deZire ガンダム   作:コトナガレ ガク

60 / 87
第60話 知ってはいけない秘密

「まさかあなたが直々に来るとは思いませんでしたな」

 サイド1と月の間にある暗礁空域でアナハイムの使者が乗った高速駆逐艦カスミとコムサイはランデブーした。

 そしてカスミの応接間で会談が行われることになった。

 アナハイム所有の駆逐艦だけあって武装こそ通常艦と同じだが、応接間の内装は軍艦とは思えない一流ホテルかと錯覚するほどであった。

「時間の無駄は嫌いでね」

 豪華な応接間でアムロは悪ガキのようにソファーに腕を掛けて足を組んでいると態度が悪い。後ろに控えている仲介役のルーはおろおろ、抜け出すアムロを察知して護衛兼監視役として付いてきたクワトロ少佐は涼しい顔で隣で座っている。

 ちなみにコムサイの方には無理矢理連れてこられた気の弱いイーノが待機している。 他のジュドーとかエルとかだと、絶対にクリスにチクられると選ばれた可哀想なイーノ。

「私は会長の意向を受けている」

「それが?」

 アムロはウォンの窘めを一蹴する。

「このっ」

「ウォンさん、抑えて下さい」

 立ち上がろうとしたウォンをフークバルトが抑えた。

「アムロ総帥が我々に不審感を持っているのは重々承知です。

 ですが今日は腹を割っていきましょう」

 フークバルトはアナハイムの一派がアムロをティターンズに売ったことを知っているのであろう。

「此方としても時間の無駄はしたくない。ビジネスライクに行こう。

 それで用件は?」

「単刀直入で行きます。

 ティターンズから月を開放して欲しい」

「アナハイムをだろ?」

「月をです」

「どうしてだ? 今の状態、連邦とズブズブのアナハイムとしてはそう悪くも無いだろう。自由宇宙同盟軍と地球連邦軍との戦いが激化すればするほど大儲けだ」

「我々は死の商人では無い。スペースノイドの自由のために戦っている」

 アムロは両手を金を撒き散らすかのように上げた。その態度にウォンが激怒して修正してやるとばかりにアムロに殴りかかろうとしたのをフークバルトが必死に抑えた。

「ウォンさんは意外と熱血で商人らしくないですね。

 それで月の開放の見返りは?」

 横からクワトロが落ち着いた声で尋ねる。

「自由宇宙同盟軍への資金援助及びMSの技術提供を約束します」

「悪いがブッホコンツェルンがいるから間に合っているぜ」

 アムロがフークバルトの提案を鼻で一蹴する。

「あなた方が我が社のマラサイ、百式をコピーしているのは知っていますが、その件は不問にします」

「別に~敵同士で特許もクソ無いだろ」

 このまま抗争が激化すれば、スペースコロニー達は連邦・アナハイムと別の道を歩み出したブッホ製のMSを購入し出すかも知れない。それに連邦とて独自の工廠を持っている。アナハイムは今の時点ではそれほど盤石でもないのである。

「我々を敵というか。

 そもそもエゥーゴは我々が作り上げた組織だぞ」

 またまたウォンが食って掛かってくる。

 この激怒、アムロは鼻であしらっているが内心では好ましいと思っている。腹を見せないフークバルトの方こそアムロもクワトロも警戒している。

「そのエゥーゴはもう無い。あるのは俺が一から立ち上げた自由宇宙同盟軍だ」

「エゥーゴを乗っ取んだろ」

 あながち間違いでもなくアムロはエゥーゴを利用しつつ人脈と組織を築いてきた。自由宇宙同盟軍の主要メンバーは元エゥーゴからアムロを慕って移籍したメンバーが数多い。

「人望がないのがいけないな。あれば誰も俺には付いてこなかった」

「それでも宇宙世紀におけるインフラは我々がほぼ握っています。我々の支援は必要なはずです」

「はんっ」

 フークバルトが冷静にアナハイムの宇宙における重要性を説く。兵器産業だけで無くトイレットペーパーからスペースコロニーまでは伊達じゃ無い。

 現状スペースノイドの生活はアナハイムで成り立っていることをアムロも分かっている。徐々に割合を減らそうとは考えていても今はまだ切れない。

「具体的な支援案を書面にして提示して欲しいな」

 アムロの意を汲んだクワトロが大人の対応をする。

「分かりました」

「それはそれとして誠意を見せて欲しいな」

 まとまり掛けた話にアムロが割って入ってきた。

「ですから・・・」

「俺を裏切った者達の首を持って来い。

 アルベルト・ビストとマーサ・ビスト・カーバイン。最低でもこの2人だ」

「そっそれは・・・」

「俺を裏切った連中だ。俺と再度手を結びたいのなら最低限の誠意だろ」

「断れば?」

「別にいいさ。月を奪還したときに自分の手でするさ」

 さり気なくアムロは脅迫する。

 アムロが月を手に入れてからでは手土産は無意味。アナハイムは完全にアムロの手に落ちることになる。

「持ち帰って・・・」

「駄目だ。持ち帰れば察知される」

 フークバルトが営業サラリーマンのようなことを言い出したのをバッサリとアムロが切る。

 察知されればその2人はアナハイムを動かし全力で連邦側を支援するだろう。

「しっしかし・・・」

「今この場で決めて貰う、ウォン。

 あなたならそのくらいの権限は持っているはずだ」

「ぐっ」

 あのウォンが渋い顔をする。

「あなたがも分かっているはずだスペースノイドが地球から自立するには、連邦と同盟どちらを選ぶべきか。

 もっともフークバルト君はアナハイムのことしか頭にないようだが」

「その2人の首で月を開放してくれるんだな」

「その2人に関係無く月は開放すると言っているんだがな」

「アナハイムの存続を認めて貰えるですね」

「存続が大事ならティターンズに尻尾を振ればいい。

 俺はスペースノイドの発展のために健全な企業活動は認めるさ。

 地球連邦と自由宇宙同盟軍、どっちか選べ。コウモリはなしだぜ」

(これ、私が聞いちゃいけない話なんじゃ無いかしら?

 答えを聞きたくな~い、帰らせて~)

 背後に立つルーのパイロットスーツの下は全身びっしょりになっていた。

 知ってはいけないことを知ってしまうルーの明日はどうなる?

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。