「レーザー通信途絶、他の艦と連絡が取れません」
とあるサラミスのブリッジクルーの女性オペレーターが悲鳴のような声を上げる。まだ年若い彼女は1年戦争後に配属されたのだろう、この規模の戦闘を経験したことがない上にこんな状況に追い込まれたのだ、プレッシャーは胃が溶けるほどだろう。
それは他のクルーも同様のようでブリッジ内は浮き足立っていた。
「他の艦は何をしているんだ? このままだと各個撃破されるぞ」
艦長は外を見ようとするが戦闘に備えブリッジに降ろされたシャッター型モニターは高濃度ミノフスキー粒子の影響でノイズの波打ちが激しく隣の艦すらどこにいるのか掴めない。ミノフスキー粒子は通信だけでなく、濃度が上がれば電子機器にすら影響を及ぼす。
「状況を把握する、シャッターを開けろ」
シャッターが上がっていくガラス張りの視界が広がり、自分達に向けられたガンダムmkⅢの銃口が輝くのが最後に見えた。
「はい、分かりましたMS出します」
ブリッジからの内線を取っていた整備員の1人が叫ぶ。
「MSを出すぞ」
「だがモニターのノイズが酷い。こんなんじゃまともな機動戦なんてできないぞ」
整備員の言葉にパイロットの1人が反対する。
MSはガラス張りの戦闘機と違い、外部の様子は全てモニターで把握する。そのモニターを潰されたら外の状況は全く掴めず戦闘どころでない。かといってコクピットハッチを開けて戦闘などしたらデブリで体がズタズタにされる自殺行為。
「このまま腹に抱えられたまま殺られるつもりか」
「分かった」
確かにここにいたところで安全は担保されない。寧ろ母艦ごとやられる可能性が高い。パイロットも腹を括った。
パイロット達はそれぞれのMSに乗り込み、発艦させるべく格納庫のハッチが開けば、待ってましたとばかりにミサイルが雪崩れ込んできた。
格納庫は炎に包まれ、母艦もまた内部から爆散していく。
「あそこ煙幕の切れ間から光が見えました」
「あっあそこにも」
シャッターモニターが開けられたブリッジではそれぞれが肉眼で外の様子を見ていた。
「艦長」
「離脱だ。我が艦はここから急速離脱する」
ブリッジクルーの縋るような視線に囲まれた艦長は耐えかねたように命令を下した。
「了解です」
敵前逃亡とも捕らえられる命令だがブリッジクルーは解放されたような顔をしてキビキビと操艦を始めた。
兎に角ここから離れたいと180°回頭している最中だった、艦が大地震にあったかのような激しい衝撃に襲われ椅子に固定してなかったクルーはそのまま壁の染みとなった。
周りが見えない中無理に操艦を行った為に同じく離脱しようとしていた艦にラムアタックを食らったのだ。
激闘された艦は真っ二つに割れ、激突した艦も先端が潰れへし折れた。
「くそっ戦況はどうなっている?」
ジャマイカンがハリオのブリッジの窓から外を見る観測員に聞く。
「煙幕で視界がよく見えませんが、時々閃光が走っているのを確認できます。多分戦艦クラスの爆発だと推測されます」
「なんだと」
この状況下友軍は旗艦からのこの状況を打破する指示を切望しジャマイカンがそれに答えられることはなかった。
たばハリオのブリッジから花火のように輝く閃光を眺めているだけだった。
煙幕と高濃度ミノフスキー粒子により外部の状況が全く掴めない状況になった。暗闇に放り出された恐怖に震え敵味方ともこんな状況で戦闘など出来ない。
だがニュータイプは違う。
アムロ、カミーユ、ジュドーの三人を中心にNT能力の一つクレアボヤンスを共振させることで外の状況を感知し、この状況下アムロ率いるユニコーン部隊だけが縦横無尽に宇宙を駆け巡っていた。
ユニコーン部隊はザーン討伐軍前軍に袈裟斬りに突き進み、この状況下においても最善の行動をしようとした部隊を一つ一つ確実に潰していった。
少数部隊なだけに弾数に限りがあり敵の殲滅が不可能な以上、敵の群れとしての機能を潰したのである。
そして煙幕が薄れだした頃動き出す部隊があった。
「ベルトーチカ、トマホーク部隊。これよりユニコーン部隊が開けた穴より突入を開始する」
キャノピーがガラス張りの宇宙戦闘機トマホークはいち早く視界を取り戻し、今だ視界が戻りきらない前軍に突撃を開始した。
ほぼ真っ直ぐツッコミ、対艦ミサイルを撃ち込んでいく。これなら機動性に劣る宇宙戦闘機だろうと問題ない。敵が組織的反撃をしていこないことをいいことに群狼の如く襲い掛かる。
戦端が開かれてから数分でザーン討伐軍前軍は壊滅したのであった。