ギャグもシリアスもない健全な話   作:名無しの権左衛門

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前話に救いがあるとしたらこうなります。


7:最下位退学少女が救われるなら

「やはり君は―――が素晴らしいのだよ」

 

「嫌……嫌……」

 

 帰省中の少女。

だがその表情は絶望に染まり、目元は赤く今も涙を流し続けている。

少女の両脇には、真っ黒なスーツを来た大人の娘に固められ、

どんな状況になろうと逃げられないだろう。

 そんな少女の状況をミラー越しに矚る監督者は、将来的に算出される利益に舌なめずりをする。

見た目だけはいい、桜色の頭髪を後ろに結わえている少女。

 

 いや、競走ではなくなった彼女に、そんなものは不要だ。

そう感じた監督者により、少女の頭髪は下ろされた。

服はすでにトレセン学園のものではなくなっている。

やはりその手のものの為の服装へ換装されていた。

 少女は自分の行く末は、地獄しかないと自身の頭を塗りつぶしていく。

それは、罪だと。今までの行いの末なのだと、そう自己暗示していく。

 

 底へ底へと自己嫌悪の坩堝へはまり込んでいく。

 

「全く、諦め給え」

 

 監督者が少女の様子に少々苛立ったようで、バックミラーではなくそのまま後ろへ首を曲げて見てくるのだ。さて、今現在どこにいるのか?

幹線道路かつ市中。速度は法定速度まで出せる。

更にトレセン学園周囲に、高速道路というものはなく鉄道が大都市とのアクセスを担っている。

 つまり道幅が若干ありつつ、娘への食糧供給のための貨物車がかなり運行されている。そう、つまり、この監督者は前方不注意をやらかしてしまった。

 

 一瞬であれど、自動車が時速60kmで動いた場合の恐ろしさを最初に学ぶだろう。

 

 

 直後大質量*速度=エネルギーが、車体と共に乗車中の者共を震撼させる。

やりやがった監督者は、一瞬何をやってしまったのか理解できなかった。

だが眼前に広がるボンネットや後部ライトなどが、不自然に歪んでいるのを見てしまう。

すると急いで自身が操る車両をReturnさせ、その場から去ろうとする。

 何、後から修理して色も形も調整すれば、察と言えども見つけられんだろう、と

監督者は焦燥感で自己保身しか考えていない頭で結論付ける。

 

 当然そこまで、現実は甘くない。

 

 監督者の乗る運転手に黒い巨大な影が差しこんでくる。

なんだろかと前に乗り出してみると、そこには大型のトレーラーが行く手を阻むように

幅寄せしてくるのだ。

 

此方がダメならば、もう一方……いや、後方だ。

 

 無論、袋小路。

 

「なっ!?」

 

 監督者は偶然とは思えない事態に、頭が空っぽになる。

今まで自分の思い描く通りに、物事が進んできたのだ。

それなのにたった数秒の内に、自身は拘留への片道切符を得ることになってしまう。

 さらに監督者がぶつけた眼前の車両より、搭乗者が下りてくる。

彼らの人相は、ヤのつく裏稼業を思わせるいかつい面。

 

「おいゴルァ! 降りろ!」

「免許書持ってんのか!」

 

 完全にあちらの人間だ。そう怯えながら、監督者は最善の手を考える。

それは……トラックに囲まれていない、前方への逃走だ。

監督者はやってはいけないことをやってしまう。

全く思い切りのいいことだ。

 頭空っぽになるくらい突拍子なことなのに、冷静に分析し実行に移した。

ヤーさんたちは急発進する自動車より飛びのき、彼らの車が押し出される様をみて面白そうに笑う。

 

 

 

 なぜなのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは、トラックの包囲網から抜けた先に、大量の警察車両や対娘の特殊部隊が

防衛陣地をこさえて待っていたからだ。

 

 夜22時。

真夜中なので大量のサーチライトが、監督車に照射される。

全警察官の標的の的にされるが、光量が過大なのか蒸発してしまっているが仕方がない。

 

