deZire ガンダム   作:コトナガレ ガク

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第80話 ターニングポイント

流星の如き韋駄天ガンダムはジオ・オーヴェロンを切り裂き流れ去っていく。

 決まったと全世界の観戦者が思ったとき韋駄天ガンダムは突如スラスター全開で直角水平移動、今まで韋駄天ガンダムがいた位置をビームが通り過ぎていく。

「死んだふりが下手だなシロッコ。殺気がダダ漏れだぞ」

 ここでアムロは韋駄天ガンダムを反転させ切り裂いたジオ・オーベロンに振り返る。そのアムロが見守る中、切り裂かれた装甲が爆発するように弾け飛んだ。

 飛び散る装甲が薄れ神々しく荘厳にガンダムが現れた。

 そのガンダムは派手好きなシロッコのMSらしく王のようなポーズを取っている。

「王に平伏せよ凡人共」

「派手好きな奴だ」

「もう少し遊んでやるつもりだったが、このオーヴェロンが真の姿を晒した以上終わりだアムロ。

 そんな多少速いだけの非力なMSで勝負になると思うなよ」

 速い。

 重装甲がパージされ表れたオーヴェロンは一瞬で韋駄天ガンダムとの間合いを詰めるとお返しとばかりにビームサーベルの一撃を放つ。

「ぐっ」

 韋駄天ガンダムはオーヴェロンの一撃を真正面で受けないでいなしつつ受ける。

「どうしたっどうしたっアムロ。防戦一方か」

 オーヴェロンの連擊を韋駄天は必死にいなしていく。少しでも受け損なえばビームサーベルごと真っ二つにされる。そのくらいパワーが段違いだった。

 流石シロッコがジオの次世代機として開発していただけはある。

 

「ああっとセコイ不意打ちを華麗に躱したアムロが一転して追い込まれていく。

 ぐ~何かここから逆転する手はありますかリミアさん」

「ノエルさん中立中立。

 まあそうですね。チョバムアーマーもどきを利用した初見殺しMSと思いましたが、どうしてあのオーヴェロン完成度が高いですね。

 パワーは完全に韋駄天を圧倒しています。

 ただ」

「ただ」

 ノエルは一旦言葉を切ったリミアに先を促す。

「韋駄天が私の知っているMSならこの勝負はまだまだ分からないと思います」

「おおっと韋駄天にも凄い切り札があるということですか?」

「切り札というかもう晒しているというか。

 まあ見守りましょう」

 

