お姉ちゃんにまかせなさい!   作:悠々亭ゆゆ

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書き溜めていましたので、連投となります。


第二話 『初仕事』

――喫茶店ラビットハウス――

 

ココア「ではチノさん、今日からよろしくお願いしますね!」

チノ「こちらこそ、です」

 

 今日は、朝から喫茶店でのお仕事について、チノちゃんに教えてもらうことになっていた。

 

チノ「ですがその前に、なんですけど」

ココア「どうしました?」

チノ「……その、敬語はやめてほしいな、って思うのですが」

ココア「……そう?」

チノ「私が言えたことではないのですが、ココアさんまで敬語だとなんだかやりづらくてですね……」

ココア「んー、わかった、じゃあ敬語はやめにするね。あと“チノちゃん”って呼んでもいい?」

チノ「あ、はい。大丈夫です」

ココア「それでは、気を取り直して。チノちゃん先生、よろしくお願いします!」

チノ「なんですか、先生って」

ココア「えへへー、なんとなく」

チノ「まぁいいです。ではまず初めに仕事の内容についてですが、大まかに分けると、フロアとキッチンに分かれます。フロアはお客さんに注文を聞いて、注文されたメニューができたらそれを届けるのがメインです。一方のキッチンは注文されたメニューをつくるのがメインです」

ココア「ふむふむ、形態的には一般的なカフェといった感じかな?」

チノ「そうですね、うちは普通のカフェで別段変わったサービスなんかはしていません。でも季節毎にイベントなどを催すことはありますよ」

ココア「へー、ハロウィンとかクリスマスとか?」

チノ「はい、そんな感じです」

ココア「イベントではどんなことしてるの?」

チノ「イベント限定のメニューを出して、内装をイベント用に飾ったりしています」

ココア「それは面白そうだね! でも準備とか結構大変じゃない? バイトの人も一人しかいないんだよね?」

チノ「確かに大変といえば大変ですけど、うちはお客さんが少ないのでそこまででもないですよ。……はぁ」

ココア「……うん、なんかごめん」

チノ「ココアさんは悪くないですよ! 謝らないでください、……本当のことですから」

ココア「……あはは」

チノ「おほん。では話を戻しますが、大体の仕事の内容については今説明した通りです。ココアさんには、今日はフロアをお願いしたいと思います」

ココア「りょうかいっ」

チノ「先ほどはざっくりと言いましたが、フロアについてもっと詳しく説明すると――」

 

――――――――

―――――

――…

 

チノ「――といった感じです」

ココア「ふむふむ」

チノ「どうです? できそうですか?」

ココア「んー、たぶん大丈夫だと思う。実家の手伝いでよくお客さんの相手をしていたからね、ある程度接客についての心得はあるよ」

チノ「それは頼もしいですね、期待しています」

ココア「まかせてね!」

チノ「ではお客さんがきたらよろしくお願いします」

ココア「りょうかい!」

 

――――――――

―――――

――…

 

ココア「……お客さん、こないね」

チノ「……そうですね。……はぁ」

 

 チノちゃんにお仕事について説明を受けてから一時間ほど経過したが、お客さんが一人も来ない……。心なしかチノちゃんの溜息が先ほどより大きくなっている気がする。これはお客さんが来るように何か対策を練る必要がありそう、今後の課題だね。

 などとラビットハウスの今後の運営について色々と思案をしていると、

 

 からんからん。

 

 不意にドアの呼び鈴が部屋中に鳴り響いた。どうやらようやくお客さんが来たようだ。私は思考を切り替えると、すぐさまお客さんの対応に入った。

 

ココア「いらっしゃいませ、こちらの方へどうぞ!」

チノ「……!」

 

 私は実家でお客さんの接客をしていた時のことを思い出す。笑顔で相手の顔をしっかり見て、できるだけ声のトーンを重すぎず軽すぎない程度で元気に……と。なるべくそれらしく振舞えるように務める。

