妖精の尻尾に初めて踏み入れて感じたことは……随分と騒がしいギルドだと思った。今までギルドに加入した事はないがギルドを訪問したことは数度ある。どのギルドも静かとは言わないが……騒がしいと言うほどではなかった。だけど妖精の尻尾はとても騒がしい。
妖精の尻尾のメンバーは僕の事を訝し気な目で見たり興味深そうに見ていたり様々だ。まあ、一度も顔を合わせたことのない人間が急にギルドに入ってきているんだからそういう目になってしまうのも当たり前。
まずは自己紹介をした方が良いかもしれない。
「皆の者!!!!注目せよ!」
隣にいるマカロフくんがギルド全体に響く声で言うとさっきまで騒がしかったギルド内が一瞬で静まり返った。さすがマスターの一声というところかな。
「今日から暫くの間、妖精の尻尾に新しいメンバーが加わることになった!!!では自己紹介をお願いします」
「これから少しの間、このギルドに加わることになったのでよろしくお願いします」
「お~~~~~新しい仲間か!!」
赤い髪をしているつり目の少年がそう叫び出した。この子の魔力からしてこれは確実に滅竜魔導士。いや、この子だけじゃないな…見渡す限りでも三人いる。一つのギルドに滅竜魔導士が三人も集まっているのは珍しいね。一個のギルドに一人いれば良いぐらいのレアリティなのに妖精の尻尾には三人か。
それにこの赤い子は………そうか…………この子が…そういうことか。妖精の尻尾というギルドはこれから……絶体絶命のピンチに陥る事は決まってしまっているということか。
「おめぇはいちいちうるさい!!」
赤い髪の少年の隣にいる黒髪の少年が赤い髪の少年を横目で睨みながら言った。この二人が仲が良くないのだろうか。まあ、喧嘩するほど仲が良いともいうし何とも言えないな。
「それじゃあ、まずは歓迎会とするか!!!!!!」
そんな感じで僕は今、歓迎会の真っ只中にいる。質問攻めにあったり色々とあったが…このギルドは比較的良いギルドのようだ。評議員が何故僕をこのギルドを監視するように言っているのかは未だに分からないがいずれ分かる時が来るのかもしれない。
そんな事を考えながら……僕はギルドハウスの隅っこにいる。ギルドの隅から妖精の尻尾を見ている。皆、楽しそうに騒いでいる。
「お久しぶりですね」
そんなことを口にしながらエルザくんが僕の方へと歩いてきた。
「…やっぱり君にはバレるか。君やミラくんとは一度しか会っていないからもしかしたらバレないかなと思ったんだけど」
「それはないですよ。確かにご指導頂いたのは一度だけですが…とても濃い一日だったと記憶しています」
エルザくんは昔の事を思い出しているか、視線を天井に向けている。
「僕は君たちにそんなに教えてないよ。僕は教えるんじゃなくて見せているだけだからね。それはエルザくんも知っているでしょ?」
「はい、ですが、アオ様の魔法を間近で見られるだけでも魔導士として一生の財産です!私がアオ様の事を語るのはおこがましいですが………アオ様は私にとってあの時から憧れです。この世界の魔導士の中で一番の強さを誇りながら決して怒り高ぶる事もなく、子供だった私達にも優しく接してくれました。今でも私はあの時のアオ様が掛けてくれた言葉を忘れていませんよ」
皆、そうだけど僕を過大評価しすぎだよ。僕は皆が言うほど良い人間ではないと思うけどな。
「そうなんだ………まあ、これからよろしくね」
「はい、よろしくお願いします!!」
歓迎会が終わる頃にはほとんどのギルドメンバーは地面に横たわっていた。これは別に敵の襲撃を受けたとかではなく単純に疲れ果てて寝ていたりするだけ。唯一、倒れずに片づけに勤しんでいいるのはミラくんだけのようだ。後、マカロフくんもカンターの上に腰を下ろしながらまだ酒を口に運んでいる。
この時期になってくると大魔道演武のことも考える時期になってきた。僕も評議員からの任務が無ければ毎年、見に行っている。魔導士ギルド同士の闘いなんて普通はあり得ない。だからこそ、大魔道演武は見る価値があると僕は思っている。今年は妖精の尻尾も主力と呼べる人間が帰ってきている。前までの妖精の尻尾とは確実に違うのは結果が証明してくれるだろう。
「今回の大魔道演武は例年より楽しみだね」