deZire ガンダム   作:コトナガレ ガク

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第47話 戦闘続行

「観測班より連絡。敵前軍壊滅です」

「「「「やったーーーーーーーーーーーーーー」」」

 ノエルの声が響くと戦況を統轄する旗艦ジュピトリスブリッジ内は歓喜の声に包まれた。

「ふう~。正直ここまで作戦通りに行くとは思いませんでしたよ。流石一年戦争の英雄ですね。

 これで諦めてくれれば楽でいいんですけどね」

 フアンは一息付いて椅子に深く座る。

 

「ジャマイカン中佐。救難信号で回線がパンクです。

 どうしましょうか?」

 ハリオオペレーターが泣きそうな声でジャマイカンに判断を仰ぐ。

 ザーン討伐軍前軍はまともな戦闘をさせて貰うことすら出来ず僅か数分で壊滅。しかもタチの悪いことに大破爆散した艦は意外と少ない。航行不能になる中破が多い。今すぐ救助を行えば助けられるのだ。

 これはアムロの温情かハラスメント攻撃か、評価は戦後の評論家が決めるだろう。

 ジャマイカンはミノフスキー粒子が薄れ回復したスクリーンに映る噴煙を上げる艦隊を呆然と眺めているだけだった。

 

「ジャマイカンの無能があれだけの大軍がどうしたら僅か数分で壊滅する」

 カディはシートの肘掛けを思いっきり叩いた。

「カディ中佐、救助に向かいますか?」

「それくらいはジャマイカンの無能にでもさせておけ。

 それよりもMS隊発進準備急げ」

「えっ」

「何を呆けている、今だ戦闘中だぞ。我々が戦意を失っても敵は許してくれないぞ。

 全軍気を引き締めろ」

 目の前で味方の惨敗を見せ付けられて緊張の糸が切れてしまったザーン討伐軍左軍だったが、カディにより立ち直り敵を迎え撃つ陣形に移行し始めた。

 

「シロッコ様、前軍が壊滅しましたが我々はどうしたら?」

 ブリッジでシロッコの傍に控えていたサラが動揺したように尋ねる。

「慌てることはない。我が右軍だけでも十分自由宇宙同盟を迎え撃てる。

 サラにシドレはMSデッキに向かって発進準備を急げ」

「退却しないのですか?」

 シドレが驚いたように尋ねる。

「捨て駒だよ、前軍は」

 その鋭い感覚でバスクの真意を見抜いたシロッコは事も無げに言う。

「捨て駒」

 サラはその言葉にショックを受けたようだった。

「そうなりたくなければ急げ」

「「はっ」」

 サラとシドレは2人に与えられたMSガブスレイ[ムニン]の元へ向かった。

 

「バスク大佐。前軍壊滅です」

「救助要請多数」

「ジャマイカン中佐は無事なようです」

 ザーン討伐軍旗艦ドゴス・ギアのブリッジクルー叫びたい気持ちを必死に抑えて情報を収集する。

 つい数分前までの楽勝気分だっただけに、援護に行く間もなく目の前で前軍壊滅をリアルタイムで見せられたのはリアルナイトメア。

 あと一息で恐怖が器から溢れパニックに陥るだろう。

 もう死にたくないの一心でブリッジ内のクルーは「退却」の一言を待望しつつバスクに注力する。必死の注目が集まるなかバスクは不敵に笑った。

「くっくっ小賢しいスペースノイド共め、何か小細工をしていると読んでいたわ。

 小細工が尽きれば敵ではない。

 後軍前進、前軍が壊滅して空いた穴を塞ぐ」

「撤退をしないのですか?」

 副官が恐る恐るバスクに進言する。

「撤退だと馬鹿なことを。

 前軍が壊滅しても此方はまだ3倍以上の兵力がある。小細工のネタが割れた宇宙人共こそ追い詰められたと知れっ。

 後軍前進、宇宙人共を踏みにじるのは今だ」

 バスクは正面から独立宣言をした以上自由宇宙同盟軍に何か隠し球があるとは思っていたが、それが何であるかは結局掴めなかった。それ故に4軍に分けたとはいえ等分ではなく、前軍:左軍:右軍:後軍=0.7:0.6:0.6:1とし、前左右軍の内一軍は相手の手の内を晒す為の捨て駒にする気であった。

 それでもまさか援護に行く暇すらなく一軍が壊滅したのはバスクにとっても計算外でふてぶてしい面ほど内心は平静でなかった。

 だが兵力はまだ3倍近くあり、スペースノイドへの恨みは今だ燻っている。何より退いてスペースノイドに弱みを見せるわけには行かなかった。退けば今は様子見している各サイドがザーンに続く可能性は高い。

 己の心情的にもティターンズ幹部としても退けないのである。

 だからバスクは動揺を一切見せることなくふてぶてしく言い切った。言い切ったことで強いバスクを演出できた。

 ジャマイカンでは出来なかったがバスクが強いリーダー演出したことによりにより、バスクに付いていけば勝てると蔓延していた恐怖が払拭された。

 ザーン討伐軍後軍は前軍などいなかったように粛々と前進を始めた。

 

「やはりそう甘くはないか。

 第一軍は予定取り敵が合流する前に敵左軍に艦隊戦を挑む」

 レイヤーの号令の下、アーレイバークを旗艦とする自由宇宙同盟軍第一軍主力艦隊がカディ率いる左軍に突撃を開始した。

 各個撃破は基本。後軍が合流する前に左軍を潰しにいった判断は間違っていない。だがその戦術はルウム以前の艦隊戦を基本にしていた。すなわち艦を戦闘の主力とする考えだ。

 第一軍は縦陣で左軍に突撃を掛けていく。

 先陣はマゼラン級、それにサラミスが続き濃密な艦砲射撃を左軍に行いつつ突撃をしていく。

 

「古くさい戦術をする。船乗りとして応じてやりたいがそうもいくまい。

 輪形陣で応戦。MS隊を発艦させろ、艦隊などMSで叩き潰せ」

 カディの命令の下各艦からMSが発艦していく。

 

「敵艦隊からMSの発艦を確認」

「弾幕強化。ボール改隊発艦させ直衛させろ」

 レイヤーの命令でサラミスやマゼランに張り付いていたボール改隊が発艦し突撃する艦に並走する。

 これにより火力は一気に増強され濃密な火線が描かれる。対する左軍は主力MSハイザック及びジムⅡ。それを率いるはジェリド/ガブスレイ。

「何て濃密な弾幕だ。各員動きを止めるな、止めたらやられるぞ」

「「「ハッ」」」 

 ジェリド率いるMS隊はパイロットがシェイクするほどのランダム軌道を描いて第一艦隊に向かっていくのであった。

 

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