 

ココア「おしぼりをどうぞ。ご注文は何に致しますか?」

客「あ、ありがとうございます~。では、コーヒーをおひとつ~」

ココア「他に何かございませんか?」

客「いえ、特には~」

ココア「……畏まりました、では出来上がるまで少々お待ち下さい」

客「わかりました~♪」

 

 お客さんから注文を聞くと、私は踵を返しチノちゃんの元へと伝えに行く。

 

ココア「チノちゃん、コーヒーをひとつお願いします」

チノ「……」

ココア「……チノちゃん?」

チノ「ぅあ、す、すいません! コーヒーですね、わかりました……」

 

 少し間をおくと、チノちゃんは慌てた様子でコーヒーを淹れ始めた。……あれ? 私なんか変だったかな? んー、実家でやっていた方法だと少しまずかったかなー、後でチノちゃんに聞いてみよう。接客方法について少しばかり思案していると、チノちゃんがコーヒーを淹れ終わったのでお客さんの元へと持っていく。

 

ココア「大変お待たせしました、こちらご注文のコーヒーになります」

客「あ、ありがとうございます~♪」

ココア「いえいえ。では、ゆっくりとしていってくださいね!」

客「は~い、わかりました~♪」

 

 お客さんに注文の品を届けた後、チノちゃんの元へと戻る。

 

ココア「……どうだった? 私の対応。変……だったかな?」

チノ「いえ、変だなんてとんでもありません、その逆です! 完璧すぎてびっくりしてしまいました……」

ココア「そっかー、よかった。チノちゃんずっと険しい顔で見ていたから……」

チノ「え? 私そんな顔してました?」

ココア「そうだよー、こんな感じで眉をひそめてずっと見てたよ?」

 

 私は眉間にしわを寄せて鋭い眼光でチノちゃんを見つめた。

 

チノ「うっ、すいません……。自分では全然わからなかったです」

ココア「さながら熟練の現場監督みたいな佇まいだったよー」

チノ「なんですかそれ、からかわないでくださいよ、もぅ!」

ココア「あはは! ごめんごめん」

 少しばかりチノちゃんをからかってみる。すると、チノちゃんは頬を膨らませてポカポカと私の胸を叩いてきた。……なんだこの可愛い生き物は。

 

チノ「……はぁ、どうせ私は仏頂面の根暗娘ですよ」

ココア「うっ……、そんなに落ち込まないでチノちゃん!」

チノ「いえ、事実ですから。仕方ありません」

 

 ひとしきり私をポカポカ叩いた後、我に返るとチノちゃんはいじけてしまった。……コンプレックスなのかな? この話題でからかうのは今後控えよう。

 チノちゃんの機嫌を取りながら会話を楽しんでいると、次のお客さんがやってきた。私は仕事モードに頭を切り替えるとすぐさまお客さんの対応に移る。

 

ココア「いらっしゃいませ、こちらの方へどうぞ!」

 

――――――――

―――――

――…

 

ココア「ふぅー、今日はこれでおしまい?」

チノ「はい、お疲れさまでした」

 

 気が付くと夕暮れ時で、お昼の営業終了の時刻となっていた。

 

ココア「んー、初めてだから結構緊張したけど、どうだった? 私の仕事ぶりは」

チノ「え? ココアさん緊張してたんですか?」

ココア「いやいや、結構緊張してたよ? 私。久しぶりにお客さんの相手をしたから、変にならないかが不安だった」

チノ「全くそうは見えませんでしたよ……。仕事の内容も特にこれといって駄目な所はありませんでしたし」

ココア「そう? チノちゃんの目から見てそうだったなら、ひとまず安心かな♪」

チノ「頼もしい限りです。本当に今日はありがとうございました」

 

 そういってチノちゃんは感謝の言葉とともにお辞儀をした。うーん、お礼を言ってもらえるのは嬉しいけど、他人行儀な感じで距離を感じちゃうなー。まぁ、これから距離を縮めていけばいいか。