「安東美穂! お前を誘拐罪・淫猥誘致罪・専門指導詐欺罪・不正横領罪その他14の罪状により、現行犯逮捕する!!!」

 

 

 

 警察官による一斉摘発キャンペーン。

というのもあるが、一教師の石宗大洋より自身の学び舎から四国のトレセン学園に入園したはずの少女から、まったく音沙汰がないことが先月報告された。

本来ならばもっと早くに連絡すべきだったが、目標のために頑張れる子

だったので、いろんな理由で連絡してこないのだろうと思っていたようだ。

 しかし、もう一年経過しそうなのに連絡してこないのはおかしいと思ったようだ。

今まで桜色の頭髪を持った最下位少女は、師事してもらった先生の誕生日に桜餅や柏餅などを作っていた。

 

 そんなこんなで、訝しんだ先生たちが校長に上申し警察に相談したんだそうな。

 

 そこから娘の名前―メリージェーン―を探した警察は、出身高知・ダート・短距離・桜色の頭髪・写真で探した。その娘は、東京のトレセン学園へ入っていた。

 

 おんやぁ、なんだかおかしいぞお?

上位陣でなければならない理由もないが、もう一つの行ける理由であるスカウトがなんだかおかしい。

移籍書類や契約書、その他の書類処理が作為的かつ一部捏造されている痕跡があった。

その痕跡の先にいるのは、警察機関がわざと逃している裏の娘競争の元締につながる。

 この裏世界の娘競争は、トゥインクルではなくプリズムと呼ばれている。

本来のトゥインクルならば、ファン数や投票数によってレースに出場したり特殊なライブに出場できる。

出場料金はなく、到着順位で1~5位までに振り込まれる。

勿論OPよりG1の方が、圧倒的に高い。

 

 そして裏の場合は、特殊な勝負服を着用し通常のレースをする。

で、裏は賭博か、資本家によるマネーゲームが行われる。

 賭博に関しては、民主主義が入って来て人平等や人共同参画基本法が施行される前に行われていた競が行われている。

また資本家マネーゲームは、着順予想で当たった人の中で1~5番目に賭け金が多かった人が恩恵にあずかれる。

つまりは入着した1~5位の娘に、賭け金1~5位の人がタイマンで色々サービスするというやつ。

 

 

 

「ちっ、お前ら!」

「「はい」」

 

 護衛稼業において雇われた黒服の娘は、ただの人である警察を殴り飛ばしていく。

腕があらぬ方向へ曲がったり、服と腹に穴が開き風通しのいいことになったり。

血みどろの戦の末、特殊部隊による投薬作戦で弱体化。

監督者も特殊部隊に所属している娘に無力化され、人形の様に沈んだ少女は救出された。 

 

 

 

「っ」

 

 少女は目を覚ました。

早朝、ちゅんちゅんと小鳥がさえずる。

嫌に気持ちが悪い思いをし、ついにその場所に到着してしまったのかと周囲を見た。

だがあの大人の動画で見たような場所じゃなかった。

というよりも、むしろ今まで感じたことがある場所。

 少女が寝ていたのは、比較的高級で高機能なベッド。

何も置いていないはずなのに、いくらか簡素に配置された小物。

 

「どこ?」

「トレセン学園ですわ」

「ひゃ!?」

 

 自然と欲する様に喉から出てしまった声に、唐突の返事が舞い込んできた。

あまりの事態にびっくり仰天。突然の事なので、心臓が爆音をたてて鼓動する。

 

「あら、ごめんなさい。驚かせてしまったわ」

 

 2人部屋の寮なので、少女が寝ていた場所の反対側にあるベッドのわきに潜伏していた彼女。その娘は、薄紫の頭髪を持っており、口調はまさしくお嬢様といったものだ。

どっきり大成功といったようなしたり顔で、ベッドの上に這い出る。

 

「なんで」

 

 少女は夢に浮かれているような感覚で、眼前の少女に今の状況を聞いてみた。

大人のおもちゃにされる予定が、いつの間にか出ていくように催促された場所にもどってきている。

あまりの急展開に少女の頭の中は、処理できない情報でいっぱいだ。

 

