deZire ガンダム   作:コトナガレ ガク

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第35話 襲撃

 ジュピトリス。

 惑星間航行が可能な全長2Kmにも及ぶ巨大輸送船である。海賊対策に武装がされているだけで無く内部には工廠まであり、ちょっとしたコロニーと言っても過言ではない。

 ティターンズに参加したシロッコではあるがジュピトリスのティターンズへの所属は拒否している。かといって連邦本体に帰還させるわけでも無く、ほぼシロッコの私有船と化している。

 アポロ作戦によりシロッコは前線に出ている為、ジュピトリスは後方の宙域に停泊していた。ジュピトリスの周りには、大規模作戦中であるにもかかわらずサラミス3隻が付く破格の護衛の上に、ジュピトリス内にもティターンズの兵士が入り込み船員はティターンズの監視下に置かれていた。今は監視に止めているがシロッコに隙があれば直ぐさま接収する気満々である。

 そんなジュピトリスが停泊する宙域に近付くデブリ群があった。一年戦争後の宇宙ではよくあることである。手慣れた様子でサラミスが迎撃態勢を取る。

 サラミスの主砲が発射され最も近付いていたデブリの一つが砕かれた。更に次、大型デブリに照準を合わせ発射。

 そして宙域が閃光に包まれた。

「なっなんだ」

「目が目がっ」

「モニターが死にました」

「レーダーも使用不能。ミノフスキーではありません、古典的なチャフです」

 戦線から離れた監視任務と気が緩んでいたサラミス内のティターンズの兵士達はこの異常事態に完全に浮き足立った。その隙を逃さずデブリ群に紛れていた三つのダミーバルーンが中から炸裂し三隻の小型揚陸艇が表れた。表れると同時に小型揚陸艇はエンジン全開の急加速してジュピトリスに向かって行く。

 この動きを三隻の護衛のサラミスは全く感知出来なかった。狙い澄ました矢の如く小型揚陸艇は護衛のサラミスをすり抜けジュピトリスの主要部分近くにラムアタックを敢行するのであった。

 

「おらーー、久方ぶりの本業だ。野郎共抜かるんじゃ無いよ」

「「「イエッサー姐さん」」」

 小型揚陸艇の内ブリッジ近くに突撃した小型揚陸艇からはシーマ率いる旧ジオン軍精鋭海兵隊がジュピトリス内部に雪崩れ込んでいく。

 ダッダダダダダダダダダダ。

 サーチアンドデストロイ。目に入ったティターンズ兵士に容赦なく鉛弾が打ち込まれる。

 一応護衛が名目ティターンズ兵士は拳銃しか装備して無くアサルトライフルで武装した海兵隊に紙切れのように排除されていく。

 相手の船に乗り込み白兵戦で制圧することこそ海兵隊の本領。シーマ率いる海兵隊は水を得た魚のように生き生きと破竹の勢いでブリッジに向かって行く。

「おらおらっシーマ様のお通りだよ」

 自動小銃を乱射しつつブリッジに迫ったシーマだったが、ここで勢いを止められた。ブリッジへと入る入口に隔壁が降ろされたのだ。

「ちっあんまり壊したくないんだけどね。

 やっておしまい」

「へいっ」

 躊躇無く後ろにいた部下の1人からバズーカが隔壁に放たれ、大爆発と共に隔壁は吹き飛んだ。

「一番乗りは貰った」

「姐さん。危ないって後ろに下がって」

 部下の制止など聞かずに一番槍でブリッジに突入したシーマは、まだ煙が立ちこめるというのに鋭い嗅覚でブリッジ内にいたティターンズ兵士に向けて自動小銃を一斉射、皆殺しにした。非情だがジュピトリス内にいるティターンズは船員で無く自分達と同じ陸戦隊、今は強襲で一方的だが立ち直られれば互角の戦闘力を持つ。部下を危険に晒さない為にも下手な情けは無用である。

「この船はシーマ様が貰った。死にたくなければ手を上げて降伏しな」

 こうなれば勝負は付いた。元々戦闘員でないジュピトリスの船員は迷わず手を上げるのであった。

「よーしいい子だ。野郎共席に付きな」

「へい」

 一部の部下は降伏した船員の拘束、残りは各席についてジュピトリスの掌握を始まる。

「ふっふ~ん、中々いい席じゃないか」

 シーマはジュピトリスの艦長席についてご満悦の笑顔を浮かべた。

「さーてこっちは上々だが、若大将の方はしくじってやしないかね」

 シーマはちょっと心配そうに呟くのであった。

 

