ブラック・ブレット―楽園の守護者―   作:ひかげ探偵

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まず遅くなって申し訳なかった……。

そしてちょっと急ぎ足で詰め込み過ぎた感あります(汗)

でも、二万文字くらい書いたんで許して!!


第七話 後悔

 

 

 

 

 

 

時間とは何かに縛られることなくただ流れるもの。

 

人がどれだけ足搔いたとしても決して止まることも戻るということはなく、過ぎ去った時間を変えることなど誰にも叶わない。

 

故に人は今を、この一分一秒を何をも上回る宝として考え生きていくのだろう。

 

 

後悔したくないなら迷うな、という言葉を耳にしたことがあるだろうか。

 

聞いたことがある者にも無い者にも聞きたい、この言葉をどう思った。

 

――成程確かに、そう納得する?

――いやそれは違う、そう否定する?

 

俺は答えは分からない、というよりも答えを出せない、そう答える。

 

何故なら迷うという概念はそれこそ全ての生物は皆持っていて至極当然のものだから。

 

更に状況によっては決断した一つの行動が今後の自分という存在に大きく影響し人生を左右することもありえるだろう。

 

それならば迷うのは必然、むしろ迷わない者の方が少数だ。

 

よってこの問いに確かな答えを出すことは出来ない。

 

ならばどうすればいいか。

 

簡単だ、間違えればいい。

 

間違えて、何度も間違えて、そして学んでいけばいい。

 

ありふれた言葉だが、大切なのは間違えても再び立ち上がることなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

既に庁舎での出来事から数日が経とうとしていた今日、俺こと里見蓮太郎は蛭子影胤と感染源ガストレアを探すために日夜必死に情報収集に勤しむ―――――ほど頭もよくないので当然出来ることなどなく難しいことは木更さんともう一人、四賢人である室戸菫に完全に任せていた。

 

 

『四賢人』

ガストレア大戦中、対抗策を得るべく世界中から選び抜かれた4人の天才科学者達。

 

 

これだけ聞けば人類がガストレアに対抗するべく選び抜かれた英雄のようにすら聞こえるが、その実彼らの正体はただのマッドサイエンティストである。

先日も会ってきた菫さんのことを思い出し知らず口からため息が漏れた。

 

「ふんふんふ~ん」

 

隣を見れば延珠が鼻歌を口ずさみながら満面の笑みで歩いている。

現在の時刻はまだ午前半ばであり昼食の買い物に行くにもまだ早いのでとりあえず行き先を延珠に任せ町中をぶらついていた。

 

「あっ!蓮太郎、あそこだっ!!」

 

唐突に手を引かれ体がつんのめりそうになりながら何とかバランスを保ち延珠についていく。

着いた場所はおもちゃ屋だった、しかも小さいものではなく大手の家電量販店のワンフロアを丸々貸し切った大規模なものだ。

顔を忙しく動かし店内を見回す延珠を横目に見ながら俺は店内を眺めて昔のことを思い出していた。

 

こういう所には長いこと来る機会もなかったな……。

 

知らず知らずの内に手近にあるブロックの積み木パズルのサンプルを片手で弄る。

 

「……懐かしいな」

 

こういうおもちゃで木更さんと遊んだりしたこともあったけか。

 

「なあ、延珠。これとか―――」

 

「妾が用があるのはこっちだ」

 

「……へいへい」

 

にべもなく斬り捨てられ少し不満げな気持ちを抱きながらも延珠の指さす方を見ると、周囲から一際目立つ所に天誅ガールズコーナーとポップな字で書かれておりその周りに様々なグッズが置かれていた。

 

「へぇ、天誅ガールズね」

 

内容まで詳しくは知らないがその名前には少し聞き覚えがあった。

まず延珠が最近ハマっており家で欠かさずに見ているアニメであり、結構人気があるらしい。

そんな事を考えている間に延珠は商品の置かれている特設コーナーを物色し始める。

手持無沙汰だった俺もとりあえず、と特設コーナーに目をやる。

そして一番目立つ場所にあって最初に目についたステッキブレード?やキャラに着ている衣装の値段をみて思わず愕然とした。

 

「……なんでこんなに高ぇんだ」

 

その隣に置いてある小さな人形などは47人セットでお買い得などといいつつもゼロが…………冗談だろ。

 

「そうか? このくらい普通ではないか、それにこれは妾の給料で買うから蓮太郎は気にしなくてよいぞ」

 

あれ、ちょっと待てよ?

よく考えたら小学生に自分で自分のおもちゃ買わせるってどうなのだろう、もしかしたら俺って結構あれなのではないだろうか?

 

先日の銀髪のイニシエーターが俺に言い放った言葉を思い出し、いや違うと首を振り己の考えを否定する。

 

こんな高ぇの誰だって躊躇するだろ、俺は普通だ。

 

自分で自分を必死に擁護していると、どうやらいい物を見つけたらしい延珠がこちらに向かってきた。

 

「こんなのはどうだ、蓮太郎!?」

 

俺に差し出されたのはブレスレット、彫刻模様の上からクロームシルバーのメッキがかかっている。

というか、見た目に反して軽いな……アルミか?

 

「何だこれ」

 

「アニメで天誅ガールズがつけている物だ、四十七士の仲間の証でもあり、仲間を欺いたりすると罅が入って割れ仲間に嘘をついたことが分かってしまうんだ」

 

「……魔法少女って割には結構ガチめな縛りのある効果だな」

 

「そこがよいのではないか」

 

「……そ、そうか?」

 

共感できない延珠の言葉を聞きながらブレスレットを弄んでいると紐で繋いである値札に目がいった。

 

お値段―――6980円也。

 

「……な、なあ延珠? も、もっと別のに――「では買ってくるな」――あ」

 

俺の引きとめる声を無視して延珠は会計へと走っていき即座に購入を済ませてしまう。

 

……いやまあ、延珠の金だしいいんだけどな。

 

そのまま外へと出て満足げな延珠の顔をを横目で眺めながら商店街の通りを歩いていく。

 

「……随分嬉しそうだな」

 

「うむ、いい買い物をしたぞ!あ、そうだった。ほら!蓮太郎も腕につけろ」

  

「俺もつけんのかよ」

 

「これはペアリングだ。妾のフィアンセたる蓮太郎が着けず誰がつけるんだ」

 

受け取ったブレスレットを延珠がしているように腕につける。

その様子をじっと見ていた延珠がなにやらニヤニヤした表情をし始める。

 

「な、なんだよ」

 

「ふふふ、そのブレスレットの効果話したであろう。これで蓮太郎は妾以外の女に浮気してもすぐ分かるぞ。もちろん木更のおっぱいに見とれたり、この前みたいに他のイニシエーターをえっちな眼で見るのもダメだからな」

 

「だからぁ、この前のは誤解だって……いやもういい、誤解解くのも面倒くせぇ」

 

どうせ延珠は俺の言葉聞いても納得しないだろうしな、などと諦念を抱いていると突然、延珠が声をあげた。

 

「ん、あれは聖天子様ではないか?」

 