「春麗さん」

 

 不安、恐怖、絶望、失望、死。

そんな壊れた人形のような少女の目を見て、お嬢様のような少女はやさしく微笑みかける。

 

「貴方はトレセン学園の生徒です。そして、借金もないですし、大人の相手もしなくていいのですよ」

「嘘だっ絶対、わたしをだます嘘だ!!」

「意固地にならないで」

 

 立ち上がって逃げようとする少女を、お嬢様っぽい少女がベッドに押し倒して逃げ道をふさぐ。これで逃げることは不可能だ。最弱は、他の何者に勝つことはできないからだ。

 

「こんなの嘘だ」

 

 今まで我慢してきたことが、一気に解放されて涙となって頬を伝う。

 

 飽きやすくわがままで頑固だったが、きっかけをつかめば何事も一直線にやる集中力はあった。

だからトレセン学園に、その素質を買われて入園許可をもらったのだ。

とある監督者の様に、うわべしか見ず今後のうまみを享受する協力者として犯罪に加担していた者には決してわからぬことだった。

 静かにうれし涙を流す少女を見つめ、慈母のように見つめるお嬢様。

そして突然聞こえる騒音と共に、部屋の扉がみしっと軋む音。

 

「マックイーン! 石宗さんつれてきたわよ!」

「ちょっ」

 

 幼い娘に連れられた男性は、転びそうになりながらもなんとかついてきた。

だが脚が限界のようで、幼い娘が止まるのと同時に部屋へつまずきながら転がり込んだ。

 

「いたた……ん?」

 

 幼い娘が何やら黙っているので、何事かと顔を上げる。

するとそこには、涙を流す少女を押し倒しているお嬢様風の娘が……。

この様子を見て、幼い娘も男性もすぐに後ろへ下がろうとする。

 

「ご、誤解ですわ!」

 

 一瞬で状況を覚ったお嬢様は、誤解を抱く入室者二人へ大声で待ったをかける。

その声に泣きはらしていた最下位少女は、聞きなれた声を聞いて顔を上げた。

 

「あれ、大洋せんせ?」

「よ、元気にしてたか?」

 

 気まずそうにせずなるべく自然体で応対する。

一年ぶりではあるが、見知った顔なので少女はすぐに涙を拭きとり男性の下へ行く。

ただ久しぶりということも相まって、脚がついてこずもつれては転び、そこを男性が抱えた。

 

「なんで?」

「うららに伝えたいことがあるんだよ」

 

 その伝えることは、幼い娘によって注釈される。

話の内容はずばり、このまま在学認定をくらうかどうかだ。

 現状の在学状況は、退学ということになっている。しかしこの退学は、裏で手引きした者による詐欺ということもあって現在取りやめになっている。

しかしこれが引き続き在学となって復学した場合、少女が精神的に攻撃され

学業や競争に集中できない可能性が示唆されている。

 その可能性は、すでに多くの者が見ているので報告はすでに多数上がっている。

このまま残留させるのは、本人にも周囲の人間にも悪い。

 

 そういうわけで、退学という状況に置かれる。

だがそれだと、例の授業料の返済を求める文書が発行されるので、これは体裁的にもまずい。主に娘人権委員会にばれているので、この件が漏れると非常にまずい。

ていうか、ばれる(確信)。

 色々と高知の学び舎や選出機関、トレセン学園側で考えた結果……4か月後の入園式に、

新しく入園することにさせたのだ。

 

 授業料に関しては、娘人権委員会とかフェミニズム系の団体より出資されたり、

そもそもの学園理事長の裏手引きもあってこれらが無効化される事態もある。

更に今回の4か月後に、再入園させるというのもこの場にいる少女たちが提案したことでもあるので、逆らうわけにもいかなかった。

そう、お嬢様っぽい少女や幼い娘も、上級市民であるので無碍には出来ないのだ。 

 

 色々な幸運が重なった結果、最下位少女は再度入園より機会を得ることができるようになった。

 

「どうして私に?」

 

