自由宇宙同盟軍はキリマンジャロ攻略作戦に向けて動き出した。
地上軍との極秘の打ち合わせ。
降下部隊の選出。
攻略中のザーンの防衛計画。
ブライト、フアン、クワトロ、ユウ、レイヤー、コンスタンティン達幹部達は当然として、クリス、コウ、ライラ、エマ達も部隊長として部隊の連携訓練と忙しそうにしている。
アムロは彼らに比べればマシではあったが総帥として事務仕事に励んでいた。
「総帥、この書類に認可をお願いします」
「ああ」
ノエルに渡された書類にアムロはざっと目を通し問題がないかチェックする。正直書類仕事に関してはノエル、フアンの能力は申し分無しでメクラで認可しても問題はないだろうとアムロは思っている。だが、だからといって無責任な信頼は組織の腐敗を呼ぶ。アムロは最低限内容に問題ないかチェックする。
「これで降下装備は一応揃ったか。しかし保守部品の方はどうなっている?」
「正直ブッホ・コンツェルンの方で急ぎ対応して貰ってますが、やはりアナハイムのようにはいかないようです」
「ティッシュペーパーから惑星航行船までは伊達じゃないか」
アムロは溜息と共に天を仰ぐ。
「やはり月との連絡が切られたのが痛いですね」
先の戦いで大勝したと宣伝している自由宇宙同盟だが、グリプスはコロニーレーザーを破壊しただけで占領したわけでなく、占領された月も奪還できていない。あくまでザーンの防衛に成功しただけなのである。
「アクシズをうまく味方に引き込めれば月の奪還作戦をすぐにでも実行するんだがな」
「現状、自由宇宙同盟軍なのに宇宙軍はボロボロですもんね」
先の戦いで勝つには勝ったが自由宇宙同盟軍も戦力の半分を失った。ルウムに勝ってレビルにジオンに人なしと言われたジオンに匹敵する。
だからこそここで敢えて攻勢に出ることで健在をアピールする意味がある。
「志を持った同士が来てくれることを祈るさ」
「そうですね」
自由宇宙同盟軍は現在絶賛リクルート中であった。一応連邦に勝ってみせたことで各コロニーから個人として参加を申し込んでくる者達はそこそこいた。だが同時にスパイが紛れる可能性も高く身元調査で時間を取られているのが現状である。
だが連邦に勝ったことで密談を申し込んでくるコロニーも現れ始め、現在ブレックスが対応に当たっている。上手くいけば自由宇宙同盟に参加するコロニーが表れてくるかも知れない。
「しかし一日中事務仕事というのは身体が鈍るな」
「駄目ですよ。きつく監視するようにマウアーさんとクリスさんに言われてますからね」
アムロは自分は現場の人間だと自認しており、できれば事務仕事でなく得意のMSで新兵の訓練でもつけたいのだが本音である。
「今は忙しい時期なんです。総帥をしてください」
「分かってるよ」
そう言いつつアムロは席を立った。
「ちょっと休憩がてら艦内を散歩してくるよ」
「はい、行ってらっしゃい。
あんまりふらふらしないで下さいね」
「分かってるよ」
ノエルの適当な言葉に送られ、アムロはジュピトリス艦隊を回り出した。
艦内では先の戦闘の修理とかで皆忙しそうにし、アムロはそれを羨望の眼差しで見ている。
(俺はつくづく現場の人間なんだよな。神輿に何て成るもんじゃ無いな)
内心溜息付きつつ歩いていると、アムロの視界にいつもどこか飄々としているルーが珍しく切羽詰まったように小走りしているのが見えた。
「ルーじゃ無いか、どうしたんだいそんなに慌てて?」
「アムロさ・・総・・・」
「君にまで総帥なんて悲しいこと言わないでくれよ」
「もうアムロさんったら」
ルーは笑ってアムロの胸を叩く。
「それでどうしたんだい?」
「はい、それが大変なんですよ。急いで・・・」
ルーは人目をはばかるように周りを見渡す。
「よし、ちょっとあっちに行こう」
アムロはルーがフアン達幹部がいる司令室に行きたそうなの無視してルーの手を取ると人気のない通路に強引にそれでいて優しくエスコートしていく。
その姿傍目には総帥が仕事をサボってアバンチュールしているようにしか見えない。クリスの耳に入ったらまた正座ものである。
「ここならいいだろう。それで?」
アムロに施されルーは意を決したように口を開いた。
「それがアナハイムから極秘の暗号回線で連絡がありました。
是非自由宇宙同盟軍と極秘で会談をしたいとのことです。フォンブラウンからは既に特使が乗った船が極秘に出向したそうです。ランデブーポイントの指定もされてます」
ルーは元月の連絡員であった関係でそういったルートを今も幾つか保持しているのであろう。
「なかなか強引だな。アナハイムらしくない」
「それだけティターンズの横暴に耐えられないと言うことでは」
「なるほどね」
「罠の可能性もあります。直ぐにでも幹部会を開いて対応を決めましょう」
アムロは一度アナハイムに邪魔者と見なされティターンズに売られている。
「その必要はない」
「えっ!? アナハイムと縁を切るのですか」
その可能性もあると思っていたが即断されるとは思ってなかったルーは驚くが、アムロの回答は斜め上を行き更に驚く嵌めになる。
「俺自ら迎えに行こう行こうじゃないか、そうすればその場で会談も出来る。
この状況下1分1秒が金より貴重だ。
今すぐ行くぞ」
「ちょっっちょと総帥自らってありえないんじゃないですか」
「みんなキリマンジャロ攻略戦の準備で忙しい、ここは比較的余裕のある俺が迎えに行こうじゃないか。
実に合理的かつ最適な人選だろ」
「いや~みんなにまずは相談を・・」
アムロは歯をキラッと光らせる素晴らしい笑顔で言うが、そんなプレイボーイスマイルにルーはちょっと頬を赤らめつつも未だ抵抗を試みる。
これがクリスやノエルなら問答無用でぶん殴り、シーマなら相手にしない、マウアーなら真顔で窘めるが、ルーはまだそこまで出来ない。
「アナハイムとの関係を構築出来るこのチャンスを逃す訳にはいかない。
しかも運がいいことにコムサイのメンテも終わっている。行くぞ」
アムロはルーの躊躇いに付け込んで手を引っ張ってぐいぐい格納庫に向かい出す。
「でも連絡しとかないとみんな心配しますよ」
「あとでメールしておくよ」
「待って待ってまってーーーーーーーーーーーーーーー。
これ絶対私も巻き添えでクリスさんやマウアーさんに怒られるじゃないですか」
「君と僕の仲じゃないか、正座するなら一緒だよ」
「いやあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
ルーの悲鳴が木霊するがアムロがNT能力で割り出した人気のないルートのため誰の耳に届くことはなかった。