お姉ちゃんにまかせなさい!   作:悠々亭ゆゆ

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第四話になります。


第四話 『決意』

――喫茶店ラビットハウス――

 

 ラビットハウスに来て早数日、生活にも大分慣れてきた。仕事の方は、大体の流れを把握して接客だけならば私一人で十分にこなせるようになったと思う。今日はというと、朝からチノちゃんにコーヒーの淹れ方を教えてもらいながら二人で働いていた。お客さんが来ないので、コーヒーを淹れる練習が捗り、チノちゃんから及第点をもらえる出来のコーヒーを淹れることができるようになっていた。……いいんだか悪いんだか。

 などど、客入りの少なさについて憂いていると、

 

タカヒロ「お疲れ様。チノ、ココア君」

チノ「あ、お父さん」

ココア「お疲れ様です、タカヒロさん」

 

 奥の方からタカヒロさんが顔を出してきた。

 

タカヒロ「二人とも今日はもうあがってくれて構わないよ、バーの準備もあるし後は私がやっておこう」

 

 ふと時計を見ると夕方頃となっていた。

 

チノ「そうですか? わかりました。では私達はお先にあがりましょうか、ココアさん」

ココア「そう? では、お言葉に甘えてお先に失礼いたします」

 

 私がそう言うと、タカヒロさんは軽く手を振って微笑んだ後、バーの準備へと取り掛かった。……いやー、それにしても初めて会った時から思ってはいたけど、物凄くダンディーなおじ様だなぁ。これはタカヒロさん目当ての女性客が結構多いのではないだろうか? バータイムは昼と違ってお客さんが多いってチノちゃんが言っていたけど、なるほどねー。

 などとタカヒロさんを見つめながら物思いに考えていると、

 

タカヒロ「ああ、そうだ。ココア君」

ココア「ふぁい!? な、なんでしょうか?」

 

 不意に声を掛けられたので思わず変な声が出てしまった、恥ずかしい……。

 

タカヒロ「今日の夜に少し時間をくれないかな? 説明しておきたいことが色々あってね。本来ならば引っ越してきた日に話すべきだったのだが、忙しくて時間がなかなか取れずにいたんだ、申し訳ない」

ココア「いえいえ、そんなお気になさらずとも大丈夫ですよ! お時間ができましたら呼んでください、お待ちしています」

タカヒロ「ありがとう。ではまた後程」

 

 そう言い残すと、タカヒロさんは本格的にバータイムに向けての準備に取り掛かった。ラビットハウスに引っ越してきて以来、私はまだオーナーのタカヒロさんから詳しく話を聞いてはいない。タカヒロさんの言う通り、ここ数日間は夜のお客さんが多く、面と向かってお話をする時間がなかなか取れなかったのだ。

 私は軽くお辞儀をしてその場を後にした。

 

――――――――

―――――

――…

 

ココア「……遅いなー」

 

 あれから五時間ほど時間が経過した。数時間前に少し気になったので様子を見に行ったが、昨日ほどではないにしろ、そこそこの数のお客さんがいた。就寝時刻も近くなってきたので今日のところはもう寝てしまおうかと思っていた矢先、

 

 コンコン

 

 部屋のドアを軽くノックされた。すると、

 

タカヒロ「ココア君、まだ起きているかな?」

ココア「はい、起きていますよ」

タカヒロ「遅くなってしまい申し訳ない。まだ大丈夫かな?」

ココア「ええ、問題ありません。大丈夫ですよ」

タカヒロ「そうか、ありがとう。では、リビングの方で少し話そうか」

ココア「はい」

 

 場所を移しリビングへと移動する。

 

タカヒロ「いやはや本当に申し訳ない、こんなに遅くなってしまって」

ココア「いえいえ、別に構いませんよ。それにしても大丈夫だったんですか? 先ほどチラっと覗きに行きましたが、その時はお客さんまだ結構いましたけど」

タカヒロ「もともと今日は早めに店を閉めるつもりでいたのでね。そこは事前に客に説明していたので問題はないよ。」

ココア「あ、そうだったんですね」

タカヒロ「ああ。……さて、では本題に入ろうか」

 

 そう言うと、タカヒロさんは本題に入り話し始めた。内容はというと、学校に関することや勤務時間、業務内容についてが主な所だった。

 

タカヒロ「……と、まぁこんなところかな」

ココア「んー、大体分かりました」

タカヒロ「ありがとう、理解が早くて助かるよ。流石だな」

ココア「いえいえ、タカヒロさんの説明が旨いだけですよ」

タカヒロ「お世辞はやめてくれたまえ、私が口下手なのは自分で十分に理解しているさ」

ココア「あー、そですか」

タカヒロ「うむ、やはり君を雇って正解だったな」

ココア「あ、あれやっぱそういうつもりで私の住み込みOKしたんですね……」

タカヒロ「まぁ、そんな所だ」

 

 不敵な笑みを浮かべてふっと笑うタカヒロさん、……抜け目がない人だ。

 

タカヒロ「それはそうと、チノのことについてなんだが……」

ココア「あ、はい」

 

 タカヒロさんの声のトーンが少し重くなった気がする。これはどうやらこちらの方が本題な気がするな……。

 

タカヒロ「初めて会った時に少し話したが、チノの母親……つまり私の妻なのだが、チノが幼い時に他界してしまっていてね、加えて数年前に私の父も他界してしまった」

 

 チノちゃんのお母さんとお祖父さんのことについては、チノちゃんのことを教えてもらった時に一緒に教えてもらっていた。私は聞き入るようにしてタカヒロさんの話に耳を傾ける。

 

