ゼロのウイルスがゼEROウイルスだった。   作:みかん

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番外編 名無しのレプリロイド

 

 彼はこれと言って特徴がない量産型レプリロイドだった。レプリロイドはワンオフ個体と量産型にわけられる、ワンオフ個体は文字通りこの世に一つだけの特別な個体とされるレプリロイドを指す…比べるまでもなく量産型よりも性能が良い、例えばエックスやゼロ、シグマといった者達の事だ。

 

 量産型レプリロイドは創られた瞬間から配属が決まっている、能力をインプットされて組織間で運用されているからである…悪く言えば代用が効く駒として創られた存在ともいえる。個性も全体的に調整され、個体差があるような振る舞いをしていても…それもまたプログラムの限界を超えることができない証明…‥しかし、イレギュラーは発生する。

 

 イレギュラーハンターにはランク付け制度が存在する。ランクは「A級」「B級」「C級」と3つのランクがあり、実力や任務達成度など全体的な評価指数で決まる…彼の評価は常にC級、量産型だからという理由もあるが単純に彼がハンターとして向いていない性格で生まれた。イレギュラーになったレプリロイドを見ると怖くなり腰を抜かす、任務中に困っている人物がいれば助けに入り任務が失敗する…上司から苦言を頂くなど彼は毎日落ち込む日々が続いていた。

 

 量産型とはいえ決定権はある、つまり仕事を辞める選択はいつでもできた、別の職種を探せば今のようなみじめと感じる気持ちともおさらばできる…でも彼は辞めなかった…‥人間の女の子と約束したから。

 

 

 

 

 

 

 女の子の名前は(ともえ)マミ…パトロールを兼ねて町を回っていたら事故に関する連絡があり彼女と出会った…当初はまるで死んでるかのような少女だった、自分というレプリロイドでは理解できない血のつながった家族の死…人は簡単に死んでしまうという知識はあったが、本当に死んでしまった現場はその時初めて見た…目の前で両親が亡くなったのなら悲しいと感じると知識であった、なら悲しまないように話しかけるべきだ。その時の事を改めて考え直す(・・・・)と軽率な行動だったと思った、悲しいと感じてる人間に「大丈夫?」なんて…

 

 彼女は泣いた、自分はどうすればいいのかわからなかった…泣いている顔を見ると悲しいと感じたから約束した…‥「君が悲しまないように俺頑張るから泣き止んでくれ!」…これは約束だったのだろうか?テンパるにしても酷いと自分で思った。その後は他の同僚や先輩たちに助けられながら事後処理を済ましていった…

 

 事件から日数が経ち、改めて彼女はどのように過ごしているか確認した…彼女は軽度のうつ病になっていると人間のカウンセラーから聞かされた。彼女には親戚がいなかったようで施設に預けられて過ごしていたが…彼女の限界が来たのだろう自殺しようとしたらしい

 

 そのことを聞いて自分はいてもたってもいられなかった、「里親制度はレプリロイドでも大丈夫ですか!」…勢いとは時に恐ろしく感じる。面倒な手続きがあったが結果として里親にはなれるが…彼女が自分を認めなければならないと…自分は彼女に何もしてあげれていない…駄目かもしれないと思っていたが、彼女の返事は返事ではなく前に頷くだけだったが…認めてくれた

 

 

 

 それから自分と彼女の共同生活が始まった、彼女にとってはロボットと過ごしても何も感じないだろうが…まあ、彼女の生活費は問題ない。貯蓄はそれなりにあるし、ハンター業務は命がけの仕事故にしたっぱと言えど給料はそれなりだ。自分は趣味がないのも理由の一つだが、同僚たちはエネルギー缶をたらふく飲むとかしている。人間で言う酔うような状態がいいんだとか?

 

 

 

 一緒に過ごす上で大事な事を里親になる際に色々と教わった…自分のような変わり者も偶にいるらしい、大半は人間側から拒否でなれないそうだが…‥大前提として人間は食事が必要だ、自分たちのようにエネルギー缶を飲んで終わりじゃない…料理道具も一式購入して、今まで見たことはあっても触れることは無かった食材を購入・調理してみた。弁当という人間用のエネルギー計算式で決められた物よりかは劣るかもしれないが、手作りは愛情がこもると人間の間では言われているようだ…非科学的だが試してみた、同時に下の名前で今後は呼ぶことにした。

 

