FATE/BiOHAZARD   作:ダイアジン粒剤5

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戦い

 ――爆発により巻き上げられた粉塵が晴れた後。

 

 崩壊した警察署エントランスには、薄紅色の花が咲いていた。

 エミヤの投影した結界宝具『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』。

 トロイア戦争にてギリシャの英雄アイアスがトロイア最大の英雄ヘクトールの投擲を防ぐべく使用し、見事防ぎ切ったという凡そ投擲攻撃に対しては無敵ともいえる最強の防具。

 それが、突如飛来したロケット弾による被害から、彼ら五人を守り切ったのだ。

 

 「皆、無事か?」

 

 「大丈夫だよ」

 

 エミヤの問いに藤丸が答え、ピアーズが続く。

 

 「ああ、無事だ。 しかし、さっきのロケット弾は……」

 

 「誰だ、僕の治療の邪魔をする愚か者は」

 

 怒れるアスクレピオスは黙殺し全員の無事を確認したエミヤは、外の一点を指さす。

 

 「全身無事なようで何よりだ。 では、備えたまえ。 ……敵だ」

 

 ――エミヤが指さす先に立つのは、四連装ロケットランチャーを担いだ鋼の大男。

 

 その左右には、白色のロングコートにそれぞれ青とオレンジのサングラスをかけたお馴染みの大男が二人。

 

 ――そして更にその背後から、悍ましい姿をした怪物が一体現れる。

 

 基の姿は他の大男と同じなのだろうが、右目からは触手が飛び出しており、両足は膝から下が触手の集合体のようにな異形。

 更に顎が異様に肥大化し棘の付いた赤い球体のようになっており、両腕は体の前で組まれ融合し牙を持った巨大なミミズのような太く長い触手と化している。

 移動は背から生えた四本の茨のような触手で行っているようで、それらをクモの足のように操り異形の怪物は藤丸たちの前に立つ。

 

 「テイロスの砲撃を受けて無傷とはな。 スペンサー会長の仰られていたとおり、英霊というのは侮れないものだ」

 

 最も人間からかけ離れた姿をした怪物から発せられる、理性的な言葉。

 そのギャップに興味深いと目を細めるアスクレピオスを除き言葉を失う3人だったが、怪物はそんな事は気にせず言葉を続ける。

 

 「だが無傷というのは良くないな、実に良くない。 痛みこそ悦び、苦しみこそ生の実感だ。 君たちには、もっと痛みが必要だ。 ――イワン!!」

 

 怪物がミミズの如き腕の触腕を調教師に如く地面に叩きつけると、イワンと呼ばれた二人の大男が藤丸たちに向けて突進を始める。

 また鋼の大男――テイロスも右肩に担いだ四連装ロケットランチャーを掲げ、ロケット弾を発射した。

 ロケット弾には誘導機能が付いているらしく、弧を描いて藤丸たちに飛来する。

 

 「――! いかん!!」

 

 最初に反応したのは、エミヤだった。

 二振りの短剣――干将剣と莫耶剣を投影しロケット弾に向けて投擲し、更にもう二振り干将剣と莫耶剣を投影して二体のイワン達に投擲する。

 引き合うように弧を描く干将剣と莫耶剣によりロケット弾は全て撃墜されるが、イワン達は投げつけられた短剣を容易く腕で払い落し突進を続ける。

 

 ――雄叫びを上げ、グレネードランチャーを放つピアーズ。

 

 擲弾(グレネード)は過たずイワン達に命中し、二体を爆炎に包む。

 上がる炎と煙。

 それを縫うように無規則な動きで、異形の怪物が茨のような触手を操り迫る。

 

 「さあ、私からの痛みを受け取ってくれ!!」

 

 振るわれる、ミミズのような触腕。

 そこにアスクレピオスの操る機械の蛇が飛び掛かり、触腕に噛み付く。

 

 「ムゥ!?」

 

 飛び退く怪物。

 しかし同時に触腕を振るい、機械仕掛けの蛇を地面に叩きつけ破壊する。

 そして蛇に噛み付かれ血が滴り落ちる触腕を見せ付けるように持ち上げると、感極まった声で叫ぶ。

 

 「――いいぞぉ、いい痛みだ。 もっとだ、もっと激しい痛みを! 苦しみを! この私に! セルゲイ・ウラジミールに! 与えてくれぇ!!」

 

 哄笑を上げるセルゲイを名乗る怪物、その姿にエミヤが呟く。

 

 「……狂人だな。 いや、最早人と言っていいのか怪しいが」

 

 アーチャーのクラスに相応しく新たに弓を投影したエミヤが身構え、怪物たちを睨みつける。

 視線の先に在るのは異形の怪物セルゲイと、肩に担ぐロケット砲を構え直す鋼の大男テイロス。

 そしてグレネードランチャーの直撃を受けた、二体のイワン。

 イワンは多少黒く煤けてはいるものの、その身に纏ったロングコートを含めてほぼ無傷。

 どれをとっても、容易くは勝てない怪物達だった。

 

 「私があのテイロスとかいう怪物を、相手取ろう。 アーチャークラスで召喚された者として、遠距離攻撃で遅れはとらん」

 

 「じゃあ俺は、あのセルゲイを相手する。 ……セルゲイ・ウラジーミル。 奴は隊長が取り逃がした、アンブレラの最高幹部だ。 必ず、俺が仕留める」

 

 グレネードランチャーを背負い直しサブマシンガンを構え、ピアーズがセルゲイを睨みつける。

 

 「言っておくが、僕は戦闘には参加しないぞ。 この患者の治療に忙しいからな」

 

 既に二人からも怪物達からも視線を外し、黙々と黒人警官の治療を行いながらアスクレピオスは断じる。

 

 「先生、人命救助の重要性は分かってるつもりだが、ここは――」

 

 「僕は医者だ。 医者にとって、患者の治療より優先する事などない」

 

 「ピアーズ、アスクレピオスの好きにさせてあげて」

 

 土方歳三と斎藤一。

 二人のだんだら羽織を着た英霊の影を召喚した藤丸は、アスクレピオスを窘めようとするピアーズを制する。

 そして手の甲に刻まれた令呪を輝かせ、宣言した。

 

 「アスクレピオス。必ずその人を、助けてあげて」

 

 「当然だ、誰にモノを言っている。 ――だが、助力には感謝する」

 

 アスクレピオスに頷いた藤丸は、ピアーズに視線を向ける。

 

 ――その視線に込められた強い意志に、ピアーズは全ての不満を飲み込む。

 

 「……分かったよ、マスター、先生。 じゃあマスターは、あの二体のイワンを頼む。 その警官と先生を守りながら、奴らを討伐するぞ!」

 

 「――ああ、心得た!」

 

 戦闘中とは思えないほど朗らかな笑みを浮かべて、ピアーズの声に応えるエミヤ。

 しかし次の瞬間には顔付を鋭いものに変え、投影した矢を弓につがえながら、怪物達に向かい駆け出した。

 




次回投稿予定は7月19日です。
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