実力至上主義の学校でも計算していたい!   作:ひよこのたまご

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第5話

衝撃の茶柱先生の説明があってから、教室は騒然としていた。ポイントが0であることに嘆く者。

自分がDクラスに配属され、落ちこぼれの烙印を押されたことに嘆く者。

衝突が起こりそうにもなっているが、何とか櫛田さんが場を宥めている。

そういえば坂柳さんはAクラスだったな。ということは、やはり相当優秀なのかあの子。

 

「ちょっといいかな堀北さん、あと綾小路君と志村君も」

 

平田君が話しかけてきた。

 

「これからのクラスの方針について、放課後話し合いたいんだけど、参加してくれないかな?」

 

話し合いか。あんまり得意じゃないが、参加するくらいならしてもいいな。

 

「ごめんなさい、他を当たって貰える?話し合いは得意じゃないの」

 

堀北さんは、さも当たり前のように断った。

その後も平田君が説得を試みるが、堀北さんの気が変わることは無かった。

 

「綾小路君と志村君は...」

『1年Dクラスの綾小路君、同じくDクラスの志村君。担任の茶柱先生がお呼びです。放課後、職員室まで来てください』

 

丁度無機質な案内が、教室に響いた。なんだ?俺何かしたっけ?

 

「じゃあこういうことだから...」

「あ、うん。しょうがないね。また今度機会があったら頼むよ」

 

平田君は残念そうにしながら去っていった。それにしても...

 

「綾小路君、何か心当たりある?」

「いや全く。何もした覚えはないな。志村はあるのか?」

「いや、これといってないね。目立つようなことはしてないはずだよ」

 

しかも何故綾小路君とセットなのかも分からない。まあ今考えても無駄だろうな。放課後になればわかる事だ。

 

放課後になった。

 

「じゃ、綾小路君行こうか」

「おう」

 

綾小路君と一緒に職員室に向かう。職員室ってなんか苦手だ。なんか別世界感がすごい。そっと職員室の扉を開いて、ぐるっと見渡すが、茶柱先生は見当たらない。仕方ない、そこの先生に聞いてみよう。

 

「すいません、茶柱先生いらっしゃいますか?」

「え、さえちゃん?えーっとね、あれ?さっきまでいたんだけどな」

 

俺が声をかけたのは茶柱先生と同い年位の若い女性の先生だった。さえちゃんと呼んでるし、仲がいいのかもしれない。

 

「ごめん、今席を外してるみたい。中で待ってたら?」

「いえ、2人で入ってるのもお邪魔でしょうし、外で待ってます」

 

綾小路君を見ると、同意のようで、頷いていたので外に出た。さて待つかと思っていたら、職員室の扉からさっきの先生の顔が出てきた。

 

「私はBクラス担当の星乃宮知恵っていうの。佐枝とは高校からの親友でね、サエちゃんチエちゃんって呼び合う仲なのよ〜」

 

急にとてもいらない情報を提供してくれた。

 

「ねえ、2人はどういう理由でサエちゃんに呼び出されたの?ねえねえ、どうして?」

「それが、どういう理由かオレたちにはさっぱり...」

「理由も告げずに呼び出されたの?ふーん、そっかあ。」

しかし、元気な人だな。喋る度にポニーテールが揺れている。

 

「君たち名前は?」

「俺は綾小路です。で、こっちのが志村」

「どうも志村です」

「綾小路君と志村君ね。ふ〜ん。2人とも、モテるでしょ。」

「いやいやいやいや、モテるわけないですよ。綾小路君はともかく、僕が」

「それはこっちのセリフだ、志村。お前はともかく、オレはモテませんよ。一切」

「えーそんなことないと思うんだけどなあ。うぶってわけでもないんでしょ?つんつんっと」

 

ついに俺の頬に人差し指でつついてきた。なんだこの先生...

 

「何やってんだ星乃宮」

 

スパーンとバインダーで星乃宮先生が叩かれた。あれは痛いな。

 

「いったー!何すんのサエちゃん!」

「お前がうちの生徒に絡むからだろ」

「サエちゃんが不在の間、相手してあげてたのに〜」

「ほっとけばいいだろ。すまん綾小路、志村、ここじゃなんだから、生活指導室に来てもらおうか。あと星乃宮、着いてくんなよ」

「冷たいこと言わないでよ〜。聞いても減るもんじゃないでしょ?それに、サエちゃんって個別指導とかしないタイプなのに、いきなり新入生を2人もなんて気になるじゃない」

 

まあ、茶柱先生はそういうタイプだろうな。

 

「もしかしてサエちゃん、下克上でも狙ってるんじゃないの?」

「バカを言うな。そんなこと無理に決まってるだろ」

「ふふっ、確かに。サエちゃんには無理だよね〜」

「そんなことより、どこまで着いてくるつもりだ?」

「え、指導室までだけど。この子達にもアドバイスできるかなーって」

「これはDクラスの問題だ。着いてくんな」

 

星乃宮先生が着いてこようとした時、俺の前に1人の女子生徒が現れた。

 

「星乃宮先生、少しお時間よろしいでしょうか。生徒会のことで、相談したいことがあります」

「ほら、お前にも客だ。ほら、行った行った」

「もう〜。これ以上からかってると怒られそうだから、またね、綾小路君、志村君っ。じゃあ職員室にでも行きましょうか。一之瀬さん」

 

そう言って、一之瀬と呼ばれた美人と去っていった。

 

「さて、綾小路と志村、お前たちを呼んだ理由を話そうと思うんだが、その前にちょっとこの部屋に入って待って貰えるか?」

 

茶柱先生が指した部屋は給湯室だった。なんだ?俺たち監禁されるのか?