そう言って延珠の向く方向、街頭テレビのパネル、大型のディスプレイを見る。

そこには東京エリアの代表である聖天子がでかでかと映し出されていた。

以前見た無表情とは打って変わる厳しい表情で『呪われた少女達』の基本的人権の尊重について再度、法案を出すということを話している。

これこそ今、東京エリアで話題になっている『ガストレア新法』と呼ばれるものだ。

 

この法案は通過して欲しい、俺はそう切実に思う。

 

現在この東京エリアで起こっている呪われた少女達に対する迫害、それは一昔前までよりは収まった方だと思う。

戦後すぐは赤い目を見るとガストレアを思いだしショック症状を起こすという理由で赤ん坊は川で生んでその眼が開かれる前に殺すことが一般的だったし、再生力が高い、その体質故に虐待の対象になることも多かった。

もちろん、収まってきたとはいえ今もなお呪われた少女達に対して肯定的な考えを持つ者は少ない。

だからこそ、東京エリアの代表が彼女達の境遇に理解があることは俺自身にとっても嬉しいことだった。

叶うことなら彼女に全てを任せてしまいたい、そう思うほどに―――。

 

「蓮太郎……どうかしたのか?」

 

隣を見れば延珠が心配そうな表情でこちらを覗き込んでいた。

 

「いや……」

 

っ何考えてたんだ、俺は、延珠を他人に任せるとか、アホか。

 

「なんでもねぇよ、心配すんな」

 

そう言って延珠の頭をワシワシと強めに撫でる。

 

「そうか?……あっ、蓮太郎見ろ、今度は天誅仮面だぞ!!」

 

再び視線をスクリーンに戻せば聖天子の会見は既に終わり別のニュースが流れていた。

内容は謎の人物が東京エリアで人助けをして回っているというもの。

現れてから既に数カ月が経っているが未だにその正体が分からず、現場にいた人達によると『天誅仮面』という名を名乗っていることからその名だけが知れ渡っている。

 

「凄いなぁ、カッコいいな天誅仮面……正義のヒーローだっ!!」

 

 

正義のヒーロー、その名に似合うように天誅仮面はこの動機エリアで人を助けて回っている。

しかしそれを擁護する、ないし肯定的な眼で見る者は驚くほど少ない。

理由は尋常ではない身体能力と小柄な体躯から呪われた少女達ではないのか、という事が疑われていることが挙げられる。

そして最たるものが一般人と呪われた少女達を区別することなく助けていることだ。

故に助けられた人が排他的な考えを緩めたとしても、それはあくまで少数、大多数の否定派に押しつぶされる。

 

 

「……おい、あんまり大声出すなよ」

 

「なぜだ!カッコいいであろう天誅仮面」

 

「いや、そうだけど。周りはそうは思わないっていうかな……」

 

「むう!妾は間違ったこと言っておらんぞ!!」

 

「……はぁー。ああ、そうだな、カッコイイナテンチュウカメンハー」

 

「真面目に聞けぇ!」

 

ふとどこからか「その対応……お前に紳士の資格はない」という言葉が聞こえた気がした。

 

「ふん、蓮太郎はレディーの扱いがなってないな、また一つ蓮太郎のモテない原因が分かったぞ」

 

「な、くっ――そ、それよりソレ、なんだよ?」

 

特に言い返せなかった俺は話を逸らすのと陰鬱とした気分を切り替えるため延珠が脇に下げている袋を話題に上げた。

 

「ん、これか?」

 

袋の中、そこからは俺達が腕につけているブレスレットがもう一組出てきた。

 

「あの鉄災斗という男とそのイニシエーターにも買っておこうと思ったのだ」

 

「あの二人に……何でだよ?」

 

「はぁ~全く蓮太郎は馬鹿な奴だなぁ、この前助けてもらったからに決まっているだろう」

 

「へぇ」

 

延珠がまさかそんな事を言い出すなんてな……というか俺の方が年上なのに全く考えてなかったじゃねぇか……。

 

「菫が言ってたからな!”やられたらやり返せ”と!!」

 

「……いや、それ激しく使い方間違ってるからな」

 

「む、そうなのか?」

 

にしても、そうだな。

確かにあの二人にはお礼をしとかないとな。

 

「延珠、そっちの方の代金は俺が払う」

 

「ッ――!?」

 

延珠が何やら驚いたように口をぽかんと開けたままで立ち止まった。

 

「ん、どうかしたか?」

 

素早く俺の肩をつかみ引き下ろすと俺の額と自分の額を合わせる。

 

「……ホントにどうしたんだよ?」

 

「蓮太郎っ……正直に言うのだ。どこか調子が悪いのだろう、今すぐ病院に行くぞ!」

 

「はぁ? 別にどこも悪くねぇよ」

 

「嘘をつくな! 日々の夕食でも1円の節約のためなら何地区も離れたスーパーに食品を買いに行くというドケチで貧乏な蓮太郎が人に者を買う訳ないであろう」

 

「失礼すぎるだろ!!!」

 

……こいつ、俺の事をそんな風に思ってたのかよ。

 

「なあ延珠、いくら俺でもそれぐらいの常識は持ってんだよ」

 

「でもこの前、妾に家賃借りたではないか?それは蓮太郎の常識では普通なのか?」

 

「口答えしてすいませんでした!」

 

あまりにも痛すぎる場所を突かれた……小学生に養われる高校生―――ヤバい、ヤバすぎる。

そんなのが世間に知られたら社会的に死ねるぞ、俺。

 

「まあ蓮太郎は妾のフィアンセ、これで許してやろう」

 

「……マジで頼むぞ」

 

延珠の気が変わらないことを祈っていると前方の人垣何やらざわついていることに気付いた。

そんなことを思っておると体に直接響くような激しい怒声が遠くから微かに聞こえた。

それに触発され人垣にも何やら不穏な雰囲気が流れ始める。

 

 

 

―――今すぐここから離れろ!!

 

 

 

虫の知らせ、第六感などとは言わないが蓮太郎の直感がそう告げる。

このままここにいたら大変なことになる、そう予感を感じた蓮太郎は延珠の手を掴み急いで踵を返そうとした、その瞬間―――。

 

 

「誰かッ!!!そいつを捕まえろォォォォッ!!!!!」

 

その荒々しい声が俺達の耳に届くのと人垣が割れて一人の少女が飛び出してくるのはほぼ同じタイミングだった。

食料品の大量に入ったかごを持ち、中身を落としながらも走り続ける。

そして少女の進行方向を塞ぐようにして立っていた蓮太郎と延珠を見て足の動きが止まった。

服装はどこにでも売っているようなありふれたもの、しかし長い間洗ってないようでかなり汚れており所々修繕した箇所が目立っている。

 

 

外周区に住む孤児(呪われた少女達)―――赤い瞳とその容貌からその事実はすぐに判明した。

 

 

いつまでも続くかと思われるほどの長く無言の睨みあいが続いたが、それは少女の背後から伸びてきた大きな手によって終わりを迎えた。

力任せにその小さな体躯をアスファルトへと叩きつけ押さえこむ、こちらにまで骨の軋む陰惨な音が聞こえてきた。

 

「ッ―――放せぇ!!!!」

 

端正な表情を激しく歪め力任せに拘束を払おうとするも更に幾人かの大きな手が少女の身体を押さえつけた。

一見すれば大の男数人がかりで少女を押さえつけるという異常な光景、しかし誰も少女に同情の視線を向けることはない、それどころか大衆は口ぐちに罵声の言葉を吐き出す。

 

「この化け物め、東京エリアのゴミがッ!」「喚くんじゃねぇ、ガストレアが!」「この害虫が!」「くたばれ赤鬼!!」「化け物のくせに人間の居る所に出てくるんじゃねぇっ!!」

 

 

暴れる少女の視線が延珠の姿を捉えた。

必死になりながら延珠に向かい片手を伸ばす。

 

こいつ、延珠の事を知ってんのか!?

