deZire ガンダム   作:コトナガレ ガク

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第43 集う力 その2

 ジュピトリス内の巨大格納庫内は熱気に溢れていた。

 ペガサスは月がティターンズに占領される寸前、エゥーゴの同志だけでなく最新装備も詰め込み脱出していたのだ。それが次々とジュピトリスに搬入されたのだ。否応なしに格納庫内は本来のメカニックだけでなく物見遊山気分のクルー達が続々と集まっていた。こればかりは仕方ないとノエルも咎めることはしなかった。

 アムロは慌ただしい中1人の男に近付いていく。

「フランクリンさん」

「やあアムロ君、ついに完成したこれを見てくれ」

 フランクリン大尉が誇らしげに披露する先にはガンダムmkⅢが鎮座していた。流行の可変機構や強力な内臓ビームもないがアムロの要求により運動性や追従性などの基本スペックの底上げを目指した機体で、ある意味ガンダムmkⅡのバージョンアップとも言える。

「ナガノ博士との共同開発は実に刺激を受けた。

 現状ガンダムmkⅢより君の期待に応えられるMSはないと断言できる」

 ガンダムmkⅡと違い制約もなく思うがままに技術を注ぎ込めたガンダムmkⅢはフランクリンにとって満足のゆく作品であった。

「見ただけで感じます。素晴らしい出来です。それでサイコミュの方は?」

「それは私から説明させてもらえるかしら」

 女性の声に振り向けば、そこにはナナイがいた。

「勿論だとも。彼女も最高だよ。彼女のバイオセンサーを搭載して初めてガンダムmkⅢは完璧になったんだ」

「あなたの求める水準は高くて苦労しましたわ。でも納得いく物が出来ました。

 現状これ以上のものは無いと断言できます」

「流石だよ、ナナイ。危険を冒してスカウトした甲斐があった」

「あれだけ情熱的なアプローチをされたら女として心が動きましたわ」

 彼女もアムロが地上に降りたときにスカウトした人物である。サイコミュ研究に情熱を燃やす彼女にとって最強のNTと言われるアムロからの誘いは抗うことの出来ない麻薬のようなものであった。

「だが早速で悪いが、君には更に上を目指して欲しい」

「そう言いますと」

 そんな一朝一夕で新技術が開発できるものでは無い。アムロも所詮技術を分からない無能な今までの上司と変わらないのかと軽い失望が顔に出ていた。

「鹵獲したジ・オを君に託す。シロッコが独自開発したバイオセンサーは君のいい刺激になるはずだ」

「ふふっ。怖い人、私の想像の上の刺激をくれる」

「そう言うなよ、君に言われると照れるじゃないか」

 失望から満面の笑顔になったナナイにアムロはほっとする。アムロの計画の為にはナナイにはこれからもモチベーションを維持して開発を続けて欲しかったからだ。

「アムロ君、私もいいだろうか?」

 フランクリンがもじもじと恋する少年のように言ってくる。

「フランクリンさんもですか。あなたまでいなくなるとガンダムmkⅢの調整は誰がするんですか?」

 MSは作って終わりじゃない、これからパイロットの特性に合わせた調整こそ肝なのである。特に決戦を前にして時間はそれほど無い。

「それについては大丈夫だ。そういう事に関しては私以上のメカニックが居る。ガンダムmkⅢは彼女に託す。

 お~いチェーン」

 フランクリンはガンダムmkⅢの調整をしていた女性を呼ぶ。呼ばれた女性はキビキビと動きアムロの前にまで来て敬礼する

「チェーン・アギと言います。若輩者ですが腕には自信があります。ガンダムmkⅢをあなたにベストマッチングさせて見せます」

「チャーミングな顔して自信に満ちているな。期待させて貰おう。後で調整のスケジュールについて打ち合わせをしよう」

「分かりました。では機体整備に戻らせて貰います」

 チェーンはガンダムmkⅢの方に去って行き、気付いたらナナイとフランクリンは消えていた。2人とも技術者馬鹿のようである。

「アッムロさ~ん」

「ルーか。フランクリンやナナイを見事救い出してくれてたな。礼を言う」

 フランクリンやナナイはティターンズから見れば裏切り者、月が征服されてティターンズに捕まれば何をされるか分からない。

「ふふ~ん」

 アムロに言われて謙遜することなく胸を張るのがルーらしい。だがエゥーゴ艦隊が敗れ迫るティターンズ艦隊を前にして重要人物の救出だけでなくアナハイム秘蔵の兵器を掻っ攫ってくるしたたかさは賞賛に値する。

「ペガサスを君に託して正解だったよ」

 ペガサスもアムロの秘蔵の切り札の一つだったが思い切ってルーに託した自分の直感は間違ってなかったと確信する。

「当然です。

 もう月からの脱出時、私がZガンダムを駆って並み居るティターンズ共を千切っては投げの大活躍だったんですから。

 もっ~と褒めてくれてもいいですよ」

「ふふっルーは天才だよ」

 アムロはルーの頬を撫でてあげる。

「その上仕事も出来る。

 Zガンダムだけじゃなく、メタスとかアナハイムの試作品を端からガメてきたんだから。

 ご褒美欲しいな~」

 ルーは可愛くアムロの胸に顔を擦り付けておねだりする。

「ならZはルーが専任パイロットをやるか?」

「やったあ。あたしの華麗な活躍みせてあげちゃんだから」

「いいのですか?」

 キャバクラでホステスにねだられるままにプレゼントするようなアムロにマウアーが諫言する。元々Zガンダムはカミーユ用に開発されたようなもの、カミーユの方が乗りこなせるのではと思ってのことだった。

「時間が無い。Zに慣れる時間は無いだろう。それよりメッサーラに完熟した方がいい」

 ガンダムmkⅢに初乗りする自分のことは完全に棚上げである。だがアムロには乗りこなせる自信があった。

「それでブライトとクワトロ大尉のことは分かるか?」

 アムロが一番気になっていたことをルーに尋ねる。

「はっ。月脱出の時には助けて貰いました。

 それでブライトさんとクワトロ大尉の2人はエューゴ残存戦力の集結と再編成を行うそうです。決戦には必ず間に合わせて連邦艦隊の後方を付くとのことです」

 サポートしてやってくれと言った以上シーマもクワトロと一緒に動くだろう。

「そうか」

「ブレックス准将は?

 脱出を進めたんですが月に残ってレジスタンスを組織するそうです」

「ありがとう。後で詳細の報告を受ける。今は搬入作業が一段落したら休んでくれ」

「了解です」

 元気よく去って行くルーを見るアムロは内心はしくじったと思っていた。

 ブライト、クワトロ、ブレックス准将、シーマと自分が先陣を切って突撃したときに後方の艦隊指揮を任せられる人材が悉くいないのである。

 いや連邦軍内部でさえ一年戦争からデラーズフリートの乱を得て大規模な艦隊運営が出来る人材は枯渇していると言っていい。皆現場レベルで優秀な小粒である。それ故にアムロも提督だけはスカウトできなかった。

 悩んでいても人材は生えてこない。無いなら育てるしかないとアムロは気持ちを切り替えて動き出すのであった。

 

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