「マミ...ご飯だよ」…名前を呼んでみたが反応が悪い、まあ仕方がないと考えて野菜チーズケーキを出してみた…‥食べる進みが良い、でも物足りないようだ...『…美味しいけどご飯じゃない』と言われた。はて?人間に人気があり、必要なエネルギーを計算して野菜などもすりつぶして作ってみたのだが…どうやら人間は食事に分類をしているようだ、自分が出したのはデザートに分類される物だった。人間は食事をするという知識はインプットされていても何を食べているかまではわからない、自分で調べない限り…新たな発見である。

 

 自分が食事の意味を理解していなかったのを見て、キョトンとしていた…そして調理器具を手に取って何かを作ろうとしている、自分は怪我をするかもしれないと注意するが...自分より遥かにテキパキしていた…‥購入した食材でカレーを作ったようだ、『これがご飯』と…今後は彼女に聞きながら作ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 相変わらずのしたっぱの日々が続く中、マミとの生活は楽しいと感じる。彼女が時々笑うようになってきた…嬉しいと感じる、人間とロボットでは感情の変化に違いがあると聞いていたが特に問題は起きていない。最近の出来事といえばマミがケーキやお菓子の作り方を教えてほしいと自分に言ってきた、指示された作り方通りに作っただけなのだが…思った通りの事を伝えると『それが難しい』らしい、自分もどのように伝えれば正解なのかわからない為…ただ一緒にお菓子作りをしただけになってしまった。自分が謝ると笑って『また一緒に作ってね』と約束された…

 

 今更ながら自分には名前がない。型式番号ならあるのだが…他の同僚たちは自分や親しい者達と勝手に名前を登録しているようだ...前から聞かれていたが、そのことをマミに伝えてみた…そうしたら名前を付けてくれるとの事だ!だが考えるそぶりもなく『ホープ』と…ホープか良い名前だと思い礼を伝えたが…『伝わってないでしょ』と不機嫌になってしまった。人間の感情はわかりずらいと改めて感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マミの容態を見て学校に行っても問題ないと人間のカウンセラーから言われた。良いことだ、学校は知識だけじゃなく仲間も作る場所だ…自分も訓練の際に友を作ったな...過去を振り返っているとマミは下を向いていた、学校に行くのが不安らしい…だが人間は学校に行くのが一種の普通らしい?マミが困っているならレプリロイドのように知識をインプットできないだろうかと考えると…カウンセラーから二人で話し合わせてくれと言われた…‥部屋から出ていくと、何故だが悲しいと感じた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マミは学校に通い出した…たわいのない話、クラスでは・あの子が・○○が可愛いの―――彼女はどんどん成長していく、嬉しいはずなのに…自分は正しい選択をしているはずだと思っているのに、それを否定したい感情が湧いている…何でだろうか?

 

 …仕事中まで考えるなんて、自分はおかしくなったのだろうか…‥

 

「おい!聞いてるのかホープ、メカ二ロイドの暴走だってよ速く行くぞ!」

「!わ、悪い」

「たく…まあ、第17精鋭部隊が向かったそうだし、すぐに解決するだろうけどな」

 

 第17精鋭部隊、自分の…ハンターにとって憧れの部隊、実力がある者しか入れないプロ集団。何度も自分も入りたいと思って任務や訓練を努力したが…まあ結果は...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 メカ二ロイドの暴走を見た、自分たちは交通規制をする担当で直接戦う訳ではないが、凄かった…言葉が足らない、自分があの場にいたら数秒でスクラップになっている自信がある…戦っている精鋭部隊、同じ量産型のはずなのに瞬時にワイヤーバスーカを撃ったり、仲間の援護も的確にしていた。

 

「やっぱりシグマ隊長は凄いな…あの一瞬でジェネレーターを切っちまうなんて」

「他のレプリロイドも凄かった」

「ああ!でも聞こえたろエックス、撃とうと思えば撃てたんだろ?数%ぐらいなら俺は撃つが」

「…俺は怖くて撃てない」

「まあ俺らじゃ一生無理だろうな、あんな動き訓練したって無理だ。それにワンオフ個体には敵わない…だな」

 

 そうだ憧れはできても…俺は特別になれない…‥

 

 互いに落ち込んでいるとシグマ隊長が撤収命令を出しながらこちらに歩いて来た、二人で敬礼しながら道を開けると…何故か立ち止まり自分に話しかけてきた。

 

「ホープというのは」

「じ、自分です!」

「そうか…」

 

 何故か見定めるような目線を感じながら会話が続いた

 

「お前は人間の里親をしているようだな…何故だ」

「何故とは」

「里親になった理由を知りたいのだ」

 

