NEXT PAGE   作:うんこたれ蔵

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第1話 ネクストページ、入学するとのこと

「お前なぁ、何回やればちゃんと出来るんだ?」

 

「うるさい! そんな事、私が知るか!」

 

何度も何度も何度も何度も言われた言葉だ。出来るものならとっくにやっている。出来ないからこうして特訓しているのだ。

 

「基本的に人の話はちゃんと聞くし、言われた事もしっかりこなす。そして成果も出てる。大したもんだよお前は」

 

「そ、そう? えへへ……」

 

「でもスタートは毎回出遅れるし、あんな手作りのゲートですら入るのは超が付くほど苦手ときた。本当にウマ娘か?」

 

そこまで言うか!? この野郎、私という存在を全否定しやがった! あの感覚はな、走るやつにしか分からないんだよ!

 

「むっかー! そこまで言うんだったら先生が走ってみたらいいじゃん! これからは私がトレーナー、先生がウマ娘……いやさウマおじさんだ! 日本一のウマおじさんに育て上げる!」

 

「バッカお前、それ言ったら元も子もないだろうが。そして俺はおじさんじゃねぇ。せめてウマお兄さんにしろ」

 

「じゃあ日本一のウマお兄さんに育て上げる」

 

「そういう事言ってるんじゃないんだよ。聞いた話だと一年のジャスタウェイはちゃんと入ってるらしいぞ?」

 

「でもゴールドシップは入ってないよ?」

 

「あいつを引き合いに出すな。話が拗れる」

 

「ごめんなさい」

 

これは私が悪い。私はペコリと頭を下げた。

 

「……はぁ、まぁいい。いや良くないが。お前は4月から中央のトレセン学園に入学するんだ。俺は本職じゃないから矯正できなかったのかもしれんが、向こうには優秀なトレーナーが沢山いると聞く。そこで直してもらえ、ネクストページ(・・・・・・・)

 

「……うん、今までありがとう先生。向こうでも頑張るから、草葉の陰から応援しててね?」

 

「死んでねぇよ」

 

「だから、さようなら……」

 

「勝手に殺すな」

 

「聞いてください、いきものがかりよりYELL」

 

「それは今度の卒業式で歌え」

 

「さよならはかなーしいー」

 

「だから今度歌えって」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

違和感が確信に変わったのは、確か1歳と半ばくらいの時だった。

 

先に言っておくと、私には前世の記憶がある。男で、確か社会人だった筈だ。真面目が取り柄の、絵に描いたような普通の人生を送っていた……ような気がする。当たり障りのない人生だったせいか、どのような人間だったかは全く覚えてない。転生した理由とかどういった理由で死んだのかさえ。

 

違和感というのは転生した事に対しての事ではない。自分と周りの身体的特徴の違いだ。どうやら私はウマ娘なるものに転生したようで、ウマのような尻尾や耳が生えている。

 

つまりTS転生だ。本とかで読む分には大好きだった(ような気がする)がまさか当事者になるとは思ってもいなかった。ムスコがいないのは未だにちょっと慣れない。

 

ウマ娘というのは簡単に言うと、前世で言うところのウマと少女を掛け合わせたような生き物だ。ただこの世界にはウマという生物は存在しないので掛け合わせるも何も、元からそういう生き物な訳だ。耳があり尻尾があり、そして超人的な脚がある。太古の昔から人間と共存する、人間と共に歴史を重ねてきた霊長類の一種、らしい。知らんけど。

 

そんな種族がいるなんて知るよしもなかった私は、約一年半の時を経てようやく種族の違いについて知ったのであった。物心は生まれた瞬間に付いてたから多分正確な時期だと思う。

 

まぁ知ったきっかけは隣に住む幼馴染に初めて会った時に耳を思いっきり引っ張られたからなんだけど。最初何を引っ張られてるのか分からなかったから本気でビックリした。

 

え? 鈍すぎる? お前がウマ娘なら母親もウマ娘だろ? ……ちゃうねん。ウチのマミーはたしかにウマ娘だけど、コスプレと思うやん普通。マミーはコスプレが大好きなんやなって。もしくはパピーがそういう趣味か。

 

そりゃあ私にも付いてたよ? 耳と尻尾。でも赤ちゃんは動けないの。オキテスグメシ、タベテスグネルのが赤ちゃんの仕事。食べる以外は寝てれば大体終わってるから気付くのが遅れたんだ。そういうことにしておこう。

 

とにかく! ウマというのは総じて走る事が大好きだ。それはウマ娘も同じであり、私はそんなウマ娘! 私も例に漏れず本能的なところで走る事が大好き! ならばなるしかなかろう競走ウマ娘!

 

幸い私のクラスの担任がウマ娘にちょっと詳しいって事でトレーナーのような役割を買って出てくれたのだ。重賞で1着とったら飯でも奢ってやろう。

 

そんなこんなで、たった今小学校の卒業式が終わった。実に感動的な式であった。

 

合唱曲であるYELLを聴いて涙ぐんでる先生やマミー達を横目に、私はこれからの生活に思いを馳せるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

「はぁ、はぁ……ま、間に合わなかった……」

 

がくり。

 

力尽きた私は門の前で倒れてしまった。

 

私は懸命に走った。電車から降りた瞬間から人並み掻き分けてダッシュでここまできたし、ていうか日数的にもだいぶ余裕があった筈なんだ。

 