 

その手に反応し延珠も顔を青褪めながらも片手をゆっくりと前へと伸ばす。

それが重なる寸前――。

 

「やめろっ!」

 

俺は反射的に少女の伸ばしていた手をはたき落していた。

少女の表情が蓮太郎への恐怖一色に染めあげられる。

 

「あ……」

 

「貴様らッそこで何をやっている!!」

 

少女を囲むように立っていた観衆を割って痩せた眼鏡をかけた警官とガタイのいい警官が向かってきた。

こちらの様子を見た眼鏡の警官は「ああ、なるほど」と冷めた声で呟き少女の襟元を乱暴に掴み立たせる。

 

「おらッさっさと立て!」

 

そのまま少女の両手を背中にまわし手錠を嵌める。

 

「放せよッ!あんたらあたしが何をしたかも知らないくせに!!」

 

「お前ら、赤眼のことだ。どうせ傷害やら盗みやらくだらんことをやらかしたんだろ。呪われた少女達(おまえら)がやりそうなことくらい分かってんだよッ!」

 

俺達を置いてどんどんと進んでいく状況に唖然としていると警官たちは先ほど少女を追いかけていた代表らしい男に一言謝意を述べパトカーで去って行った。

周りの人垣も騒動が終わったとみると呪われた少女達の悪口を言いながらも離散していった。

これ以上ここにいても意味がないと思った蓮太郎は家へ帰ろうと延珠の方を向く。

 

「……なぜだ」

 

延珠は拳を力いっぱい握りしめ俺を睨みつけていた。

 

「なぜ、あの手をふりはらった蓮太郎!!」

 

延珠の瞳がその内に燻ぶる怒りに呼応して薄赤く光りはじめる。

 

「っ――とりあえずこっち来い……」

 

そんな様子に気押されながらもここにいてはマズいと延珠の手を引いてビルの隙間の路地裏に入ろうとする―――がその手を振り払われる。

 

「ふざけるなっ!あの者は……あの者は助けを求めていたんだぞッ!!」

 

「い、いやでも、あの時手を振り払ったのは必死で――」

 

必死で?

必死で何をした、最後の希望を求めて手を伸ばした少女の手をはたきおとしたんだろう。

 

延珠は肩を震わせて顔を俯かせている。

顔の真下の地面にぽつぽつと跡が出来ている。

 

「もしかして、知り合い、なのかよ?」

 

「昔何度か見かけた……一度も話したことはなかったが、はっきり覚えている」

 

延珠のその言葉をきいてどうするか決断するまでにそう時間は掛からなかった。

 

「延珠、先に一人で帰ってろ」

 

それだけ言い残すと返事を待たずに背を向けてパトカーの向かった方向に駆けだしていた。

 

 

 

途中持ち主から強奪したバイクで車間の隙間をぬいながら俺は猛烈に嫌な予感を感じていた。

 

――――何故、先ほどあの警官たちは状況もろくに確認せず少女を連れて行った?

 

あれは何を意味しているのか。

自分の頭のなかで導き出された最悪の答え。

それが間違いであることを願ってとにかくフルスロットルで道路を進み続ける。

 

早く、早く、どこだ、どこだっ!!

 

どんどんと外周区へと近づいていき人の姿が全く見えなくなった頃、ようやく路肩に一台のパトカーが止まっているのを見つけた。

バイクをしっかりと停めることなく半ば放り捨てるとパトカーに駆け寄り中を確認する。

しかしそこには誰の姿もなかった。

 

くそっ、どこ行きやがった!?

 

辺りを見回すが人の気配はない。

なおも探そうとしていると何やら怒鳴り声が俺の耳に届いた。

発生源の建物に入る寸前、一発の発砲音が屋内に乾いた音を響かせた。

 

なっ!?

まさか、アイツら!!

 

『銃声』

『呪われた少女達』

『人のいない外周区の建物』

 

それらから想像される最悪の光景を幻視して俺は中へ駆け込んだ。

そこにあった光景は―――

 

 

 

 

 

 

 

 

―――背後の鉄柵にまで追い詰められた少女に眼鏡の警官が拳銃を向けておりその前にマントを羽織り仮面をつけた人影が佇むというもの。

 

謎の、理解できない状況下でとりあえずその推移を見ようと柱の陰に姿を隠した。

 

「お、お前誰だっ!?」

 

謎の仮面の登場は奴らにも予想外だったのか焦る警官のその言葉に唯一見える口許を弧に歪ませる。

 

「誰……? くっくっく、我のこの姿を眼にして未だに分からぬと、そう申すのな貴様らは」

 

よく見れば延珠とそう変わらない小さな背丈をしている。

そんな仮面の少女はそれに似合わない尊大な口調でそう答えた。

 

「姿、だと……まさか!お前があの天誅仮面とかいう、ふざけた奴か!?」

 

「如何にも!他ならぬ我こそがこの地の闇を支配する者、天誅仮面なるぞ!」

 

「闇ィ? 何を意味の分からんことを!?」

 

「どうせお前も赤鬼なんだろうが、死んじまえ!」

 

再び、しかし今度は二人から同時に発砲される――しかし、その銃弾が少女達を捉えることはなかった。

またも見当違いの場所で着弾音が鳴り響く。

 

「な、何をしやがったお前!?」

 

蓮太郎の眼はぼんやりとだが今の光景を視認していた。

少女が手を素早く振るい鞭のようなもので銃弾を弾いたのだ。

 

「ば、化け物がぁっ!」

 

今度は乱射するように発砲するがそれも少女達に当たることはなく別の場所に着弾する。

 

「くっ――この化け物ぉ!赤鬼の、ガストレアの分際でぇッ!」

 

その言葉を受けて仮面の少女は小さく笑い始め、やがて大きな声で高笑いするように声を張り上げる。

 

「ふふっ……赤鬼――呪われた少女か……我をあのような下位種族と同一に称すか、くくっ―――ふははははっ!!」

 

「な、何がおかしい!」

 

ゆっくりと顔の上半部を覆っていた仮面に手を添少し下げる、すると瞳の部分だけが露わになった。

少女の口元が三日月形に歪められる。

そしてマントがたなびく。

 

 

 

――黄金と深紅の瞳

 

――口から覗く鋭くとがった犬歯

 