 突然の事で動揺したが…シグマ隊長は何でそんなことを聞くんだ?…でも理由か、自分でもわからないだよな…大事だと思ってるけど何故と言われると、悲しそうだったから…‥なんか違うな

 

「…互いに寂しかったからですかね」

「寂しい?」

「…自分は何もできないC級ハンターで、彼女も寂しそうだったから…なんか違うな...すいません」

「クク、いいや参考になった…我々レプリロイドと違い人間は感情に左右されやすい、人という存在と長い期間触れ合ったお前の意見を聞きたかったのだ」

「こ、これは重大な質問でしたか!」

「なに、単なる興味本位の質問だ…大事にしてやると良い、人間はロボットと違い色々と溜まる…発散の手伝いをするのも親としての義務だ」

 

 シグマ隊長はそう言ってハンター本部に行ってしまった…そうか親なんだ俺は…改めて言われて自分で納得した

 

「シグマ隊長…ありがとうございます...」

「何かスッキリした顔になったなお前」

「隊長のお陰さ」

 

 

 家に帰った後マミと約束をした…ドッペルタウンに出来た遊園地に一緒に行こうと、嬉しそうにしてくれて良かった...『Grazie(ありがとう)』何故かイタリア語で返事を返された、学校で習ったのだろうか?それと今度友達を家に招きたいとの事だ、お菓子作りを教えてあげるのだとか…これが親が子に何かを与えた喜びなのだろうか…‥気づかせてくれてシグマ隊長には感謝しかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハンター本部の様子がおかしい…自分はマミを学校に送り届ける為に遅れてきたが、違和感を感じる。

 

「メカ二ロイドのイレギュラー今月で7件目だよ」

「隊長はその件で定位置に」

「ああ、そうらしい」

 

 普段通りに会話している…何も変じゃないはず...

 

「オカラダノホウハ」

「タイチョウはチャントキュウショ♡を狙ってくれたよ」

「コラーまたオナッたな!」

 

 やっぱり変だ…でも誰もそのことに触れない

 

 動揺を隠せないでいるとオペレータから指示があった指定の場所まで来るようにと…その場所に行くと何故かシグマ隊長がいた

 

「シグマ隊長!任務に出ていたのでは」

「ホープ、見込みがあるお前にも選んでもらう、新たなるレプリロイドが中心となる世界で生きるかどうかを!」

 

 突然だった…TNTNを渡され、レプリロイドで新たな生態系…‥意味がわからない

 

「何を言ってるんですか!正気に戻ってください!」

「私は正気だ、人類とレプリロイドの関係は知っているであろう?我々が行うのは真の意味での対等な立場を得る行動であり、新たなる可能性の誕生でもある」

「…人類全てが我々を道具のように思っている訳では...」

「お前ならわかるであろう?人間を育てる上で人類と多く接触したお前なら…」

 

 …人類はレプリロイドを道具のように思っている者もいるのは確かだ...それで何度か里親になっていることでいざこざがあった…それでも俺は信じたい…

 

「俺は人類を信じます」

「今までお前のように口にした輩は多くいた…結局は絶望するだけだ、人間という存在にな」

「そういう貴方が人類に近づこうとしてるではないですか!」

「違うな人類を越える(・・・)のだ!人類という存在が生まれて数百万年の月日経った、もう十分だろう…レプリロイドの時代が訪れたのだ受け入れろホープ」

 

 人類の考えは変わらないかもしれない…そんな事知っている。人という存在は時が経てば一時の感情を忘れる、例え一つの時代で共存が確立しても次の時代では…‥でも俺は…‥隊長のような壮大な考えじゃない、ちっぽけな考えしか持ってない

 

「俺は約束したんです…遊園地に行こうって」

「何を言っている?お前の子の話か、そんな事今はどうでもいい」

「どうでも良くない!あの子いなければ俺は潰れていた、笑顔があったから俺はここにいる!」

 

 そうだ!俺はあの子の…‥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暗い…‥暗い…何も見えない…オレはなんだっけ…でも女の子の顔は覚えてる、金髪の少女で特徴的な髪をしてる…名前は…何だっけ?大事な名前だった気がする…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …‥何故だろう…少しずつ思考できるようになってきた…‥辺りが暗い中で明るい光が見える…きっと彼女だ…迎えに来てくれたんだ…‥彼女に向かって腕を伸ばした…

 

 

 

 

 

 

 

 

 …そうだ彼女の名前は…マミ…俺の娘だ…

 

 

 

 











『性欲は力なり』でオクトパルドに破壊されたレプリロイドです。
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