃必殺、確実に仕留められる距離まで温存するつもりだ。

 無数のビームが百式に逃げる隙間無く向かって行く。

「見せてやろう、百式の真の力」

 迫り来るビームに対して全てを避けきれないと悟った百式は致命傷になるガブスレイのフェダーインライフルの攻撃は確実に躱し、ハイザックの攻撃の内幾つかはプロレスのように百式のビームコーティング部で敢えて受けて見せた。

 斜めに弾くように受けているとはいえ積み重なる熱量に黄金のコーティングが赤く灼熱していく。

「押せ押せ、撃って撃ちまくれ」

 次々に襲い来るビームを躱し受けて白熱し嚇灼に輝きながらも高速機動をする百式の姿は赤い彗星のようであった。

 赤い彗星はついに先陣を切るジェリド・ガブスレイに迫る。

「ジェリド分かっているな」

「ああ、俺だっていつまでも新兵じゃ無い部隊の勝利を優先する。

 全機散開」

 迫られたガブスレイはMAに変形すると迫る百式に合わせて後ろに後退をした。

「何!?」

 機動性はあっても飛び抜けたスピード無い百式では逃げるガブスレイに追いつけない。

「ちいっ」

 ビームライフルを斉射するが逃げに徹する相手に悉く躱されてしまう。だがこれは仕方が無いことでもある。相手が凡人パイロットでも逃げに専念されれば3次元機動が出来る空間戦では仕留めるのは難しい。まして相手は一応エリートパイロットであり格上のMSに乗っているとあっては。

 クワトロはならばと狙いをハイザックに変えようとするが、ガブスレイに詰め寄っている間にハイザック達も一目散に百式から距離を取る。かといってシャトルに向かう様子も無い。

「私を包囲しようというのか?

 がっそれは私にとって好都合というもの」

 百式を中心にティターンズは球状に展開し包囲した。

 包囲陣が完成したティターンズだが積極的には攻撃してこない。包囲を抜けようと百式が迫れば牽制で攻撃しつつ迫られた分だけ後退する。サッカーの時間稼ぎにも似た戦術をとる敵は時間を稼ぎたいクワトロにとっては好都合に見えた。

「いいぞジェリド、お前が大人なら俺達の勝ちだ」

 カクリコンの呟きに答えるように宙域に高速で迫る影をクワトロは捕らえた。

「あれは!?」

 サラミスだ。後方で待機するのが定石となっていた戦艦が敢えて前に出てきたのだ。そして包囲される百式を無視して輸送シャトルに向かって行く。

「しまった」

 カクリコンは初めから百式を足止めにしてサラミスでシャトルを撃沈する作戦だったのだ。MS相手には無力と言われるサラミスも輸送シャトルにとっては抗いがたい驚異。

 気付いてももう遅い。今からでは百式では包囲を突破出来たとしても最大戦速を出しているサラミスに追いつけない。

 

「サラミス三隻が迫ります」

「もう終わりだーー」

 クルーが慌てる中アムロは静かに言う。

「シャトルを下方に2°軌道修正。早くしろ」

「へっ」

 パイロットはパニクっていてアムロの指示を理解出来ない。

「どいて」

 駄目だと判断したマウアーがパイロットをどかして自分でシャトルを操作した。

 シャトルが下方に沈むと同時だった。

「アムロを虐めるなーーーーーーーーーーーー」

 強力なメガ粒子砲の火線が迸り、迫り来る先頭のサラミスを貫いた。

「「「「何!?」」」」

 アムロを除いた戦場にいた全てのものに驚愕が走る。

「アムロ、助けに来たよ」

 アムロを助けられて喜ぶフォウの嬉しそうな声がシャトル内に届いてくるのであった。

 そのフォウが乗るのは一年戦争末期、白い悪魔と互角に渡り合った悪夢のMSジオングであった。

 かつてジオンがその威信を懸けて建造したMS。三体製造されたが、既にNTが居なかった為にシャアが乗った一号機以外は出撃することすら無く行方不明となっていた。

 ジオンの名を冠した最強MSを連邦に渡すことを良しとしない者が隠した二機をアムロが地下活動時代に見付け近代化改修を施しておいたのだ。

 サイコガンダムに比べればサイコミュの性能は低いが逆に負担は低い。この機体ならマイルドに再調整されたフォウでも十二分に活用出来る。

 

