FATE/BiOHAZARD   作:ダイアジン粒剤5

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女王

 「――茶々!」

 

 向かってくる蛭の怪物たちを倒すため、藤丸がサーヴァントの影を召喚する。

 

 ――藤丸の声に呼ばれ召喚されたのは、派手な兜に衣を纏った少女。

 

 日本屈指の英霊である豊臣秀吉の妻にして、豊臣を滅ぼした女と呼ばれる彼女が持つのは炎を放つ名刀浅井一文字。

 

 「宝具解放!!」

 

 その浅井一文字を、藤丸の声に合わせて茶々は地面に突き立てる。

 

 ――その瞬間。茶々の幼い顔を覆い隠すように紅い面頬が降り、燃え盛る巨大な城が浮かぶ。

 

 燃え盛る城の火は露の如く地に落ち、這い広がり周囲を火の海に変えていく。

 火は蛭の怪物たちの足元を焦がし、その身を苛む。

 

 ――絢爛魔界日輪城。

 

 火焔地獄の姫である茶々の最期が具現化した、城塞宝具。

 その効果は、周囲を火焔地獄に変えるだけでは終わらない。

 

 ――燃え盛る城の門扉が、開く。

 

 そして門の奥から刀槍を持った鎧武者の骸骨たちが現れ、蛭の怪物たちに襲い掛かっていく。

 死してなお豊臣にまつろう、戦国の亡者たち。

 彼らを呼び出し従えることもまた、茶々の宝具の力。

 

 人型の蛭の怪物たちは炎に焼かれながらも腕を身長の数倍程も伸ばして暴れ、大型の蛭の怪物たちもまた全身を焦がしながらも巨体を震わせ、鎧姿の亡者たちに抗う。

 とは言え、所詮は怪物の悪足掻き。

 元は歴戦の戦国武者だった亡者達には敵わず、体を裂かれ穿たれ、徐々にその数を減らしていく。

 

 唯一亡者の群れに対抗できているのは、規格外の怪物であるマーカスのみ。

 マーカスは背から生やした触手を振るい亡者たちを払いのけ、全身を焼かれながらも藤丸を殺すべく歩を進める。

 

 ――その侵攻を止めるべく、ピアーズが立ち塞がる。

 

 「行かせるか!」

 

 ピアーズの雷撃。

 動きの鈍いマーカスは躱せず、体の芯まで電流で焼き焦がされる。

 

 ――奇声を上げ、ピアーズを薙ぎ払おうと腕を振るマーカス。

 

 しかしそんな大ぶりな攻撃、ピアーズは難なく躱す。

 そして攻撃を躱されたマーカスの頭に、焔の奔流が襲い掛かる。

 藤丸を守るように仁王立ちする茶々が放った、焔だった。

 

 顔を焦がされ悶絶し苦しむマーカスは、同時に悟る。

 数に任せての攻めでは、一切勝ち目がないと。

 

 ――マーカスは触手を伸ばし、まだ生き残っている蛭達を掴むと自身に引き寄せ始めた。

 

 引き寄せた蛭を取り込み、マーカスは自身の体を肥大化させていく。

 曲がりなりにも人型をしていた体は膨れ上がった体躯に埋もれ、増大した自重は二足歩行を許さず倒れ伏し、さりとて体高は人型であった時より高くなる。

 

 ――そして現れたのは、十数メートル以上はあろうかという蛭の怪物。

 

 怪物は奇声を上げ、背にある大きく裂けた口より液体を吹き出す。

 液体は鎧武者や地面にかかり、その身を焼き焦がし融解させる。

 強酸性の、毒液だった。

 

 ――怪物は今度こそ藤丸を殺そうと、毒液を吹き出しながら二対の巨大な腕を使い這い進む。

 