 

「いいか、私がいいと言うまで出てくるんじゃないぞ」

「え?ちょっと待っ」

 

言い終える前に茶柱先生は行ってしまった。思わず綾小路君と顔を見合わせる。すると程なくして、誰かがやってくる音がした。

 

「それで?話とはなんだ?堀北」

 

来客は堀北さんだった。なんだろ?

そこから、茶柱先生と堀北さんの問答が始まったのだが、その内容を要約すると、自分がDクラスに配属されたことに納得がいかないので、確認を要求するというものだった。まあ確かに堀北さんは学力は優秀だからな。先日の小テストも90点で同率首位だったし。

 

「残念だがDクラスに配属されたことはこちらのミスではない。お前はDクラスになるべくしてなった。それだけの生徒だ。それに、悲観することはない。朝も話したが、出来不出来でクラスは上下する。卒業までにAクラスに上がれる可能性はまだ残されている」

「簡単な道のりとは思えません。未熟な者の集まりで、どうやったらAクラスに勝てると言うのですか?」

「それは私の知ったことではない。Aクラスを目指すも、目指さないも個人の自由だ。それともお前には、Aクラスを目指さなければならない特別な理由でもあるのか?」

「それは...今日のところはこれで失礼します。ですが、私が納得していないということだけ、覚えておいてください」

「分かった、覚えておこう」

 

どうやら話し合いが終わったようだ。茶柱先生はこの会話を聞かせたかったのか?

 

「ああそうだった。生徒を指導室に呼んでいたんだった。お前にも関係のある人物だぞ」

「関係のある人物?ま、まさかにいさ...」

「出てこい、綾小路、志村」

 

こんなタイミングで呼んで欲しくない。その気持ちは2人とも同じようで、互いに頷きあって無視を決め込んだ。

 

「出てこないと退学にするぞ」

 

なん、だと...職権乱用だ!

しょうがない。出るしかないか。

 

「遅いですよ。15分42秒待ちました」

 

ため息をつきながら、嫌味を吐いてしまった。堀北さんは驚き顔のまま、固まっている。

 

「私の話を...聞いていたの?」

「話?何か話し合っているのはわかったが、内容までは聞こえてないぞ。なあ志村」

「そうだね。意外と壁が厚いんじゃないですか?」

「そんなことは無い。ここは音が良く通る」

 

くそっ。何としても巻き込むつもりか...

 

「...先生、何故このようなことを?」

 

堀北さん、激おこだ。まあ罠にかけられたようなものだからな。

 

「必要なことと判断したからだ。さて、綾小路、志村、お前達を指導室に呼んだワケを話そう」

「私は失礼します...」

「待て、堀北。ここで話を聞いておかないと後悔するぞ。Dクラスにとって重要な事だ」

 

何か凄い嫌な予感がする。一刻も早く立ち去りたい。

堀北さんの動きが止まり、椅子に座り直した。

 

「お前たち2人とも、とても面白い生徒だな」

 

茶柱先生がニヤニヤしながらそのようなことを宣う。

 

「入試の結果をもとに、個別の指導方法を思案していたんだが、面白いことに気がついてな。まず、綾小路」

 

机の上に綾小路君の物であろう入試のプリントが並べられる。

 

「全教科50点。さらに今回の小テストも50点。気づいた時には心底驚いたぞ」

 

堀北さんが目を見張っている。俺も驚いた。仕組まれたとしか思えないほど綺麗に50点だ。

 

「偶然って怖いですね」

「とぼけるつもりか?色々意図的にやったであろう証拠もあるんだが、それはまあいい。それと志村。お前の入試の結果も面白かった」

 

堀北さんがこっちを見ている。まずいな...

 

「お前の入試の点数は、数学100点、理科100点、国語72点、英語0点、社会0点だ。それに先日の小テストの点数。お前の点数は55点だったが、よく見ると社会と英語は1問も解いていない。さらに、数学の最後の問題を解法まで完璧に解けているのは、学年でもお前だけだったぞ」

「...理数系がただ得意なだけですよ」

「ふっ。お前もとぼけるのか?『志村孝和』の息子よ」

「っ。その名前を呼ばないでください。特にこいつらの前で」

「何だ?急に口調が変わったな。まあいい、話というのはこれだけだ。私はこれから職員会議だからもう行く。ではこれからの学校生活を満喫してくれ」

 

それは俺たちへの皮肉か?くそ...

茶柱先生はそのまま去っていった。




オリジナル展開が、少なくてすみません...
これから増えます。多分(保険)
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