「はぁ、なんで弟と付き合うことって出来ないんでしょうね」
「いろはちゃんがしれっととんでもないこと言ってる…」
「そんなこと出来るわけないでしょう」
奉仕部の部室で机に突っ伏しながら言ういろはに対して結衣と雪乃がツッコミを入れます。
「そんなこと言って、雪ノ下先輩最近真と連絡取り合ってるの知ってるんですからね」
いろはが雪乃にジト目を向けます。
「んん。何のことを言っているのか分からないけれど実現できないことに対して時間を割くのは、無駄なことだわ」
「そういえば今雪ノ下先輩と葉山先輩が付き合ってるって噂が…」
いろはが思い出したかのように問いかけようとしますが、雪乃の表情を見て言葉が止まります。
「一色さん」
「はい!」
「どこでそんなことを聞いたのか知らないけれどそんな事実はないわ」
「ですよね。雪ノ下先輩に限ってそんことないですよね」
「ゆきのんに限ってって…」
「ちょっといい?」
そこに由美子が扉を開けて奉仕部に入ってきます。
「え~と、じゃあ私は真と一緒に帰らないととなのでこれで失礼しますね」
由美子が入ってきて空気を読んだのかいろはは部室から出ていきます。
「それで話ってなにかしら」
「それは…」
由美子が奉仕部を訪れた理由は先ほどいろはにも聞かれた、葉山隼人と付き合っているのかどうかの確認でした。
「そんな事実は一切ないわ」
「本当に?過去に何かあったとかも?」
「えぇ、昔からそういう噂話はよく合ったもの。本当に迷惑だわ」
「あんたのそういう所マジでムカつくんだけど!」
雪乃の言い分に対して由美子が怒りを覚え、立ち上がった瞬間
「こんにちは!」
ガタンっと勢いよく扉が開かれました。
「真君?」
そこにいたのはランドセルを背負った真の姿がありました。
「あれ?お姉ちゃんは?」
「一色ならさっき出て行ったから、入れ違いになったんじゃないか?多分玄関口とかにいると思うぞ」
きょろきょろと辺りを見渡す真に対して八幡が退室を促しつついろはが居ない事を伝えます。
「そうなんだ、じゃあ探して見ます!」
勢いそのままに真は扉を閉めて部室を後にします。
「えっと、それで依頼内容だけど」
結衣が少し気まずそうに話を切り出します。
由美子からの依頼内容は葉山隼人の進路を教えてほしいというものでした。由美子自身隼人本人に確認しましたが教えてもらえなかった為に今回依頼を持ち込んだそうです。
「葉山が話したくないってことは知られたくないってことだぞ。それを知りに行くってことは葉山の嫌がることをするってこと。いいのか?」
「それでも知りたい」
八幡が念押しするように問いかけ、由美子もそれに答えます。
ーーー
「本当に良かったのかな」
由美子は奉仕部に依頼を終えて外のベンチに座り俯いていました。
「こんにちは!」
そんな由美子の目の前にいつの間にか真の姿がありました。
「えっと…」
いつもの堂々とした姿はどこに行ったのか由美子は、少し余所余所しく真に対応します。
「よいしょっと」
真はすかさず隣に座りこみました。
「この前はありがとうございました!」
真は由美子で以前の遊園地に一緒に行ったことに対してのお礼を伝えます。
「いや、こちらこそ」
真は由美子にニコニコと笑いかけています。
「えっと、お姉さんと帰らなくていいの?」
「今は大丈夫です。それより!」
真は由美子にサムズアップします。
「なにかあったんですか?」
「え、それは…」
いきなりの問い掛けに由美子は戸惑いを見せます。
「悩み事って交友関係があんまりない人の方が話しやすいってよく言うじゃないですか」
「うん、それはまぁ」
「僕こう見えてもすっごく聞き上手なんですよ!」
真は小さな体で大きく胸を張り由美子にそう言いました。由美子も小学生に話すのはどうなのかと思う部分はあったものの、今の不安な気持ちを少しでもマシになればと話し始めました。
自分が葉山隼人を想っていること、そんな隼人から少し距離を取られだしていること、そして今奉仕部に隼人の進路を調べる依頼をしてきたことを話しました。
