バンッ
「己、アムロめ」
辛くも脱出に成功したバスクは怒りをコンソールにぶつけるのであった。
ザーン討伐軍は散り散りとなって逃走していて、最終的にどれだけ撤退に成功したのか分からない状態であった。
ルウムに匹敵する大敗北、ティターンズの威信の失墜は免れない。何とかしなければバスクも更迭は避けられない。それが分かっているだけにバスクは苛立ちを押さえれない。そんなバスクに恐る恐る副官が話し掛ける。
「閣下」
「何だっ!!!」
「先程我々の脱出を支援した部隊から通信が入っています」
青白い炎を出すMSに乗っていた部隊、あの援軍がなければバスクはアムロから逃げ切れなかっただろう。それだけにバスクも無碍には出来ない。
「繋げ」
「はっ」
艦橋のスクリーンに1人の男が映し出される。
『お初にお目に掛かります、バスク大佐。
私はロック・ホーカー中佐です、以後お見知りおき願います』
「フンッ先程は助かった、一応礼は言う。
それであれは何だ?」
『私が開発しているシステム、ナイトロです閣下。あれこそ我々人類がニュータイプに対抗するための希望です』
ロック中佐は真面目な顔でご大層なこと言い切る。
「人類の希望とは大きく出たな。ナイトロシステム、聞いた覚えがあるな。確かまだ未完成だと聞いていたが?」
『ですがその力の片鱗は閣下も見たはずです』
「確かにあのアムロを一時的とはいえ抑えていたな。
それでお前は私に何を求める?」
『流石大佐話が早い。
ナイトロの開発予算の倍増、そしてナイトロの実戦部隊設立の許可を頂きたい』
「うむ、しかしまだ未完成なんだろ。それで実戦投入を行うのか?」
『もはや完成を待つような悠長なことは言ってられないかと。
我々人類とニュータイプとの生存競争は既に始まっているのです。ここで手をこまねいていては我々は滅ぼされます』
ロック中佐は地球連邦軍の中でニュータイプ脅威論の急先鋒であった。彼に寄ればニュータイプはもはや新人類であり、ホモ・サピエンスにより滅ぼされたネアンデルタールなどのように、自分達もニュータイプという新人類に滅ぼされると訴えている。荒唐無稽のような論だが彼の意見に賛同する連邦軍高官も多いという。
「随分と意気込んでいるが、その心配は無用だな」
『大佐ならニュータイプの脅威が分かってくれると思っていたのですが』
ロック中佐の顔に失望の色が浮かぶ。
「今回のことで身に染みて分かったよ。だから我々はグリプスに撤退後、コロニーレーザーでサイド1を焼き付くす。
臆病者共が何を言おうが構うものか、宇宙人共は皆殺しだ」
追い詰められたバスクが導き出した起死回生の策であった。この時のバスクの顔は悪魔そのものであったと副官が後日供述している。
『流石の決断と賞賛したいところですが、遅かったのです』
「何がだ?」
『グリプスはエゥーゴ残存艦隊により陥落しました』
「なっ何!? それは確かか?」
敗走の混乱でバスクには連絡は付かないようだがロック中佐は何かしらの連絡手段を構築しているのだろう。
『間違いないかと。
コロニーレーザーは奪われ援軍に来たルナツー艦隊を消滅させた後エゥーゴにより破壊され、エゥーゴ艦隊は消えたそうです。
大佐大丈夫ですか?』
顔が真っ青になったバスクを気遣うようにロック中佐が言う。
「許可する」
『はっ?』
「ナイトロ部隊の設立を許可する。私の力が及ぶ限り支援もする。
だから宇宙人共を根絶やしにしろ」
『了解です』
アムロ達の勝利の裏で新たなる脅威が生まれつつあった。
アムロの目指す人類全てがニュータイプになる日は遠い。