 三隻の突撃艇の内、一隻はメインエンジン部近くに突撃。直接突撃しなかったのはエンジン部を破損しない為。

 リーダーはガラ、ガラ率いる部隊はエンジン部の制圧を開始した。

 ジュピトリスは2Kmに及ぶ巨大艦、これを制圧するには人員もだが時間も掛かる。そこで人員も時間も無いシーマ達はブリッジとエンジン部、ジュピトリスの脳と心臓を一気に制圧をすることにしたのである。

 コントロールを奪い、アジトに輸送しつつ時間を掛けて内部の完全制圧を行う計画なのであった。

 そして機関部はティターンズの監視員も少なかったこともあり、程なく制圧が終了することになる。

 

「ジュピトリス内に敵が侵入したようです」

「慌てるな。ジュピトリスは巨大だ、簡単に制圧などできん。こちらも陸戦隊を応援に送り込むぞ。

 海賊如きが、いやエゥーゴの悪足掻きか。どちらにしろ恥を搔かせてくれた礼は念入りにしてやる」

 護衛のサラミスも遊んではいない。センサー類が復帰しジュピトリスの状況を知ると動き出していた。もしサラミスから応援の陸戦隊が送り込まれれば、点と点を制圧したに過ぎないシーマ達は一気に苦境に陥る。

「ん!? 大変ですこの宙域に接近MSあり。ゲルググマリーネです」

「なんだと。此方もハイザックで応戦。ジュピトリスまでの道を確保させろ」

「了解」

 迎撃に当たるハイザック部隊とゲルググマリーネの戦いの火蓋が切って落とされた。

 最新鋭ハイザックだがゲルググマリーネはジオン公国の傑作MSの上に近代化改修も施されている。MSの優劣的にはゲルググマリーネ改の方がやや上である。あっという間に乱戦に持ち込まれ、サラミスはジュピトリスに援軍を送る為の舟を出せなくなる。

 

 ジュピトリスの本来の目的は木星からヘリウムを運送することで戦闘では無い。だが長い航海時には海賊の襲来もあり、それなりの武装はされている。その上指揮官がシロッコの時にはそのカリスマと統率力でまさに移動要塞と化して、おいそれと手が出せるものではなくなっている。だが今シロッコはティターンズとして前線に立っている為不在。これを千載一遇のチャンスと捕らえてアムロは迷わず動いた。

 本来なら月に向かうべきかも知れない。だが間に合うか分からない賭に出るよりは、月は仲間のブライトを信じて任せ、ジュピトリス奪取を決断した。

 仲間を信じて任せ、大局を見据えて動く。アムロは確実に一パイロットから上に立つ指導者としての道を歩いているのである。

「隔壁爆破します」

「やってくれ」

 隔壁は爆破され、空いた穴にグレネードを放り込みアムロが率いる隊はジュピトリス格納庫に突入する。

 アムロは視界が塞がれた空間においてNT能力で殺気を向ける敵を確実に捉えて狙撃していく。

 煙が晴れ視界が晴れた頃には抵抗する者はいなくなり、メッサーラ、ジ・オなどのシロッコ自ら設計した最新鋭MSがズラリと並べられた壮観な光景が広がっていた。

「若大将、ブリッジと機関部の制圧も終わったそうです」

 海兵隊の1人が通信機で他の部隊とやり取りをして結果をアムロに報告する。

「よし、なら艦内放送を流したい準備をしてくれ」

「了解です」

 

「私はかつての大戦の英雄でありNTのアムロ・レイである。

 この船のブリッジ、機関部、格納庫は制圧した。これ以上の抵抗は無意味である降伏せよ。降伏すれば命は保障する。

 君達がシロッコを敬愛していることは分かっている。なら降伏は裏切りで無く、シロッコへの信頼である。これ以上無駄な抵抗をして船を破壊すれば、君達が敬愛するシロッコが戻ったときに嘆き悲しむだろう。君達がシロッコを信じるならここで降伏し、これ以上ジュピトリスを破壊すべきではない。

 三分待つ。どの選択がシロッコへの信頼になるか考えるんだ」

 

 三分後、ジュピトリス船員は降伏、生き残ったティターンズも降伏し、アムロ達はジュピトリスを掌握するのであった。

 

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