地球圏にアクシズが戻ってきていることをとある情報筋からいち早く察知していたアムロはアクシズを抜け目なく監視していた。そして一隻のグワダンがアクシズから離れ単独行動していることを掴むと早速接触を図った。
止める者がいないことをいいことにアムロもまた単艦アーガマで動く。クワトロはアムロにもしものことがあった場合に備えジュピトリスで待機。
連邦に見つかればここぞとばかりに艦隊を送り込んでくることは必至。だがアムロは自由宇宙同盟軍に参加していない各コロニーで潜伏しているシンパ達の協力を得て連邦の監視を縫うように回潜り見事グワダンへの接触に成功した。
そして会談を申し込むと承諾され、希代の女傑ハマーンと会うことになった。
兵士達がずらりと並ぶグワダンの謁見の間、アムロはいつもの軍服でなく黒の礼装に薔薇の一輪を胸に挿し堂々と歩いて行く。
「お目通りが叶い光栄です。ミネバ様」
アムロは玉座に座るミネバに片膝を突いて恭しく頭を下げる。
「お前がアムロか、お前の噂は常々聞いていて一度会ってみたいと思っていた」
「光栄です、ミネバ様」
「面を上げよ。
それで自由宇宙同盟は軍事同盟を結びたいと申すのだな」
「はっ。ネオジオンと自由宇宙同盟軍が組めば連邦に対抗することが出来ましょう。逆に個々に抵抗しては強大な連邦の物量に各個撃破されるだけです」
アムロは起き上がると舞台俳優のように大げさな身振りを加えて朗朗と言う。
滑稽なピエロと紙一重だが見事に人の目を惹き付けた。
「うむ。それでお前達は親書にあった通り我等を認めるというのだな」
ハマーンがアムロに問い糾す。
アムロはかつてザビ家の野望を砕いた連邦の英雄。ジオン残党にとっては宿敵であるのは当然として、英雄アムロもジオンと組むことで同志の失望や反感を買う恐れがある。戦争が終わって10年も経っていないのだ、ジオンに肉親を奪われた者達の恨みが消えるにはまりにも短い時間だ。
「どこかで憎しみの連鎖は断ち切るべきです。因縁に囚われていてはエゴで地球は沈んでしまいます」
「綺麗事を」
「私よりもミネバ様は恨みを流すことは出来るのですか?
あなたの父を討ったのは私です」
アムロはハマーンを無視してミネバの目を真っ直ぐ見る。ここでミネバが感情に任せて兵に命令すればアムロとて危ないだろう。
「私は恨みを晴らすために戻ってきたわけではない。大義を・・・」
「ミネバ様、そんなとってつけた台詞では人の心は動きませんよ。
あなたの本心を聞かせて下さい」
「あっ」
アムロは小賢しい台詞を言うミネバを遮ってミネバの心に一歩踏み込んだ。
ミネバには幼いながらも素質はあった。
アムロが歩み寄ることでその心は開かれかつてララァと交わした交感が起こる。
私は父どころか母の顔すら覚えていない
あなたが憎い
私から父を奪ったあなたが憎い
俺が憎いというなら成長して自ら向かってこい
こんな亡霊共を使っては戦士であったドズルも地獄で嘆くぞ
ましてや小悪党の操り人形に討たれるほど俺は甘くないぞ
お前に何が分かる
父と母の温もりすら覚えていない私の何が分かる
私だってこんなことしたくないんだ
母に抱かれたい
父に頭を撫でて欲しい
友達と遊びたい
そんな幸せが欲しい
返して
やっと本心を見せたな
実に子供らしい
笑うか
いや子供が子供で何が悪い
大人を演じる子供は気持ち悪い
誰の所為でこうなったと
ならば俺の元にこい
あなたが立派に成長するまで父として
子供として扱ってやる
こんな因縁のエゴ渦から救ってやる
魂の交感は終わった。
両者にとっては長い時間でも周りの者にとっては一瞬見つめ合っていたことくらいしか感じない。
だが1人だけ二人の間に何があったか察知した女がいる。
「アムロ貴様、ミネバ様に何をした」
「割って入るな小悪党、貴様の出る幕じゃない。
ミネバ自ら答えを出せ」
「うっうっうわーーーーーーーーーーーーーー」
ミネバは椅子から立ち上った。そして子供らしく泣きながらアムロの胸に飛び込んだ。
「よし、いい子だ。
今から俺が君の父親だ」
「みっミネバ様を離せっ」
「ふっ、可憐な小鳥を閉じ込めるエゴの籠。
このアムロが解き放つ」
「戯れ言を」
銃を突き付けようとするハマーンの銃が叩き落とされた。
それは薔薇であった。
胸に挿した一輪の薔薇をアムロが投げ付けていたのだ。
「ハマーン様」
兵士達の注意がハマーンに集中した隙を狙って、アムロはミネバを抱き抱え一目散に逃げ出す。
「馬鹿者っ、私よりアムロを捕らえろ。
愚か者銃は止せミネバ様に当たる。素手でいけ」
ハマーンは銃を構えようとした兵士を叱りつける。
「とうっ」
アムロは襲い掛かってくる兵士達を蹴り飛ばす。
「お前達も真の戦士なら亡霊を辞め因縁で曇った目を洗い流せ。
真の戦士ならばこのアムロの元に来い」
最後に立ち塞がった戦士を殴り飛ばし、謁見の間から抜け出した。