――喫茶店ラビットハウス――
ココア「じゃあチノちゃん、行ってくるね」
チノ「はい、いってらっしゃいです」
ココア「昼過ぎには戻ってくるから。それまでは一人になっちゃうけど、お仕事頑張ってね!」
チノ「ええ、まかせてださい。では」
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――…
チノ「……はぁ。とはいったものの、少々困りましたね……。ごほっ、ごほっ」
ココアを見送った後、チノは溜息交じりに店の準備をしていた。今日は朝起きた時からなんだか体が重い。先ほどまでは少し体が怠い程度だったが、徐々に体の火照りと咳が出始めてきた。
チノ「今日はココアさんが来週から始まる学校の準備で朝から買い物でいません。お父さんも買い出しに行っているので、二人が帰ってくるまでなんとか頑張らないといけませんね……。頑張りましょう、おじいちゃん」
ティッピー「……」
そう言ってチノは一人で自分を鼓舞すると、店の開店に向けて準備を始める。
ふと時計を見ると十三時を過ぎており、そろそろココアが帰ってくる時間帯となっていた。そうこうしていると店のドアが開き、聞きなれてきた声が飛んできた。
ココア「ただいま、チノちゃん」
チノ「お、お帰りなさい……ココアさん。ごほっ、ごほっ」
ココア「ちょっとチノちゃん大丈夫!? 顔が赤いよ!?」
チノ「大丈夫です、問題ありません……」
ココア「んー、そこそこ熱があるね。とりあえず私と交代しようか、チノちゃんはベッドで安静にしててね」
チノ「いえ、ココアさんに迷惑をかけるわけにはいきません。これは私の仕事ですから……」
ココア「いやいや、そんな状態で仕事してたら危ないから。手元がくるってカップ落としちゃったり注文を間違えたりしてお客さんに迷惑かけちゃうかもしれないよ? 大人しくしていなさい」
チノ「うっ。わ、わかりました……」
……まったくこの子は。どうしてこう一人で抱え込んじゃうかな。……私も人のこと言えないけど。
とりあえず、チノちゃんを部屋まで送ってベッドに寝かせる。
ココア「さて、どうしたものかな……」
チノちゃんを休ませることで頭がいっぱいだったせいで、私一人ではどうにもならない状況だったことを失念していた。今の私では、接客は出来ても店のメニューを作ることができないのである。今はまだお客さんがいないので何とかなっているが、この状況で来られると対応ができない……。
どうしたものかと困り果てていると、
タカヒロ「どうしたんだい? ココア君。何か困りごとかな?」
丁度良いところにタカヒロさんが帰ってきた。ナイスタイミングです、タカヒロさん!
ココア「あ、お帰りなさいタカヒロさん! 実は――」
タカヒロさんに、チノちゃんの体調が悪いので休ませたことを伝える。すると、タカヒロさんは感謝の言葉を口にした後、お客さんがいつ来てもいいように颯爽と店の準備に取り掛かかる、流石だなぁ……。
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――…
タカヒロ「ココア君、今日はもうあがってくれて構わないよ」
タカヒロさんが帰ってきてからは、二人でお店の営業をしていた。時刻は夕方に差し掛かろうとしたとき、不意にタカヒロさんに声を掛けられる。
ココア「そうですか? まだお客さんいますけど」
タカヒロ「これくらいの人数ならば私一人で十分だよ。ココア君にはチノの様子を見ていて欲しいんだ」
ココア「そうですか……、それは私としてもありがたいところです。チノちゃんのことが心配だったので」
タカヒロ「チノを気にかけてくれるのは、親としてとてもありがたく思うよ」
ココア「いえいえ、お気になさらず。ああ、厨房少し借りてもいいですか? もう夕飯も近いですしチノちゃんにおかゆを作ってあげたいのですが」
タカヒロ「もちろん構わないよ、好きに使ってくれ」
ココア「ありがとうございます。ではさっそく――」
私は厨房に行くと、そそくさとチノちゃんのためにおかゆを作り始める。
ココア「……おかゆなんて作るの久しぶりだな。お母さんが風邪で寝込んだ時とかよく作ってたっけ。懐かしいなぁ。まぁ、家を出てからまだまだ日は浅いんだけど」
一人でぶつぶつ言いながらおかゆを作り終えると、足早にチノちゃんの部屋へと持っていく。
ココア「チノちゃーん、起きてる? お部屋入ってもいいかな?」
チノ「あ、はい起きてますよ。どうぞ」
ココア「はい、チノちゃんおかゆ作ったから食べてね。あと風邪薬も持ってきたから、おかゆ食べ終わったら飲んでね」
チノ「どうもありがとうございます。……いただきます」
チノちゃんは手を合わせていただきますと呟くと、私の作ったおかゆをゆっくりと食べ始めた。よほどお腹がすいていたのか、お皿が綺麗に見えてしまうほど残さずに食べていた。
チノ「ごちそうさまでした」
ココア「お粗末さまでした。体調はどう?」
チノ「はい、おかげさまでだいぶ良くなりました。明日はお仕事普通にできそうです」
ココア「そう、ならよかった。それにしても体調悪いなら朝なんで言ってくれなかったの? そしたらタカヒロさんに相談して、私がチノちゃんの代わりに働いていたのに」
チノ「いえ、それだとココアさん学校に行く準備ができないじゃないですか」
ココア「そんなの別に明日にでもできるよ、私はチノちゃんの方が大事だから」