 お店の扉に閉店を知らせる札を掛けると、二人して片づけを開始する。

 

チノ「……それにしても、どうやったら私もココアさんみたいに明るく振舞えるでしょうか」

ココア「え? どうしたの急に」

 

 キッチンでお皿洗いをしていたら、横からふとチノちゃんに尋ねられた。

 

チノ「さっきも言いましたが、私は仏頂面で周囲の人から見ると不機嫌なのかと思われてしまいがちなんですよね……」

 

 あー、やっぱり気にしてるのか。ここはひとつアドバイスをしなくては。

 

ココア「んー、笑えばいいと思うよ」

チノ「笑うのは、苦手です……」

 

 まぁ、そんな気はしていた。ならば、ここは私の腕の見せ所かな?

 

ココア「では私が笑わせてあげましょう!」

チノ「私の笑いのツボは人とかなりずれていますよ? そうそう笑いません」

ココア「ほう、私の笑いのセンスを侮ってもらっては困るなー。ではここで一発ギャグを……」

チノ「いいですね、受けて立ちます」

 

 一発ギャクといえば、”アレ”しかないよね。しっかりイメージして……と、よし、

 

ココア「”お姉ちゃんにまかせなさーい!”」

 

 お姉ちゃんがいつも私の前で事あるごとにやっていたことをその場で披露する。

 

チノ「……は?」

 

 あ、駄目だったみたい。

 

ココア「あれ? 駄目だった?」

チノ「色々と突っ込みたいところですが、まず、それは何ですか?」

ココア「私年の離れたお姉ちゃんがいてね、そのお姉ちゃんのものまねだよ」

チノ「え? それはそもそもギャグなんですか?」

ココア「ん? 私としてはそのつもりなんだけど」

チノ「ココアさんも大分人とずれた感性の持ち主ですね……。私が言えたことではありませんが」

ココア「そう? 照れるなー」

チノ「いや、別に褒めているわけではありませんよ、はぁ……」

ココア「にひひ」

 

 そうして私は渾身の一発ギャグを披露したけれど、チノちゃんには不評だったみたいだ。その後も、チノちゃんと戯れながら片づけを進めていった。

 

ココア「ふぅ、大体こんなものかな」

 

 一しきり片付け終えたところで、チノちゃんに声を掛ける。

 

チノ「そうですね、後は父がやってくれると思います」

ココア「あ、そうか、夜はバーになるんだっけ?」

 

 そういえばラビットハウスは昼と夜で営業形態が分かれてて、昼は喫茶店、夜はバーをやっているんだったけか。

 

チノ「はい、なので私たちは今日のところはあがりましょうか」

ココア「そうだね。……チノちゃん、今日はどうだった?」

チノ「どう……とは?」

ココア「私は今日が初めてだったけど、チノちゃんと一緒にお仕事をしてて、とっても楽しかったよ! チノちゃんはどうだった?」

チノ「うーん、まぁ、悪くは……ないですね」

ココア「そう、ならよかった。これから色々あると思うけど、一緒に頑張ろうね、チノちゃん!」

 

 私がそう言うと、はにかみながらチノちゃんは、はいはいといった様子で手を振って相槌を打つ。でも、ぶっきらぼう、というわけではない。相変わらず表情は硬く仏頂面だ。しかしながら、口元が少し緩んでいるように思う。

 そんなチノちゃんが、私にはどこか楽しそうに見えたのだった……。

 

 

 

 

 




というわけで第二話です!今回はラビットハウスにて初仕事の回となっております。
本作品のココアさんは、幼い頃から努力を積み、勉学・運動共に才能を磨いてきた有能ココアさん、という設定です。なので大抵のことは今まで培ってきた経験の応用で、割となんでもこなせる優等生さんでございます。その才能の一端を表現したかったのですが、いかがだったでしょうか?感想ビシバシお願いします!
ではでは~
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