「腐敗極まる地球連邦の圧政に苦しむ者達よ。
我々は勝った。
そして我らは新たなる一歩を踏み出した。
小さな一歩かもしれないが、この一歩は人類革新の始まる一歩である。
もはやこの流れは誰にも止められない、今こそ立ち上がり一歩を踏み出すのだ。
もはや我々の歩みは誰にも止められない、我らは自由だ」
壇上に立つアムロの朗々たる声が大ホールに集まった将兵の心に響く。
「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」
ジュピトリス大ホールに集まった将兵の歓喜の声が木霊し、その様子は全世界に放送されていた。
宇宙に激震が走った。
このアムロの演説により、地球圏に住む誰もが新時代の到来を予感するのであった。
地球連邦がその威信にかけて編成した宇宙艦隊が敗北したのだ。その衝撃はルウムの大敗北に匹敵する。アムロはその激震が収まらないうちにと間髪入れずに演説を行い、地球圏に住む人々に新時代の到来を印象付けたのだ。
これにより更に多くの人々が己の思惑で動き出す。
時代は更に加速する。
「勝利を祝い、ささやかな宴会を用意した。これからも厳しい戦いは続くだろうが、今一時はそんなことを忘れ勝利を祝おう」
大ホールや大ホールに集まれなかった兵士達もそれぞれの場所で宴会が始まる。
アムロはその様子を確認すると幹部達が集合する大会議室に向かった。まずは気心の知れた者達と勝利を祝いその後で兵士達の元を回る予定である。例え兵士の間に暗殺者が紛れていてもアムロなら感知できるとの判断でまずは士気を上げることを優先した。
大仕事を終えアムロの顔から険が取れていたが、大会議室の扉の前に来たときだった。
ピッキーーン
アムロのNT能力が危機を感じ取った。ここにいては危ない。
アムロは反射的に後ずさろうとしたが、その背をマウアーが押さえた。
「どうしたのですか総帥?」
マウアーは優しい笑顔で言う。
「マウアー、君もか」
笑顔の裏の感情を感じアムロはマウアーの裏切りを察知した。
「何のことですか?
さあ、前に進んで下さい総帥」
会議室の扉は開かれアムロはマウアーに背中を押され中に入った。
「くっ」
アムロが慌てて会議室を見渡すと自分を待っているはずの男の幹部は誰もいなかった。
待っていたのは鬼の形相の女達だった。
「やっやあクリスどうしたんだいそんな怖い顔して、チャーミングな顔が台無しだよ」
「マウアー、外に知られるわけにはいきません。早く扉を閉めて」
「はい」
アムロ得意のプレイボーイフェイスとボイスでもクリスの顔が綻ぶことはなかった。クリスは怖い顔のままマウアーに命じてマウアーも素直に従う。
「あの~ここにいるはずのフアンとか」
「正座」
「あの~俺一応TOP」
「へえ~一応自覚はあったんだ、ふ~ん。
敵軍に先陣切って突撃するのに。
正座」
「はい」
アムロはすごすごと正座をする。
「今日という今日は言わせて貰います。
あなたは自由宇宙同盟の総帥なんですよ。あなたが死んだら終わりなの、分かってます」
「はい」
「へえ~分かっているんだ、じゃあなんで突撃しちゃうかな~」
「いやその~総帥が先陣切ると士気が上がるじゃないか」
「それで殺られたら士気崩壊ですよね」
「君達も危なかったし」
「私達のこと舐めてます。
これでもあなたの思想に共鳴して命を賭ける覚悟を持って参加したんですけど」
「いやそういうわけでは無くてね」
「じゃあどういう訳?」
アムロはこの後女性陣に小一時間ほど説教を喰らうのであった。
一兵卒は戦いが終われば息を抜けるが、上に立つものは戦いが終わったときには次の戦いが始まっている。
「それで次の一手はどうしますか?」
「それについてだがフラナガン博士、ARe計画の方はどうなっています?」
「残念ながらニュータイプの数も足りないが技術的課題がクリアにならない」
「ナナイ、君に任せているサイコフレームの開発の方はどうなっている?」
「無理言わないで、一足飛びに技術は進化しないわ。シロッコの技術を吸収できたけどあなたが要求するサイコフレームは次元が違うわ。まだかかるわね」
「そうか。
フラナガン博士、フォウとロザミアの再調整は?」
「無理な暗示の解除は進めているが、能力は確実に落ちるぞ」
「構わない。新時代はあんな少女達を犠牲にしない時代だ」
「そうなると、水準に達しているのはアムロ、クワトロ、カミーユ、ジュドー、クスコの五人だけになるぞ」
「ルー、エル、アスナには素質がある、これから水準に達するさ。
それにマウアー、エマも目覚める可能性は高い」
「12機のゾディアック ガンダムによるARe計画。まだまだ実行は先のようだな」
「そうなると連邦の目を逸らし時間を稼ぐ作戦が必要になるな」
「それについてだが、アクシズが戻ってきている」
「何っ。
君の言っていたハマーンは味方に引き込めそうか?」
「あれは業が強い」
「時間を稼ぐためにも上手く利用したいな」
「それと連邦の暗部 アンチニュータイプ派のロック中佐が動き出したらしい」
「妄執に囚われた男が。やっと表に出てきたか。
だが蠱毒にはいいかもしれないな」
「どうする?」
「世界には単純に打倒地球連邦と思わせておかなければならない。
先の演説でコロニー駐留軍は反乱を恐れて迂闊に動けないはず。キリマンジャロ攻略作戦を決行する」
「分かった。カラバに連絡を入れていこう」
「思いのほか本当に世界征服が出来てしまうかもな」
「君が独裁者になるというならそれはそれでいいさ」
「独裁者アムロ、意外といい響きかもな。
その為にもキリマンジャロは落とす」
こうしてアムロ達は次の作戦に動き出すのであった。