――背中から左右に伸びる黒い羽

 

 

 

「――あ、あああ……ああああ゛ああああっ!!!」

 

それに本能的な恐怖を感じたのか警官は叫び声をあげる。

 

「理解したか、劣等種。我は鬼などという下位種族ではない、我こそは永劫の時を生きる真なる呪われし血族――すなわちヴァンパイア。……これがその証だ」

 

「きゅ、吸血鬼!?」

 

「うそだろ!!」

 

「ふはははははっ、さあ逃げまどえ劣等種共っ!!食い殺すぞ!!」

 

「ひィィっ!!」「た、たすけてくれぇ!」大声をあげて屋外へと逃げだす。

その後すぐにエンジン音が聞こえ次第に音は小さくなっていった。

 

「さて……幼子よ、怪我はないか」

 

「え、う、うん。だいじょうぶ」

 

「そうか、ならばよい」

 

少女の身体を確認し怪我がないことを確認した少女は突然大声を発した。

 

「それで!……そこの鼠はいつまでそこで隠れているつもりだ」

 

ッ――俺の事に気付いていたのか!

 

急いで身を隠したが少女の視線は間違いなく俺の潜む柱を見ていた、隠しとおすことが出来ないと判断した俺は身がまえた状態で姿を晒す。

 

「……貴様、幼子が暴虐に晒される様をそのような陰で傍観とは……くくっ、いい趣味をしておるな」

 

「なっ、ち、違う俺は!!」

 

「違う?何を言う、貴様のした行為は事実その通りだったではないか」

 

「そ、それは……」

 

思わず口ごもる。

先程少女が大人達に捕まっていたとき蓮太郎はなにもせず、それどころか助けをはねのけ警察に彼女が連れていかれるのを見過ごし、今回も彼女達が襲われているのをただ傍観していただけなのだから。

そんな葛藤をしている俺に既に興味も無いのか天誅仮面は少女へと手を差しのべる。

 

「では、参ろうか。幼子よ」

 

「ど、どこいくんだよ?」

 

「ふふっ……何も心配はいらん。行き先は我らにとっての楽園さ」

 

「待て!その子をどこへ連れてく気だ」

 

「はあ、貴様の耳は節穴か? 既に言っただろう……楽園だ」

 

「楽園だと?」

 

「ああ、この幼子の同族もいる。素晴らしき場所だ」

 

「同族? 外周区のことか」

 

こいつは確かにあの少女を助けた。

しかし俺ははっきりと何者かすら分からないこいつにあの少女を任せる気にはなれなかった。

 

「その子は俺が!」

 

少女と天誅仮面、合計4つの瞳が俺に向けられる。

 

「俺が―――なんだ、助けるか? この幼子を一度見捨てた貴様が、守れるのか?」

 

「そ、それは……」

 

少女と眼があう、その瞳に宿るのは決して友好的なものではなくむしろ敵意すら込められいるように思えた。

 

「くっ」

 

「ふんっ……出来ないことをほざくな、劣等種、所詮貴様も先ほどの奴らと変わらぬのだからな」

 

「なっ、それは!それ、は……」

 

違う、そう言い放ちたい。

だが否定の言葉が俺の口から出ることはなかった。

 

「もう会わないことを祈っているぞ、傍観者よ」

 

座っていた少女の手をつかみ蓮太郎の横を抜けて天誅仮面は立ち去る。

先程の言葉を受けた俺にそれを止めることなどできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人が立ち去ってから俺は床に膝をついて顔を伏せていた。

 

何も言い返せなかった。

俺があの警官達と同じ、子供を殺そうとするような奴等と?

 

背中を寒気がはしる。

それが間を置かず形容しがたい怒りへと変わり、それを吐き出すように床へ拳を叩きつけた。

長年放置されたアスファルトの床には小石なども転がり皮膚を破り血が滲むが気にならない。

 

チクショウがッ!

俺は何のために民警になったんだよ!?

 

かつて木更さんと語り合った民警―――夢見ていたのは助けを求める市民を颯爽と助ける正義のヒーロー。

 

それが何だ、守る?

ただ目の前で子供が虐殺されそうになるのをただ見ていただけじゃねぇかッ!!

どう、どうすりゃよかったんだよ?

ガストレアを倒すだけじゃ駄目なのか。

俺が、俺程度が足掻いても何も変わらないのかよッ!

 

 

 

 

――呪われた少女達は虐げられる。

 

 

――東京エリアで人が死ぬ。

 

 

 

 

 

今もそしてこれからも何年、何十年、どれだけ経っても変わらない世界の残酷さ。

かつて夢見たことは所詮ガキの理想(えそらごと)、叶うことはない。

 

「なら俺は一体何を、何のために……」

 

突然、入り口付近から足音が聞こえすぐに振り向く。

そこにいたのは延珠だった。

 

「延珠っ、お前何しに来たんだよ。帰れって言っただろうが」

 

「妾も言い過ぎたと思ってな……それより大丈夫か蓮太郎? 顔色が悪いではないか」

 

「大丈夫だ。……さっきの子供も生きてるぞ、どっか行っちまったけどな」

 

「それは良かった」

 

でも、と言いながら延珠は俺の傍らに寄ってきた。

 

「今はそれよりも蓮太郎のことだ。何があったのだ」

 

「なんでもねぇって、何時もと同じ不景気な面してんだろ」

 

「いいや、今日はいつもの数倍不景気そうだ」

 

「ひでぇなおい」

 

「事実だからな」

 

先ほどの起こっていることを忘れ俺を元気にさせようと軽口をたたく延珠。

しかしその瞳の奥には確かに俺の事を心配する色が見え隠れしていた。

その顔はとても優しげな様をしていた、つい本心を吐露してしまいたくなるほどに。

 

「……なあ延珠、俺達は何のために戦ってるのかな」

 

「むう、急にどうしたのだ?」

 

「いや分かんなくなっちまったんだよな、俺達がガストレアを倒して何か変わるのか、何を目指してガストレアを倒しているのか」

 

とても延珠のような小さい子に話すようなことではない。

先ほどの天誅仮面との会話で変になったのかもしれないな。

 

「悪ぃ延珠、やっぱり何でも――「なんだ、蓮太郎はそんなことで悩んでいたのか」――え?」

 

延珠は何を言っているんだと言わんばかりの表情でこちらを見ていた。

 

「な、何って……延珠、お前は分かんのかよ」

 

「分からんっ」

 

何を言っているんだコイツは、とこめかみを押さえる。

 

「お前なあ……こっちは真面目に考、え…て……」

 

顔をあげるとそこには真剣な表情をした延珠がいた。

 

「分からなくてよいではないか」

 

「……どういうことだよ」

 

「蓮太郎は難しいことばかり考え過ぎだ」

 

「難しいこと?」

 

「妾達がガストレアを倒すことで死んでしまうかもしれなかった人達を助けられる。そこに理由なんてない、前に蓮太郎が自分で言っていたのではないか」

 

……俺が自分で?

