deZire ガンダム   作:コトナガレ ガク

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第53話 輝く宇宙

 最初の一分で護衛部隊の半数が撃破された。

 津波のような大軍と衝突してこれで済んだのは上々と言えるのかもしれない。

 カレンの百式は頭がもがれ手足が片方づつ無くなっていた。

「カレン、爆発の危険は?」

「なんとかダメージコントロールが出来ている」

「なら、最終防衛ラインまで下がって」

 ここでジュピトリス内に退避と言えないのが自由宇宙同盟の苦しい台所と言える。ここでジュピトリスを防衛しなければ自由宇宙同盟に勝利はない。負けて捕虜になれば、自分達女パイロットには死より辛い人生しか待っていない。

「ちっ・・・分かった」

「戦いはこれで終わりじゃないわ」

「分かってるよ」

 クリスの命令にカレンも正規軍人、戦況は冷静に判断できる。これ以上自分がここで踏ん張っても足手纏にしかならないことは分かっている。渋々ながらジュピトリス近傍まで後退して砲台に徹することにする。

「ケーラは護衛」

「了解」

 ケーラの百式も片腕が吹き飛んでいた。

 クリスはアレックスで戦った経験がなければ、こんなピーキーな機体扱いきれず自分も被弾していただろうと思っている。そして残ったメンバーはそんな自分同様このピーキーな機体を乗りこなし多少の被弾こそしているが小破以内に留まっていた。

 最初はお飾りかと思っていたが、とんでもない部隊だと実感する。

「みんな、踏ん張るわよ」

「了解です」

「あったりまえよ。ルーなんかに負けないんだから」

 前方には未だ雲霞の如き敵MS部隊がいるが、ワルキューレ隊の誰もがアムロが語る新世界を信じて逃げ出さないのであった。

「あら、意外といい根性しているじゃない。

 ここから巻き返してあげるから付いてらっしゃい」

 後方に控えていた黄金のエルメスから勝ち気な口調の声が流れワルキューレ隊を抜いて前方に躍り出る。

「迂闊に前に出ると殺られるわよ」

「誰に言ってるつもり?

 撃ち漏らしは譲ってあげるから、しっかり手柄立てなさい。

 ビット」

 強気な思念波と共にエルメスを取り巻くビットが一斉に飛び散る。

 ファンネルに比べてビットは大きいが、代わりにMSを一撃で撃破する威力がある。そのビットがまさしく一糸乱れず統率された上に生身の人間が乗っていては不可能な機動を描いて敵MS部隊に襲いかかる。

 これは一人NT部隊が結成されたようなもの、そのエリアにいたMS部隊は一瞬で飲み込まれ、ぽっかりと空白地帯が生まれた。

「まさかっこれはソロモンの亡霊?」

「狼狽えるな。本体を殺れば終わりだ」

 一年戦争時姿を見せずに次々と艦艇やMSを撃破していった悪夢が蘇り動揺する部下を叱咤する部隊長。

「私をあんな不思議ちゃんと一緒しないでよね」

 襲いかかってくるMS部隊を前に見下したように笑いが響き、戦艦ですら一撃で沈めるメガ粒子砲で応戦する。

「ぐわっなんて強力な・・・」

 閃光に飲まれMS数機が一瞬で塵になるが、それでも攻撃を掻い潜りエルメスに迫る。ビットは強力でも本体はそんな機動はできない上にデカイ。間合いに入ればMSの方が有利である。

 だがそんなMS達の前にはワルキュレーが立ちはだかる。

 エルメスの攻撃を避けるくらいの腕前のエース級パイロット達だがワルキュレー部隊も最初の一分を生き残り一皮剥けてしまった精鋭。動きを止められ、止まった端からビットで狙撃されていく。

 次の一分間は文字通りエルメスとワルキューレ隊の独壇場であった。大軍がたった一騎のMAと小隊に押し返されていく。

「はあ、はあ。ここまでね」

 だがたった一分でクスコは息が乱れ頭痛が激しくなった。NT能力の負荷に脳がオーバーヒート寸前になったのだ。

「私は後退するわ。でもここまですれば十分でしょ。ご褒美はたっぷり貰うわよ、アムロ」

 クスコの呟きに呼応するようにジュピトリスクルーが動き出す。

「偽装解除」

 フアンの命を受けジュピトリス下部に増設されていた装甲がパージされ、普通の戦艦の全長並みはある巨大な砲三機を三角形に束ねた砲が露出された。

「トライデント。エネルギー充填80%」

「よし。照準敵後軍中央」

 狙い通りなのか後軍は左軍と右軍の戦闘に巻き込まれないようにと自然と細長い縦陣になっていた。

「了解。照準合わせます」

「全員ゴーグル着用。

 味方機は前方から退避させろ。遅れても待つ余裕はない」

「了解。厳命します」

 ノエルは全部隊に退避命令を勧告。

 対要塞攻略兵器ハイパーメガ粒子砲を三機束ねたトライデント砲の先端は直視できないほどの輝きに満ちていた。

 1基でも信じられないエネルギーを食うハイパーメガ粒子砲を3つ同時斉射するトライデント、こんなものジュピトリス級くらいしか運用できないだろう。

 

「バスク大佐。前方ジュピトリスに高エネルギー反応です」

「全艦全速退避だ」

 バスクの命令とトライデントが輝くのは同時だった。

 天の裁きの如き閃光が後軍中央を貫くのであった。

 

 

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