「馬鹿ななぜ援軍に来れた?」

 カクリコンの動揺も当然だった。

 シャトルは位置割れを恐れて救援信号も出していなかった。そんなシャトルを見付けるにはそれなりの部隊を出さなければならないはず。だがエゥーゴの部隊の殆どは月に集結していてこの宙域にはいないはずだった。

 普通になら絶対に助けに来れない。だがこれは連邦がNTを恐れた割にはNTの本質を理解してないことの証左でもあった。

 連邦もジオンもNTをサイコミュを活用できる強いMSパイロットとしてしか見てないが、それは誤りである。

 ミノフスキー粒子下において距離に影響されること無く互いに感じとり念話が出来ることが戦場においてどれだけ脅威になるか理解出来てない、いやオールドタイプには想像出来なかったのだ。

 フォウはアムロが逃亡中に出していた呼び掛けに反応して救援に来たのだ。

 

 突然僚艦が撃沈されたがティターンズもエリート部隊。残る二隻の内一隻は直ぐさまジオング改に向かって砲撃を始めた。

 フォウは非人道的な処理を辞めマイルドに再調整されたとはいえ、常人には無い耐G能力にNTに近い感覚を持つ。フォウはサラミスの砲撃程度軽々と躱していくサラミスに迫る。

「落ちろ、アムロを虐める嫌な奴」

 ジオングの指より10門のメガ粒子砲が炸裂し、会敵から二分も経たずにサラミス2隻が撃沈した。

「残り一隻」

 フォウが残りの一隻を見ると180°回頭をして逃げだそうとしていた。

「逃がさないよ」

 チャージの終わらない指ではなく胴と口より3門のメガ粒子砲が逃げようとするサラミスに放たれるが、当たる直前に霧散した。

「小細工を」

 もう一隻のサラミスは早々に交戦を諦めてビーム攪乱膜を展開していたようだ。この見切りと対応の速さかなり優秀な艦長である。

「ならビーム攪乱幕の内に潜り込んで仕留めてやる」

(避けろ)

 追撃しようとしたフォウにアムロの思念が届き咄嗟に躱せば強力なビームが通過していく。

「誰だ?」

 母艦を撃沈されては宇宙を彷徨うことになる。百式の包囲を解いてハイザック2機とカクリコン・ガブスレイがフォウ・ジオング改に襲い掛かる。

「所詮旧型。機動性は此方の方が上だ。懐に潜り込んでしまえば」

「アムロの前で恥を搔かせてくれたな」

「ん? 腕が無い」

 ジオング改に格闘戦を仕掛けようと迫っていたカクリコンは今更気付いた。

「まさか、うっうわああああああああああああめりあーーーーーーーーーーーー」

 予期せぬ四方からのオールレンジ攻撃が炸裂した。

 オールレンジ攻撃、有名なNTの攻撃だが実際に経験したものはこの時代だと少ないというよりアムロぐらいしかいない。その為オールレンジ攻撃を想定したシミュレーション訓練をすることもなく、存在を知っているのは戦史を研究している者くらいである。

 カクリコンは自分が何をされたか分からないうちに撃墜されたのであった。

「カクリコンーーーーーーーーーーーーーーーー。

 くそっ全機後退だ。サラミスに置いていかれたら宇宙の迷子だぞ」

 ジェリド達はカクリコンが稼いだ僅かな時間でジオングから離脱出来たサラミスに追い縋っていくのであった。

 

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