 

「自分で語ったことを忘れるとは蓮太郎はお馬鹿さんだな!まだ妾達が会って間もない頃、妾が蓮太郎に何故民警をやっているのか尋ねた時だ」

 

かつて延珠に聞かれたその問い、次第にあの時交わした言葉を思い出す。

 

 

 

 

――なあ、蓮太郎はなんで民警をやっておるのだ?

 

――何で、か……色々あるけど。やっぱ人助けのためだと思う。民警ってのは俺の中じゃ正義の味方だからな。

 

――正義……人助け。で、でもガストレアを倒しても誰も感謝などしてくれないではないか。

 

――こほん、延珠くん。一つ教えておいてやろう。これは正義の味方の必須条件だぞ。一つ、決して諦めない。二つ、人に優しくする。そして三つ、対価を求めない、だ。

 

――必須、条件……正義のヒーローの………ッ! カッコいい、カッコいいぞ蓮太郎!! 蓮太郎は街の平和を守るヒーローだったのだな!!

 

――ま、まぁな、任せとけって。

 

 

 

 

「そう、か……俺は」

 

「納得したか、蓮太郎?」

 

「……ああ」

 

両足でしっかりとアスファルトの床を踏みしめて立ち上がり両手で頬を思いっきり叩く。

 

「っ~~!」

 

手を怪我したことを完全に忘れていたので頬と手でダブルの痛みを受け思わず呻く。

だがそれで完全に眼が覚めた。

 

「うしっ、復活」

 

「おかえり蓮太郎」

 

「ああ。ていうか延珠、俺ってそんなに分かりやすかったか?」

 

「いいや、妾だからすぐ分かったのだぞ、妾は蓮太郎のフィアンセだからな」

 

「……うっせぇよ」

 

「ふふん、少し元気になったか」

 

「延珠」

 

「ん、なんだ?」

 

「……ありがとよ」

 

「何を言っておる。元々蓮太郎が言ったのだぞ、妾達は相棒だと、相棒は支え合う者だと。それに――」

 

延珠が突然、言葉を切ったので不思議に思いそちらを見ると、延珠はこちらに満面の笑みを浮かべていた。

 

「何度も言っておるだろう。蓮太郎は妾のフィアンセ、夫を支えるのは妻の役目だからな」

 

その笑顔は不思議と俺の胸に染みわたり、いつの間にか俺の目尻には涙が、口元は弧を描いていた。

 

「……ありがとよ延珠。ったく、ほんとにお前は俺のイニシエーター(最高の家族)だよ」

 

「なっ!」

 

キランッ―――延珠の瞳が赤く輝き一瞬で蓮太郎を押し倒す。

 

「今のはプロポーズか!プロポーズに決まっておるよな!!」

 

「はっ、馬鹿、ちげぇよ」

 

「いいや妾は確かに聞いたぞ、蓮太郎は妾の事を花嫁(最高の家族)と言ったであろう」

 

「いやいや意味合いが違うだろ!!」

 

「いーや駄目だ。もう決定だ!!」

 

「ふざけんな!」

 

その後も軽口を叩きあいながらもゆっくりと家路へとついた。

既に蓮太郎達の間にわだかまりはなくその後ろ姿は本当に楽しそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蓮太郎と延珠の歩くその背後のそう遠くない廃墟と化したビルの屋上、そこの外周部分の塀に足を掛け二人の姿を見下ろす人影がいた。

燕尾服を着てマスクをつけたその長身の男の後ろには小さな少女が両の手を背後に吊るす小太刀に掛けながら立っていた。

 

「パパァ、どうして行かないの? あいつら行っちゃうよ」

 

我慢できない、そういう思いが前面に滲み出た声で小比奈と呼ばれる少女はそう言った。

 

「いや……今回はやめておこう、小比奈」

 

蛭子影胤はそんな娘の言葉を無視し動きを止めさせる。

 

「うぅ、なんでェ? あのちっちゃいの斬りたい」

 

「その機会ならいずれ訪れるさ、必ずね。今は一時でも彼らに偽りの平穏を楽しませてあげようではないか、ふふふ」

 

あの二人にこれから訪れるだろう未来を考え思わず口からは笑い声が漏れる。

 

「さてさて里見くん、その時、君はその甘ったれた考えを残していられるかな」

 

それはあたかも旧知の友に掛けるかのような気安さすら込められていた。

しかし仮面の下の口元はこれから二人を待つ困難を面白がるように嫌らしく歪められていた。

 

「よく、分かんない」

 

「気にすることはないさ、私と小比奈には既に関係のないことだよ」

 

さて、と……、片足を一歩前に踏み出し両足で外周に異様なバランス感覚をもって立つ。

小比奈もそれを見て影胤の隣に移動する。

 

「次はもう一組のほうに行くことにしようか、小比奈もあちらの方が楽しみだろう」

 

「赤マフラーと銀髪っ!!」

 

口元は大きく三日月形に歪み眼には狂喜の色が浮かんでいる。

 

「くくく、では行こうか」

 

「はァい、パパ」

 

二人はビルから飛び降り外周区の廃墟の群れの中に姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~外周部某所~

 

周囲に人影はなく辺りは既に暗く、月と星ぼしの明かりを頼りにしなくては何も見えぬ暗闇の中、一人佇むのは黒い外套を羽織り赤マフラーを首に巻きつけた男、鉄災斗。

唐突に一人の姿が何もなかったはずの陰から照らし出された。

 

「くっくっく、待たせたな、我が闇の眷族よ」

 

マントをなびかせながら災斗の方に歩いてくるのは、まさしく先ほど蓮太郎と遭遇していた天誅仮面。

後ろをその陰に隠れるようにして少女がつき従っていた。

 

「……風祢(かざね)?」

 

驚いた様子もなく災斗は一人の少女の名前を口にした。

 

「ああ、如何にも、我が風祢だ。今宵も我と汝の盟約を果たしてきたぞ」

 

「助かる」

 

「なぁに、構わんさ。血の盟約は何よりも重視されなければならんからな」

 

災斗の視線は風祢と呼ばれた天誅仮面の背後にいる少女に向けられていた。

 

「……その娘?」

 

「ん、ああ……その通りだ。ほら前へ来るがいい」

 

しかし少女は何かを恐れるように前へ出てこようとはしない。

 

「どうした幼子、はやく前へと進むのだ」

 

しかし少女の足が踏み出されることはない。

 

このような事態に陥るのは珍しいことではない、むしろ毎度の事である。

今まで今回のように少女達と会ったことは決して少ない数ではなくそれこそ3桁には確実に及んでいる。

しかしそれでも彼と共に暮らす少女達の数は到底それには及ばない。

 

何故か?