「そうなんですね、」
真は由美子の前でうんうんと頷きます。
そんな真に由美子は次の言葉を待ちます。
少しして真は万遍の笑顔で
「三浦さんってクソめんどくさいですね!」
「なっ、」
そう言った真の笑顔は某、ぼっち〇ロックの主人公の妹を彷彿とさせました。
ーーー
「あ、雪ノ下先輩、由比ヶ浜先輩!真見ませんでしたか?」
場面は変わって、いろはは真が一向に見つからず校舎の中を探し歩いていました。
「え、真君?見てないよね、ゆきのん」
「えぇ、さっき一色さんと入れ替わるように部室には来たけどその後すぐに出て行ったもの」
「えぇ、真先に帰っちゃったとか…。まさか真の身になにかあったんじゃ」
いろはは雪乃と結衣に聞いても居場所が分からないことに顔を青ざめさせます。
「あれ、真君じゃない!それと、由美子?」
「あ、本当です!」
結衣がふと視線をずらすと目線の先にはベンチに座る真と由美子の姿がありました。
「クソめんどくさいですね!」
「「えっ」」
「やば」
おぼろげに聞こえてきた真のその言葉に3人は慌てて外にいる真達の元に向かいました。
ーーー
「ちょっと、めんどくさいってなに!」
突拍子もない真の言葉に先ほどまで俯いていた由美子の表情に少し怒りが浮かびます。
「それですよ!由美子さん!」
「えっ」
「さっきみたいにくよくよして何になるんですか」
「そんなの分かって」
「分かってないですよ!」
由美子が反論しようとしますがそれに被せるように真が話し続けます。
「いいですか、このまま考えても答えなんか絶対出ませんよ。ただただ沈んでいくだけです!それだったら今できることをやったらいいじゃないですか」
「出来ることって…」
「なんでもいいんですよ!例えばですけど葉山さんの進路が分かったところで三浦さんの学力が足りなくて、なんて事があったら…」
「え、そ、そんなことないし。成績も別に悪くないし」
「いいんですか?世の中絶対なんて事はないんですよ」
真は少しいやらしい笑みを浮かべて由美子に問いかけます。
話をされた由美子は露骨に狼狽えます。
「そんな三浦さんにこの言葉を送りましょう」
ゴクリと由美子の喉がなります。
「網無くして淵にのぞむな。準備してないといざチャンスが来ても何も出来ないです。葉山さんがそんな理由で離れて行ってもいいんですか」
「いや、絶対に嫌だ」
涙目の由美子は真の目を見ながら真剣に伝えました。
「じゃあ、頑張りましょう!僕も手伝えることは手伝います!」
「真!」 「由美子!」
「わぁ、お姉ちゃん!」
「結衣?」
2人の元にいろは達が駆け付けました。
「由美子、大丈夫?」
先ほどの事もあり結衣は由美子を心配そうに見つめます。
「大丈夫、なんか吹っ切れた気がする」
由美子は真の方をちらっと見ると結衣に微笑みます。
「もう、真心配したんだよ~」
「ごめんなさい」
いろはは真の両肩を掴むと頬を膨らませて軽いお説教を始めていました。
ーーー
「真」
「うん?」
学校からの帰り道いろはは真に話しかけます。
「三浦先輩に何を言ってたの?校舎の中から聞いてたらとんでもないワードが聞こえてきたんだけど」
「「うん」」
一緒に帰っていた結衣と雪乃もそれに同意しました。
「う~ん、三浦さんがとってもしんどそうにしていたからその場の勢いで頑張ってって全力で伝えた!」
「そうなんだ。流石私の弟だね!」
「そうでしょ!」
クソめんどくさいと言ったことについて言及しようとしたいろはですが、いつもの笑顔を見てどうでもよくなったのかいつも通り抱きしめます。
「真君にクソめんどくさいって言われるのも…」
「ゆきのん何言ってるの?」
その後ろで何かを妄想したのか雪乃が頬を赤らめ、それに結衣が呆れています。
ーーー
「ねぇ、真」
「何、お姉ちゃん?」
家の中でいろはは真に話しかけます。
「今度学校でバレンタインのチョコをみんなで作るんだけど」
「僕も行く!」