FATE/BiOHAZARD   作:ダイアジン粒剤5

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GUN SHOP

 マーカスとの戦いを終えた藤丸とピアーズはNEST2の探索を再開し、そこでワクチンの原材料の確保とワクチン自体の作成に成功した。

 その後二人は地上の病院に戻り、院内でカルテを読みふけっていたアスクレピオスと合流。

 地下での顛末を話した二人はアスクピレオスと共に、ワクチンを届けるべく彼の患者の下へと向かうため再び怪物で溢れた町を進むのだった。

 

 

 「……マーカスを倒したからか。 ハンター共は統制から外れて、街に散ったようだな。 その患者がハンターに襲われたら大変だ。 急ごう」

 

 小走りとなって急ぐ、ピアーズ。

 街は相変わらずゾンビで溢れ、そこかしこで炎が上がる地獄絵図だったが、そこにハンターと他の怪物との戦闘跡が新たに加わっていた。

 統制を外れたハンターたちは狩猟欲求に従うまま見境なく襲い掛かったらしく、首を刎ねられたゾンビや犬の死体が街のそこかしこに転がっており、逆に返り討ちに合い殺されたと思われるハンターの死体も転がっている。

 街の惨状は、加速度的に悪化していると言ってよかった。

 

 「急ぐのは賛成だ、時間が掛かれば患者の病状の悪化が懸念されるからな。 だが、それに関しては心配しなくていいだろう。 患者の親の戦闘能力はそれなりのものだったし、武器も多かった。 あのハンターとやらが数匹現れた程度なら、十分撃退できるだろう。 ……それに最悪、あいつもいるしな」

 

 「あいつ?」

 

 藤丸の問いに、アスクピレオスは答える。

 

 「ああ、言ってなかったな。 あいつも僕やマスターと同じように、此処に召喚されたらしい。 だが何処でかは分からないが、他と同じ病に侵されたようでな。 治療しようと店に連れ込んだところで、もう一人の患者を見つけたんだ……ああ、そこだな」

 

 アスクピレオスの指さした先には、GUN SHOP KENDO と赤色のネオンで光る看板の描かれた店が建っていた。

 

 「……!」

 

 「どうしたの、ピアーズ?」

 

 目を見開くピアーズに訝し気に問いかける藤丸だったが、ピアーズは軽く頭を振って答える。

 

 「いや、過去へのタイムトラベルというのを少しばかり実感しただけだ。 ……まさか、隊長たちの銃を造ったガンスミスの店とはな」

 

 後半は小声で聞き取れなかったが、あまり追及することではないと思い藤丸は頷く。

 一方、アスクレピオスはそんな二人の様子に構うことは一切なく、音を立てて店の扉を開けズカズカと中に入っていった。

 

 「動くな!」

 

 そんなアスクレピオスの前に、ショットガンを向け立ち塞がる男が現れる。

 男は髭面だが優しそうな顔付きをしていたが、その言動から精神的な余裕のなさが現れていた。

 

 「患者の具合はどうだ? 薬は指示通りに与えていただろうな?」

 

 そんな余裕のない相手に銃を突き付けられていながらアスクレピオスに恐れる様子は一切なく、聞きたいことを淡々と聞く。

 そして男も、そんなアスクレピオスの姿を確認した瞬間、顔を綻ばせる。

 

 「ああ、先生。 すみません、何が来るか分からなくて。 はい、薬は言われた通りに飲ませました。 それで、治療法は……?」

 

 縋るような眼を向ける男に、アスクレピオスは藤丸たちから受け取ったワクチンを見せる。

 

 「ワクチンを手に入れた。 恐らく、これで助かる」

 

 アスクレピオスの言葉を聞いた男は膝から崩れ落ち、涙を流しながら両手を組んで祈りを捧げ始めた。

 

 「ああ、ああ! ありがとうございます、ありがとうございます!! 神様、本当に、本当に、ありがとう……! ありがとう……!」

 

 アスクレピオスはそんな男には一瞥もくれず、彼の患者がいるのだろう奥に向かって歩いていく。

 医神の監督の下でワクチンが打たれる以上、間違いなく病人たちは助かるだろう。

 

 

 ――男は暫くの間祈りを捧げ続けていたが、やがて藤丸とピアーズに気が付いた。

 

 

 「あ……あんた達、は……?」

 

 しゃがれた声で問いかける男に、藤丸とピアーズは答える。

 

 「俺の名前は、藤丸立香。 アスクレピオスの……その、友人です」

 

 「俺はピアーズ・ニヴァンス。 俺は……まあ、患者だな。 安心してくれ、ちゃんと理性はある」 

 

 異形と化した自分の姿に注がれる男の視線に、ピアーズは自嘲気味にそう言った。

 

 ――怪物だらけのこの街において、自分もまた怪物の内の一体に過ぎない。

 

 自らの異形の姿に忌避感を見せなかった藤丸やアスクレピオスと共にいたせいで忘れていた、事実。

 男の視線により、ピアーズはそれを思い出したのだった。

 

 「……すまない、嫌な気分にさせたみたいだな」

 

 男は涙をぬぐうと、握手を求めて右手を差し出す。

 

 「俺の名は、ロバート。 ロバート・ケンド、この店の店主だ。 先生の連れなら、俺はあんた達を無条件で信頼する。 こんな時だ、お互い協力し合おうぜ」

 




次回投稿予定日は5月31日です。
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