 

理由は単純明快、少女達が災斗のことを受け入れないからだ。

いくら説明しても、説得しても受け入れることが出来ない少女達はどんなことをしてもそのままだ。

幼い頃の子供は周囲を見て、起こった出来事を覚え自分の中で善悪など含めた全ての価値観を形成していくのだ。

裏切られ、虐げられ、ぞんざいに扱われてきた彼女達がどうなるかなど考えるまでもない。

結果として災斗を今まで自分達を迫害してきた者達と同じと思いこみ、断定し彼に忌避感を覚える少女達は少なくない。

むしろ災斗を受け入れることのできる稀有な少女達が彼と共に暮らしているのだ。

 

だからこそ、この雰囲気を和らげるため一工夫挟む必要がある。

 

「……風祢」

 

「何だ」

 

「……仮面取って」

 

「ん? ああ、そうだったな。すっかり忘れていたよ、しかしこの仮面は既に我の血肉の一つ、仕方ないことだと知れ」

 

そう言うと仮面を取り外し彼女の素顔が晒される。

上空から降り注ぐ星光と月光を浴びて淡い青色の髪が煌めき、瞳は先ほどの口調に似合う吊り眼。

どこか気の強そうな、しかし気品を感じさせる表情をしている。

 

 

しかし一変―――少女の顔はそのままに口元に笑みは浮かぶ、そうすると気の強そうな印象だけが完全に消え去り今度はどこか飄々としような雰囲気に変わった。

 

「いやー、ごめんにごめんに。素で忘れてたよぉ、風祢ちゃん、大失敗」

 

先ほどまでの高圧的な口調が消えて先ほどとは到底似つかぬ言葉遣い。

これには背後の少女も驚いたのか、口をあけて瞠目する。

 

「……風祢、二重人格」

 

「ぶっぶー!違うもんねぇ。これは演技、え・ん・ぎだからね。天才的な私が役柄を演じきってるだけなんだからね~♪」

 

「えっと、あの、その……」

 

いつの間にか近寄っていた災斗は少女の前で膝を折り声をかける。

 

「……名前、聞いていい?」

 

「えっ、う、うん。ミコト……です」

 

「……ミコト」

 

災斗はポンとミコトの頭の上に手を置く。

 

「え、あの……?」

 

「……大丈夫」

 

「ふぇ?」

 

「……もう大丈夫」

 

「な、なにを?」

 

本来ならまだ親に甘えていても不思議ではない幼い少女が一人で味方もない世界を生き抜いてきた。

その辛さは当人達以外の者の理解が及ばないほどのものどあっただろう。

 

「もう心配ない」

 

故にまずそれを癒す切っ掛けをつくる。

 

「もう一人じゃない」

 

傷ついた少女達の大きな傷を癒す第一歩を。

 

「俺に……任せろ」

 

ミコトは口許を一文字にして何かを恐れるように、何かを望むように口を開く。

 

「……あ、あたしは……本当に」

 

ミコトの頭に置かれた手が壊れ物に触れるように優しく左右に動かされる。

頭を撫でられるミコトは小さく嗚咽し始め、すぐに堰を切ったように大声で泣き叫ぶ。

災斗の胸元に寄ってしがみつき、過去の辛いこと、苦しいこと、その全てを洗い流すようにミコトは泣き叫び続けた。

 

 

 

 

四半刻ほど経ちミコトは少し落ち着いた様子で災斗に謝罪をした。

 

「ぐすっ……あ、あのごめん……なさい。服汚して」

 

「……気にするな」

 

ミコトの涙を受け止めた災斗の外套は確かに広く濡れていた。

しかし元々の色が黒ということ、時間が夜ということでそれほどまでに目立つものではなかった。

 

「さっすが災斗さんっ!幼女を慰めることに関して他の追随を許しませんねぇ、イェイ!」

 

「……ん」

 

ハイタッチをした後、再びミコトへと向き直る。

 

「さって~とっ、私的にミコにゃんはOKな感じたと思うんですけどねぇ、どうでしょ?」

 

「み、ミコにゃん?」

 

「イエスっ!ミコにゃん的には私たちと暮らすの大丈夫な感じぃ? 災斗さんは全然大丈夫っぽいし♪」

 

「さ、災斗さんって言うんですか……?」

 

少し頬を赤らめながら上目遣いに災斗へと視線を向けるミコト。

 

「……鉄災斗、よろしく」

 

「よ、よろしく……ですっ!」

 

「あ~りゃりゃ、な~んかラブいオーラが漏れてるんじゃないのぉ?」

 

「え、ち、違う! あたしは別に…そんな、こと……」

 

ゴニョゴニョと口ごもるミコト、どう考えてもアレである。

 

「ま、私は別にいーけどねぇ。それよりさぁ、一つ聞きたいんだけど……」

 

先程までのふざけた様子を完璧に隠し真剣にミコトとむきあう。

ミコトもそれを見て真面目な顔をする。

 

「貴方は私たちと一緒に来たい?」

 

「うん」

 

即断、一瞬の間もなくそれに答える。

それを受け風祢は破顔してミコトに抱きつく。

 

「おー!ミコにゃん信じてたぞぉ!!」

 

「わわわ!?」

 

「……家族」

 

「家族………ほんとに……?」

 

「ホントもホントぉ、大マジですよぉ。それともミコにゃんは家族とか……嫌かな?」

 

少し不安そうな表情でそう尋ねる。

ミコトは慌ててそれを否定した。

 

「ち、ちがうっ!あたしの、あたしの方こそよろ――よろしく……ですっ!」

 

「やたーっ!なら早速他の家族にも挨拶しにいっちゃおう!」

 

「う、うん」

 

「大丈夫大丈夫っ、みんな好い人だからさぁ。ね、災斗さん♪……ん、災斗さん?」

 

ミコトに抱きついた風祢がホームへと歩き出そうとし、しかし動こうとしない俺を振り返る。

 

「……先行ってて」

 

「むー、なんか用事ですか。せっかく久し振りに一緒だと思ったのに!」

 

「……すぐ行くから」

 

「しょーがないなぁ、よし、では行くぞ、リトルデーモンよ」

 

「りとる……でーもん? 何それ?」

 

「小悪魔ってこと。抱きついて泣いて上目遣いとか、狙ってるでしょ!」

 

「狙、う?」

 

「わお♪ミコにゃんも天然ちゃんかぁ、うちには天然小悪魔ガール多いなあ。災斗さんも大変だに」

 

「ね、小悪魔ってどうゆうこと?」

 

「のんのん、知らなくていいっす。その方が強力だしね♪」

 

楽しそうに話しながら二人は災斗から離れていった。

災斗はその様子を見えなくなるまでしっかりと見届けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■鉄災斗■

 

 

誰もいなくなった廃墟、俺はそこに一人立っていた。

 

 

とりあえずミコたん救出は完了(コンプリート)、か。

 

アニメの二話で見た警官に撃たれる少女――ミコたん、じゃなくてミコト――そう言うらしい彼女のことを知った俺はそれを防ぐべく行動していた。

具体的にはさっき会った風祢たん、ウチのホームの中でも能力的に合った彼女に街中での見回りを頼んでいた。

風祢たんはモデル・バットのイニシエーター。

超音波を出しその反響を把握することで例え暗闇の中でも周囲の状況を完璧に把握できるし、コウモリを手懐けて使役することすら可能だ。

しかも色濃くコウモリの遺伝子を受け継いだ風祢たんは……ゴクリ、な、なんと―――。

 

 

羽生えてるんだよぉッ!!