今日は中央トレセン学園の入学式。朝の9時開始で現在の時刻なんと15時。実家や小学校の先生から引っ切り無しにかかってくる鬼電。怖すぎて一つもまだ取れてない。果たしてこれは一体どういう事なのか。

 

「おいおいどうしたんだよページ。もしかしてまだ烈海王が死んだの納得出来てないのか?」

 

「そうだけど、そうじゃない……」

 

隣にいるのはゴールドシップというウマ娘。私の幼馴染であり現代社会に棲むハジケリストだ。嫌いじゃないがやることなす事訳が分からない奴なので正直ついて行けない。

 

今回入学式に遅れたのは大体こいつのせいだ。

 

まず事の発端は東京への飛行機が雨で飛ばなかったことにある。雨が止むまで待機しようとしたところ辛抱ならなかったのかゴールドシップのあんぽんたんがこんな事を言い始めた。

 

「だったら竹ウマでマントルまで行って海老をカラッと揚げてやる!」

 

竹ウマと言いつつ一輪車で東京まで向かおうとしていた為、慌てて止めて仕方なく新幹線で行くことにした。そこで大人しく座っていればいいものを、またこいつは

 

「ウニと栗を正確に見分けられる、そんな横綱に私はなりたい」

 

とか言って途中で下車しやがった。置いていくわけにも行かず慌てて付いていくと、そこにはお婆ちゃんをおんぶして横断歩道を渡るゴールドシップの姿があった。

 

なんとなく誇らしい気持ちになりつつ一緒に手伝っていると、お婆ちゃんから御礼にと花巻の高級温泉旅館の宿泊チケットをいただき、そして伝説へ……。

 

まぁその後も湯煙にんじんジュース事件だの幻の高麗人参紛失だのなんだのあった訳だが、大体そんな感じだ。入学式なんてとっくの昔に忘れていた私はチェックアウト後に慌てて移動してきたのだが、結果はこの有様だ。私悪くないよね?

 

……いや悪いな、うん。ゴールドシップのせいにしちゃいかん。途中から普通に楽しんでたし。くそっ、飛行機さえしっかり待てていればこんな事には……!

 

私は絶望感に打ちひしがれた。どうしよう絶対に怒られる。まずはこの鬼電してきてるマミー、そして小学校の先生。この時点で恐ろしいのに追加でトレセンの人からの怒りも待っているに違いない。

 

……よし、覚悟を決めよう。

 

「ねぇゴールドシップ」

 

「あん? どした?」

 

「……サボタージュ、決めちゃおっか♡」

 

「……へへっ、おうっ!」

 

二人見つめ合いながらニコリと微笑む。

 

私たちは幼少の頃から共に過ごしてきた幼馴染。一連托生の仲だ。悪い言い方をすれば死なば諸共、毒食らわば皿まで、赤信号みんなで渡れば怖くない。いつもそんな感じで過ごしてきた。きっと向こうもそう思ってくれている筈だ。だから頷いてくれたのだろう。多分、めいびー。

 

「あっとその前に……もしもし? おれおれ、おれだよ。あ? ゴールドシップか、だって? ちっげーよ、おれだよおれ! ゴールドシップだよ! トレセン学園に着いたからその連絡だ。ちゃんとページの奴もいるから安心しろよ。ウチの親とページの親にも伝えておいてくれ。じゃなー」

 

「……ゴールドシップ、いま誰と話してたの?」

 

「センセーだけど? 着いた報告くらいはしとかねーとな」

 

「なんか言ってなかった?」

 

「別に何も言ってなかったぞ。ところで何処を掘る? アタシの予想じゃ品川駅が怪しいと思うんだよなぁ〜源泉。さっさと掘り当てていい湯を浴びようぜ?」

 

「……どうしてそんな悠長に構えてられるの?」

 

「はぁ? 一体何の話だ? ……あぁ、安心しろって! アタシたちウマ娘は宇宙服なくたって人参があれば生存出来るって論文にもそう書いてあったし。まぁアタシが提出したんだけど」

 

「宇宙旅行の話じゃなくて入学式のこと! ガッツリ遅刻したんだよ私たち!」

 

「……本当に何の話だ?」

 

「はぁ?」

 

もしかしてゴールドシップのやつ、入学式の事本気で覚えてないのか? というかそもそもトレセン学園に入学する事も分かってない? いやいや! 流石のゴールドシップでもそのくらいは覚えてるだろ。一緒に試験受けたんだし。ていうか私より座学の点数良かったんだし。なんなんだこいつ。あんぽんたんのくせに。

 

「(……! こいつ、もしかして)……なぁページ、アタシ考え直したんだけど、やっぱり謝りに行った方がいいよな?」

 

「!!! や、やっぱりそうかな……?」

 

痛いところを突いてくる。正直遠慮しておきたいところ。でも嫌な事は早めに済ませておかないと後で後悔するんだよなぁ。

 

ていうかやっぱり覚えてるじゃん。しらばっくれて。

 

「じゃ、じゃあまずは母さんから──」

 

「いや、まずは学園の先生や生徒会長からだ。最悪、火星まで星流しの刑に遭うかもしれないが、そっちから謝っておいた方が親と話す時気が楽だろ?」

 

「たしかに! まさにその通り! 流石ゴールドシップ! さすゴル!」

 

「うっしゃぁ! そうとなればこのゴルシ様に任せとけー! まずは生徒会室までカチコミだー!」

 

「殴り込みだー!」

 

こいつも偶にはいい事を言う。やはり嫌な事はサッと終わらせるに限る。それじゃあ早速生徒会室に向かうとしよう。

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