タカヒロ「私は何かと忙しくてあまりチノに構ってやれなかった。代わりに父がチノの面倒を見てくれていたんだ」

ココア「……」

タカヒロ「チノにとって私の父は、父親であり母親でもあるような存在でね。それはそれはとても懐いていた。父も大層チノのことを可愛がっていたよ、懐かしい……」

 

 そう言って懐かしむタカヒロさんの顔はどこか寂しげで、悲しさを感じる。……胸が痛い。

 

タカヒロ「おっとすまない、空気が重くなってしまったね。これは失敬した」

ココア「……いえ、構いません。続けてください」

タカヒロ「……ありがとう。チノにとって父の存在はとても大きかった。父が亡くなった当時、チノは塞ぎ込んでしまい、しばらく部屋から出てきてくれなかったよ。私なりに頑張って励ましてみたものの、元気づけてあげることはできなかった。時が経つにつれて徐々に明るさを取り戻してくれたが、以前のように笑ってはくれずにいる」

ココア「チノちゃんは、昔はよく笑う子だったのですか?」

タカヒロ「ああ。父と一緒にいるときのチノは本当に楽しそうで、よく笑っていたよ。……仏頂面なのは昔からだが」

 

 あ、アレは昔からなんだ。それにしても満面の笑みで笑うチノちゃんかー、是非とも見てみたいな。

 

タカヒロ「そういうわけで、だ。あの子には今まで本当に辛い思いをさせてしまっている……。父親として不甲斐なく思うよ」

ココア「……」

タカヒロ「そこでなのだが、ココア君にお願いしたいことがある」

ココア「……と言いますと?」

タカヒロ「チノのことを気にかけてやってはくれないだろうか。そして願わくば、あの子が笑顔で笑っていられるように励ましてやってはくれないだろうか。私にはあの子を笑顔にすることはできなかった……」

 

 真剣な眼差しでまっすぐに私を見つめるタカヒロさん。私は一呼吸置くと、背筋を伸ばし、真っすぐにタカヒロさんの目を見て答える。

 

ココア「心得ました、任せてください」

タカヒロ「……ありがとう」

 

 深々と頭を下げるタカヒロさん、ふと気づくと目にはうっすらと涙が浮かんでいた。私は思わず声を掛ける。

 

ココア「そ、そんな! 頭を上げてください!」

タカヒロ「すまない、少し感極まってしまった……。いい大人が女の子の前で泣くものではないな」

ココア「そうですか? 自分の娘のために見せる涙、私はすごく素敵だと思いますよ。とても格好良いです」

タカヒロ「……君は少々そういう所があるな、気を付けた方がいいぞ」

ココア「?」

タカヒロ「まぁいいさ、それも君の魅力の一つなのだろう。チノのこと、よろしく頼む……」

ココア「はい!!」

 

 そんなこんなでタカヒロさんと話し込んでいると、気づけば時刻は零時を過ぎていた。

 

タカヒロ「おっと、もうこんな時間か。今日のところはここまでにしておこう」

ココア「あ、ほんとだ、気づきませんでした……。今日は忙しい中お時間を割いて頂きありがとうございました」

タカヒロ「いやいや、私の方こそこんな夜中に呼び出す形になってしまい申し訳ない」

ココア「では、本日はこれにて解散ということで」

タカヒロ「ああ、そうだね。おやすみ」

ココア「おやすみなさい」

 

 私は自分の部屋に戻ると、ベッドに横になった。

 

ココア「色々と、考えさせられる話だったな……」

 

 先ほどの話の内容を頭の中で反芻する。チノちゃんのお母さんが、チノちゃんが幼い頃に亡くなっていること、数年前にお祖父さんも亡くなってしまったこと。……どれほどの悲しみをチノちゃんは背負っているのだろうか。自分自身のこととして置き換えて想像してみる。私の場合だと、お母さんとお姉ちゃん……だろうか。

 

ココア「お母さん、お姉ちゃん。……駄目だな、全然想像できないや」

 

 大切な家族が亡くなってしまうという状況を想像してみるが、全くもってイメージができない。それもそうか、今まで身近な人の死というものを経験したことがないのだから。

 

ココア「私には、チノちゃんの悲しみを分かってあげることはできないんだな……」

 

 そう思うと、胸が苦しくなる。今の私では、チノちゃんの悲しみや心の痛みを理解してあげることはできないし、共有することもできないだろう。だからといって、チノちゃんをこのままにしておくのか? 笑顔にしてみせるといった先ほどの約束を、早々に反故にするのか?

 ……そんなのは、

 

 私らしくない。

 

 自分の頬を引っぱたき、自らに喝を入れる。

 

ココア「絶対に笑顔にして見せるからね! チノちゃん!」

 

 私は自分自身に誓いを立てる。

 

 ……そう、だって私はあの子の――

 

 

          ココア「お姉ちゃんにまかせなさい、ってね」

 

 

                            ――“お姉ちゃん”なのだから。

 

 

 

 

 




 ということで第四話です。いかがだったでしょうか?
 今回は少しシリアス気味なお話になっていますが、ココアさんがチノちゃんのために頑張る!という決意表明をする回、となっています。
 ごちうさ本編ではチノちゃんは割と平然としている感じですが、本来だったらかなり精神が参っているのではないでしょうか?本編だとティッピーの存在がかなり大きいのだと思います。本作品のティッピーの扱いついてですが、結構ぼかしていますけど、お祖父ちゃんが憑依してはいません。チノちゃんのティッピーへ語り掛ける行動は、お祖父ちゃんが亡くなっているという現実を受け入れたくない、という心の現れから出ているという設定です。
 今回でココアさんが意思を強固にしたことで、次回よりココアさんの圧倒的な攻めが始まる!……予定ですのでこうご期待くださいませ!百合百合させちゃいますぞい~
 ではでは~♪
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