 

 

お、おい、お前ら分かるか、この感動が(震え声)

ちょっと長い犬歯に羽根、そして俺の用意したゴスロリ服……もう完璧にロリ吸血鬼やん。

マジでこれ、なんて奇跡なん?

……こういう時に実感するんだよね……俺この世界きてよかったわ、って。

……あ、やべ。

なんかちょっと涙出てきてん……最近嬉しすぎて涙もろいねん。

 

ぐずっ……ゴシゴシ。

いやっ、今はそれより早く目的を果たさねばな!

 

風祢たんとミコたん、あの二人を先に行かせた、その目的。

何を隠そう、それこそが俺の今日の第二目標。

 

懐に手を入れソレを出す。

 

そう、それは―――

 

 

 

 

 

 

――――同人誌(男のバイブル)

 

 

 

 

『天誅ガールズ~怪人たちの復讐劇~』

 

内容としてはタイトル通り敵方に天誅ガールズが報復されるというものでこんなご時世でも変わらず愛を忘れずにいた大人気ライター・マンホール少女サンの渾身の作品。

これを買いに行くために何とかギンたん達を誤魔化し深夜、キャスケット帽を眼深に被りグラサン、マスク装備でどらのあなに買いに行ったのだ。

 

 

ん?

何のためにこれを買いに行ったのか、だって?

 

ゴホンっ……ま、まあ、紳士諸君なら分かってくれるだろウッ。

それに俺って何気にさ……ロリ系の同人誌は初体験なんだよね、ちょっとドキドキするぅっ♪

 

肩を回して関節を和らげ準備運動をして、軽く息を吐き呼吸を整える。

 

 

ふぅ……さ~ってとぉ行くよ~?

 

周囲をもう一度見回す。

 

ほんっとぉに行っちゃうぜよ?

 

念のためにもう一度辺りを確認。

 

ほんとのほんとに行くんだからねッ!?

 

 

……周囲に気配はない、と思う。

いや一応、ね……もしロリ美少女達に見られたら自殺もんだからね。

 

 

さて……んじゃ行っきまぁすッ(頂きまぁすッ!)!!!

 

遂に俺の指が表紙へと触れた。

 

 

 

 

ペラッ。

 

――ドキドキ

 

 

ペラペラッ。

 

――ドキドキ

 

 

ペラペラペラッ。

 

……?

 

 

ペラペラペラペラペラペラペラッ!!!

 

……

 

 

 

ちょオマッ…これ……。

 

 

 

 

 

――――――全年齢対象版じゃねぇかっ!!!!!!

 

 

 

……な、なんて失態だァ。

 

マンホール少女サンの作品はもちろんのこと絵も素晴らしいが、なによりも読み手を惹きつけるその描写に需要がある。

つまり結構一般人にも読み手がいるのだ――それ故に作られた全年齢対象版。

 

え、どうすんの!?

どうすんのよ、これ!?

 

悶々としたどこに放てばいいのか知れぬ俺のリビドーだけが体内を駆け巡り続ける。

 

全年齢対象版と分かった今、もうここでこの本を読む意味は無くなってしまった……つまりだ、俺は家に帰らなければいけないのだよ―――この状態で。

やばい、やばいお……過去最高級にヤバス!!

 

ぐるぐると歩き続けていると一周回って最早イライラすらしてきてしまった。

 

ぐぬぬぬっ。

や、やばいっ、このまま帰ったらギンたん達に心配かけちまう可能性大!!

クソっ、どうしたらいいのだ!?

 

人のストレスの解消法、それこそ無数にある、その中で今ここでできる選択肢は……。

 

 

 

A.叫ぶ

 

B.叫ぶ

 

C.叫ぶ

 

 

 

選択肢が実質一つじゃねぇか!?

いや、確かにこの辺りは外周区、付近に少女達の住むマンホールもないよ……でもさ、さすがにそれはねぇ。

なに、今さら俺に羞恥心なんてあるのかって?

もちのロンロン、あるもある、むしろ俺はベスト・オブ・シャイボーイに選ばれるほどの羞恥心を持っていると言っても過言ではない。

もう少しマシなのplease!!

 

 

 

A.奇声をあげる

 

B.とりあえず警察署に吶喊する

 

C.切除

 

 

 

うん、とりあえず3つ目のナニを切除するのかは置いといて。

選択肢の難易度さらに上がってんじゃねぇか!!

おま、2つ目とか実際やったら即逮捕だからね!?

頼む、もっと俺に優しい素晴らしいヤツを……。

 

 

A.叫べ

 

 

なるほど、命令ですか。

ノロノロしてないで、さっさとしろと?

……はいはい、分かりましたよ……叫べばいいんだろ。

ったく、これならさっき二人についていきゃよかったわ。

あーあー、ミコたんテラカワユスだったし………あ。

 

……そういや、さっきミコたんが俺に抱きついて泣いたから外套が濡れてるなぁ……。

 

 

 

……………………………………………………… 

 

 

 

……………………………………………

 

 

 

…………………………

 

 

 

………………えっ、あ、いや別にね、だから何ってわけじゃないのよっ(汗)

ホントにただ濡れちゃったからどうしようかなぁと思って!

………で、でもさぁコレ俺のだしぃ、べつにどうしようとお、俺の勝手だよねぇ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴクリッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――自重しろ

 

瞬間、恐ろしい程の、嵐かと紛うほどの暴風が俺の身体を襲った。

 

なっ―――いきなり何が!?

 

近場にあった風化し脆くなっていた建物が幾つか風の猛威に耐えきれず吹き飛ぶ。

俺の身体が吹き飛ばされないように懐から小さなストラップ、”かみさまの槍”を取り出す。

それに力を込めるとストラップが巨大化し一つの槍になった。

それを地面へと突き立て態勢を維持する―――必要もなく俺を中心としてつむじ風のように回っている。

幸いな事に中心の俺に風の勢いなどほとんど影響はなく、風事態もどんどん弱まり間を置かず完全に収まった。

 

……な、なんだったんだよ、いきなり?

あれほどの暴風が、しかも俺を中心に突発的に吹くなんて明らかにおかしい。

てかあの声って、かみさまだよな。

なにを――ッゥ――――!!!

 

恐ろしい見解に達した俺は急いで外套に触れる。

 

 

 

 

――――か、乾いてる……だとっ!!

 

ちょ待てやあ゛!

テメェ、ゴラぁっ、かみさまコラァ!!

どうゆうこったぁ、俺の夢ぶち壊しやがってよぉッ!!

この責任は一体どうつけてくれるんですかねェ、ァァんッ?

 

空に向かってメンチきってるとピラピラと上空から一枚の紙が降ってくる。

 

あ?

んだ、これ?

 

 

『死ね』

 

 

アイツゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!

ケンカ売ってやがる、あの野郎ッ!!!

 

俺は空を射殺す勢いで見上げるが空では変わらず星ぼしが輝いている。

どれだけ空を眺めていても何も起きないままだ。

 

ごらあ゛出てこいや、てめェっ!!

ケツから手突っ込んで奥歯ひっこ抜いたらァッ!!

