deZire ガンダム   作:コトナガレ ガク

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第76話 ガンダムファイト

 ザーン戦役後シロッコは敗走したティターンズ・連邦軍をまとめ上げつつハッテに逃げ込んでいた。敗退に続く自由宇宙同盟軍の地球降下作戦による地球連邦軍の混乱の間隙を突いて、独自に動きハッテ駐留軍すら取り込みつつあった。

 そんな中、先の月の会戦において救援部隊としてヤザン・ガディを向かわせジャマイカンが戦死した混乱を利用して撤退を支援させつつ巧みにハッテに誘導させることに成功したのであった。

 味方の敗戦に継ぐ敗戦を利用しシロッコは権力を増大させ、もはやティターンズの指揮系統から外れた一大勢力とまでなっていた。

 そしてシロッコはどさくさに紛れて占領したハッテにおいて艦隊の増強及び新MSの開発などを進め牙を研いでいるのであった。

 

 シロッコ軍が占領するハッテ宙域に白旗を掲げた一機のMS高機動型ハイザックが接近していく。

 シロッコ軍はスクランブル、MSバーザム2機が緊急発進、高機動型ハイザックにランデブーする。

 バーザムが近付くと高機動型ハイザックは停止して両手を上げる。

『此方に交戦の意思はない。宇宙自由同盟軍アムロ総帥からシロッコ宛の書状を持ってきた』

『書状だと』

『そうだ。私は自由宇宙同盟軍独立機動部隊シーマ大佐。

 書状を手渡したい、シロッコ副司令に取り次いで欲しい』

 シロッコが狡猾なところは連邦に完全に叛旗を翻し独立しないであくまで連邦軍の指揮系統から逸脱をしていない。ゆくゆくは連邦軍本部から正式にハッテ方面軍総司令に任命されるように画策するだろうが、今は実権は握っていても名目上はシロッコはあくまで地球連邦軍ハッテ方面軍総司令から任命された補佐としての立場である。

 地球連邦と正面から戦うことは避け、内部からの乗っ取るを謀る。天才シロッコも大衆の持つ数の恐ろしさを軽視しないのであった。

『本部に問い合わせる。少し待て』

『あんまりレディーを待たせるもんじゃ無いよ』

 バーザム二機は油断なく銃口を高機動型ハイザックに向けたまま本部に連絡を行い、その間高機動型ハイザックも大人しく停止していた。

 シロッコへ書状を手渡すという任務は、女好きなシロッコが相手だとしても危険な任務であった。高機動型ハイザックを渡したのはいざとなればその機動力で逃げ切ってくれと言うアムロの思いであった。

『はい、了解しました。

 シーマ、シロッコ様が会うそうだ。付いてこい。

 但し可笑しなマネをすれば警告無しで撃墜する』

『分かってるよ。早く案内して貰おうか』

 

 わざわざ本部基地からアル・ギザで出向いたシロッコは艦橋でシーマと対面した。

 艦長席でシーマを傲慢に見下ろすシロッコにサラが耳打ちする。

「身体検査をしました。武器の類いは一切持っていません」

「そうか。サラが言うなら安心だ」

 元々ここでアムロが暗殺をしてくるとは思ってなかったシロッコだがサラを労い、サラがシロッコの後ろに控えるとシロッコは再度シーマに向き合う。

 そしてシロッコの常でありシーマが女とあって興味深く値踏みする。

「ふむ。シーマと言ったなアムロからの書状を持って来ているとか」

 好みではないのか、軽いシロッコの口からお世辞と勧誘はない。女好きと事前情報を仕入れていたシーマはそれがちょっと面白くない。

(あたしを年増と見なしたか。まっいいけどさ。アムロの方がいい男さね)

「これが書状です」

 シーマは大事に持っていた書状を一歩前に出てシロッコに手渡す。

「うむ。受け取った」

「出来れば返事はこの場で承りたい」

「プレッシャーを掛けるのは遠慮して欲しいな、ご婦人」

 確かにアムロからの書状となればこの場で即決できるような軽い内容ではあるまい。

「そこは天才、凡人とは違うのだろ」

「煽ててくれる」

 ちょろっとシーマは内心思ったが真面目な顔は崩さない。

「分かった。今読む」

 手渡された書状をシロッコは広げて読み出す。

 

