「止まれ」
「未来輝く少女の行く手を塞ぐとは言語道断。とう」
アムロの行く手を塞いだ兵士がタックルをしてくるが、アムロは逆にタックルしてくる兵士を踏み台にして飛び越えて行く。
「俺を踏み台に!」
「甘いっ」
だがその兵士の背に隠れていた別の兵士が飛び上がってアムロの足を掴もうとするが、アムロは読み切ってカウンターで顔面に蹴りを入れる。
「ぐわっ」
「まだまだ」
更にもう一人アムロに襲い掛かるが、アムロに蹴り飛ばされた兵士がその兵士に向かって飛んでいく、二人とも床に叩きつけられる。
「ふっ」
アムロは反動を利用して天井に華麗に着地。
「凄い凄い」
アムロに肩車されているミネバは大喜びだ。
それにしてもアムロは強い。
相手がいくらミネバがいるから銃が使えないとはいえアムロもまたミネバがジオンの兵士が死ぬと悲しむので銃を使うことなく素手で応戦している。それでいて次々と群がるジオン兵を軽々とNT能力で先読みをし逃亡時代に鍛え上げた格闘技が合わさったNT格闘術で撃退していく。アムロはステゴロでも別次元の強さを手に入れていたのだ。
アムロはやがてグワダンの格納庫に辿り着いた。
「使えるMSは」
アムロはさっと見渡し無人のMSガザCに乗り込む。アムロはミネバを膝の上に乗せると素早くコクピット内のスイッチを押してガザCを立ち上げていく。アムロはここ数年で連邦系だけでなくジオン系MSも乗りこなしている。その経験とNT能力で初見でもだいたいのMSの動かし方は分かる。
「よし。
格納庫を開けろ。開けなければ破壊して出ていくぞ」
破壊されては溜まらないと兵士達は緊急退避し格納庫のハッチが開き、ガザCは発進する。
「可変機か。Z並みの推力があれば嬉しいんだが」
ガザCに全てを振り切るスピードがあればこれで万々歳なのだが、そうは行かなかった。「ア・・・パパ、来るよ」
もじもじと言い直したミネバがアムロに言う。
「パパか」
「いや」
「上品にお父様とどっちがいいか悩みどころだな。それについては後でゆっくり話し合おう。
どうしたい?」
「出来れば傷付けないで」
「娘の頼みならば叶えないわけにはいかないな」
アムロ/ガザCは振り向きざまにビームサーベルを放ち、白いガザCと鍔迫り合いになる。
「ミネバ様を返して貰うぞ」
「君がミネバをそれなりに愛しているのは分かっている。
ならば一度手元から離してあげるべきではないかな?」
「戯れ言を」
ハマーン/ガザCの連擊をアムロ/ガザCが捌いていく。
性能はハマーン専用ガザCの方が多少上、だがハマーンもアムロ/ガザCを撃墜させてしまうわけにはいかず、手足とか頭部とか攻撃できる箇所が限定される枷がある。
「ハマーン。ミネバには、同世代と無邪気に遊ぶことこそが必要なんだよ」
「必要ない。ミネバ様が俗物に染まってしまう」
「上だけ見ていては偏った娘になる」
「ならば連邦の上はどうだ。愚物だらけではないか」
アムロもまたミネバがいるので無茶な軌道が出来ず行動が制限される。流石にハマーンもNT、本気を出さずに退けられる相手じゃない。
当然戦いのメインは舌戦となる。
「ならばしょうが無い。
ミネバ、パパの頼みだ暫く耳を塞いでいなさい」
「はい」
安心しきったミネバは素直に耳を塞ぐ。
激しい剣戟をしながらの会話が始まる。
「さあ、ここからは汚い大人の会話だ」
「なにを」
「ハマーン、君がそのままだと本当に欲しいものは手に入らないぞ」
「なんだと」
「確かにあれは強い女性を求めているが、あれの好みは少々複雑だ」
「何を言っている」
「強さとはあくまで、母性の強さ。君に男を遊ばせる度量はあるのか?」
「はあ?」
「圧倒的に強いが適度に煽てて奮い立たせ、優しい言葉を掛けてあげる。
理想の母親になれるか?」
「何を言っているんだ」
「分からないようでは君は本質が見えていない。
だが俺ならアドバイスしてあげられるぞ」
「意味が分からんな?」
「ハマーン、俺と組め。
そうすれば多少はお膳立てしてあげられるぞ、なんせ今は俺の部下だからな」
「!!!」
「しがらみは一旦リセットされ、時には同僚として熱い議論を戦わせ、時には相棒として戦場で背中を任せ、時には同僚として飲み会で胸襟を開く。
ハマーン、そういった積み重ねが大事なんだよ」
「!?!?!?!?!?!?!!?」
普通の少女の青春を送ってこなかったハマーンにはそういった経験が無い。
男は全て従わせるしかなかった、対等なんてない。
夢のような妄想がハマーンを駆け巡り、その隙に変形したアムロ/ガザCは全力で離脱していく。
「ハマーン、ミネバ様はジオンを治める者として宇宙同盟軍に留学するだけだ。
その気になったら会いに来ればいい。
アデュー」
ハマーンにアムロを追う気力は無かった。
ただアムロの提案を考えていた。