ギャグもシリアスもない健全な話   作:名無しの権左衛門

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4:凄い!君は○○にバクシンするフレンズなんだね!

「バクシンッバクシンッバクシン的……ま、負けてもくじけません。

なんてったって、委員長ですからっ」

 

 そう自分に言い聞かせるバクシンを止めた少女。

周囲は彼女を冷めた目で見つめる。どこでなにを間違えてしまったのか。

トレーナーの指示は間違っていないし、努力の方向性もレース運びも間違っていない。

ならばなにを間違ってしまったのか。

 

「おいそこな女、何をしている?」

「はい?」

 

 今にも泣きそうな顔をしながらも、きぶんを切り替えて希望ある未来へかけようと意を決する少女。

その時、全身赤い4つ足の動物が少女を見下ろす。

 全身がしなやかな線と鍛え抜かれた筋肉で、いかにも風を切って走れますといった風貌。

そんな謎の生物に、少女は心が躍ったことを感じ取った。

何故と思う暇はない。なぜならその赤い動物は、少女に問いかけるからだ。

 

「おい女。頭が痛いなら、保健室へ行け」

「いえっ、私は委員長なので、自己管理できてます! この通りピンピンですよ!」

「レースを見たが、途中でお前の脚質に合っていない差し方しただろうが」

「い、いえ、あれはトレーナーの指示です! 私は何も間違って――ッ!」

 

 途端少女は頭を押さえてうずくまる。ガンガンと頭を殴られるような痛みに、

たまらずうめく。それをみた赤い動物は、少女の首根っこを食んで自分の背中に乗せた。

 

「ぐえっ」

「捕まっていろ」

 

 少女は腹へのむち打ちに若干苦しみながら、風を切る感覚を覚える。

一体何なのか。それは赤い動物が、自分以上の速さで景色をよぎりながら保健室へ向けて走る様子だった。

足音は軽快になんの重みも感じず、頬に風を受ける。

少女が鞍上より見やるは、かつて自分が見たかった景色。

 群の先頭に立ちあらゆる娘を率いて、そのまま圧倒的な脚力でもってレースを制する。

今の自分には何も成せない、その様。

 

「保健室だ。寝転がってろ」

「うごっ!? もう少し優しくしてください!」

「ふん、鹿につける薬はないからな。おとなしく寝てろ」

 

 少女は赤い動物に鹿にされたことよりも、訓練できないことに苦言を示す。

しかし少女の病を一瞬で見抜いた赤い動物は、保健室の出入口に仁王立ちしている。

その眼光はレースの先頭や同位の者に見せる勝負の目。

 

「私は訓練しないといけません。 勝つにはそれしかないんです」

「それは保健室より出る理由にはならないな」

 

 鋭い目で少女をにらみつけ、その場に鎮座させる。

その真剣な眼に少女は、息を詰まらせる。彼女も分かっているらしい。

根を詰めて自身の限界を引き上げることができていないと。

だからこそ赤い動物は、少女が出ていかないように仁王立ちしているのだ。

 

「休められるときは休んでおけ。 それにお前は委員長なんだろう?

皆の手本となるべき存在が、己の管理ができていない愚か者。

痴れ者だと知れ」

 

 完全な侮蔑を少女へ投げつける。赤い動物は忖度せず、真正面から少女と対峙する。

委員長であっても、ただの少女だ。

 

「それでも私は、勝利へバクシンしなければいけないんですっ!

それが――」

 

 少女も負けていられない。意地の張り合いと解釈した少女は、軋む身体に顔を歪めながらも

消えぬ闘志を眼前の者へぶつける。

 

「本当にそれがお前のすべきことなのか?」

 

 諭すような声。

 

「っ」

 

 彼女は目線を反らす。体は崩壊寸前かつ、闘志は消えなくともそれを支える根幹は消滅寸前だった。

もうすでに限界を超えている事。赤い動物に諭されることで、ようやく自覚する。

すでに其処に意地はなく、自身の奥底からあふれ出てくる警告に顔を顰める。

それを見た赤い動物は、少女に近寄って布団を食んで掛ける。

 手ではないので煩雑ではある。しかし本当に自身を心配してくれる謎の赤い生物の厚意を、完全に無視し無碍にすることもできない。

 

「お前のトレーナーには話をつけてやる。今は寝ていろ」

「わかり……ました……」

 

 そうして少女は、ついに疲れを自覚して泥のように眠る。

寝息を立て始めるまで赤い動物は、少女の傍を離れることはなかった。

 もちろんこの後赤い動物は、少女のトレーナーに話をつけてきてやった。

何を話したのか。それはもちろん、引き抜きだ。

 

「お前のやり方は度が過ぎている。なぜデータバンクにある情報通りにしない?」

「俺は今までそうしてきた。そうして結果を残してきた。部外者にとやかくいわれたくはないな」

「一目見たが、お前の担当娘の疲労困憊具合は異常だ」

「それがどうした。俺の訓練は絶対だ。睡眠不足?頭痛? それは自己管理ができていない証拠であり、自身の目標や夢に一生懸命になれていないだけだ。

そんな半端者が、夢をかなえようだなんておこがましい。

怠け者は怠け者同士で、傷のなめあいや失敗談の自慢をしあって自己正当に勤めればいいさ」

 

 少女のトレーナーは、最初こそ赤い動物を見ていた。

しかし徐々にかみ合わないとわかっていくほど、興味から視界から意識から外していく。

赤い動物もそのトレーナーとは、根本が違うとわかった。

それと同時に、少女の事は捨てたとわかったので書類の更新をしようと行動を開始する。

 赤い動物は何も気に留めていない。娘も人も、十人十色だ。

色んな色や見た目、能力や考え方がある。それをわざわざ否定するほど時間はない。

与えられた時間と限られた命を使って、将来をつかむのだ。

 

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