「このっ」
ガキンッ、アムロ・ジ・オのビームサーベルの一閃が鈍い音と共にハイザックを両断した。
追撃隊の掃討を終え、もう何度目の出撃か分からないアムロは格納庫に帰還した。
「アムロ、疲れてないか? 寝た方がいいんじゃ無いか」
出迎えてくれたマウアーが心配そうに言う。
「そうもいかない。ジ・オの間接部の動きが可笑しくなってきた。応急処置だけでもしておかないと動かなくなる」
「なら私がやっておく」
「そういう君だって碌に休んでないじゃないか」
ティターンズ追撃隊のバスクは一度に出撃してはアムロに一度に始末されるだけとアムロ達の疲労を狙った波状攻撃を仕掛けたのだ。それも配下のティターンズではなく近くの連邦パトロール隊に片っ端からジュピトリス奪還の名目でティターンズ権限で命令を出していたのだ。これに連邦軍は逆らえず、結果として逐次仕掛けていくことになる。
連邦軍兵士の犠牲を顧みない作戦である。幾ら強権が許されるティターンズでも下手をすれば後々問題になる可能性もある。それでもバスクはやるしかなかった。月での決戦に参加したシロッコは手柄を立て、シロッコから預かる形で取り上げたジュピトリスが敵に奪われたとあればバスクの面子は丸潰れである。ティターンズ内の政治バランスが大きく崩されてしまう。
利己的なバスクの作戦ではあったが、非道だが効果は絶大で、ランダムな間隔で小出し小出しに攻撃を仕掛けてくる追撃隊。帰還して直ぐに追撃隊が来るかと思えば、休憩の寝入りばなに襲撃されることもある。常に緊張感を強いられアムロ達の疲労は確実に溜まっていく。それでも人間なら希望があれば気力で補うことも出来るがMSはそうもいかない。シロッコ製MSは高性能故に最高のメンテナンスを要求する。誤魔化しが効かないマシン故に満足なメンテナンスが行われないことでジ・オ、メッサーラ共に急速にパフォーマンスが低下していった。
「私はカミーユとローテイションを組んでいるから大丈夫よ。それよりもあなたは出ずっぱりじゃ無い」
「まだまだ若いもんには負けないつもりさ」
「何馬鹿を言っているの!!!
あなたが倒れたらどうするの、あなたの代わりは居ないのよ」
マウアーは本気でアムロに怒って詰め寄った。このまま殴り飛ばしてでも休ませる勢いである。
「すまない。なら2人でやろう。早く終わるし休める」
叱り飛ばす母親のようなマウアーにアムロは折れた。一軍の最高幹部アムロも本気で怒った女性には勝てないのである。
「分かったわ。その代わりメンテが済んだら休みなさいよ」
「ああ、これ以上可愛いマウアーに怖い顔をさせられないからな」
「! もう馬鹿」
アムロとマウアー2人で仲良くジ・オのメンテナンスを始めるのであった。だが敵は狡知に長けたバスク、ここが限界点と見切りついに本命による総攻撃を仕掛けてきた。
『今までような連邦パトロール部隊じゃありませんぜ。サラミス10、アル・ギザ1。敵さんついに勝負に来ましたぜ』
「いい勘をしている、的確に此方の疲労を読んだな」
ガラからの連絡を格納庫で受けてアムロが言う。
「どうするアムロ」
「パラス・アテネは?」
「調整は終わっているわ。ミサイルもフル装備よ」
「そうか。なら此方も全力出撃だ。マウアーはパラス・アテネで出てくれ」
「了解」
ミサイルが主体のパラス・アテネはまだ開発中なのか予備ミサイルは用意されていなかった。その真価を発揮出来るのは実質一回きりである。
敵が艦隊で来たことでアムロはここが正念場と出撃させる決断をしたようだ。
ジ・オ、メッサーラ、パラス・アテネが出撃する。ジ・オとメッサーラは可動限界に近く実質これが最後の出撃となるだろう。
「カミーユ、ここを切り抜ければ要請していた応援と合流出来るはずだ。騙し騙し行く必要は無い全力で行け」
バスクはアムロ達の疲労を見抜いたかも知れないが、月衛星軌道上でエゥーゴ艦隊を破ったことでまさか援軍が来ることは想定してなかった。想定していたらもう少し早い段階で仕掛けたであろう。逆にアムロは援軍がもうすぐ来ると目算がある。ここが最後と補給が難しいパラスアテナも投入した。
「ハイザックなんか蹴散らしてやりますよ」
「おしゃべりはそこまで。敵機を捕らえました。
こっこれは、ハイザック10、ガブスレイ3,未確認MA1。巨大MA1いやMS、これは地上のムラサメ研究所から得たデータよりサイコガンダムだと思われます」
敵機を捕らえたマウアーが驚愕する。
バスクもティターンズ実働隊トップに上り詰め政治力に長けた狡知な男。月での決戦に参加させず対シロッコ用に隠した切り札を持っていたのだ。
ゲーツ・バウンドドック、カーリン・サイコガンダムmkⅡ、秘蔵の強化人間部隊である。特にビーム主体のジ・オにガンダムmkⅡは相性が悪い。
疲弊したアムロはここを切り抜けられるのだろうか?