 

怒りのままに手に持ったランスを地面へと叩きつける。

それでも怒りは収まらずもう叫んだろか、そう考えた瞬間。

ジャリッ、砂を踏む音が俺の耳に届き急いでそちらを向く。

そこに立つのはフリル上の黒いワンピースを来た美ロリ・小比奈たん+仮面おじさん。

 

こ、小比奈たんッ!?

 

「……そんなものもあるのか……驚いたよ」

 

マスクがそう呟くのを俺の聴覚は聞き逃さなかった。

そして奴の視線が向く先は俺の、足元?

ッ―――!?

 

そこにあるのはバラバラになって散っている同人誌。

しかも丁度最初の方にあるちょっと際どいカラー立ち絵だ。

 

み、見られたぁあああああああああああっ!!!!

 

そしてマスクの背後に立つ小比奈たん、その目は純真無垢に輝いていた。

この後の展開が俺には……分かる。

 

 

『んー? なにアレぇ? ねえパパァ、あれはどうして女の子の服破れてるのォ?』

 

『なになに……ああ、アレはね、ちょっとエッチなお兄さん達が買う御本だからなんだよ』

 

『へぇ~、じゃああの赤マフラーのお兄さんもえっちなんだね♪』

 

『ああ、変態って呼んであげてごらん、きっと喜ぶよ』

 

『へん…たい……って呼べばいいの? 分かった、ヘンターイ!お兄さんのヘンターイッ!!』

 

 

ありがとうございます、むしろご褒美です、hshs!!

 

 

―――じゃなくて!!

ロ、ロリに見られた……ううっ、うえっ。

 

もう小比奈たんの好感度など恐ろしくて確認できない……絶対嫌われたやん。

いやでも、ロリは他にもいるから気に、気になんて……するに決まってるやろがぁあああああああああああああああああああっ!!!!!!!!

 

俺は目の前で起きた現実から逃避するように暗い空へと跳びたった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鉄災斗が去った後の外周区、そこには蛭子影胤とその娘、小比奈が立っていた。

影胤は顔をすっぽりと覆う仮面で表情を伺うことが出来ない、しかし隣の小比奈は嬉しそうにニコニコしている。

 

「パパぁ!すごいッすごいよアイツ!」

 

影胤の立つ場所、その周囲には広範囲にわたり建物の倒壊する様子が広がっていた。

作り出したのは鉄災斗。

 

 

 

最初に私達を襲ったのは暴風。

イマジナリー・ギミックを発動させた私達にそれが届くことはなかったが周囲の建物など容易に吹き飛んでいく。

そしてそれが終わった時、唯一痕のない中心部、その場所に立っている彼、手にはいつの間に手にしたのか一つの槍を持っている。

 

「……出てこい」

 

気付かれていたのか!?

 

私達が行動を起こす前に彼はおもむろに地面へと槍を突き立てた。

それほど力を込めた様子のないその一突きで地面には全方位に向かって亀裂が走っていく。

明らかに人間レベルではない異常なほどの腕力。

 

「彼も、まさか……私と同じ新人類創造計画の……」

 

天童菊之丞に探ってもらった彼の過去にそのような情報はなかった筈だ。

しかしだ、可能性の一つとしては有り得なくはない。

 

鉄災斗、彼の過去は謎に包まれている。

それこそ初めて私と出会った時、それまでの事が一切分からないのだ。

出身、家族、年齢、それこそ名前すら真実なのか分からない。

 

そう考えているとふと背後に立つ小比奈が声を出した。

 

「パパぁ、赤マフラーこっち見てるよ?」

 

実際に鉄災斗に視線を向けるとそこにはこちらを凝視している彼の姿があった。

 

ッ――いつの間に場所にまで気付れたんだ!?

いや、まさか……。

 

足元へと目を向けるとそこにはこちらにまで地面に亀裂の跡が伸びていた。

 

まさか、振動の伝わり方の僅かな違和感を把握したとでも言うのか!?

そうだとすれば意味の分からなかった彼の槍を地面へ突き立てる行動にも納得がいく。

 

……場所がバレているならこのままここにいても仕方ないか。

 

私達は彼の方へと足を進めた。

 

「……そんな技術(もの)もあるのか……驚いたよ」

 

彼はこちらを表情を変えることなくただ見ている。

しばらく睨みあう状態が続いたが、彼は視線を切ると凄まじい跳躍で姿を消した。

 

今回の目的は簡単にいえば勧誘、そしてそれが叶わないならば戦うことになるだろう今の彼の実力を試すつもりで来ていた。

 

「強いっ!あんな奴見たことないよ、パパ!」

 

今までにない程に小比奈の表情が輝いている。

かつて出会ったことのない強敵にその闘争本能が刺激されているのだろう。

 

「ふふふ、そうだなァやはり彼は強い、他者と比べることすら失礼な程の別格だ」

 

人間なのかすら疑がってしまう恐ろしい戦闘力。

そしておそらく未だ隠し持っている能力。

 

……彼を計画の生き残りと言ったのはあながち外れていないのかもしれないな。

彼は強い、敵にまわしたらこちらが不利なのは明白、だがそれと同時に戦いたいという思いも強く胸に残っていた。

 

私らしくもなく体の奥底から燃えるような感情が湧きでてくる。

いや、これが本来の私なのか。

久しく出会うことのなかった強敵、自分の命を賭けた本当の戦い。

 

「……くくく、ふぅあははハハははっ。イィっ!やはり君は素晴らしいよ!」

 

今すぐ追いかけて死力を尽くして戦いたい。

そして勝って彼を殺したい。

 

だが、と自分の感情を理性によって抑えつける。

 

今、すべきことはそうではない。

私がいま求めているのはこの安寧な世界の崩壊、それが叶えば迎えるであろう混沌と暴虐の世界で必然的に彼とは相対することになるだろう。

ならば無理にリスクを負う必要などないだろう。

 

「なるほど、君の意思は理解したよ、鉄くん。あくまで私の手を取る気はないと……」

 

彼の話し合いの姿勢を見せない、あたかも示威的な攻撃の数々。

それが言葉よりも雄弁に彼の気持ちを代弁していた。

 

影胤と小比奈を覆う様に発動されるイマジナリー・ギミック、それが一気に広範囲に広がっていく。

何もかも、建物も地面も範囲内にある物全てを押し出し弾きだす。

その広さは既に災斗の壊した建物すらも含まれ、それでもなお更に広がり続け留まる事を知らない。

 

「ひひ、ひひひ。とても、とても楽しみだよ……キミとの殺し合い(ゲーム)はね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




出てきた奴の詳しい説明。


1.ミコトに近付いたときの動き。

無音高速移動(ジェントル・クリープ)

108の奥義の一つ。

相手に気付かれないうちにその周囲に移動することができる。
※なお、ロリ限定であり、通常技として使用することはできない。


2.かみさまの災斗に与えた特典

”かみさまの槍”
黒い槍のストラップ状態がデフォ。
災斗のあるモノ(皆さんお分かりのアレです!)に比例してその姿を変える。



しっかり確認してないので誤字脱字あると思います。
もし見つけたら報告してもらえるとすっごく助かります( T人T )

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