チノ「うっ、そ、そんなことを真顔で言わないで下さい! 恥ずかしいです……」
ココア「え? 何が?」
チノ「……もぅ」
少しばかりチノちゃんをからかってみる。反応が可愛いなぁ。
ココア「それにしても、あまり無茶しちゃダメだよ? 周りに頼れる人がいるときはしっかり頼らないと。チノちゃんはまだまだ子供なんだから」
チノ「むっ。子供じゃないです、大人です。まぁ、今日は体調が良くなかったので力不足なのは認めますが、普段の私なら十分にこなせているはずです。なので心配はいりません」
……意地っ張りだなぁ、もう。あの頃の私もこんな感じでよくお姉ちゃんに叱られてたっけ、一人で無理すんなーって。その度にお姉ちゃんは決まって……
『――お姉ちゃんに』
チノ「どうしたんですか? ココアさん。」
ココア「いや、少し昔のことを思い出してね。それもよりもいい? 次また無茶なことしようとしたら私怒るからね?」
チノ「うぅ、わ、わかりました。次は、気を付けます……。でもどうしてココアさんはそんなに私に気を使ってくれるんですか? 会ってそう間もないのに」
ココア「んー、なんていうかなー、チノちゃんって昔の私にそっくりなんだよね」
チノ「え、どこがですか?」
ココア「意地っ張りでなんでも自分で解決しようとしたりするところ」
チノ「……それは、はい、そうですね……。確かに私は少々意地っ張りなところがあると思います」
少々? だいぶ意地っ張りだと思うけど。
ココア「ね? そういうのもあってかチノちゃんには何かと親近感が沸くんだー。あと、すごくかまってあげちゃいたくなるの」
チノ「……それは、私に母親がいないからですか?」
ふと私の顔を見上げると、チノちゃんはそんなことを口走った。
チノ「父から話は聞いていると思いますが、私には母親がいません。加えて、数年前にラビットハウスの当時オーナーだったおじいちゃんも亡くなってしまいました。周りから見れば私はさぞかし可哀そうな子、なのでしょう」
……やっぱりそういう風に思っちゃうんだね、この子は。ひねくれているというかなんというか、そういうところも私そっくりなのがなんともしがたい。
ココア「……別にそういうわけじゃないよ、完全には否定しないけど。でも、これだけは覚えておいて欲しいな。私は別にチノちゃんが可哀そうだから構ってあげたくなるわけじゃないの。私はただ単純にチノちゃんのことが好きだからね、好きな人を構いたくなるのは普通でしょ?」
私は、チノちゃんの目をしっかりと見つめて、自分の気持ちを正直にぶつける。
チノ「あーもうっ、なんなんですかっ! さっきからほんとに!! ココアさんは天然にもほどがありますよ!! 少しは自覚してください!!」
ココア「いや、だから何が? なんだけど。私はただ単に自分の気持ちに正直なだけだよ。それ以上でも、それ以下でもない」
チノ「……はぁ、もういいです。何を言っても無駄ですね、ココアさんには」
そう言ってチノちゃんはそっぽを向いてしまった。……少しからかいすぎたかな? まぁ、チノちゃんのことが好きってのには変わりないんだし、本当のことだから。
それに、この感じはなんだろうな、不思議だ。昔はこんなこと思ったことなんてなかったのに……。
『――まかせなさい!』
……お姉ちゃんも、こんな風に思っていたのかな?
ココア「ふふっ、そんなにヘソ曲げないでよーチノちゃん。そんなだから構いたくなるんだよー」
私は、チノちゃんを抱き寄せるようにしてハグをする。
チノ「な!? やめてくださいココアさん! 息ができませんっ!」
ココア「ふっふっふー、お姉ちゃんの言うことを聞いてくれない悪い子はこうです!」
チノ「次は無理せず頼るって言ったじゃないですか! やーめーてーくーだーさーいー!」
ココア「信用できませーん!」
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――…
チノ「……苦しかった」
ココア「ごめんごめん。ちょっと調子に乗っちゃった♪」
チノ「……それにしてもお姉ちゃんって、……なんでですか?」
ココア「あー、前にも言ったけど、私年が離れたお姉ちゃんがいるんだよね。いつも私が不機嫌になっていじけていると、よくこうやって抱き付かれててね、つい……」
チノ「そうですか」
ココア「……いやだった?」
チノ「いえ、そんなことは……」
ココア「そう。だったらこれからもお姉ちゃんって名乗ってもいいかな?」
チノ「……別に構いませんよ、ココアさんが良ければ。少し気恥ずかしいですが……」
ココア「えへへ、ありがとうね」
チノ「……うぅ」
それにしても、つい昔のことで口走っちゃったけど、私がお姉ちゃん、か。
……ああ、そうか、そうなんだ。やっとわかった。
ココア「じゃあ、そういうわけで、一人で無理はしないこと! 私をどんどん頼ってね!」
チノ「……わかりました。頼りにしていますよ、ココアさん」
私は、この子の――
ココア「お姉ちゃんにまかせなさい!」
――“お姉ちゃん”に、なりたいんだ。
はい、というわけでいかがだったでしょうか?
今回は百合成分マシマシな感じで、王道展開を心掛けてみました!いやー、今回はなかなかに主人公ムーブをしていますねー、ココアさん。どんどん魅力的なココアさんが書けるように頑張っていきたいと思いますので是非ともよろしくお願いいたします!
ではでは~