『シロッコ殿、あの敗戦からそれだけの艦隊をまとめ上げる手腕には感服した。やはり宇宙を覇権を争うのは君か俺のようだ』

 この一文を読んでシロッコがニヤリとするのをシーマは見逃さなかった。

『だが俺と君が戦えば激戦は必死勝った方も弱体化は免れない。その場合君が毛嫌いする大衆に呑まれてしまうことになる。

 そこで君にガンダムファイトを申し込む。

 勝った方が負けた方を支配下に置く、これでどちらが勝っても地球圏の覇権は確実に手に入ることになる。

 聡明な君なら受けてくれると信じているよ』

「ガンダムファイトだと?」

「そうだ。

 双方の陣営が持てる資金を技術を注ぎ込んだガンダムに、双方の陣営の最高のパイロットが乗り込んで行う一対一の決闘。

 武器は無制限、相手のガンダムの頭部を破壊した方が勝利となる。

 一対一の決闘と言えど双方の陣営の総合力が試される極めて合理的な勝負だ」

 シーマはシロッコの質問に答える。

「そんなものをこの私が受けると?」

「怖いのか」

 この敵陣でシロッコ相手に堂々と渡り合える度胸と頭の回転、確かにシーマで無ければ出来ない芸当だろう。

「何!?」

「あなたはMSの開発からパイロットまで出来る天才NTだと聞いていたが、どうやら評判倒れのようだな」

「安い挑発だな」

「いや正論だよ」

「正論だと。

 私が見るに自由宇宙同盟は今がピーク、だが私はこれから更に高みに登る。時間を掛ければ勝利は明らかなのに急ぐ必要が何処にある?」

「そんな時間を与えて貰えると思っているのかい、おめでたいな」

「矛盾だな。それでは其方が嫌う共倒れになるでは無いか」

「だが時間が与えれば勝てなくなる相手を放っておくほどアムロは馬鹿でも臆病でもないさ」

「ふんっアムロの女か。どうやら君は自分の男を買い被っているようだな」

 シロッコの嘲笑をシーマは鼻であしらう。

「なあそんなに難しい話か?

 要は勝てば相手の軍が無傷で手に入るんだこんな美味しい話は無い。

 これを蹴るなんてやはり怖がっているとしか、あたしには思えないね」

「アムロが負けたときに約束を守る保証が無い。

 負けた瞬間約束を翻すなんて凡人が良くやることだ」

「なるほど約束が守られる保証があれば受けるんだな」

 アムロを貶され心なしか顔が強張ったシーマが挑発する。

「当然だ」

「その言葉忘れるなよ。

 帰ってアムロに伝えるよ」

「そもそもここまで私をコケにして無事に帰れると持っているのか」

「そしたらアムロはシロッコという男を心の底から失望するだろうね。

 あんたはそんな安い男じゃ無いだろ」

「当然だ。

 だがアムロも一軍のTOPそんな馬鹿なマネが出来るものか」

 ある意味シロッコの言うことの方が正論であった。中世騎士の時代ですら領土を懸けた騎士の一騎討ちなどありはしない。まして今は宇宙世紀で、アムロは多くの人の思いを受けて立つ男、常識的にそんな決闘できるわけが無い。

 だがシロッコは世界の裏を渡り歩いてきたアムロの恐ろしさをまだ知らないのであった。

 

 数日後サラが慌て様子で司令室で仕事をしているシロッコの元に駆け込んできた。

「シロッコ様」

「どうしたサラ?」

「至急放送を見て下さい」

「何」

 司令室のメインスクリーンに自由宇宙同盟が電波ジャックして全宇宙に向けて放送されている映像が流れる。

 

 そこは月夜の古のコロッセオ。

 円形状の観客席は人々で埋まり、その視線の先の闘技場では篝火が燃やされていた。

 ドンドコゴコドンドコドンドン

 異様であった半裸の男達が太鼓を叩いている。

「はっ宇宙世紀 最強と言えば」

「最強と言えば」

 クワトロが力強う掛け声を上げれば、アポリー、コウ、ユウが合いの手を出す。

 どんどん

「その名は」

「その名は」

「ア・ム・ローーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

 ぷしゅうーーーーーーーーーーーーーーーーー

 煌びやかなスポットライトと白煙を切り裂き白のタキシード姿のアムロが颯爽と入場口から表れた。

 きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ。

 花道の左右をチアガール姿のフォア、ロザリー、シーマ、ハマーン、その他オペレーターズが並んでいてダンスと共に喝采を上げる。

「ア・ム・ロ」

「ア・ム・ロ」

「ア・ム・ロ」

 観客席からは熱気の大音量のアムロコールが沸き上がり大地を揺るがさんばかりである。

「サンキュー。

 そう私が宇宙世紀最強アムロ」

「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

「ステキーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

「アムローーーーーーーーーーーーーーー抱いてーーーーーーーーーーーーーーー」

 再度沸き上がる黄色ムーブ。

「サンキューサンキュー。

 アムロは最強、これは事実であり真実だ。

 だが最近耳にしたんだが、俺に断りも無く天才と名乗って調子に乗っている身の程知らずがいるようだ。

 そこの可愛いくて賢そうな君達、俺にその愚か者の名を教えてくれるかい」

 アムロが耳を傾けると特別観客席でご学友と一緒にいたミネバが元気よく答える。

「シロッコ」

「そうシロッコだ。

 身の程知らずの名はシロッコ」

「ぶーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

「ぶーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

「ぶーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

「ちなみに宇宙世紀最強の素敵なパパは?」

「アムロ」

「オウイエス、ザッツライト、その通り。

 このアムロがその身の程知らずに身の程を教えるためガンダムファイトを申し込む。

 負けた方は勝った方の奴隷だっ。

 まさか最強を自称する(笑)天才(ぷぷ)シロッコ様が逃げるとは言わないだろうな。

 場所はサイド5宙域。

 日時は一ヶ月後、全地球圏に完全生放送だ。

 さあ、地球圏の諸君このビックファイトを心待ちにするがいい」

 

 ガチャンッ。

「おのれ、アムロ」

 シロッコは放送を見て思わずコンソールを破壊してしまったのであった。

 全世界に宣言をした以上約束を翻せば信用は失墜し支援者達は離れていくだろう。

 アムロは約束を守らなければならい状況を作り上げた。言質を取られているシロッコはこれで応じなければその怪しいカリスマは霧散するだろう。

 もはや互いのプライドを賭けたガンダムファイトは行われることになったのである。

 

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