 最下位少女の身に余り過ぎる偶然や待遇に、現実味を帯びていない現状を受け入れることができない。

何度も反芻しても、納得ができないようだ。

 

「私もテイオーさんも、たまに訪れて見に来ているんですよ。

そこでハルウララさんを見ました。何度負けようとあがいて、走って、悔しがりつつも、

次のためにがんばろうとする姿。心がゆすぶられました。

私は、貴方こそ報われるべきであると思っています。ね、テイオーさん」

「はい。私も無敗の三冠娘を目指していますが、ハルウララさんの様に

めげずに走り続けることは難しいと思っています。

それを笑顔で何でもないように成し遂げる。本当に強い方なんですね」

 

 最下位少女は予想外の持ち上げに困惑して、照れる顔を隠すように男性の後ろに隠れてしまう。それを見てか、男性もお嬢様や幼い娘も、朗らかに笑ったのだった。

 

 

 

 

 後日高知県へ帰った退学少女は、PCを使ってあのお嬢様や幼い娘と連絡を取り合っている。偶に通信状況が悪くなって手紙なんてこともあるが、お互いに良好な関係を築けているようだ。

 

 そんな折、学び舎で再教育している少女に、あの男性が話しかけた。

 

「うらら、気合入ってるね。どうしたんだい?」

「うん。二人とも地域競争で1位を取ったんだって。だから私も、負けてられないなーって」

 

 今までとは違う言葉や思いに、男性は驚きを以て迎え入れる。

あの日から、急激に認識や意識を変えてきた。

今も徐々に変わってきている。そして男性も安東の育成スケジュールというものを見てから、一般に通用するものを少女に適用している。

これもあったからこそ、少女は学び舎の中でやっと3位までこぎつけることができた。

 そうして今。少女は、自分の弱さを乗り越えようとしている。

男性はその時が来るまで……いや、少女が頑張り続ける限り応援しようと心に強く誓った。

 

「今日は3位。前まではびりだったけど、成長してきたね」

「うん。体幹も足運びも直したし、後は体力面だよね」

「ああ。飽きないで頑張ろうな」

「勿論だよ。私は我儘で頑固で飽き性だけど、絶対にあきらめないから!」

「応、その意気だ!」

 

 斯くして少女は、お嬢様と幼かった娘と同じクラスになり今までの空白期間を

埋めるように、全力で競争と訓練に挑んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この子の全身エステ、意識が吹っ飛ぶくらい気持ちいいんだよ!」

「へーそうなんだー」

「ウララちゃんも一緒にやってみない? きっとやみつきになるよ!!」

「うん、いつかね」

 

 

 

「ウララさん」

「何?」

「あの方のやさしさに溺れてしまいましたの。あの方を独占する方法を、一緒に考えて下さらないかしら」

「えーと、やめよ? トレーナーさんも、マックイーンちゃんが心配なだけだと」

「そんな筈ありませんわ、私の事を愛してくださるから、私を見て下さるのですわ。

嗚呼、私はあの方がいないと生きていると思えません。やはり、監禁を――」

 

 入園後、タコ?に色々許してしまったトウカイ家の令嬢、そして堅気っぽいトレーナーにほれ込んだメジロ家の令嬢の奇行に翻弄される少女なのだった。

 

 




 前話感想の学費ですが、あれはただ適当に金額を提示しただけです。

(寮額+授業料+施設費+学食費+教科書代や制服・勝負服制作など+α)-
(完全奨学金+義務教育支援(私立版)+入学時の報酬+受験合格順位の報酬+出走入着報酬)=中退による授業料要求額

 学食費は、学食を購入するためのタッチパネル式注文機に生徒の情報が入ったカード(リストバンド)を触れさせることで、学食の注文+個人の注文履歴がサーバーに記録されここから逆引きできます。
勿論入着報酬も学園が用意している口座で一元管理されており、外部に行く場合に
引き落としたりすることができます。

 また学園と提携したり協賛しているところは、電子決済もできます。
無論のことですが完全奨学金を超えた資金利用の場合は、特別な収入がない限り卒業後に要求されます。
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