「シロッコ様。左軍戦闘に入りました。援護のMSを出しますか?」
「ふむ」
シロッコは青年の副官からの提案に一思案した後簡潔に答える。
この副官ティターンズからシロッコの監視を兼ねて派遣されたものだが、今ではすっかりシロッコに心酔し様呼びである。
「必要ない」
「よろしいのですか?」
「此方から出そうにも間にある前軍が邪魔だ。迂回すれば推進剤の無駄になる。左軍への援軍は後軍に任せる」
シロッコの分析通り、左軍と右軍の間には壊滅した前軍の残骸や救援を求める艦艇が漂っていてとてもじゃないが突っ切ることは出来ない。そもそも右軍から左軍に援軍を出すこと自体セオリーに反する。
「それでは我々は?」
「好都合なことに敵の主力は左軍に向かい前が空いているじゃないか。我が右軍はこのまま前進してコロニーを制圧する。そうすれば戦争は終わりだ」
これはザーンにとっては防衛線。幾ら連邦を圧倒しようとも本丸であるコロニーを占領されれば負けなのである。
「はっ。それでは右軍を全速前進させます」
「むっ待て」
「シロッコ様」
シロッコがプレッシャーを感じるのと同時だった。右軍の中でも外周前方に位置していたサラミスが爆散した。
「敵襲? 何事だっ」
副官がナビ班に尋ねる。
「レーダーに感はありません」
「目視内に敵影見えず」
「サラミスが爆散する前に閃光を見たという報告があります」
ナビ班が情報を収集するが、どれも要領を得ず混乱している間には更に一隻サラミスが爆散した。
「ミノフスキー粒子で遠距離からの攻撃は出来ないはず。
機雷か?」
「いえ機雷には最大限注意を払っています」
宇宙機雷を疑っている内に更に一隻サラミスが爆散した。
「ふふっ、ミノフスキー粒子の影響内でもいるんだよ」
「シロッコ様?」
傲慢に笑みを浮かべだしたシロッコに副官は訝しむ。
「ニュータイプ」
「まさか」
シロッコの発した言葉に副官は驚愕する。
「アムロ。そこか」
シロッコが睨んだ宙域には、メガ・バズーカ・ランチャーを構えたガンダムmkⅢとメガ・バズーカ・ランチャーにエネルギー供給する為随伴しているパラス・アテネがいた。
「三つ」
アムロは閃光を確認し呟く。
「アムロ。再チャージまで後10秒」
「よし。マウアーポジションを変えるぞ」
「了解です」
敵に捕捉されるのを恐れ一回撃つごとに狙撃ポイントを変更するアムロ。
この戦い方はミノフスキー粒子以前のレーダー戦を彷彿させる。ミノフスキー粒子の申し子であるMSがミノフスキー粒子を否定するかのような戦闘をする皮肉。この皮肉に対応出来るのはニュータイプのみ。
「シロッコ様。艦隊は見えない敵の攻撃に恐慌に陥る寸前です。
指示を求めてます」
認識外から狙撃されて撃沈される味方艦を見せ付けられれば当然の結果である。
「狼狽えるな。少し待て」
シロッコは意識を集中させる。
「捕らえたぞ。
今から指示する指定空域に艦砲射撃開始。MS隊も急行させろ」
「了解です」
流石シロッコ様とばかりに副官は嬉々として応じるのであった。
「流石シロッコ見付けられたか」
アムロはシロッコを感じた。その数秒後、アムロがいる宙域にメガ粒子砲が打ち込まれてくるがアムロに動揺は無い。この距離でMSに狙いを付けずに当てるのなんて、深海から大空を飛ぶ鳥を撃ち落とすようなもの。
アムロは冷静に狙いを定め引き金を引く。
「四つ」
第四射。迫り来るMS隊を巻き込み四隻目のサラミスが撃沈した。
「よし。他のMS隊も来る。急いでここを離れるぞ」
「はい」
戦場で勇ましい無双をするわけでないが、己のニュータイプの能力を余すこと無く発揮し、アムロはたった二機のMSで艦隊を翻弄するのであった。