「韋駄天ガンダムだとて伊達じゃ無い」

 韋駄天は一気にバーニアを全開にしオーベロンの猛攻から逃れるように間合いを取った。

「逃げるか小賢しい」

 オーベロンから強力なビーム三連擊だが韋駄天はその名の如くスピード振り切っていく。そして彗星の如く大きく弧を描いてオーベロンに迫る。

「特攻のつもりか」

 狙い澄ましたビームが韋駄天を襲うが韋駄天は躱す躱す。そしてスピードが乗ったビームサーベルの一撃をオーヴェロンに放つ。

 だがオーヴェロンは王に小細工は無用と真正面から受けきって見せた。

「くっ」

 受けきられアムロは直ぐさま離脱する。スピードを生かしたヒットアンドアウェイに徹するようだ。

「多少は速いようだが。王たるオーヴェロンは当然スピードでも負けん」

 オーヴェロンも韋駄天に負けない加速を見せ食らい付いていき、両者激しい螺旋を描いてビームサーベルの火花を散らしていく。

「さっさと降伏したらどうだアムロ。私の従者くらいには取り立ててやるぞ」

「貴様こそ。

 シロッコ、それだけの才能を持ちながらいつまで遊んでいるつもりだ」

「はっなぜ天才が凡俗のために尽くさねば成らないのだ」

「なら貴様に勝った俺に尽くすのなら文句は無いな」

「寝言は寝てから言え。このオーヴェロンに乗った私は無敵の王だ」

 流石はシロッコである。慢心を捨てて挑めばアムロに匹敵するパイロットの才を見せ、性能がオーヴェロンの方が上の分アムロが押されている。

 容赦ない連擊。

 払い胴

 袈裟斬り

 逆袈裟斬り

 小手

 面

 突き

 合間を見て逆手でのパンチ

 回し蹴り

 膝蹴り

 人型であることを余すこと無く生かした千差万別の攻撃。

 アムロは高速移動をしながらもその全てをいなすがそれでも小さいダメージは蓄積されていく。このまま限界を超えれば被弾すること無くバラバラになる。

「どうしたアムロ。反撃しないと終わりだぞ」

「ふっ」

「何を笑うアムロ」

「どうやら俺の韋駄天ガンダムよりお前のオーヴェロンの方が先に限界が来たようだな」

「なんだと。オーヴェロンはダメージゼロだ」

「そして推進剤もゼロだ。

 調子に乗りすぎたなシロッコ、貴様はパイロットの才能は無いな」

「なっ」

 更に加速を挙げて振り切ろうとする韋駄天ガンダムに追いすがろうとスラスターを噴かそうとしたがスラスターが火を噴くより先にアラームが鳴り響く。

「推進剤切れだと」

「あれだけの起動戦をすれば推進剤が切れるのは当たり前だろ」

 その隙を狙って韋駄天ガンダムのバルカンがオーヴェロンに放たれる。

「っう」

 オーヴェロン初の被弾、バルカンが装甲を削り取っていくが貫通される前に離脱自体は成功したがこれで推進剤は切れた。

「今こそ決める。

 シロッコ貴様に彗星を見せてやろう」

 韋駄天ガンダムはスラスター全開、戦闘初期のころと比べてセーブされているどころか上がっている。

 彗星と化した韋駄天ガンダムがオーヴェロンの周りを周回し出す。

「くそっくそっ」

 シロッコはアンバックのみで機体制御を行いつつビームライフルで応戦するが、そんなもの韋駄天ガンダムは初期同様ひょいひょい躱して徐々にオーヴェロンを中心とした周回軌道の半径を狭めていく。

「馬鹿な。お前のMSだってオーヴェロンと同じはず。なぜそれだけ動ける」

 オーヴェロンを必死に動かそうとするが推進剤が無ければ物理的に起動できない。オーヴェロンは手足をばたつかせるのみ。

「その答えお前なら分かるはずだ。

 韋駄天ガンダム、開発コード「エプシィガンダム」」

 

「やはりエプシィガンダムだったか」

 リミアがやはりと叫んだ。

「リミアさんが興奮してますが、エプシィガンダムとはそれほど驚くものなのですか?」

「エプシィガンダムは今までのMSの推進機構とは次元が違います。

 特徴として、航続性能の向上を目指し、大型宇宙船用のものを応用した中距離航行用核融合パルス推進システム「ブロッサム」(「ブラッサム」とも)を装備しています。これは、機体後方に向けてD-Hペレット(マイクロ水爆)を秒間100回のペースでレールガンによって射出し、後部粒子ビーム砲を用いてD-Hペレットを順次起爆。同時に機体背面に備えた折り畳み式のセイル4枚が内蔵する超電導コイルより強力な磁場を発し、磁場で爆発を受け止めその反作用で前進するというもの。簡単に言えば、「自ら極小サイズの核爆弾を後ろへ撃ち出し、その爆発の勢いで進む」システムである。また、副次的な効果として・・・・」

「リミアさんりリミアさん専門的な説明は後でお願いしますので、もっと簡単にお願いします」

 オタク魂が爆発して専門用語を羅列しだしたリミアにストップする。

「こほん。

 簡単に言えば惑星間航行に使う推進システムをMSに搭載しようとした夢のような技術です」

 

「まさかそんなものを・・・」

「どうだ凡人の発想も怖いだろ。

 だがおかげで稼働時間は従来のMSとは桁が違う」

 尤も完成していればだがな。正直推進剤は持ってもエンジン自体が持たない可能性もあったがチェーンはいい仕事をしてくれた。

「お前の敗因はお前は最強のMSを用意したが俺はお前用のMSを用意したことだ」

 動けなくなったオーヴェロンのコクピットに彗星と化した韋駄天ガンダムが突撃した。

 

「今度こそ決まったかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

 全地球圏の視聴者の心が重なった。

 

 韋駄天ガンダムが持つビームサーベルの柄の先端はコクピットに当たっていたがビームは発振されていなかった。

「ふっ負けたよアムロ。

 素直に軍門に降ろう。お前はそうまでして俺に何をさせたい」

 シロッコが心からアムロに下った瞬間であった。

 以後シロッコはアムロ随一の忠臣として働くことになる。

 後の歴史家はこの瞬間こそ宇宙世紀のターニングポイントであったと記述しているのであった。

 

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