FATE/BiOHAZARD   作:ダイアジン粒剤5

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ヒル

 青い稲妻の奔流が地下通路の中を走り、無数の巨大な蛭の群により形作られた大波を焼き殺す。

 

 ラクーン総合病院地下に広がるアンブレラ社秘密研究施設、NEST2。

 アスクレピオスと病院で別れた藤丸とピアーズは、地下施設の探索を進めていた。

 

 「蛭の襲撃はこれで三度目か……。 俺の電流で一度に焼き殺せるから問題ないが、この数は異常だな」

 

 「うん、でも間違いなく、相手を追い詰めてるよ」

 

 「ああ、この雑な波状攻撃。 切り札だったんだろうタイラントを倒されたことで、間違いなく焦ってる。 このまま進んで、追い込むぞ」

 

 地下を進む、二人。

 蛭の群の襲撃はなく、警戒を緩めこそしないが自然と会話が進むことになる。

 

 「しかしあの医者先生、本当に病院で別れるとはな。 しかもあの最後の言葉。あいつ、いったいどういう人格してるんだ」

 

 「ああ……あの、精々面白い傷病にかかって僕の医術の発展に貢献しろってアレ? 確かに言い方はどうかと思うけど。 でも絶対に治そうとしてくれるし、助けようとしてくれるから」

 

 「寛大だな、それも今までの経験からか?」

 

 「まあ、色んな人と出会ってきたし、一緒に戦ってきたから。 それに、正直アスクレピオスは真面な部類だし」

 

 「……あれが真面な部類なのか。 過去の偉人英雄ってのは、やっぱり性格吹っ飛んでるのが多いんだな」

 

 どこか乾いた笑いを浮かべる藤丸。

 それを労わるような顔で聞きながらピアーズが扉を開けると、開けた空間に出た。

 

 

 

 ――その中央には、どこか異様な雰囲気を放つ青年が。

 

 青年は怒りを孕んだ表情で藤丸とピアーズを睨んでおり、全身から殺気を放っている。

 敵であるのは、明らかだった。

 

 「やってくれたな、貴様等」

 

 藤丸を守る形で前に出るピアーズと、何時でもサーヴァントを召喚できるよう構える藤丸。

 臨戦態勢に入る二人だが青年はそんな様子にはまるで気を払わず、怒りに満ちた言葉を続ける。

 

 「この施設を占拠し、支配したタイラントども。 奴を殺すための切り札だったというのに……。 私の計画を、滅茶苦茶にしおって!!」

 

 叫ぶ、青年。

 それに合わせて、何処からか無数の蛭が這い出してくる。

 蛭たちは寄り集まり人型を成し、見るも悍ましい蛭人間ともいうべき怪物と化す。

 藤丸とピアーズは、無数の怪物たちに囲まれてしまった。

 

 「お前は、何者だ。 お前が、この特異点の元凶なのか?」

 

 しかしピアーズは一切恐れの色を出すことはなく、青年を詰問する。

 その傍らに立つ藤丸もまた、緊張はあれど恐れの色はない。

 

 ――青年は不愉快そうに鼻を鳴らすと、その姿を白髪の老人に変えた。

 

 「ジェームス・マーカス!?」

 

 驚きの声を上げるピアーズに、藤丸が問いかける。

 

 「知ってるの?」

 

 「ああ、全ての元凶であるアンブレラ社を創った悪党の一人。 そして悪魔の発明、Tウイルスを創り出した最悪のマッドサイエンティストでもある。 俺たちの世界を破滅に導いた、最低の狂人だ」

 

 「……随分な紹介だが、まあ概ねその通りだ」

 

 ――老人、マーカスは己の姿を若々しい青年に戻しながら言葉を続ける。

 

 「ついでに答えてやろう。 特異点とは、この奇妙な空間の事だな? 私は気付いた時には此処にいた、元凶とやらではない。 元凶がいるとするならば――それは、奴だろう」

 

 「奴?」

 

 「そう、奴だ。 奴は郊外のNEST1に潜伏し、肉の柱を育てている。 何のためにそんな事をしてるのかは分からんが、どうでもいい。 殺しても殺したりぬ奴を、見つけたのだ」

 

 言葉に熱が籠ってくる、マーカス。

 その足元に無数の蛭が集いだし、体が肥大化していく。

 

 「奴のもとには、強大な戦力がいた。 それを突破するためにこの施設を占拠し、タイラントやハンター共を支配したというのに――貴様らが現れたせいで、全て台無しだ!」

 

 最早人間の部分は顔しかなく、無数の蛭で構成された大男とでも言うべき怪人と化したマーカス。

 その背後に、天井から何かが降ってきた。

 

 ――数メートルはあろうかという体躯を持つ蛭が、複数。

 

 鎌首を上げた細長い首の先にある口からは、恐ろしい牙がびっしりと生えている。

 

 「やはり信頼できるのは、愛しい我が子たる蛭達だけ。 まずは貴様らを殺し、その後で我が子の数を増やす。 そしてその数をもって奴に……憎きスペンサーに、復讐を果たす!!」

 

 遂に残っていた人の顔すら消え、二対の触角を持つ蛭の怪人と化したマーカスは背中から複数の触手を生やし、甲高い奇声を上げる。

 その奇声に合わせ、蛭の怪物たちが藤丸とピアーズを殺すべく動き出す。

 

 「……色々と情報を喋ってくれたな。 倒すべき敵は、NEST1だ」

 

 右腕に電流を纏わせ、戦意に満ちた視線を向けるピアーズ。

 その視線をまっすぐに受け止め、頷きを返す藤丸。

 

 「うん。 そのためにも、ここを切り抜けよう」

 

 藤丸の右手の甲に刻まれた令呪が、光りだす。

 この局面を切り抜けるためのサーヴァントを召喚する準備が、整ったのだ。

 

 「よし、行くぞ!!」

 

 NEST2における最後の戦いが、始まった。

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