deZire ガンダム   作:コトナガレ ガク

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第37話 甘い男

 ジュピトリスの露払いをしていたザンジバルと合流を果たしたアムロ達であったが、クワトロから衝撃的な報告を受けることになった。

「エゥーゴ艦隊が負けたのか」

 ジュピトリス内の会議室に集まっていた主要メンバーに動揺が走る。

「ああ、月衛星軌道上の決戦でエゥーゴはティターンズに敗れ、フォンブラウン市は制圧されたそうだ」

 先行して連邦のパトロール艦隊の相手をするなどしていたザンジバルは積極的に偵察機も放って情報収集に努めていた。そのおかげでエゥーゴの敗走部隊が仲間に放ったエマージェンシーコールを傍受することができた。その後は元海賊だけあって手慣れたもので、勝利し気が緩んだ連邦軍の通信を傍受し裏付けをしっかりと取っている。

「ブライト達は?」

 報告を受けて蹌踉けたアムロはマウアーに支えられるが、そのままクワトロに仲間の安否を尋ねた。

「不明だ。

 それでどうする?」

 アムロより仲間の死に成れていることもあるがクワトロは敢えて冷静に尋ねる。

 状況的にティターンズ勝利に王手を掛けたと言っていい。

 エゥーゴの主力艦隊は潰され、月を抑えられたことでアナハイムの支援も受けられなくなる。このまま何もしなければティターンズ強しと世論は形成され、スペースノイド達は暴力に恐怖し身を縮めて生きていくことになるだろう。

 そんな世論を吹き飛ばす逆転の一手が必要である。

「アムロ大丈夫? アムロを虐める奴は私がみんな消してあげるよ」

「私もお兄ちゃんの為なら悪い人は倒すよ」

 フォウやロザミアはアムロを励まそうと声を掛けてくる。

「アムロ大尉、直ぐに月に向かいましょう。このジュピトリスなら対抗可能です」

 元サラミスの艦長ラウスマンはアムロに進言する。無謀かも知れないがフォンブラウン奪還が叶えば世論をエゥーゴに引き戻すことができる。

「いや無理だろ。この人数じゃ動かすだけで精一杯だぞ」

 ガラが反対意見を出す。ジュピトリスは主要部分を抑えたことで操艦だけは出来ているような状態で機能を万全に発揮するにはジュピトリスの乗員がアムロに心服して協力してくるか補充要員がいる。

「しかし同志を見捨てるのか」

「浪花節に付き合う気はないよ」

 食い下がるラウスマンをシーマが一蹴する。いざとなればアムロと共に宇宙海賊に戻るのもジュピトリスで新天地を目指すのも悪くないと思っている。

 喧々諤諤の議論が為される中アムロが決意を込めて口を開いた。

「エゥーゴの主力が壊滅した今の状況ではフォンブラウン奪還は不可能だ。所詮1人の英雄がいたところで戦争には勝てないということだ」

 如何に鬼神の如く強かろうが、地球のみならず宇宙にも広がる戦場全てをフォローすることなど1人では出来ない。局地的な勝利を捥ぎ取ったところで他の戦線が負けてしまえば大局的には敗北である。

 そんなこと知っていたはずだが、エゥーゴとティターンズという紛争に近い局所的な戦いが続いたことで慢心していたとアムロは思い知った。

「ならばどうする?」

「このピンチをチャンスにすることで同志に報いる。

 ティターンズの主力は月に集結している。この状況を利用して計画を前倒しする」

「やるのか」

 この中でクワトロだけがアムロの言った意味を理解したようで覚悟をアムロに問う。

「やるしかないさ。

 俺は準備の為にサイド2に向かわなければならない。そこでクワトロ大尉には仕事をして貰いたい」

「なんだ?」

「月に向かってエゥーゴの敗残部隊をまとめて欲しい」

「この状況で私に君から離れろというのか?」

 ジュピトリスの奪還は辛うじて主要部を抑えているだけに過ぎない不安定なもの。その上敵の勢力圏から完全に脱したわけでは無い。近くに居たパトロール艦隊などは潰したが直ぐさまティターンズはその面子に懸けて追撃部隊を送り込んでくるだろう。この状況下で戦力を分ける行為はあまり賢い選択では無い。

 クワトロが懸念を示すのは当然だった。

「君にしか頼めない。そして今すぐやらなければならない」

 誰かがまとめねば敗残部隊など個々に狩られていくだろう。それでも強い者は生き残る。これからの戦いの為ここで狩られるような弱い者を切り捨てるのが正解かも知れないがアムロは志を同じくした同士達が無為に死んでいくことに耐えられなかった。

「分かった」

 自分のように非情に成れない男だからこそ神輿にした身としてはこう言われては従うしか無かった。

「だが私ではザンジバルは動かせないぞ」

 クワトロは優秀な男だがザンジバルは軍艦と言うよりシーマを中心にまとまった海賊、ファミリーに近い。多少ならいいが長期となればクワトロでは立ち回らなくなるのが目に見えている。

「シーマ頼めるか?」

「しゃーないね。ガラ」

「へい」

「若大将のサポートしっかりやりなよ」

「分かってますぜ姉御」

 こうして愚策かも知れないが部隊は分けられた。

 シーマ、フォウ、ゲルググマリーネ隊はザンジバルに戻り月に向けて出発。

 副官ガラと陸戦隊、サラミス生き残り組、カミーユ、マウアー、ロザミアはジュピトリス組となった。

 ロザミアは再調整がされてない為今はアムロをお兄ちゃんと呼んで安定しているが無理に戦闘をさせれば精神崩壊が進んでしまう。それが分かっていて出撃させられるアムロでは無い。そうなるとMS隊はアムロ、カミーユ、マウアーだけとなる。攻撃だけならいいがこの巨大な船ジュピトリスを守りながらとなると手が回るか心配になる数になる。本当ならジュピトリス護衛にゲルググマリーネ隊を残したかったが、そうなると救援に行くクワトロ達が力不足となり危険を冒して行かせる意味が無くなる。

 アムロは甘い。それでもその甘いアムロだからこそ皆がついていくとも言える。

 アムロは甘いのを自覚しながらも捨てる気はなかった。

「ジュピトリスのメカニックには任せるのは危険だ。整備は自分でやることになるぞ」

「了解ですアムロさん」

 カミーユは力強く答えるのであった。心強いがそれだけで安心してしまってはアムロも上に立つ資格が無い。

 アムロはここで温存しておきたかった切り札の一つを切ることを決意したのであった。

 

 

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