 茶々の宝具により地に放たれた火は怪物の身を焼き続けるが、体表の火傷など無視して怪物は這う。

 武者たちは刀槍を振るい怪物の侵攻を阻もうとするが、怪物は斬られようが突かれようが無視し、逆に道を阻む武者たちを巨体任せて押し潰しながら這い続ける。

 

 ――ピアーズが雄たけびを上げ、再び雷撃を放とうと腕を構えた。

 

 しかしその動きは、怪物が背の大口より吐き出し続ける酸の雨により妨げられる。

 ある程度の指向性を持たせられるのか、動きを止めれば怪物に酸を吐きかけられるのだ。

 藤丸が動き回らずに済んでいるのは、茶々が藤丸に向けて放たれる酸を自らの焔で守っているから。

 守ってくれる物のいないピアーズは、済んでのところで転がり酸を躱した。

 

 ――怪物は、確信する。

 

 自身の勝利を。

 己が巨体をもっての突進により、磨り潰され惨めな肉塊へと成り果てる少年少女の姿を。

 

 ――勝利に喜悦し、甲高い雄叫びを上げる怪物。

 

 その目の前で、少女の姿が巨大な焔の鳳に変わった。

 

 ――驚愕から、雄叫びを止める怪物。そこに焔の鳳が襲い掛かった。

 

 茶々の宝具は茶々の最期を、焔の中に滅び去った豊臣の最期を具現化するもの。

 最終的には己すら含めた全てを焼き尽くし焼き滅ぼす、終末の顕現。

 最後は滅びの焔鳳と化した茶々が、敵を灰燼に帰すのだ。

 

 ――紅蓮の焔に包まれる、怪物。

 

 怪物は暴れ回り、我が身を焼く焔から逃れようとする。

 だが怪物の身を焼く焔は茶々そのもの、生きている。

 生きた焔から逃れることは、決してできない。

 

 怪物は暴れ、捻じれ、のたうち回りながら焼かれ続ける。

 怪物を構成する蛭達は黒く焼け焦げていき、怪物の体から剥がれ落ち怪物の体はどんどん小さくなっていく。

 

 ――やがて宝具の使用により現界に必要な魔力を茶々は使い切り、焔は消えた。

 

 茶々の期間を見届けた藤丸は膝をつき、荒い息を吐く。

 茶々の宝具はその規模相応に魔力の消耗も多く、藤丸は体力をほぼ使い果たしていた。

 

 ――そんな藤丸の前には、焼け焦げ黒い彫像のようになった怪物が。

 

 怪物は完全に停止しており、死んでいた。

 茶々はマスターを殺そうとした怪物を、完全に打倒したのだ。

 

 ――だが怪物の奥の奥、核ともいうべき場所に潜んでいた一体がまだ生きていた。

 

 その一体は怪物の残骸を突き破り飛び出し、牙を剥き出して藤丸に襲い掛かる。

 

 ――その一体こそ、マーカスにより創り出されマーカスの悪意を学習しマーカスそのものと化した、始まりの一体。

 

 ――その一体こそ、他の全ての蛭を生み出し統括し支配していた、偉大なる母。

 

 ――その一体こそ、女王ヒル(マーカス)

 

 女王ヒルは耳障りな奇声を上げながら藤丸に迫り、牙を突き立て血を啜り殺そうとする。

 

 ――だが、女王ヒルの牙が藤丸に届くことはなかった。

 

 一筋の稲妻が走り、女王ヒルに突き刺さる。

 女王ヒルの体は高圧電流により一瞬で沸騰して蒸発し、木っ端微塵に弾けとぶ。

 

 ――止めを刺したのは、ピアーズの一撃だった。

 

 藤丸はピアーズに笑みを向け、親指を上げる。

 ピアーズもまた笑みを返し、親指を上げる。

 

 NEST2での最後の戦いは、藤丸とピアーズに軍配が上がった。

 




少し忙しくなってきたので、これからは毎週月曜日更新の週一更新に変えたいと思います。
次回更新予定日:5月24日
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